第10回 マーティンのソロ・アルバム

 

 掲示板のほうでリクエストがありましたので、今回は、マーティンのソロ・アルバムの話です。タイトルは「WALKING THE REEPERBAHN」と言います。発売は、確か97年だったかな。DIRTY DOGというレーベルなのですが、おそらく自主制作盤になるのではないでしょうか。アッシュのオフィシャルHPからファンクラブ経由で買うことができます。(ところで、まだ在庫はあるのかな?)

 ジャケットは写真の通り、得体のしれない街角で、娼婦を買うマーティンという風な構図です。(ちょっぴり悲しいようなシチュエーションですね。)では、各曲のレビューです。

1.FIRE SIGN

 キーボードの音に導かれて始まる、マイナー系のポップなメロディーの曲です。初めて聞いたとき、やっぱりアッシュみたいな曲だなと感じたのですが、それもそのはず。67年に書かれていたのですが、アッシュでは「因果律」の時に録音されてお蔵入りになった曲でした。(アッシュのヴァージョンは、この度の「因果律」のCD化に伴うボーナス・トラックになりました。)ここでは、レイ・ウェストンたちを迎えて、再録音したヴァージョンです。一番昔っぽくて、お気に入りのナンバーです。

2.WALKING THE REEPERBAHN

 ミディアム・テンポの曲です。95〜96年に録音された、比較的新しい曲です。ギターのサウンドやフレーズは、やはりアッシュっぽいですね。「フロント・ページ・ニュース」か「ジャスト・テスティング」あたりに入っていても違和感のない曲です。曲自体は、可もなく不可もなくという、地味な感じの曲です。

3.HOT SURRENDER

 まるでO.M.D.かヒューマン・リーグのようなキーボードで始まる、あっと驚くポップなサウンドの曲です。83〜84年の曲ということですから、アッシュを辞めていた時期に書かれた曲ですね。ベーシック・トラックはその時のものを使っているようです。ギターが(ソロもあるのに)ほとんど目立たない曲です。

4.MY BROTHER

 8トラックの録音で、マーティンが全部一人で演っています。もともとは80年代初期の録音だそうです。「ジェイルベイト」系のリズムのミッド・テンポの曲です。押さえて進行するAメロが、サビで一気に弾けます。でも、ちょっと単調で退屈な曲です。

5.STRANGERS

 84年に録音したトラックを元に95年に仕上げた曲です。ギターも結構凝っていて、面白いです。これもミッド・テンポですが、アレンジは面白いです。トレモロとエコーを効かせたギターの音には、「LIKE A CHILD」を彷彿させる部分もあります。

6.PSYCHIC FLASH TO GINZA

 これは、ほとんど唄のない歌謡曲というか、ベンチャーズ日本を唄うって感じの曲です。タイトルにも銀座がでてきますしね。93年の曲だそうです。

7.YOU

 83年に作られた曲をもとに96年に仕上げられました。ちょっぴりシャウト(してないけど)っぽく唄う「YOU!」の部分とか、サビの部分とか、どことなくデヴィッド・ボウイを思い起こさせる曲です。

8.PASSION

 これも84年の曲です。ちょっとファンキーなベースが印象的です。キーボードのラインも、ベースラインも、当時流行っていた(僕も好きな音なのだけど)ニュー・ロマンティックのバンドを思い起こさせます。(デュラン・デュランとかスパンダー・バレエじゃなくて、フィックスとかクラッシクス・ヌーボ−って感じかな?)この曲もお気に入りの曲です。

9.LEAN ON ME

 解説を読むと、マーティンの曲ではなくてスタンダード・ナンバーのようです。「THIS CLASSIC SONG」と書いてあるしね。とてもポップな、楽しい曲です。M1とかM8ほどじゃないけど、結構気に入っています。

10.KELLYS AWAY WITH THE FARIES

 83年の曲に、マーティンがギターをかぶせ、96年に仕上げられました。解説にもあるように、イントロと間奏のギターは、シャドウズっぽいですね。(^^)でも、あとは典型的なアッシュ・サウンドですよ。(そう言えば、アッシュの時代にも、クリアーなギター・サウンドにはシャドウズの影響が感じられたものです。)

11.WHERE WILL I GO?

 80年代初期にマーティンが一人でレコーディングした曲に、あとでギターをかぶせて仕上げたものです。ヴォーカルにヴォコーダー(かな?)を通したり、サビの半音を活かしたコード進行といい、やはり80年代当時のバンドの影響が見えます。こうしてみると、マーティンって、結構その時代の音に敏感だったんですね。アッシュのアルバムを聴いているだけでは、わからなかったことですけどね。

12.THE NAKED TRUTH

 これもM10と同じシチュエーションの曲です。とてもアッシュぽい曲ですが、それもそのはず(またかよ(^^;)。これって、「NOUVEAU CALLS」に入っていた「IN THE SKIN」のヴォーカルヴァージョンですね。ある意味では、アルバムの目玉のひとつかもしれません。マーティンの「シャドウズ」ギターも哀愁たっぷりです。

13.HEAVEN IS

 「HEAR TO HEAR」の時に、録音されたジャム・セッションです。当然のごとく、ギターはアンディー、ドラムはスティーヴです。(あれっ、テッドは?)マーティンはベースとキーボードを弾いてます。でも、インストゥルメンタルのためか、音としては「NOUBEAU CALLS」に近い感じです。だけど、ジャム・セッションなのに、メロディアスなフレーズを弾きまくるアンディーはさすがですね。

14.BROKEN DOWN HOUSE

 82年の曲にオーバーダビングをして、95年にCDシングル用に仕上げました。アッシュっぽい曲ではありますが、シングル向きではないような気がします。

 という風に、アッシュぽい曲もあるのですが、ハーモニー・ツインが皆無ですので、そこは残念です。せめて、アッシュの録音のM13には入れてほしかったんですけどね。まあ、そこにはテッドもいないし、仕方ないか。

 ということで、熱心なアッシュファン以外には、ちと辛いアルバムかもしれませんね。まあ、このアルバムを買うような人は、間違いなく「熱心なアッシュファン」でしょうから、問題ないでしょうけどね。(^^)

 <MARTIN TURNER / WALKING THE REEPER BAHN / DIRTY DOG / DDD CD-001/ U.K.>