音楽が病気を治すとき

音楽でブドウの病気を退治する新技術をサン-カプレ-ドゥ-ボルドーのシャトー・ラ・グランジュ-クリネで実験中

シュド・ウエスト紙 2010年9月20日

クリスチアン・ブワソン記

ブドウの病気を退治するため65デシベルで音楽を流す箱に
信頼を寄せるミシェル・オリー 写真C.B.


音楽が鎮静効果を持つことは昔から知られているが、植物に対する薬としての効果のほうにはおそらく疑いのまなざしが向けられていた。そして病気とその治療が問題となると、もはや真面目に取ることはできない。

畑に植えたブドウの木には、生存を脅かす多くの敵がいる。そのため毒性のある化学物質をできるだけ使用せずに病気を退治する必要がある。2000年までは、有害でまったくの厄介者であるエスカという菌と闘うのにヒ素で処理していた。驚くべきことだが、まったくの事実である。現在は具体的な処理法が市場にまったく存在していないのに、ヒ素の使用は全面的に禁止されている状態である。

窒息による死

ところでエスカがブドウ畑に損害を与えるのは、穴という穴を塞いで窒息させ、土中の栄養素を汲み上げられなくすることによってブドウの木を枯れさせるからである。では、化学物質を用いた処理をせずにどうやってブドウ畑のこの病害を駆除すればよいのだろうか。

物理学者でありミュージシャンでもあるジョエル・ステルンナイメールがプロテオディ(タンパク質の合成に付随する周波数列)の研究をしているとき、攻撃する植物と攻撃される植物の間に対話が成り立つことを発見した。この技術は、攻撃側のタンパク質を無力化しつつ、攻撃される植物のタンパク質を刺激する音列として現われる。

話だけ聞くと頭がおかしくなったと思われるかもしれないが、そうではないらしい。パリにあるジェノディックの研究室が、この理論に十分な根拠があることを確認している。ジェノディックとは、基礎物理学と音楽と生物学が交差する新しい科学分野であり、ゲノムの発現に付随する波動を研究する。はっきり言うと、音楽は、植物に特定の作用を及ぼしうると考えられる。

タンパク質が合成されるとき、個々のアミノ酸が一連の量子的な信号を出し、それが各タンパク質に特有のメロディを構成する。実験室で複数のメロディの形態にされた音楽が、エスカにやられたブドウの木々の中央に設置された大きな箱から流される。

《驚くべき結果》

サン-カプレにあるラ・グランジュ-クリネというシャトーのオーナーであるミシェル・オリーは、この処理法のことを知り、自分の畑でこの装置を試してみたくなった。「エスカにやられた区画のまん中にこの音楽演奏装置を設置して1年になります。毎日19時きっかりに、音楽が65デシベルで7分間にわたって自動的に流れ始めます。病気退治にはそれで十分なのです」と彼は説明してくれた。音楽演奏箱は太陽電池パネルのおかげで太陽エネルギーを受け取るため、完全に自動化されている。

「結果は驚くべきものです。病気が広がるはずだと思われるでしょうが、ブドウの木の病気はもはや広がることはなく、新たな病気の発生もありませんでした」と、彼は感嘆の声をあげる。「来年からは私の畑全体に音楽が届くよう、より多くの音楽演奏箱を設置するつもりです」。今やラ・グランジュ-クリネでは、ブドウの病気治療に音楽が使われるようになっている。