研修医レポート


 リハビリテーション科の研修では、リハビリに必要な複数の科をまわります。リハビリ医は、各科の疾患を診る必要があり、さらに、脳卒中の再発予防や生活習慣病の基本的管理ができなければならないからです。もちろん、急変にも対応できなければなりません。いろいろと内容を述べるよりも、体験談を書いた方が役立つと思いますので、ここに少しずつ書き込んでいきたいと思います。

研修医レポート〜整形外科編

 新鮮な話題はこれから研修医の皆さんが書いてくれると思いますが、まずは、古い研修医の私から。
整形外科というと、私の父親の専門でしたが、父は生前よく「鉋(かんな)以外の大工道具は全部使うよ」と言っていました。イメージとしても、体力勝負のような印象をもっていましたが、私の研修医時代のオーベン(肩の小川清久先生)は、まず、「文献検索の方法」を教えてくれました(当時はIndex Medicus)。そして、ある疾患(たとえば、習慣性肩関節脱臼など)について、Citation Index, Excerpta Medica 等も駆使して、徹底的に網羅的に文献を検索する方法を学びました。受け持ち患者の疾患について、このような方法で古い文献から最新の文献までしっかりと学ぶことを最初に教えて頂いたことは、その後の仕事の上でも、大変有益でした。最近は、Medlineがインターネットで無料で検索できますから、楽になったものだと思います。しかし、基本を知らないと検索がいいかげんになって、網羅できていないような気がしています。
 手術では、第1術者も第2術者も倒れたら、おまえが手術を続けるんだ、と言われて(現実にそんなことはありえませんが)、術式をしっかりと予習して望みました。糸結びは基本ですから、よくよく練習しておきましょう。オーベンは手術中も、最新の術式のポイントや理論的背景、治療成績の文献上のデータなどについて、よく説明してくれました。「おまえはリハビリの研修医だから、ここまで教えるのは無駄なんだけどなぁ〜」と言いながら、整形外科学がいかにlogicalで、手術もlogicに基づいていることを教えてくれました。感謝しています。
 logic といえば、やはりカンファレンスが最も勉強になったと思います。同じ病気の同じ状態でも、対立する治療法があり、手術をすべきか?、術式は?などについて、侃々諤々の議論がなされていました。当然、研修医がプレゼンテーションし、オーベンが決めた治療方針を自分で決めたごとくに、所見と方針決定の理由を説明するわけです。そのときに、治療方針がおかしい!など集中砲火をあびることもしばしばですが、オーベンが口を出すまで、反論するように心がけました。もちろん、十分に反論できるまでに勉強するのは大変ですし、短い研修期間では、そこまではいきません。ただ、網羅的に文献を読んでいれば、『論点』を知ることができ、それがその後のリハビリ医の仕事でも生きてきますので、やはりベストを尽くすべきだと思います。
 簡単なブロック注射、縫合、創傷の処置、脱臼の整復、関節穿刺などについては、研修期間中に覚えられます。もちろん、レントゲン所見、検査の手技についても覚えられますが、研修中に基本手技と考え方を吸収したら、あとは3年目以降、リハビリ科の主治医として仕事をする中で、実践的な実力がついてくるものと思います。ちなみに、腰椎穿刺は神経内科でマスターしていましたが、どんなに変形があっても穿刺を成功させるだけの自信がついたのは、ミエロをやってからでした。レントゲンの読影は、リハビリ医としても常に必要ですので、整形外科の研修中に基礎をしっかりと学びましょう。
 私の場合は整形外科を大学で4か月、一般病院で4か月研修しました。一般病院では、抜釘や嵌入爪の手術、love法の一部、弾発指、膝蓋骨骨折などで、簡単な手技だけは相当やらせて頂きました。ただ、リハビリの本道(?)(*注)を行く限り、手術は2度とやりませんので、必ずしもこのあたりまで研修で行う必要はないと思います。
 それでは、また思い出したら、追加を書きます。(D)
  *注:北米神経科学学会には入っても、整形外科学会に入らない勇気がある(^_^;)リハビリ医、という意味です。

研修医レポート〜神経内科編

研修医レポート〜救急部編

研修医レポート〜循環器内科編

研修医レポート〜リハビリ科編


兵庫医科大学リハビリテーション医学
〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1-1
Tel0798-45-6881
Fax0798-45-6948