第3回 1976年の想い出

 僕は、WISHBONE ASHのライヴに、一度だけ行ったことがあります。1976年の来日公演の時(ちょうど高三の秋でした)に、うちの県に来てくれたのです。場所は、ちょっと古いけど、当時は地元では2番目のランクのホールでした。当時の最新アルバムが不評サクサクだった「限りなき束縛」だった(TVスポットは「ムーン・シャイン」でしたし)ということで、公演前のまわりの反応はイマイチ・イマニでした。(僕と親友の二人は盛り上がっていましたけれどね。)でも、お客さんは結構来ていたので、安心したのです。

 開場と同時に席につきます。真ん中の前から5列目というベストポジションに陣取り(ちょっと秘密ルートを使って確保したいい席です)そして、開演。思えば、これが「ニュー・イングランド」の曲を聴いた初めての体験でした。マーティンは白いサンダーバードじゃなく、黒いハマーのベースを持っていたのですが、これが凄かった。後ろから椅子を蹴られているんじゃないかと思えるほど、ベース音が身体にズンズン響いてくるのです。(あれから何度もいろんなアーティストのライヴに行っていますが、あんな凄いベース音を聴いたのは、それ以来ありません。それがマーティンだけじゃなく、エンジニアの手腕によるものだと知るのは、もう少し後のことでした。)

 曲目は、「ニュー・イングランド」(日本でもすぐ後に出た)の曲が中心でした。当時のイギリスでのライヴは、BBCで放送されて、数種類のブートCDになっていますので、だいたいの様子はそれを聴けばわかると思います。何よりもカッコ良かったのは、初めて聴いたインストゥルメンタルナンバーの「アウトワード・バウンド」でした。(ブートCDを聴く度に思うのですが、この曲はスタジオよりもライヴのほうが何倍も素晴らしいできでした。その後、ライヴでのインストゥルメンタルナンバーが「F.U.B.B.」に替わったまま定着してしまったのは、個人的にはとても残念です。)

 そのライヴで印象的だったのは、(1)マーティンのベースの音(2)「アウトワードバウンド」のカッコ良さ(3)「ユー・レスキュー・ミー」のベースライン(4)「ローレライ」のギターハーモニーの不協和音(レコードのハーモニーはまとまっているのに、ライヴでのハーモニーは、変でした。)(5)ローリーの生ボーカル(力抜けそう)というところでした。

 ライヴが終わって外に出ると、控え室の窓の下の方に、女の子たちが固まって「ローリー!!」「マーティン!!」と黄色い声をあげていました。(「アンディー!」もあったと思うけど、「スティーヴ!」はなかったと思う。)そのうちに、ローリーが、控え室の磨りガラスに(ズボンもパンツもぬいで)おしりを押し当てたので、ひときわ大きな歓声があがりました。(おちゃめなローリー....。)

 これが、いまのところの僕の唯一の生アッシュ体験です。この時、会場に降ってきたロゴ入りの風船は、今でも大事に持っています。(もう、ふくらませないくらいゴムが朽ちていると思うけれどね。)

  <演奏曲目(順番は「たぶん」だけど)>  

 RUNAWAY / THE KING WILL COME / WARRIOR / LORELEI / PERSEPHONE / CANDLE LIGHT /

YOU RESCURE ME / REST IN PEACE / MOTHER OF PEARL / OUTWARD BOUND /

IT STARTED IN HEAVEN / TIME WAS / BLOWIN FREE

<アンコール> JAILBAIT / BAD WEATHER BLUES

       WISHBONE ASH / JAPAN TOUR 1976 / PROGRAM