<御質問とお答え> |
医療相談:脳挫傷後の症状について教えて下さい。(高次脳機能障害) 医療相談:転院先について困っています。(リハビリ適応) 看護師より:脳外傷後のリハビリ中の精神科転院について。(通過症候群) 看護師より:リハビリ病院の処方 リハ医より:専門医への道 リハ病院経営者より:リハビリ過疎地域でのリハビリ医療の展開 リハ病院経営者より:リハビリ医の確保の方法 |
分類 |
内 容
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医 療 相 談 |
頂いた御質問 道免 先生 初めまして、●●と申します。 このたび、私の母の病状の件で先生のご助言をいただければと思い、メールさせていただきました。 母(64歳)は、2年前に交通事故に遭い、脳挫傷・クモ膜下出血・頭蓋骨骨折の重傷を負いました。 病院に運ばれ、手術を行っていただき一命はとりとめましたが、その後約1年ほど意識不明のまま入院しておりました。脳の活性化の投薬などをしていただき、7か月前から意識も少しですがはっきりし、今は自宅に帰って週2回・1時間ほどのリハビリをしながら暮らしております。私自身が東京で働いている為週末しか実家に帰れず、平日は父が主に介護に携わっているのですが、下記症状があるため、父自身も困惑し精神的疲労が重なっています。何か改善できる方法はないかと思い、道免先生にご相談させていただきました。 1)不眠 外出が出来ない為か、睡眠リズムが崩れ、22時〜7時まで2時間おきに目を覚まし、奇声をあげたり食べ物をほしがったりするそのあと昼間に2時間ほどの睡眠をとる 2)記憶 昔の記憶しか覚えていないようで、父や私、兄などが自分の家族とわかっていないような気がします。また、あまり交流のなかった親戚(すでに死去)のことを話し出したりします。 3)耳が聞こえない 特に右の耳がきこえないようで、耳元で話しても理解できていない 4)言語障害 舌があまりうまくまわらないのか、言っていることが聞き取れないことがある 5)満腹感がない 食事をきちんととっていても、1〜2時間経つと「おなかがすいた」といって食べ物をほしがる 6)肥満 家族と同じ食事内容ですが、ほぼ毎日ベットか車椅子に座っている為、かなり肥満してきました。食事量(カロリー)を減らすべきなのでしょうか。 ざっとした症状ですが、これだけをみると痴呆症に大変似ていると思います。どのように対処し、治療してやればいいのか、はっきりしていません。母もさることながら、そばについている父も若くはないのでほんの少しでも健常者と同じような日常生活に近づける方法があればどんな小さなことでも、皆で取り組んでいきたいと考えております。お忙しい中恐縮ですが、ぜひご助言のほどお願い申し上げます。 |
HPでのお答え ●●様 道免@リハビリ科医です。 メール拝見致しました。頂いた情報から考えますと、 (1)失語症 (2)記憶障害 (3)痴呆 (4)高次脳機能障害(前頭葉障害、注意障害等) などが考えられます。 ▲年齢や事故からの期間を考えますと、大きな回復は難しいかと思いますが、症状を整理すること、そして、日常生活で起こる問題が、医学的にどんな病態によって生じているのかを「理解」することは、大変重要です。特に、「困惑」や「精神的疲労」が重なっているとのことですが、それは御家族として、症状をどう理解して、どう対応すれば良いかがわからないことが原因になっています。つまり、症状だから仕方ないと放置して良いのか、何か対応次第では改善させることができるのかがわからないために、介護の方が何とかしなければ、と常にプレッシャーを受けられている状況かと思います。 ▲やはり、高次脳機能障害に詳しい医療機関で、一通りの評価をすることが大切です。そして、日常の一つ一つの行動が、どのような障害が原因で起こるのかを分析してもらいます。対応できない問題も多いですが、中には、御家族が一生懸命になるほど逆効果であったり、ちょっとした対応で変化する場合もあります。これは、教科書には具体的には書いてありませんので、高次脳機能障害と目の前の症状との関係を、一つ一つ「解釈」して、対応を工夫していくしか方法はないと思います。 ▲睡眠のリズムの障害については、基本的には日中はベッドから離し、車椅子の散歩等でも外出してリズムを作ることが重要です。睡眠薬を使う場合も多いですが、その他の行動に対する薬と合わせて、高次脳機能障害に詳しい精神科医に処方して頂くのがベストです。 ▲事故前の一定期間の記憶については、とりあえずは問題にせずに、忘れていることは再度教えるようにしましょう。大切なのは、今の記憶障害がどうか、ということです。記憶には、3つの段階(登録→保持→再生)があり、再生だけができない場合には、「今朝こんなことあったよね」と言えば、「あっ、そうそう」と再度認識できるはずです。これを「再認」と言います。再認できるようであれば、それをくり返すことが大切です。登録の段階から障害されている場合でも、日常の記憶訓練は実施しても良いと思います。 ▲食べ物と肥満の件は、何とか解決しなければならない問題です。痴呆の場合、今から作りましょう、と言って待っているうちに忘れたり、注意を別のことに向けると忘れる場合があるようです。また、間食が避けられない場合、もともとその分を計算して、3食を少なめにして、一定カロリーを「分食」にすると良いでしょう。 ▲診断をしたわけではありませんので、対応も間違っている可能性もあります。あくまでも参考ということでお願い致します。やはり、何よりも、症状の評価、そしてその理解が第一だと思います。そのような医療機関がお近くにありますでしょうか? ▲また、お父様の疲労も心配ですので、介護保険を上手に利用して、息抜きをされることをお勧めします。介護の側に疲労がたまっていますと、適切な対応もできなくなってしまいます。どうしても、御本人の障害を思う余り遠慮してしまうことがありますが、当然のこととして交代で休息を取られることをお勧めします。 ▲介護保険は65歳からですが、合併する病気によっては、利用が可能です。現在、すでに御利用なさっていますでしょうか? 以上、参考になれば幸いです。 |
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頂いた御返事 道免 先生 早速のご返信、本当にありがとうございます。今までかかりつけの病院から「時間をかけて徐々に回復するのを待つしかない」としかいわれなかった為、具体的に何をすれば良いのか皆わからずにおりました。「高次脳機能障害」という言葉も今回先生にお伺いして初めて知り、是非そういった側面からも母に診断を受けてもらいたいと思います。 まずは先生のホームぺージを参考にさせていただき、家族で協力して病院を探してまいりたいと思います。このたびは急で、あまり的を得ない質問に対し、このような懇切丁寧なご助言をいただけましたこと、本当に深く感謝しております。本当にありがとうございました。^^^このページのトップに戻る^^^ |
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医 療 相 談 |
頂いた御質問 道免先生、はじめまして。●●と申します。私の母親(78歳)のことでご相談があります。2か月前に脳梗塞で倒れ、点滴治療などが終了後、転院先を探すように主治医に言われました。リハビリはごく簡単なマッサージのような形しかしていませんので、リハビリの専門病院を探そうとしましたが、なにぶん急なことでどの病院に行ったら良いかわかりません。主治医に相談したところ、心肥大があり、痴呆もきているので、リハビリ病院に行っても意味がないと言われました。家に連れて帰るか、老人病院を探すかのどちらかだというのです。主治医が知っているという老人病院を見てきましたが、とても入院させる気にはなれないような病院でした。まだ、左手足に麻痺が残っていて歩くこともできません。どうしたら良いのか家族一同途方にくれています。アドバイスをお願い致します。 |
HPでのお答え 御心配のこととお察し申し上げます。リハビリの流れ、良いリハビリ病院の選び方はこのホームページ内にも掲載してありますので、是非お読み下さい。内科的治療が終わった後、麻痺等が残っている場合、発症後3か月以内であれば、「回復期リハビリテーション病棟」がある病院に転院します。そこで、理学療法、作業療法、装具療法などによって、機能回復をめざします。できれば、リハビリ専門医がいる病院の方が良いと思います。そこで2〜3か月のリハビリを受けながら、家屋評価の後に改造案を提示してもらい、介護保険や身体障害者手帳を申請して、自宅復帰をめざします。心肥大や痴呆があるということによって、リハビリは進みにくくはなりますが、リハビリ治療を受けられない理由にはなりません。もちろん、心臓に負担にならないようなリハビリ方法を工夫する必要はあります。ただ、環境の変化が痴呆を進行させることもありますので、そのあたりはメリットとデメリットをよく検討すべきです。左手足に麻痺がある場合、左側に注意がいかなくなる「左半側空間無視」などを合併している場合もあり、やはり専門医の診断が必要でしょう。少なくとも、現状でリハビリを全くしない病院に移った場合、寝たきりの可能性が大きいですので、何らかのリハビリがある病院を選択すべきだと思います。 ご病気になられて、ずっと付き添っておられたご様子で、今が一番疲れが出るときかと思います。余裕をもって介護するためにも、介護のご家族の休息も大切です。何卒、御自愛下さいますように。不明の点はまたご連絡下さい。^^^このページのトップに戻る^^^ |
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リハビリ病棟看護師より | 頂いた御質問 ●●県のリハビリ病院の看護師です。脳挫傷の患者様の事で相談致したくメール致しました。 ●●歳の女性です。数ヶ月前に階段から落ち脳挫傷と診断。急性期病院を経て当回復期リハ病棟に入院(対象内)。急性期病院でも体幹ベルトで抑制されていた状態でした。ADLは特に問題なく、歩行も出来る状態。認知面はやはり脳挫傷の典型的な症状です。先月末頃から、徘徊、看護師に暴力を振るうなどのため、今月に入り精神科に入院されました。回復期でのリハは1ヵ月足らずでした。 先日、精神科の医師よりその患者様が自宅に外泊され、家族とともに山に遊びに行った旨聞き、やはり精神科の選択肢が正しかったのか自問しています。昨年、道免先生の高次脳機能障害の看護講演会で「脳外傷の患者は十分な理解と環境調整で無意味な精神科入院は避けられる」と言われていた様に思います。当院もこれで数名の方が精神科に入院する結果となっています。 今後、こういった入院の受け入れをどうすべきか検討する事になりそうで、個人的には複雑な思いをしています。何かアドバイスが有りましたらお願い致します。 これからも先生の御活躍をご期待致しております。 (★プライバシー保護のため、設定は変えてあります) |
HPでのお答え お問い合わせありがとうございます。 脳外傷後に長期的に意識障害が遷延していた方で、興奮、徘徊、暴力などの「通過症候群」の時期を通して、その後見違えるように回復される方が少なからずいらっしゃいます。最近のリハビリの傾向として、早期からリハビリ病院に入院できるようになったことは良いのですが、リハビリ病院に入院した途端にこの患者さんのような状態になり、不幸にも「強制退院」になってしまう場合があるようです。ご本人は後に回復されたときには、そのときのことを全く覚えておられないのが通常です。したがって、回復の徴候と考えれば、しばらくは精神科医師へのコンサルトした上で薬物療法でしのぎ、入院を継続できることが望ましいと思います。ただ、現実問題として難しい場合、一時的な精神科病院への入院、あるいは一時自宅退院、外泊という選択になることもあります。このような症状に詳しい精神科の医師と密接な連携をとられると、ご家族も安心されると思いますので、ご検討下さい。リハビリ病棟のプロとして大切なことは、「通過症候群」の状態であって悲観すべきものではないこと、否定的に問題視するのではなく、あらゆる可能性を考えて対策を検討することです。気分によっては暴力が出てしまうことがわかっているのであれば、それを予測して怪我をしないように対応することがプロです(もちろん現実的には難しい場合もあります)。そして、リハビリ医療の問題点の一つとして解決できる病院に育つことができれば本物です。ただ、他の患者さんに影響があったり、離院してしまう場合には、入院継続が難しい場合もあります。 どうか高いレベルのリハビリテーション医療のために頑張って下さい。^^^このページのトップに戻る^^^ |
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リハビリ病棟看護師より | 頂いた御質問 リハビリ病院の看護師ですが、リハビリを十分理解していただける医師が少ない病院での限界を強く感じながら看護に携わっています。一つ質問させていただけないでしょうか? 急性期病院から転院された場合、入院時に転院元の処方を即一旦中止します。これについて病棟担当医師(リハビリ科医師ではありません)は「不要な処方は切っていき様子を見る」と言われました。中には持参処方が終了した時点でOFFとなるケースも有ります。看護師としては状態把握できないままに観察しなくて行けなくなります。サマリーと患者様の状態が違ってきます。 医師の見解と考えれば良いのか非常に現場は混乱します。道免先生の見解をお聞かせ下さいませ。 道免先生のHPを見させていただき、看護師向けの内容も本当に参考にさせていただきました。これからも楽しみに見させていただきます。 |
HPでのお答え お問い合わせありがとうございます。「不要な薬を処方しない」という見解に間違いはありません。ただ、前医からの処方を全て中止できることはあまりないはずです。処方を中止する場合には、なぜ中止するのか、中止しても影響がないのか、前医は不要な薬をなぜ処方したのか、の全てを患者さんと病棟看護師に説明しなければなりません。本当に不要な薬かどうか、逆に、必要な薬が処方されていない理由は何か、などはやはり慎重に医師同士が連絡を取り合って調整すべきだと思います。結果として、本当に必要な薬だけが処方されれば、患者さんにとってもベストなわけです。 まさかとは思いますが、以下のようなことは心配されます。回復期リハビリ病棟はご存じの通り『包括医療』になっています。薬物や検査については全て包括に含まれますので、高価な薬が多い場合には病院側の「コスト」になります。コストを考慮して、一律に薬を中止するのだとしたら、問題だと思います。包括というのは、定額よりも医療費がかからない場合(黒字)も、かかる場合(赤字)もあって、平均値としての額ですので、処方すべき薬はコストがかかっても処方し、中止すべき薬は中止する、という方針でなければなりません。 担当医とよく相談して、今後、よりよき医療を実践できるように頑張って下さい。^^^このページのトップに戻る^^^ |
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リハビリ科医師より | 頂いた御質問 道免先生、唐突なメールにて失礼いたします。私は、●●県にてリハビリ病棟で勤務しております●●と申します。 医学部卒業後は、研究をしたいと考えながらも挫折、所属した医局でもつらい思いをして、結局2転3転して、今の職場でリハビリ医として働くようになりました。 本当は、一内科医として極めたいと思っていましたが、なかなかそういう環境もなく、自身の能力も及ばず、リハビリ医として一生をまっとうしようと考えるようになりました。 今の職場には、まったく不満がないのですが、子供の教育のことを考えると、このような僻地に住んでいることは非常に不利だと思っていますので、いずれは東京の近県に移りたいとおもっています。また、リハビリ指導医のもと、リハビリ認定医もとってみたいと思っておりますが、当院にかつて在籍したリハビリ指導医も他界されて不在な状況です。 認定医については、内科認定医を取らせてもらえなかったこともあり、希望はつよいのですが、そのメリットデメリットがよくわかりません。あまり丈夫では無い方ですので、体力的にきつい状況だけはさけたいと思っています。 あえて他の病院に移ることまでして目指すべきか。いまだに迷っています。認定医をとるべきかとらざるべきか、アドバイスをいただけたら幸いです。 |
HPでのお答え お問い合わせありがとうございます。一つの目標としてリハビリテーション科専門医をめざすメリットは大きいのですが、臨床認定医については何ともいえません。いわゆる就職時に準ライセンスのように受取ってくれる病院はあるかもしれませんが、それを条件にできるほどリハビリ医の数は充足していません。大切なことは、現実にリハビリ医療を支える能力だと思いますし、リハビリ医の希少さを考えれば、資格がなくても臨床能力をつければ十分地域医療に貢献できます。ですから、資格をとるとらないにかかわりなく、今の病院でリハビリ医としての実力がついているかどうかをお考えになるべきでしょう。ただし、通常はリハビリ(専門)医のもとで指導を受けながら勤務することが、リハビリ医の実力をつける最善の手段です。その上でリハビリ固有の知識を充実させて、数年経過すれば、自然に専門医試験を受験する力がついてくるはずです。したがって、今の病院の事情が許すようでしたら、専門医のもとでの勤務も検討の余地があるでしょう。勤務先の選択には、指導能力のある専門医がいるかどうかが最も重要になります。具体的に候補があれば、わかる範囲で私信でお知らせ致します。以上、参考になれば幸いです。^^^このページのトップに戻る^^^ |
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地 域 医 療 地 |
頂いた御質問(病院経営者より) 道免先生 初めまして。突然のメール失礼いたします。私は■■リハビリ病院院長の●●●●と申します。今朝何気なく厚生労働省のホームページなどを見ているうちに、貴校の教室のホームページにアクセスさせていただきました。関西のリハビリテーション専門医が少ないのは従来承知致しておりましたが、それに対しプロジェクトを計画され、熱心に取り組んでおられることを知り、大変感服いたしました。 (中略) 当院は、●●県●●町にあります。先生も御承知のことかと思いますが、●●県は、リハビリテーション医療に関しては全国的にもfar behindな県であり、データからしましても、人口10万人に対するリハビリテーション専門医はworstの状態ですので、どれほど●●県のリハビリテーションの状況と、リハビリテーション教育の状況が劣悪な状況かお判りいただけるものと思います。(中略) 先述のとおり、特にこの地域ではリハビリテーション医療の提供が未だに不足していること、その治療を求められる患者とリハビリテーション医療の需要と供給のバランスが悪いこと、行政レベルでの取り組みも行われているものの、あまりにも行動が遅いこと、リハビリテーション研修施設がほとんどないこと、等の問題があり、少しでも何らかの布石にならないかと考え、次の3〜5年を見越した上でリハビリ病棟を建設中です。(中略) しかし、残念なことに、●●大学にもリハビリテーション科には専門医は存在せず研修施設でないことより、認定臨床医も受験資格が無い厳しい状況です。何らかの打開策を検討しなければと思うのですが良いアイデアが浮かびません。(中略) 貴科の考えておられるプロジェクトに大きく賛同するとともに、今後の教室の発展を祈念いたします。また、良きアドバイスがあれば御教示ください。 |
HPでのお答えとさらにお返事 ●●先生 道免和久@リハビリテーション医です。大変丁寧なメールを頂き、ありがとうございます。また、私のプロジェクトに御理解を頂き、一同勇気づけられ、更に使命感を強くさせて頂いた次第です。 先生の誠実なメールから感じましたことは、同じように切実にリハビリ医療の必要性を感じながら、人材(医師)の確保が全くできない病院が数多くあり、これは正常な状況ではないということです。本当に心から医師派遣を訴える経営者が多くいらっしゃいます。しかし、リハビリについては、依頼する大学すらないため、地域外の大学に依頼に奔走しておられるようです。需要と供給の関係、つまり、地域医療と医学教育・大学での人材育成の関係が、限度を越えて歪になっているということです。 朝日新聞に書いた記事の主旨は、本当は全国の大学に時代の要請、地域医療のニーズを感じ取って変わって欲しい、ということです。 他科の医師がリハビリ科をかけもちする時代でないことは、多くの病院経営者も気付いておられ、地域医療においてはある程度、リハビリ医療はリハビリ医がマネージメントすることが常識になってきたと思います。早く、リハビリにプロパーの医者を育成する大学医局を充実させるか、大学外での育成システムを作らなければならないと考えております。 (中略)私は、リハビリテーション医療啓発のためなら、どこへでも講演には出かけております。医師だけを対象にするのではなく、コメディカルや看護師等も対象にするのがポイントです。(中略)他にも、いろいろとアイデアはございますので、御検討、御相談下さい。よろしくお願い致します。 道免 和久助教授 御机下 ご多忙なところ早々に丁重なお返事を賜り、甚だ恐縮に存じます。大変勇気付けられる数々の貴重なご意見をいただき、当院の職員にも報告をさせていただきました。 私の方針と致しまして、回復期の開設は、リハ医の不足、セラピストの不足、リハ看護を周知している看護師の不足から考えても、当院ではまだお迎えをする患者さんに対し、充分なリハ医療を提供できる器ではないと考えております。まさしく先生のおっしゃるリハビリバブルに迷わされること無く、まず、(1)向上心と探究心の高いセラピストと、リハに精通した看護師の教育、(2)総合リハ施設の創設、(3)このリハ医療の枯れた●●の土地に名実ともにpioneerとして種を蒔き、花を開かせていただけるリハビリテーション専門医の招聘、(4)1年〜1年半にかけて地域でのニーズを見極め、次のプロジェクトとしての回復期の開設計画、という方向性で考えており、実際当院ではまだまだ不十分ではありますが、極力病棟生活を主体として、看護師の情報を中心に看護師とセラピストがそれぞれ連絡ファイルを日々作成し、何かあればその患者さんのファイルに書き込みながら病棟と訓練室での違いなどを模索し、治療や福祉用具の適用の可否や、MSWを絡めながら1日も早い在宅への復帰を目標として、所謂行政上やcommercial baseの回復期ではなく、真の回復期病棟にするように職員にも理解してもらうべく努力をしております。この地は、まずsoftwareやhardwareのみでなく、地域と密接に結びついたリハビリテーション医療に飢えた地域でもあり、その整備の充足が近未来の課題と解釈いたしております。 先生のお手紙に、医師のみでなく他のcomedicalとのinterdisciplinaryな関わりを持ちながら、リハビリテーション医療を進めていくことは、僭越ながら大いに賛同に値することです。出来れば、一度先生にも御足労を賜り、御講演を賜りたいと考えており、又、同時にこの地域の環境を視察いただき、先生の御指導を賜りたく思います。(中略)今後とも御指導、御鞭撻の程、重ね重ね宜しく御願い申し上げます。 追伸:ちなみに先生が立ち上げておられるプロジェクトは、我々も参加出来るのでしょうか?参加出来るとするならば、どのような手続きを取らなければならないのでしょうか?御教示いただければ幸いです。^^^このページのトップに戻る^^^ |
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地 域 医 療 |
頂いた御質問 道免先生、関西リハビリプロジェクトの皆様。 私は●●市で、リハビリ病院(120床)を経営しています。朝日新聞記事をきっかけにホームページを拝見し、皆様の活発な活動に感銘を受けました。私どもの病院は今年で開設後10年を迎えますが、これまでは常勤のリハビリ医を置かずに、●●科の医師にリハビリ病棟を担当させていました。しかし、今のリハビリ医療は、昔のような片手間ではいけないと強く感じており、リハビリを専業とする医師をこの数年探し続けています。しかし、雑誌の募集には反応がなく、●●大学にも●●大学にも、リハビリ科がありません。リハビリ科の標榜があっても、実際には●●科の医師なので、本物のリハビリ医療としての質の確保をしたい当院の方針には合いません。(中略)リハビリ医を確保する方法などについて、アドバイスを頂けましたら幸いです。よろしくお願いします。 |
HPでのお答え プロジェクトに賛同して頂き、感謝申し上げます。同じ御主旨のメールを月に1〜2通は頂いており、切実な問題であることは私たちも充分に認識しております。地域医療におけるリハビリ医の需要と、それを育てる教育機関での供給のバランスがとれていない、というよりも、全く育成のシステムすらないことに私も危惧を感じております。朝日新聞記事を書いたきっかけの一つは、全国の大学にリハビリ科の整備の必要性を訴えるためでした。 さて、お問い合わせの件ですが、残念ながら●●市の近くでリハビリ医の育成機関は存じ上げません。個別のリハビリ医にあたるか、少しでも興味をもった医師をまず確保して頂き、その先生の育成を私達のプロジェクトでお手伝いする方法も考えられます。例えば、月に1回(土曜日)の勉強会と月に1回(平日夜)の事例検討会に参加して頂き、私達が運営するメーリングリスト(rehab-loungeやneuro-reha)に参加して頂くだけでも、かなりリハビリマインドが育つのではないかと思います。また、病院や地域でのリハビリ医療の基盤を充実させるために、研究会などを主体的に開いて頂くことも重要です。お役に立てるようでしたら、講演等でお手伝いすることもできますので、ご相談下さい。^^^このページのトップに戻る^^^ |