第37回 アッシュのトリビュートCD
さて、アッシュのトリビュートCDが発売されました。とは言っても、正規の販売ではなくて、ファンクラブ・オンリーのCDRとしての発売です。ジャケとかはきちんと作ってくれているものの、レーベルも貼り付けで、寂しいと言えば寂しい創りですけどね。(^^;
「Y2WA」と名付けられたこのアルバムですが、アッシュのオープニング・アクトで有名なBEN GRANFELT BANDをはじめ、アッシュのファミリー的な人たちでまとめられているようです。それぞれのアーティストのことはトラック・リストの中で書くこととして、早速、中身を聴いてみることにしましょう。
1.THE KING WILL COME / BILL BAXENDALE
ビルのことは、ライナーでは「The worlds greatest bedroom guitarist」と紹介されています。曲を聴くと、ギターとベースはきちんと弾いているものの、ドラムは打ち込みのようですし、おそらく自宅で多重録音したものなのでしょう。ギター・テクニックもしっかりしていますし、歌のほうも(ちょっと線が細いものの)まずまずのできです。間奏のギター・ソロですが、アッシュの弾きそうなフレーズを連発してはいますが、譜割りが間延びしていて、やや緊張感に欠ける感じですね。
2.SOMETIME WORLD / BEN GRANFELT
ベンはフィンランドのミュージシャンで、アッシュのコンサートでのオープニング・アクトを務めたことは(HPの他の記事にも書いたし)みんなも知っていると思います。それだけに、彼のギター・プレイは見事なものです。アッシュのフレーズ・パターンを踏襲してはいるものの、新しめのテクニックも随所に織り交ぜて緊張感に溢れるソロを聴かせてくれます。間違いなく、アルバム中のベスト・トラックのひとつでしょう。
3.MOUNTAINSIDE / MOONSTONE
オフィシャルページのマスターのレオンたちは、彼らのことを「BABY ASH」と呼んでいるそうです。2本のギターがうまく絡んで、本当にアッシュのサウンドを聴いているようですね。ギター・ソロもそつなくまとめていますが、やっぱりこぢんまりとした印象を受けるのは仕方ないところでしょうか。サウンドのまとまりとしてはアルバム中でも屈指のできです。
4.WHEN YOU KNOW LOVE / ELESTOSATIC
彼らはシカゴのバンドだそうです。選曲的にも、ちゃっかりアメリカン・フレイバーを含んだ曲を選んでいますね。ギター・プレイも、アンディーよりはローリーに近い感じがします。
5.LEAF AND STREAM / BREATHLANES
もともとアコースティックな感じの曲でしたが、ここでは女性ヴォーカルをフィーチャーして、もっとアコースティック感を増したサウンドで聴かせてくれます。ルネッサンスみたいな感じもしますね。
6.BLIND EYE / G.ORG
アルバム中で最大の驚きがこの曲です。なんと、ピアノ・トリオにギターやヴァイオリンが加わって、モダン・ジャズ風に聴かせてくれます。もともとブルース調の曲だけに、うまくはまっています。(^^)M2と共に、アルバム中のベスト・トラックだと言えるでしょう。ライナーにもこう書いてあります。「こんなサウンド聴いたことないし、今後も二度とないだろうね。全然違うんだよ!でも、凄くいい!」
7.LADY JAY / PETE POPERT
モダン・ジャズのM6を除くと、原曲から一番かけ離れた出だしのアレンジになっています。本来のイントロの部分から後は、だいたい原曲通りに進むのですが、あくまで「原曲と違うんだよ」とフェイクを入れるハーモニー・ツインも意外なところです。でもね、あまりいい効果があがっているとは思えないんだけどね。(^^;メリハリのない仕上がりになってしまった印象もあります。
8.F.U.B.B. / BILL BAXENDALE
M1に続いての登場ですね。リフからハーモニー・ツインあたりまではギターの力量の高さを見せつけてくれますが、アドリブ・ソロは間延び気味で締まりのない展開になっています。前半がよくできているだけに、惜しいところです。
9.RUNAWAY / MOONSTONE
ライナーで「COME IN FROM THE RAIN」となっているのは、明らかな誤植でしょうね。M3同様、そつのない演奏ですが、やっぱり小さくまとまった印象を受けます。
10.PERSEPHONE / PAUL BOYDELL & IRENE HUME
原曲よりもキーボードを前面に出した幻想的なサウンド作りをしています。でも、やはり演奏にリズム感がないのが致命的ですね。美しさに気を取られ過ぎた感じです。
11.REAL GUITAR HAVE WINGS / TUSH
アルバムの最後は、インストで締めくくります。このバンドも、やはり「そつなく」「こぢんまり」という印象ですね。
全部の曲を聴き終えて最初に思ったことは、「やっぱりアンディーのギターは上手いよね」ということでした。M2あたりはそうでもない(これは、自分の個性を十分に発揮した素晴らしい演奏だと思います)のですが、やっぱりギターが全然違うのです。当然、アンディーやローリーとは違う個性のギタリストが弾くのだから違うこと自体はあたりまえなのですが、テクニック的には凄いものを持っているのだけど、テクニックだけでは補えない何かが足りないという感じです。変な話なのだけど、トリビュートを聴いて、改めてアンディーのギターの根底に流れる「うたごころ」を再認識したという思いがしました。(^^)
今回はファンクラブのみのCDRなんだけど、いつかどこかのレーベル(実現することがあるのならば、きっとアメリカかドイツだろうと思いますけどね)から本当のトリビュート・アルバムが出ることを願って、今回は筆を置きたいと思います。