タンパク質の生合成の後成的制御による果物および野菜の保存:
アボガドのポリガラクツロナーゼの発現の抑制

フランスワ・スネヤエール、ペドロ・フェランディーズ、ミシェル・レノマ、
ジョエル・ステルンナイメール

 果物や野菜の保存期間をどうやって長くするかは、農産物の流通における大きな問題のひとつである。すぐに思い付く簡単な解決法のひとつは、スケール共鳴(1)によって、熟成に関わる酵素(ペクチンエステラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、エチレンシンターゼ)の遺伝子発現を抑えることである。そこでわれわれは、それをテストして方法を確立するため、以下の実験を行なった。すなわち、1997年9月1日から14日まで、とても固いアボガド6個を、3個ずつに分けて、ソッセイ(オワーズ)にある倉庫の2つの箱の中に入れた。毎日正午、第1の箱に入れた3個に対し、普通のラジカセを使って、アボガドのポリガラクツロナーゼを抑制する音楽を聞かせた。このメロディーは長さが1分50秒あるが、それを2回繰り返した。第1の箱から10メートルほど離れたところには別の箱を置き、その中に比較対照用のアボガドを3個入れた。こちらのアボガドには、まったく音楽を聞かせなかった。この季節は気温が適度であり、湿度はもちろん2つのロットで同じになるようにした。

 結果は以下のようであった。比較対照用のアボガドは4日(木)から熟れ始めたが、音楽を聞かせた方のアボガドは、固いままであった。後者は、8日になってようやく1個が熟れ始めたのに対し、比較用のアボガドのほうは、既に熟れてしまっていた。実験を止めた14日には、比較用の3個と、音楽を聞かせたうちの1個が腐っていたが、残りの2個はちょうどよい頃合であった。その2個を切ってみると、柔らかくておいしそうに見えた。そこで実際に食べてみたところ、確かにおいしかった。

アボガドを切ってみると
(左:音楽あり、右:音楽なし)

 結論として、音楽を聞かせたアボガドは、保存期間が2倍以上になった(音楽を聞かせないと、スーパーマーケットで購入してから5〜6日で熟れるのに対し、熟れるまでの時間が12〜13日になる)。2本の熟成曲線(下図)の差は、約1週間である。

参考文献

(1)ジョエル・ステルンナイメール、『スケール共鳴によるタンパク質の生合成の後成的制御法』、フランス国特許出願第92 06765号(1992年)、1995年7月13日に特許権取得。