朝日新聞<私の視点>2004年4月14日(水曜日)
◆脳卒中医療 リハビリ専門医増員が急務
兵庫医科大学リハビリテーション医学 道免和久

【記事に対する反響】
朝日新聞2004年5月7日『声』欄
リハビリ医療充実を図って
京都府の主婦の方の声です。現代のリハビリ医療の視点を理解して下さり、感謝申し上げます。この他にも直接の反響を多数頂いております。
(お名前は伏せてありますが、差し支えなければ掲載いたしますので、ご連絡下さい。)
【記事の背景】
 リハビリテーション医療の特徴に、自分がリハビリが必要な立場になったときにはじめて、その必要性がわかる、ということがあります。リハビリ医療は「あなたのいのちに歳を加える(adding years to life)のではなく、あなたの歳にいのちを加える(adding life to years)」医療と言われていますが、その本当の価値は遺伝子治療などの先端医療のように理解されることはありませんでした。あくまでも、臓器別の縦割りの伝統医学が注目され、人の力を結集して人を治すという別の意味での先端医療であるリハビリ医療はマイナーな分野でした。今でもリハビリ科が独立して存在しない大学医学部が大勢を占めています。
 長嶋茂雄氏の脳梗塞のニュースは、多くの国民にとってショックだったと思います。そして、氏に対して自分の身内のように感情移入する中で、急性期の内科的治療が終わった後、いったいこれからどんな医療を受けるのだろう、と関心をもたれた方も多いことでしょう。週刊誌各紙(AERA、女性セブン、週刊現代等)からの取材もその点についてのお尋ねが主でした。
まさにその医療がこれまで知られることが少なかったリハビリ医療であり、それを担うリハビリ医と各種療法士とのチームアプローチというわけです。幸い、東京にはリハビリ科専門医や専門病棟(回復期リハビリ病等)が多く、今後もしっかりしたリハビリを受けられて最大限の回復を得られることと思います。
 しかし、全国的には、リハビリ科専門医は極めて不足しているだけでなく、資格をもっている医師も、整形外科や神経内科などに所属しているため、本当にリハビリ科の専任として活躍できない事情があります。その理由は本文の通りですが、私たちのリハビリ医育成プロジェクトの役割がますます重要になってきたと感じています。全国どの地域でも、国民があたりまえのリハビリ医療を受けることができる時代が来ることを願いながら、記事を書きました。地味な話題であるにもかかわらず、国民にとって重要な問題を取り上げて下さった朝日新聞社に感謝致します。

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