平衡軌道制御仮説 Equilibrium trajectory hypothesis

仮想軌道制御仮説ともいわれますが、いろいろな理論の総称になっています。
ひとことでいえば、見えている運動=実現軌道を見えていない仮想軌道でコントロールしているというものです。そして、仮想軌道は運動指令を直接反映したものであるとされています。

BizziやHoganなどのMIT groupやFeldmanらによれば、仮想軌道は実現軌道に近いもので、実現軌道が仮想軌道のあとを追うように生成される、つまり実現軌道が馬で仮想軌道が人参のような関係になっているとされています(図右(A))。

Bizziたちは、感覚神経を切断したサルでも軌道が維持されることから、仮想軌道が主動筋と拮抗筋のα運動ニューロンの活動特性のつりあいの位置で制御されているというαモデルを主張しています。

それに対して、 Feldmanたちは、運動ニューロンプールの発火閾値が目標とする筋長(λ)を反映しているとし、脊髄反射の影響を含めたλというパラメータによって軌道が制御されているというλモデルを主張しています。いずれの説も、仮想軌道が単純で脳は計画しやすく、複雑な逆ダイナミクスなどの計算を必要としない、と言っている点で共通しています。

一方、Latashはλモデルを基本としながら、運動中のスティフネスを測定する実験結果をもとに、平衡軌道は実現軌道とは違って、(特に速い運動では)N型をしていること、そしてそれが拮抗筋のλの軌道(つまり運動指令)がN型をしていることによって説明できるという説を主張しています(図右(B))。

上記のうち、仮想軌道が運動指令に近くしかも単純な形であるという図(A)の説は、長年主流だったわけですが、それを多関節の随意運動での平衡軌道を求めることによって否定してしまったのが、Gomi & KawatoのScience の論文だったのです。(つづく)

λmodelによる筋電パターンのシミュレーション

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λmodelシミュレーション 55kB

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