日本に行きたいマネキン人形





    日本に行きたい


 日本に行きたい 切り裂きジャックも切り裂かれちゃったジャック以外も


 両眼とも数字になっている俺の自爆装置に火をつけてくれ


 一息でケーキのキャンドル消してみな きみのいのちもそのとき消える


 そしてぼくはきみの消耗品になる そのときはボールペンをくわえて


 だれにでも存在価値はあるものさ葬儀屋のまねき猫にだってね


 知事室でおいしいラーメンたべているきみの名前をだれも知らない


 あの部屋で自分と闘うボクサーがノックダウンされ失神してる


 町で見たサンドバックに似た男 魚みたいな声をしていた


 大学にここがきみらのゴールだと赤い布もつ闘牛士がいる


 無人島で時間ばかりを気にしてる男に会ったら書類を渡せ


 地下室にマタンゴになったきみがいてへんなキノコをずっと食べてる


 前向きな心をなくしたあと彼は横向きになって生きてきたのさ


 二人だけ誰にも秘密のあの恋がアニメ化されて放送されてる


 永遠に地球を飢餓から救うためマタンゴを大量栽培する


 地獄からサーフボードでやってきた男の剥製わが家にぴったり


 グラサンのサンタが買った弾丸は目障りな奴へのプレゼント用


 大空をとべない天使がとんでいる とべない天使は世渡りがうまい


 被災地でお祭り好きのあの人は ひとをすくって金魚もすくった


 一枚の仮面に変身してしまう仮面ライダーになにか救いを


 戦争をなくしたいなら全人類洗脳装置をそっと使って


 屋上にサラリーマンが立っている小さなビルに事務所はあった


 この世界のすべての愛の7割はある工場で作られている


 全人類洗脳装置の新しい組み立てキットをネットで買った


 頭部が球根になった人がいて水をかけると芽が生えてくる


 顕微鏡がならぶ奇妙な図書館で細胞レベルのきみに出会った


 人間が脚から畑に植えてあるサラリーマンが見わたすかぎり


 この俺のとぎすまされた感性は高速道路で開発された


 十万一馬力のニセのアトムをつくりハナの差で世界を征服したい


 路地裏でノストラダムスが死んでいる予言をいっぱいチョークで書いて


 ココナッツみたいなきみのズガイコツ カパっと割れて脳が飛び出す


 あの森に世界を吊ってる紐がある それを切ったら大地は落ちる




    マネキン人形


 夜も昼も探したすえにたくさんのきみと出会ったマネキン工場


 マネキンに恋した男 工場で愛に迷って鳴らすオカリナ


 何のためきみは時間を超えてくのマネキン人形製造工場


 マネキンのきみよ自分を疑うなアイデンティティーはヒトのタワゴト


 マネキンのきみと語れば夜深くぼくらの時代はただの空白


 工場の隅にマネキンのきみといてぼんやり見つめる夜明けは灰色


 マネキンのきみが空飛ぶこの国じゃ人間だって大量生産


 泣きながらマネキンのきみを分解し手足を持って夜明けを走ろう


 テーブルにマネキンのきみの頭を置き一緒に朝食ぼくらは共犯


 テーブルのマネキンのきみがうたってる胸の痛みをブルースというな


 ポケットに入れたマネキンのきみの掌(て)が握り拳となって震える


 ポケットの握り拳はきみの怒り 怒りの相手を探しに行こう


 向ける相手のない怒りの握り拳じぶんの身体を殴るしかない


 きみの身体を殴り壊すきみの拳ぼくの拳とかさなり震える


 バラバラのマネキンのきみよこの街にぼくの身体と一緒に散って


 ぼくの部屋の床に散らばるきみのからだ都市のかわいた時間と触れる


 ポケットの誰にも向けられぬ怒りよ荒川土手から遠く投げよう


 頭だけ残ったきみと語りあうポスターみたいな夢が欲しいと


 海岸へ行けばマネキンの握り拳が浜に無数にうちあげられてる





                         by aruka 2006.4.10

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