リハビリテーションに転科したワケ


 リハビリテーション医の中には、他科から転科された方が沢山います。また、もともとリハビリ医になりたかったのに、大学にはリハビリ科がないため、やむを得ずいったん整形外科にはいった方もいます。もちろん、研修医からリハビリテーション科にはいる人も最近は多くなりました。いろいろと進路を迷うときに参考になるのが、リハビリ医になった人の話だと思いますので、このページを作りました。順次、追加しますが、とりあえずは私の話から・・・。

リハビリテーション医になったワケ

 私は、ポリクリの頃、精神科と外科系の何かとリハビリ科のいずれにするかを迷っていました。手術のように手を動かすことは大変好きでしたが、手が器用だからといって外科医になるな、と外科の先生が講義しているのを聞いて、もっともだ、と考え早々にやめました。手術はあくまでも手段であって、目的ではないというわけです。
 リハビリについては、多様な疾患を「動きの障害」という視点で横割りに診ることや、治療学としての側面が大きいことや、心理面を重視することや、全人的包括的アプローチなど、とても気に入っていましたが、当時はベンチャー的な科だという意識あって決断できませんでした。実は、最終的には精神科にかなり傾いていたのですが、精神科の知人から、結局分裂病が主たる対象疾患になるし、新しい分野に挑戦して損することは絶対にないと思う、と言われて、結局、締切間際にリハビリ科に決定しました。
 臓器別の医学も重要ですが、いろんな臓器の疾患からくる(運動)障害について、まとめて治療しようという診療科の医師がいないことは、患者さんのためにならない、とその頃から強く思っていました。あらゆる治療を行っても、障害が残る病気は山ほどあり、単に「後遺症です。残念でした。」と言われては、患者さんは身も蓋もないと感じたからです。たとえば、脊椎疾患と膝関節疾患と心疾患と脳卒中を合併した患者さんが歩けないとき、「歩きたい」という患者さんの希望に責任をもって医学的に対応する医者になりたかったわけです。目線が、権威ある臓器別医学ではなくて、患者さんや家族と同じであることや、患者さんの行動そのものを観察して治療法を考えること、全人的復権をはかるという方向性に惹かれたのでした。また、障害を治療する新しい方法を研究したいという動機も強くありました。
 私がリハビリ科に入局するとき、ある先輩の医者が反対しました。海のものとも山のものともわからないところにはいって、苦労するより、伝統医学の中で能力を生かしなさい、というわけです。そのとき、上記のような主張をしても納得してもらえませんでしたが、その先輩が地域の病院長になってから、言われました。「麻痺が診られて、裝具を処方でき、予後を予測でき、理学療法士に指示ができ、尿失禁の治療ができ、褥瘡の処置ができ、生活習慣病の管理ができ、在宅介護を家族に指導でき、障害診断書が書ける医者はどこかにいないかね?内科医も整形外科医も『本来の仕事じゃない』と嫌がるんだよ・・・。地域医療の中で必要とされる医者がリハビリ医であることがよくわかった。」と。
 今や、リハビリテーション科はベンチャーではなく、引く手あまたの病院経営の切り札的存在にもなっています。医療があるべき姿になっていく過程で、若い頃から思い切って信念を貫いてよかった、と思っています。

リハビリテーションに転科したワケ

リハビリテーションの研修医になったワケ


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