だれもいないパーティー





 こんな夜はきみのかなしい想い出が遠くの森をさまよっている


 霧のなか足跡だらけのまちへ行き誰かの足跡どおりにあるいた


 真夜中に天使の足跡さがしてるきみと出会った巨大な都会


 地下鉄で眠りつづけるニンゲンが巨大な壁の夢をみていた


 この街は窓ばかりの街どの窓からもだれかの影がこっちを見てる


 このまちで断片的なぼくたちはいろんな言葉を壁にかいてた


 たくさんの言葉がかいてある壁を記憶をなくしたきみが読んでる


 ちらばった言葉のカケラを集めてる 無数の靴がさまよう街で


 真夜中にくるくる回るフランケン 古い孤独をぼくにもわけて


 迷い込んだだあれもいないパーティーできみの名前をずっとよんでた


 電源を抜かれたパーティーとびこえて貨物列車できみと会いたい


 ひらいてね その合鍵で ぼくの胸にアトムみたいについてる窓を


 ぼくらには声にならない音がある雨粒よりも小さなその音


 人類がおぼえていないあの歌を人形たちがうたう真夜中


 ぼくたちを番号なんかで呼ばないで ぼくの名前は番号だから


 からだじゅういっぱい数字が書いてある何の数字かよくわからない


 もういちど月夜にドライヴしたいねと人形になったきみに語った


 あの部屋に頭のとれた人がいてじぶんの背中をずっとさがしてる


 子供らがおおきな穴を掘っている誰かがいない深夜の校庭


 夜明けまでコックリさんをする子らが見えない都市に消えてった夏


 魂に通しナンバー打ってあるかなしいきみはどこから来たのか




 たくさんの箱詰めされた人間が遠い海から運ばれてくる


 透明な水槽みたいな午後だから魚の群れをずっとまってる


 カラッポの海になろうよ ぼくらには自分をはなす声がないから


 現実と接触がわるいぼくたちは世界のコピーばかりとってる


 床じゅうに地図をいっぱい並べてる小さな町の大きな部屋で


 一日じゅう水槽のなかをのぞいてる名前のない子の名前 知ってる?


 高速にそって彼らは並んでる膝をかかえて何百人も


 ぼくたちとおなじ顔した人形が巨大な空を記憶している


 このまちは水槽だから空洞の胸をかかえたぼくらは浮ける


 灰色の群衆が駅に集まってざわめきながらただ待っている


 きょうの朝きみのかおをした群衆であふれる街で切符を買った


 この都市は駅員ばかりいる砂漠 切符を探しさまよう群衆


 ビルの上 キングコングが膝かかえ黄昏をみてる街は喧騒


 ビルの上 キングコングがすわってる誰かどうにかしにいってやれ


 さびしいとキングコングがつぶやいた ぼくらの森はどこへ消えたの


 だけどねとキングコングにつぶやいた ぼくらの町もどこにもないんだ


 ひとりきり時間の止まった街へ行きプールにちらばるぼくをみつけた


 先生の頭に数字が書いてある いったいかれは何人めだろう


 大量に複製された人間をトラックにつめ海へいそいだ


 トラックで運ばれていく群衆はおなじバッジを胸につけてた


 砂浜にいろんな人が集まって砂におんなじ文字をかいてる


 あの島にコトバをしゃべるサルがいる しかしコトバを聞くサルはいない


 街じゅうに地図がいっぱいあふれてるありふれた街きみと迷おう


 地図を見て迷いつづけるきみをみて見知らぬ町がしずかにわらった


 地図だらけの町で迷ったぼくたちは目にはみえない劇場に立ってた


 無限の夜星空が語りかけてくる かくれる場所はどこにもないと


 素顔のない変装者たちが消え去った奥行きのなかでとまどっている


 影ばかりあふれる都市を歩いてた きみと歩いた世界がなくなる


 十年後それでもぼくはこの世界をまだ記憶してるいんだろうか





                         by aruka 2005.9.27

     戻る