「VTJ97に思うこと」  岩瀬 俊

VTJも、4年目になる。始めの2回は「ヒクソンvsその他」で、トーナメントの緒戦から優勝まで、常にその心技体を完璧にコントロールしてみせたヒクソンに私は魅了された。特に、95年木村浩一郎戦の直前にリング上で見せたしぐさは圧巻であり、ヒクソンを見て以来、平常心(無表情・無感情)であるかどうかが格闘技を観る上での重要な軸となった。

今年のVTJは、去年と同様「修斗vs世界」のワンマッチ形式で行われた。

****佐藤ルミナvsJ・ルイス

ルミナがいとも簡単にリベンジを成功させた。自らガードに引き込んで失敗した前年に比べ、今年は積極的に動き、攻守一体のルミナならではのすばらしい動き。悪夢のガードポジションも、守りに入ることなく逆にヒールでルイスをビビらせた。2連敗は許されないギリギリの試合で余裕たっぷりに戦い、あっさりと関門を通過してしまった。この日最もいい表情で戦っていたのはルミナだった。

****桜井マッハ速人vsM・アグア

****巽宇宙vsJ・ホーキ

修斗公式戦では平常心を崩すことが無かった桜井と巽が、初めて苦戦する姿を見せてくれた。非常にレアで、これを見れただけでも豪雨の千葉県まで足を運んだ価値があった。桜井は的確なパンチをもらい、あせって腕ひしぎを極めきれなかったし、巽はポジショニングで圧倒された。両者ともはれた目で負け(記録は引き分け)を味わった点は、前年のルミナを見ているようだった。ルミナが去年の敗戦(これも記録上は引き分け)を克服したことで「積極的防御」を身に付けたように、桜井・巽もまだまだ伸びていくだろう。その通過点としての、こんなワンマッチ形式のVTJは非常に有意義だと思うし、「日本最強」なんて空虚なレッテルなど求める必要は無いのだとも思う。個性的なファイトを見せた2人のブラジリアン選手の再来日も楽しみだ

****エンセン井上vsF・シャムロック

ルミナとは対照的に、VTJ 2連敗を喫したエンセン。修斗の看板を背負うごとにエスカレートしていった「野蛮人ファイト」は、勝つときはハデでも、フランクのようにその「一の太刀」を冷静に凌がれたら、スタミナに不安が出る。将棋で言えば、布石を打たずに王手を続け、途切れた時点で反撃を食らうようなもので、ヒクソンとはまるで逆の発想だ。辰吉やタイソンに共通する長期戦での「もろさ」を感じていたが、その悪い面が出た感じ。一方、フランクも気合で対抗し、見事に打ち勝ったが、それ以上に彼の格闘技に対する姿勢が印象に残った。フランクは、「今後も契約次第でどこででも戦う」と語ったが、過去にこだわらず、前だけを見て外に向って戦いを求めるその生き様は、日本のくだらない団体主義に対抗する、中井祐樹の「大同団結論」とは違ったやり方でのアメリカンな解を示してくれた。高阪と柳澤がM・スミスとともにセコンドに付いたのも感動的で、SHOOTOという戦いの”場”ならではの出来事だろう。

さて、エンセンはこの敗戦を機にどう変わっていくのだろうか・・・