第54回 トニーのソロアルバム

 さて、今回はトニー・キッシュマンのソロ・アルバムを紹介します。トニーのことは覚えていますよね。僕がこのHPを始めた時には、まだアッシュのベーシスト兼シンガーだった彼ですよ。(^^)

このソロ・アルバムは、97年にリリースされたものです。タイトルは「CATCH 22」で、曲目は次の通りです。

HEADIN' FOR A ROUGH RIDE / CATCH 22 / LET ME DOWN EASY / HOW'M i GONNA GET BY / MODERN GIRL / THE LUCKY ONE / CLASSY KIND'S LOVE / SKY'S THE LIGHT / SERENITY / BELIEVE IN YOURS ELF

裏ジャケではギターを抱えてるトニーですが、クレジットを見る限りでは、シンガー(全曲)とベーシスト(全曲ではない)に専念しているようで、アルバムは全曲とも同じメンバーによるレコーディングになっています。

クレジットで真っ先に目をひくのが、ギターのポール・サブーですね。彼のバンドであるサブーは、メロディック・ハード・ロックの範疇でプロモートされていたのですが、昔のソロ・アルバムでは、かなりアメリカン・ロックっぽい音造りもされていたことを思い出します。

アルバムは、いかにもハード・ロックというM1で幕を開けます。かなりオーソドックスな音ですね。M2はいかにもアメリカン・ハードという音ですね。ヴォーカル自体は、どことなくポール・ロジャースやグレン・ヒューズに通ずるところがある見事な歌唱で、トニーのヴォーカリストとしての実力がわかります。

M3では、ブライアン・アダムスにも通ずるヒット性を見せてくれますし、M4は、ホントにポール・ロジャースみたいな唄い方をしていますね。その部分のバックのリフもファイヤー・アンド・ウォーター風ですから、これは確信犯でしょうね。(^^;

M5はピアノのバッキングが印象的なロックン・ロールです。M6は、アコースティックな雰囲気のバラードです。これもポール・ロジャース風ですね。バッキングのギター・リフは、アッシュの「戦士」のクワイエット・パートのようで、アルバム中で唯一、アッシュを連想させてくれる音ですね。間奏のギターも見事です。(^^)

M7は、ミッド・テンポのロックン・ロールで、中期のバッド・カンパニーの雰囲気もありますね。M8はタイトなロックン・ロールです。キーボードの入れ方も産業ロック風で、MTV世代の音だなって印象を受けます。

M9は、ドラマチックなキーボードのイントロから、トニーの情感的なヴォーカルへとつながるバラードです。マイナー調の美しいメロディーも印象的ですし、サビにむけて徐々に盛り上げていって必殺の哀愁のコーラスを爆発させるという劇的なパターンは、日本人受けしそうな曲です。泣きまくっているギター・ソロもいい出来ですし、M6と共にベスト・トラックと言えると思います。

ラストを飾るM10は、ボン・ジョビ風のナンバーです。コーラスやキーボードの入れ方を聴く限り、これも確信犯でしょうね。(^^;

アルバムを通して、アッシュの影響はほとんど感じられません。それよりも、ポール・サブーのサウンドというほうが納得できる音造りです。 全体的にオーソドックスな楽曲ばかりで、アルバムとしての「決め」の曲がないというのが惜しいところですけどね。できとしては可もなく不可もなくの標準というところでしょうか。

でも、トニーのヴォーカルは見事です。僕が前々から「イルミネーションの時のメンバーがアッシュ史上最強のライヴ・メンバーだ」と言っているのも、ひとえに彼の歌唱力によるところが大きいのですけど、このアルバムでの彼は、期待にそぐわぬ唄いっぷりです。(誤解のないように言っておきますが、僕が一番好きなアッシュは、アンディー&ローリー&マーティン&スティーヴの時代ですからね。)

ということで、アッシュのファンには「オススメ」というアルバムではないですが、ハード・ロックが好きな人なら聴いてみてもいいかなとは思います。

< CATCH 22 / TONY KISHMAN / US / PURE/003642560-2 >