「13日の金曜日〜UFC16大予想〜」 上村 彰
VTファンの皆さん、こんにちは、またはこんばんは。
すっかりごぶさたしてしまいました。昨年暮れからVT、NHBといえばめぼしい大会はほとんで日本、ブラジルで開かれ、アメリカ在住の私としてはこれといった話題もなく沈黙を保ってきた次第です。で、この3ヶ月ばかり何をしていたかというともっぱらブラジリアン柔術の練習ばかり。私の本業は一体何なのかというどうでもいいことはさておき、昨年8月に入門以来2回ばかりローカルな柔術大会に出場したので、その大会の様子と、来る3月13日に開かれるUFC XVIの見どころについて書いてみたいと思います。
アメリカのブラジリアン柔術トーナメント
いわゆるVTとブラジリアン柔術が別物であるということは今更いうまでもありませんが、現在のVTムーブメントの発端がUFCにあり、そのブレイクのきっかけが柔術家ホイス・グレイシーの活躍にあったことを考えると両者を完全切り離すことはできません。私の先生のマリオ・ヤマサキもブラジルにいた頃はアマチュアのVT大会に出たそうで、柔術で黒帯を取り、道場を開こうとする場合はVTの戦い方も学ぶそうです。道場破りを撃退するには必要なことなのでしょう。
私が参加した昨年11月と今年2月の柔術の大会はそんなVTとはまったく無縁のトーナメントです。11月の大会は私の所属するヤマサキ道場主催のもので、選手数は約100名、それにほとんど関係者(友人家族等)の観客約200名が集まりました。場所はスポーツセンターの体育館です。2月の大会はカリフォルニアで道場を持つペドロ・カルヴァーリョの主催で、11月の大会に比べて全体にひとまわり小規模なものでした。会場となったのは海軍基地内の体育館でした。
柔術の大会は体重制を取っているほか帯別(白帯→青帯→紫帯→茶帯→黒帯)に分かれていて、さらに無差別クラスまであるのでひとつの大会でたくさんの入賞者がでるのが特徴です。もっともまだ柔術の歴史の浅いアメリカでは紫帯の選手はほとんどいず、両大会とも白帯と青帯の部のみの実施でした。ルールを簡単に説明すると、試合時間が白帯5分、青帯6分で、お互い立った状態から始まり、投げ、タックルあり、打撃は一切なし、抑え込み、関節技(ただし脚関節技は膝をひねらないような技(アキレス腱固めや膝十字固めなど)のみ)、絞め技ありで行われます。相手をギブアップさせれば勝ちですが、投げやマウントなどのポジショニングでポイントがつき、試合終了時点でこのポイントが多くても勝ちとなります。
参加してみて感じた運営上の特徴は、なんというかラテン的なアバウトさです。決まっているのは選手の受付開始と試合開始の時刻位で、2つのマットでどんどん試合は進んでいきますが、自分の試合がいつどこであるのかは直前になってみないとさっぱり分かりません。当日の出場申し込みを受け付けているため、試合開始直前までトーナメントの組み合わせが決まらないのが大きな原因でしょう。これにはレスリングの大会に出場経験があるアメリカ人も閉口していました。
試合展開を大ざっぱに分類すると以下の3通りです。
1)袖、襟を掴んで相手を投げようとする
2)道衣を掴もうとせずに胸元、足元へタックルをしようとする
3)相手の道衣を掴むとすぐに自分からガードに引き込もうとする
いずれにしても最終的にはグラウンドでの攻防になるのは柔術としては当然ですが...。
1)はあまりいませんが柔道経験者の戦法で、受け身も知らないであろう相手をおもしろいように転がして2ポイント取っていました。2)はレスリング経験者の戦法で、アメリカにはレスリング経験者が多いため(日本に柔道経験者が多いのと同じ感じです)結構見られました。逆に3)は純粋に柔術を得意とする人の戦法です。全体的にいって白帯の部では1)2)3)が混ざった感じですが、青帯になると1)2)が減るようです。柔術の試合ではきれいに投げても2ポイントにしかなりませんが、そのまま抑え込めば肝心の寝技での展開が有利になるし、相手が受け身も知らなければダメージも与えられるでしょう。レスリング経験者は道衣を着たことはないでしょうが、何と言っても倒されないための足腰の強さ、バランスの良さには目を見張るものがあります。 やはり立ち技ができるにこしたことはありません。
11月の大会では当時ブラジルからヤマサキ道場に来ていた17歳の紫帯の選手が無差別クラス(帯、体重無関係)に出場し、当然のように全戦ポイントを取りまくった挙げ句の1本勝ちで優勝しました。対照的だったのが2月の大会です。フェザー級で優勝した青帯の選手がカルヴァーリョの生徒で紫帯の選手(多分アメリカ人)とエギジビションマッチと称して闘ったのです。試合は開始早々青帯の選手のオープンガードとなり、紫帯の選手は余裕でパスガードをしようとしますが、三角絞めに捕まります。ここで紫帯の選手がタップしたらしく一度試合が終了しますが、「実はタップしていない」ということで三角絞めの入った状態で試合再開。しかし紫帯といえどもすでに完璧に極まった三角絞めは外せず遂にギブアップ。青帯が紫帯をタップさせるという快挙に場内騒然でした。ヤマサキ先生いわく「一度極まった三角絞めは絶対にはずせないよ」とのこと。後でさらに聞いたらこの紫帯の選手の師匠、カルヴァーリョは怒り爆発していたそうです。
ちなみに私の戦績ですが、11月の大会は1回戦でレスリング経験者に大差の判定負け、2月の大会では6人トーナメントで1回勝っただけ(次の決勝でタップ負け)で準優勝でした。400戦無敗への道のりは限りなく険しいです。
期待大!UFC XVI
3月13日はいよいよUFCです。いつなくなってしまうかと気を揉みつつも何とか第16回大会までこぎつけました。NHB規制のないルイジアナ州ニューオーリンズでの開催です。とにかくこのアメリカという国は州によって別の国みたいに法律が違うので面食らうことが多いのですが、全国一斉に禁止されるよりははるかにマシですね。
今大会のメインイベントはミドル級のタイトルマッチで、最近出る大会すべて強敵相手(リングスで高阪、VTJでエンセン井上、UFCJでケビン・ジャクソン)に勝ち進み絶好調のフランク・シャムロックと、今は亡きエクストリーム大会(EFC)の中量級覇者イゴール・ジノビエフとの対決です。ジノビエフは柔道、サンボ、キックボクシングの経験者で、強力なパンチと強靱な肉体が武器のタフ・ファイター。この2人は初対決ですが、結構接点があります。
○ジョン・ローバー:現在パンクラスに参戦中の選手ですが、以前ハワイのUFCFというNHB大会でフランクに勝っています。EFCではジノビエフに内容でやや押されつつも引き分けました。その後最後のEFC大会ではケビン・ジャクソンにいいところなく破れています。このジャクソンをフランクがUFCJで倒したのはまだ記憶に新しいところでしょう。
○エンセン井上:ご存知修斗のヘビー級チャンピオン。96年のVTJではグラウンドでのパンチでジノビエフに豪快にKOされ、先日のVTJではフランクに打撃で負けています。
こうして見ると結構因縁の戦いともいえるこのタイトルマッチ、中量級ならではのパワーとスピードにあふれた一戦になりそうです。私の予想としては登り調子で進境著しいフランクが、しばらく試合から遠ざかっているジノビエフをサブミッションで破るのではといったところです。
今大会唯一のヘビー級の試合(スーパーファイト)には個人的には念願の日本人選手の登場(私は次回で3回目の観戦ですが、初めてなんです、日本人を直接応援できるのは)となるリングスの高阪剛選手が出場します。相手はホイスを苦しめたことで有名なキモ。20キロの体重差とあの恐ろしくビルドアップされたキモのパワーと、コンテンダースでアメリカの格闘技ファンをうならせた高阪選手のテクニックとの凌ぎあいが見れそうです。キモはPRIDE-1ではスバーンと凡戦(時間切れ引き分け)を演じたとして評判を落としたようですが、見方を変えれば負けない試合運びをできるだけのクレバーさも持っているということ。しかも最近はジョー・モレイラの元で柔術も真面目に練習しているらしいし、あっと驚くようなテクニックも見せてほしいところです。一方の高阪選手も盟友(?)モーリス・スミスにグラウンドパンチの対処方法などVT対策を十分たたき込まれていることでしょう。慧舟会の村上選手、パンクラスの高橋選手、修斗のエンセン選手、キングダムの桜庭選手に続いていよいよリングス勢から真打ち登場か?この試合も期待大ですね。がんばれ、高阪選手!
スーパーファイトはもう一戦、中量級でジェリー・ボーランダーとケビン・ジャクソンの試合が行われます。ライオンズ・デンの戦士としてUFC XIIでは初の中量級トーナメントを制したボーランダー。片やUFC XIVでは無人の荒野を行くがごとくの勝ちっぷりで中量級チャンピオンになり、フランクに破れるまでそのタイトルを保持していたレスリング金メダリストでもあるジャクソン。次期挑戦者決定戦にふさわしい顔触れです。ジャクソンも今度は十分に関節技対策を練ってくるでしょうから、ボーランダーも苦戦は必至。上村的にはジャクソン有利か?
そしてUFCでは初めてとなる軽量級のトーナメントです。修斗の佐藤ルミナ選手の出場も噂されていましたが、残念ながらそれはお流れ。それでも相当なメンツです。ルタ・リーブリ戦士のエウジーニョ・タデウは昨年ブラジルのVTでヘンゾ・グレイシーと互角の戦いを繰り広げた(結果は試合中に暴動が起きたため中止)スタミナ抜群のファイター。タウンゼンド・サンダースはコンテンダーズにも参戦したオリンピック銀メダルのレスラーで、そのずば抜けた運動能力は驚異です。はたしてNHBでどのように闘うのか?パット・ミレティックはEFCでマット・ヒュームにドクター・ストップ負けを喫しましたがかなり善戦していました。マイク・バーネットはライオンズ・デンが放つ新たな刺客(?)で、アマレス、サンボ、パワーリフティングで全米トップクラスの実力を有している選手だそうです。実績的にはタデウが優勝候補一番手で、それにNHBの実力は未知数ながら強豪アマレスラーのサンダースが続くといったところか?1回戦の組み合わせはバーネット−タデウとサンダース-ミレティックです。まったく目を離せないトーナメントです。
今回も有料ながらインターネットで生放送するそうですから、日本のファンの方も是非!3月13日金曜日の午後9時(アメリカ東部時間)は日本時間で14日の午前11時です。次の日はPRIDE-2(ああ、これについてもひとこと言いたかったんですけど)ですが、日本から高阪選手を応援しましょう!アドレスはhttp://www.ufclive.com/です。
最後に
この原稿を書き上げたのがただいま3月9日の午前3時25分。日本じゃもう10日です。これから編集長にメールで送って果たしてUFC XVIまでに掲載は間に合うのか?遅れてすいません、編集長!読者の皆さん、もし間に合わなかったら試合結果と照らし合わせながら笑ってやって下さい。
編集長追記
なんと、ワタクシもこのUFC16、現地取材に出撃する事が急遽決定してしまいました。ついにインターネット上で知りあった上村氏とも初対面、と言うことで次回の「VTのススメ」は「ジョージア大激突!裏アルティメット上村VS無頼庵」に決定いたしました(ミウソ)。
もしワタクシの愛機パワーブック2400が長旅にもめげず、異国でのアクセスを可能にしてくれましたら、速報を皆さまにお届けいたしますので、お楽しみに。
バックナンバー
第1回 「VTを陥れるもの〜自分で自分の首を締めてるんじゃねえよ!」 第2回 「それがどうした俺は往く〜UFCのPPV中止!男・上村逆噴射」 番外編 第3回 「アメリカのNHB大会& UFCの目指すもの」第4回 「10・11コンテンダーズ結果速報そのほか」第5回 「マルコ・フアスの強さに迫る!フアス&モレイラVTセミナー参加記」