トマト栽培における耐乾燥性の後成的促進:セネガルにおける野外実験

マンスール・ギュイエ、ウスマン・ギュイエ、フィトリー・ディアーニュ、ジャック=ジョエル・ウズィール、ペドロ・フェランディーズ、ジョエル・ステルンナイメール

要約:耐乾燥性タンパク質TAS14の合成をスケール共鳴により後成的に促進するという実験は以前に行なっているが、その効果を野外で栽培する数百株のトマトにおいて観察、評価する目的で、セネガルのダカール南部において、1996年7月から10月にかけて実験を行なった。1日に3分間音楽を聞かせることで、収穫が20倍になった。

1.以前に実験を何回か行ない(1、2、7)、トマトの耐乾燥性タンパク質TAS 14(4)の合成を後成的に促進することの利点を確認している。これは、このタンパク質のメロディーと音楽的に相同なメロディーについての研究から予想されたことである(3)。また、このタンパク質のメロディーの主題は、さまざまな熱ショックタンパク質のメロディーと相同であり、ヒトのACTH(副腎皮質刺激ホルモン)のメロディーの主題とは逆相同であることから、たまたまこのTAS 14のメロディーを耳にすると暑さに強くなることも予想された。ただし、浮腫または腎不全の人の場合は、このメロディーが害になることが予測される。ところで、ある一人が志願して以前にアフリカで実験したところによると、1日1回そのメロディーを聞くことで、水の摂取量が1週間にわたって自然と半分以下に減った(5)。このような先例があったため、レコフィ社からダカール近郊でトマト栽培を行ないたいという申し出がなされたとき、応じることにした(6〜8)。

2.1996年7月18日から21日にかけて、ダカールの南100 kmの乾燥地帯にある畑に、トマトの苗を数百本植えた。その畑は、面積が等しい隣接した2つの区画に分けた。この報告書では、以後、一方の区画を対照畑、他方の区画を音楽畑と呼ぶことにする。1日1回3分間、音楽畑の苗に、市販されている普通のラジカセを使ってTAS14のメロディーを聞かせた。ラジカセの操作者は、カセットを回し始めたときにその場を離れ、音楽が終わってから戻ってくるようにした。この操作は、音楽畑全体に音楽が聞こえるよう、1回ごとにラジカセを3mずつ移動させて、2回繰り返した。以前の実験から、予期される効果がわかっているため、対照畑には1日2回水をやったのに対し、音楽畑には水は1日1回にした。しかし音楽畑のほうには、音楽を聞かせた。日当たりは、2つの区画のほぼ全域で同じであった。しかし、苗が何本か影に隠れるところもあった。雨は少なく、気温は高かったが、そのいずれも当然同じになるようにした。

3.音楽を11日間聞かせた後の7月29日には、音楽畑の苗のほうが対照畑の苗に比べて生育の早いことがすでに明らかであった。そこで棒を立てて、苗の支えとした。この差は、その後もますます開いていった。8月20日の時点では、音楽畑のトマトは、1日に1回しか水を与えられていないにもかかわらず、1日に2回水を与えられているが音楽を聞かされていないトマトと比べて背丈がはるかに高く、しかもより密生しているように見えた。9月16日には、場所によって差はあるものの、肥料を与えられていないために当然ながら収穫が少ない対照畑と比べ、音楽畑のほうが収穫が断然多く、10〜20倍であった。音楽トマトは、熟れる前に大部分が萼のところに亀裂が入った。これは明らかに、水分が多すぎるトマトに太陽が照り付けて起こった“フランクフルト・ソーセージ”効果のためである。この効果は、われわれの中の3人(O.G.、F.D.、J.J.H.)が、より系統的な調査を10月8日に行なった際に確認された(8)が、その原因は音楽を聞かせすぎたことにあると思われる。

 対照畑のトマトは小さかった(平均で5〜7 cm)のに対し、音楽畑のトマトのほうは、明らかにそれよりも大きかった(8〜10 cm)。ところで、濃縮された尿素が運悪く何本かの株にまかれていたため、対照畑の株は枯れてしまった。ところが音楽畑の株は、早々と元気を取り戻した。株そのものは、音楽畑のほうが対照畑よりも2倍近く高くなった(音楽畑の株は1m70だったが、それぞれの株が20〜30個のトマトの重みでたわんでいたことを考慮すると、それ以上。対照畑の株は、90cm〜1m。ただし、音楽畑に最も近い列では1m20になり、音楽畑で対照畑と向かい合う位置にある列の株は1m40であった。このように、スピーカーの位置との関係で、高さの傾斜がはっきりと見られた)。対照畑の株は、パラパラと実をつけているだけである(平均して1株に3〜7個)。結局のところ、与えた水の量に対する収穫重量は、総合的に見て音楽畑のほうが対照畑の20倍以上になると思われる。さらに付け加えておくと、対照畑のトマトは多数の害虫にやられたが、音楽畑の株ははるかに元気がよく、被害を被ることはなかった。また、特定の効果のみが生じることが観察された。つまり、トマトだけに効果が生じたが、周囲の植生には変化は見られなかった。

 4.結論であるが、トマトの耐乾燥性タンパク質TAS14の合成を音楽で促進することに実際上のメリットがあることは、あまりに明らかである。この地の農民は、実験を開始した当初こそとても疑い深かったものの、今や、すぐにもこの方法を使うことを望んでいる。典型的な反応は、苗を植えるのを手伝った農業技術者のもので、最初はあざ笑うような態度をあからさまにしていたが、それでも10月8日には、「最初からそうなると思っていたんだ」とまで述べるに至った(8)。音楽を聞かせるというここで用いた方法は、祖先の人たちのノウハウであるが、その方法が突如として存在理由を(新たに)見い出したと言えるのではなかろうか?

>>> 『写真で見るセネガルの“音楽トマト”』も参照のこと。

参考文献

(1)M.ユルメール他、『タンパク質の生合成を後成的に制御する方法を応用した果実および野菜の栽培:野菜畑における実験報告』、1993年。

(2)J.M.ユベール、J.F.トレイヴォー、B.デュブロ、C.エグロフ、R.エグロフ、A.ラペール、J.ステルンナイメール、『タンパク質の生合成の後成的制御方法を応用したトマトの栽培:温室における実験報告』、1994年。

(3)J.ステルンナイメール、『スケール共鳴によりタンパク質の生合成を後成的に制御する方法』フランス特許出願第92 06765号、1992年。1995年7月13日に特許取得。

(4)J.A. Pintor-Toro, J.A. Godoy and J.M. Pardo, "Plant Molecular Biology", vol. 15, page 695 (1990)。

(5)J.ステルンナイメール、『タンパク質の音楽をよりよく使うためのヒント』。

(6)『シアンス=フロンティエール』、1996年4月号、p.2;1996年12月号、p.3。

(7)P.フェランディーズ、『音楽と植物』、ラ・ガランス・ヴワヤジューズ、1997年春号、p.25。

(8)J.−M.ウズィール、O.ギュイエ、F.ディアーニュ、『ビデオ(VHS)による報告』、第14回シアンス=フロンティエール祭(カヴァイヨン)のP.フェランディーズのコーナーで公開、1997年1月24日(その抜粋が、1997年5月10日、カナル・プリュスで放送された)。