空港東の丘の上で northern light を見る

南天の Orion 付近に現われる northern light
[Northern light from hill 1] (大きい写真は 9kbyte) (ちょうど Orion を northern light が貫いています)

2 月 23 日 (月曜日)

[空港周辺地図]
2250。昼に Jesper さんから「Northern light を見るには、あの坂を越えた辺りがいい」と教えてもらっていた、空港東の丘の上に出向きました。なるほど、あまり人工の光を感じません。空港, ホテル, 発電所の灯は見えますが、それほど強烈ではないし、坂を十分登りきると、それらも見えなくなりました。Alaska では、northern light を見ようとする人たちがたくさんいて、その人達が放つ光というものも気になりましたが、ここでは、寒い夜に空を見上げよう、などという暇人は全くいないようでした。腰痛気味の腰を思いっきり普段と逆に曲げて空を仰ぐと、ようやく北斗七星が見え、その先をたどると北極星と Cassiopeia が見えました。小学校で、冬には Cassiopeia が見えやすく、夏は北斗七星が見えやすい、と教わった記憶があり、日本で両方の星座を同時に見ることは難しいようですが、ここではそれが空の天井の一番高いところに同時に見えました。

[空港東丘から南東に出た northern light を見る] (大きい写真は 6kbytes)
やがて、南の空がうっすらと緑〜白に明るくなり始めました。だんだん明るい部分が何条もの光の筋へと大きくなっていきました。垂直な光の束が現われて、それがくるくるっと丸まっていく様子を楽しむこともできました。画面下方の赤い光は、向こう側の丘の上の航空標識です。Northern light を写真に撮るには、地上の目標物を一緒に写した方がいいょ、と教えられていましたが、その目標物が、この写真下部のものくらいしかないのです。そこで初めて気が付きました。
「木がない」
あらためて氷の大地であることを悟りました。
でも、全体としては、空が明滅するけど、カーテンがすーっと動いていくような northern light は少なかったように思います。
空港南側の居住区等から北側のホテル方面へと走ってくる車の前照灯、これは強烈で、頻繁で、いつ来るかわからないので困りました。それで、西 または 南方向で地面を含めて写真のアングルを決めることはできませんでした。山の下部にも強く赤い光を放つ航空標識がありましたが、はじめは車のブレーキランプかと思いました。

南天の Orion にかかる northern light

[Northern light from hill 3] (大きい写真は 12kbyte) (Orion の側に northern light が現われました)
冬の南天の星座の代表格 Orion が見えているので、その方向に northern light が現われないかな〜、と期待していたら、出ました出ました〜。
はじめ、Orion 左から光の塊が現われ、このページ最初の写真のように、光のカーテンが 2枚になって、そのうちの 1枚が Orion を横切る位置まで移動してきました。この光は暫く続き、やがて、直上の写真のように左へと去っていきました。Northern light が南の空に見えるのは、この地ならでは、です。

しかしこれ以上 northern light 見物をするのが難しくなってきました。何よりも問題なのは、フェイスマスク (今年の新兵器) をつけているために、吐く息が温かい気流となって顔面に沿って上部に登り、眼鏡が曇ることでした。いちいち眼鏡と毛皮の手袋を取り、眼鏡の霜を拭き取るのには手間がかかるのですが、それでもすぐ、努力空しく、眼鏡が曇って何も見えなくなるのだった。しかも、靴はキャンピングシューズなので、防寒は著しく不十分で、しょっちゅう足踏みしていなくてはなりませんでした。酒に酔うのと似ていて、身体のどこか一カ所でも「寒い」と思ったその瞬間から、それまで寒くなかったところも含めて、急に身体全体が凍り付くような木がしました。手先を温める生命線の懐炉からさえ温かみが感じられません (hotel の自室に帰って点検してみたら、ちゃんと温かかった)。
首からぶら下げていた双眼鏡は、両目の間隔にレンズを合わせるために筒を回転させることが難しくなりました。軸のグリースが固まったようです。背中のデイパックはポリエステル製でしょうが、凍ったタオルのようにごわごわになってしまいました。いずれも Chena でも経験しなかったことばかり。
こりゃたまらん、と尻尾を巻いて hotel へ逃げ帰ることにしました。曇った眼鏡のために視界が効かないので、足元の雪を踏む感覚に注意して、わだちを踏み外さないように注意していましたが、それでも、1回ずぼり、とはまってしまいました。坂道を下りきったら hotel なんてすぐだと思っていたのですが、歩けど歩けど hotel の灯は近くなってきませんでした。
2340、自分の部屋に帰着。「這ふ這ふの体」というやつでした。TV のスイッチを入れると、1日半前の長野 Olympic の閉会式の模様をやっていて、「Anri - Furusato Nagano」と出ていました(萩本欽一はほとんど映し出されませんでした)。
わざわざ地球の裏側まで日本でやっていた Olympic の閉会式の TV 中継を見に来たわけではないので、気を取り直して、30 分後に再び外に出ました。しかし、元は Orion の下にあった光がやや薄いながらも残っていただけで、それもわざわざ写真に撮るほどのものではありません。Orion は既に沈みかけていて、光の方も 0110 には消えました。その後も 30 分ほど粘っていましたが、空は静まり返ったままで、遂にこの夜の見物を諦めました。
Chena の第一夜のような孤独との戦いにはなりませんでしたが、寒さが厳しかったことは印象に残りました。

Northern light を見ていた箇所を昼間に訪れる

[Airport and fjord from the hill]丘の上から西に空港と fjord を見下ろす。右端に煙が立ち登っているのは、ホテルの北隣の発電所です (大きい写真は 13kbytes)。
[On the hill]丘の上は殺風景です (大きい写真は 12kbytes)。

northern light は南の空に見える

オーロラ環は地磁気極を中心とする平均半径約 2,500km の円に沿って現われます。 現在の地磁気極は、Greenland 北西端の Siorapaluk 付近にあります。Kangerlussuaq は Siorapaluk から約 1,340km 離れているだけなので、オーロラ環の北側にあります。だから、通常の northern light は、当然、南の空に見えます。

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Last Modified : Oct. 10, 1999