97・12・20

トーナメント・オブJ'97中軽量級トーナメント
駒沢オリンピック公園

レポート・岩瀬 俊 <iwasesakae@email.msn.com>

 TOJは和術慧舟会の主催で94年から始まった。その特色は道衣着用での総合であること。毎年、柔道・サンボなどの経歴を持つ、有名無名のさまざまな所属の選手たちが戦ってきた。これまでの優勝者を列挙してみる。

 TOJ’94(無差別) 西 良典(和術慧舟会)

 TOJ’95(無差別) 高阪 剛(リングス)

 TOJ’96(無差別) 菊田早苗(フリー)

 TOJ’97(重量級) 菊田早苗(フリー)

 今年から体重別で3階級に分かれ、7月に重量級トーナメントが行われ、菊田が全試合一本勝ちで2連覇を果たしており、今回の大会では軽・中量級のトーナメントが行われた。

主なルールは以下の通り。

@上半身に道衣着用。

スタンド・グランドいずれの体勢でも道衣を攻守に利用できるので、道衣によってかなり戦いの質が変わってくる。

Aオープンフィンガーグローブ着用。寝技の顔面攻撃は禁止。

B膠着状態では、主審の「膠着」宣言から10カウントの間に動きが無い場合はブレイク、スタンドで再開。

C試合時間は本戦5分、延長3分。

 本戦後の判定を行わなかったため、実質2R制。

D一本か判定で勝敗を決する。判定は、主審と副審2名の計3名が「試合終了時のダメージ」で判定し、必ず優劣を付ける。

 ほとんどアマの試合を見る機会の無い私だから、軽量級の宇野・小島、中量級の須田・芳岡の4人以外は全く知らないが、その経歴を見るとあちらこちらのトーナメントの上位入賞者ばかりで、かなりレベルは高いと思われる。そんなアマ格闘家の包囲網を宇野・須田のプロシューターがいかに迎え撃つか?または96年菊田のように全く無名の選手がプロの世界に飛び込む起点となるのか?そこらへんが見所であろう。

**********軽量級(68kg以下)トーナメント**********

エントリー選手

植松 直哉(K'z FACTORY)

大内 敬(フリー)

松本 光央(烏合会)

藤田 善弘(ロ田東体協)

宇野 薫(和術慧舟会)

和知 正仁(鈴木道場)

小島 直人(全日本体術連盟)

小谷 宏明(STG八景)

軽量級1回戦

第1試合 ○植松 直哉 2分18秒ヒールホールド 大内 敬●

 打撃を出す大内に、タックルをしてテイクダウンを取った植松だが、動けずに自らスタンドに戻し、今度は引き込んでガードに。大内がアキレスを狙ったところで逆にアキレスを取り、ヒールに切り換えてタップを奪った。

第2試合 ○松本 光央 延長3−0判定 藤田 善弘●

2度の場外の後、松本が振り回してテイクダウンするが、藤田はガードから両袖を掴んで何もさせずにブレイク。その後、松本の打撃が当たりだし、タックルもがぶってバックを取るが、本戦終了。延長でも打ち合いの中で有効打を奪った松本が判定で勝ち上がる。

第3試合 ○宇野 薫 延長3−0判定 和知 正仁●

 序盤は両者互角に思われたが、次第に和知は余裕を無くしていき、大振りのパンチ・バックブロー・ニールキックなど一発狙いで攻めるが、ことごとくスカされる。宇野は、寝技でもパスガードをするなどいい動きを見せ、極めきれないまでも終始和知を圧倒した。

第4試合 ○小谷 宏明 1分10秒ヒールホールド 小島 直人●

7月のTOJで宇野とワンマッチで対戦し、詰めは甘いが善戦(記録は引き分け)し、この大会でも期待していた小島だったが、小谷の引き込みガードからのヒールであっさり敗退した。

軽量級準決勝

第9試合 ○植松 直哉 延長3−0判定 松本 光央●

 植松は、内股ふうに投げて上になり、イノ−アリ状態でブレイク。次は松本の蹴り足を捕まえて押し倒す。これもブレイク。3度目のテイクダウンではサイドを取り、その後もポジションをキープし続けるが本戦終了。延長に入っても胴タックルから持ち上げてテイクダウンをし、パスガードして攻めた。8分間のあいだ常に上から攻め続け、文句無しの判定勝ちで決勝へ駒を進めた。

第10試合 ○宇野 薫 延長3−0判定 小谷 宏明●

 この試合前に気になることが一つ。先に入場していた宇野と、宇野サイドで副審をしていた西が、ワンツーのゼスチャーをしながら一言ずつ会話を交わしていた。やはり主催者の人間にこのような行動は慎んでもらいたい。

 試合では宇野の打撃が光った。組み付きたい小谷に小さく的確なパンチで離しにかかる宇野。それでも序盤は小谷がうまく捕まえてグランドに持ち込み、腕ひしぎが入りそうな場面もあった。しかし宇野もうまく回ってしのぎ、スタンドでポイントを奪っていく。

延長ではすでに小谷がガス欠状態に。下を向いてとにかく組み付きたい小谷だが左右のパンチをもらう。1回戦をフルタイム戦ってきた宇野と、70秒で勝ち上がってきた小谷だったが、宇野は疲れを感じさせず、今大会で唯一効果的な打撃を見せた。

軽量級決勝

第13試合 ○植松 直哉 0分23秒ヒールホールド 宇野 薫●

いずれも実力差を見せて勝ち上がってきた両者の対決だったが、簡単に勝負がついた。植松は宇野の右ミドルを掴んでそのままアキレスを極めた。試合後、「足関節の取り合いで負けない自信はありました。でもプロ修斗に出るためにはもっと練習をしないと。このルールでは僕の方が合ってただけですから」と語った。一方、惜しくも敗れた宇野だが、オールマイティーなファイトで、プロシューターらしさを十分発揮した。

優勝 植松 直哉

準優勝 宇野 薫

3位 松本 光央・小谷 宏明

********** 中量級(79kg以下)トーナメント **********

エントリー選手

須田 匡昇(クラブJ)

鈴木光浩(鈴木道場)

杉山 元彦(浜松養神館)

竹内 出(K'z FACTORY)

林 俊介(スポーツ会館)

小幡 太郎(和術慧舟会)

芳岡 博之(総合格闘技TOPS)

宮崎祐市(CMA誠ジム)

(喜多 将士選手が体調不良で欠場のため、宮崎選手が追加、および組み合わせが一部変更。)

中量級1回戦

第5試合 ○須田 匡昇 延長3−0判定 鈴木光浩●

 96、97重量級を準優勝をしている大本命の須田が登場。特に入れ込んでいる様子も無い。対する鈴木は須田とは14才離れた38才の超ベテラン。須田は開始早々テイクダウンを取ると、すかさずマウントへ。そこからサイド、上四方とポジションをキープしながらスキをさぐっている。先を読みきった余裕のある動きから腕ひしぎを狙うと、鈴木も道衣を掴んで必死にしのぎ、体勢を入れ替える。が、下になっても須田はヒールをうかがい、そのプレッシャーで鈴木の方が動けなくなり、そのまま本戦終了。延長でもバテた鈴木を攻め、判定だったものの危なげない勝利で一回戦を通過した。

第6試合 ○竹内 出 延長3−0判定 杉山 元彦●

 杉山の不完全な投げで竹内が上に。ブレイク後の杉山の飛びつき十字も、竹内につぶされバックを取られてカメに。竹内は反則とも取れる脊髄のあたりへのヒジを4発打ち下ろし、杉山のセコンドは抗議するも受け入れられず。その後ガードになった竹内が三角・腕ひしぎを狙うが本戦終了。杉山は延長でもカニバサミを出すが不完全で、グランドで攻めた竹内の判定勝ち。杉山の柔道家らしい動きが新鮮だったが、いずれも不完全で相手に攻めるチャンスを与えてしまった。

第7試合 ○林 俊介 延長3−0判定 小幡 太郎●

メンバー中最も軽そうな林と、重たそうな小幡の対決。林のセコンドには菊田がいる。重い小幡が押し倒すが、林は下から積極的に攻める。小幡は強引な動きが多く、すぐにバテた感じ。後半の打撃では林の方が押していた。延長に入って小幡は有効なローを入れるが、それを取って林がテイクダウンし、パスしてバックを取っての襟絞めへ。柔が剛を制した形で林の判定勝ち。

第8試合 ○芳岡 博之 0分38秒腕ひしぎ十字 宮崎祐市●

柔道で最も実績のある芳岡(元国際強化選手)は、他の選手からも一目置かれる存在。TOJも4回目の出場。その芳岡が、豪快な投げから流れるように腕ひしぎを極め、堂々と勝ち上がった。

中量級準決勝

第11試合 ○須田 匡昇 1分53秒アンクルホールド 竹内 出●

須田は右フックを当て組み付き、背負い→小外のコンビネーションで見事にテイクダウン。これで油断したか、竹内は腕ひしぎから三角へ。あわやというシーンだったが何とか外し、すぐさま足首を取って極めた。

第12試合 ○林 俊介 延長1分13秒腕ひしぎ十字 芳岡 博之●

 柔道家芳岡に会場の注目が集まったが、総合の技術が上回っていたのは林の方だった。組んで不利な林は引き込み、自らガードへ。芳岡が動いたところで腕ひしぎを狙う。惜しい場面もあったが本戦終了。延長でもガードから腕を掴み、芳岡も上からつぶして防御するが、最後は林が粘りで腕を伸ばし、たまらず芳岡はタップ。

中量級決勝

第14試合 ○須田 匡昇 1分51秒ヒールホールド 林 俊介●

林は準決勝と同じくガードから腕を狙うが、ドントムーブで中央に移動した後、須田は体勢を立て直し最後は足を取って中量級を制した。

優勝  須田 匡昇

準優勝 林 俊介

3位  竹内 出・芳岡 博之

**********須田選手インタビュー

Q.念願の優勝です。決勝を振り返って下さい・・・

いや〜やっぱ強いですね。ほんのちょっとの差で腕が抜けて足にいけたんで。ただ、準決勝見ててアレさえしのげば何とかなるなとは思ってはいたんで、狙い通りにいったのは良かったです。

Q.今日の調子は?

調子はあまり良くなかったですね。1回戦が判定で2回戦も危なかったし、不甲斐ないなあと。やっぱり優勝候補ってみんなから言われて、プレッシャーがありましたね。勝とう勝とうという気持ちが裏目になって・・・それから1/17の修斗の試合も決まっていたんで、負けると勝つじゃ全然違うんで、勝ってスッキリ次の試合に挑みたかったんで、ホントにうれしいですね。

Q.1/17では初の国際マッチが予定されていますけど・・・

まだまだ課題があるんで・・・今日も2回戦で中途半端な体勢で攻められたので、ポジショニングをしっかりやって、あとクーパーは打撃の上手い選手なんで、打撃をもらわないようにしないと。

Q.今後の目標は?

ライトヘビーは外国人が上位を占めてて、外国人には負けたくないんで、正月返上で練習して、ひとつひとつ順位を上げていきたいです。

**********林選手インタビュー

Q.残念でしたが・・・

十字固めが極まりそうになったのがスッポ抜けて、あらっと思った瞬間に足取られてしまって、気持ちの切り換えが出来なかったですね。あそこで僕が極められなくて須田君は極めるところがお互いの勝負に対する執念の違いじゃないかなと思います。ちょっと準決勝勝ってホッとしちゃった部分があったんで。

Q.この大会に向けて特別な練習は?

サンボの練習はいつも通りやってるんですけど、それに加えて、菊田とか総合をやってる人間で集まって、打撃や寝技の練習を十分やってきました。

Q.今後、総合の大会へ参加の予定は?

こうゆう大会に出るのは非常に消耗しちゃうんで、また落ち着いてから考えたいですけど、(本業として)修斗や柔道をやっていてその過程でサンボの技術を取り入れている方が多いですけど、僕は純然たるサンビストで、今回も僕が成績を残してサンボが注目されればと思って出場したんで、これからもサンボ中心で、総合系でも、普段の練習が生かせる場であれば、また挑戦してみたいと思います。

特集トップページBoutReviewトップページ