Fairbanks でのオーロラ見物前哨戦

(オーロラも地味だった) (Mar. 8 - 9)
[Northern light at Skiland on Mar. 9]大きい写真は12kbytesあります

01:30 頃。Hale Bopp も辛うじて写っています。写真右下の黒い建造物はスキーリフトの支柱。この夜は、結局、この程度のものしか出ませんでした。フィルム = ASA 800, レンズ = 28mm, 露光時間 = 約 55sec


2240。慌ただしく夕食を終えて、迎えの車に乗り込みました。目指すは "Skiland" というスキー場のロッジで、オーロラ見物に好適として有名らしいのですが、空港に近い私の hotel から 30 分強もかかるそうです。聞けば、Fairbanks がオーロラ見物に適しているとは言っても、市街地は明かりも多いし、人々の生活が吐き出す水蒸気で曇ったりして、見物には好ましくないんだって。現に、Fairbanks 市街地では見えなかった northern light が、Skiland では見えた、ということは珍しくないそうです。
行き交う車のほとんどない Steese HWY をどんどん飛ばしていきます。周りはすでに明かりの影響がないように思われるのに、なぜもっと先まで行かなければならないんだろうか、との疑問も起こってきます。それでも、市街地では見えなかった星が見えてきたので、「よし、あとは northern light が出てくれるのを祈るだけだ。さぁ出てくれ」かなり気負い込んでいました。

2310。目立たない交差点で右折して、山道をしばらくごとごと登ると、目指すロッジに着き、車はすぐに明かりを消しました。既に何台もの車が駐車していました。懐中電灯を持ったスキー場の係員に案内されて一旦ロッジに入りました。ぽつぽつ赤い灯がぼんやり光るだけの暗い部屋の中に40人くらいが座って、息を詰めるようにしていました。売店部分だけは蛍光灯の照明があって、話し声も大きく飛び交っていました。売店ではホットドッグやココアも売っていましたが、目立つのはなんといっても「カレーうどん一杯 $10-。1日30食限定」という大きな紙でした。「ん」と周囲を見ると、売店の従業員以外は悉く日本人なのでした。ちなみに、カレーうどんは 1杯を 2人でちょうど良いくらいの分量だそうで、晩ご飯を食べた直後の私は試してみる勇気が起きませんでしたが、私が帰るときには売り切れていました。

室内であてもなく待つのは苦手なので、外に出ました。ロッジ出口の近くの電柱にもたれてぼんやり空を眺めます。小学生の頃、「ぼけ〜っと上ばかり見て歩いてっ!」と親によく怒られていたことを思い出しました。ずっと立って見ているのはしんどいから、すぐに腰を下ろし (いわゆる「体育坐り」)、さらに寝転がって天を仰ぎました。ぼんやりしていればたちまち時が過ぎていくものだと思っていましたが、真上の北斗七星はなかなか回転していきません。どのくらい時間が経ったのだろう、とロッジ入口の赤い灯に腕時計をかざしてみると、まだ着いてからせいぜい 40分くらい経過しただけでした。自分があせったからといってどうなるものでもありませんが、なにしろ初めての経験なので、力の入れ方がわかりません。

斜面を登りきった、スキーリフトの終点の方へ待機位置を移しました。カシオペア座の下付近をずっと覆っていた白っぽい帯状のものがだんだん晴れてきました。そこに他と違ってぼーっとしている明るい星があったので双眼鏡を向けると、Hale Bopp 彗星でした。こんなにはっきりと尾を引いている彗星を見るのは初めてだなぁ、と northern light 見物に来たことを忘れて見とれていました。このあたりから、時計の針が早く進みだしました。

「あれ、明るくなったり暗くなったりしてへん?」という大阪弁がささやかれはじめました。北東の空が少〜し白っぽくなったな、と思うとまた元通りに暗くなってしまいます。どうも northern light らしい… 最初の期待が大きすぎたせいか、拍子抜けがしました。それでも、northern light の実物が眼前に現われたんだ、と気合いを入れ直して、その方向に目を凝らします。私が陣取っていた周囲は堂々とした三脚が並んでいましたが、その持ち主たちもそわそわしはじめました。

0100 。「明るくなったり」がちゃんとわかるくらい濃い状態になりました。これはどう見ても、northern light に他ならない、と自信が持てました (それまでわからなかったのです)。周囲から「もっとはっきり明るくなってくれればいいのにねぇ」という日本語が聞かれます。
折角、実家の押入の奥深くから発掘したカメラを持ってきたんだし、と私もファインダー越しに空の明るい方を覗きました。しかし、何も見えない! のです。少しカメラを左右に回転させると、隣で動いている人影は見えます。それを基準に少しカメラを戻すことで、このあたりの範囲は写っているはず、と見当をつける他はありません。このページ上方の写真はこの時点でのもの。写真では緑〜赤に見えますが、肉眼では、ぼーっと白いだけ、という程度でした。

0140。ようやくのことで、はっきりとわかる程度に空が明るくなりはじめました。が、カメラのファインダー越しの空がほとんど真っ暗なのはこれまで同様です。結果的には1分近く露光させたものだけが、なんとか northern light を写した写真と認識される程度で、それよりも短い露光時間のものは、彗星の下に、彗星よりもずっと暗く、緑色に光っている部分があるだけ、という写真の出来映えでした。
たくさん写真を撮ってやろう、と最初は少し気負っていたのに、たった 7枚しか写しませんでした。その程度の時間しか明るくなかった、ということでもあります。

0200 に帰途につく、という予定を 30 分くらい遅らせてもらいましたが、ぼんやりと明るい、という以上の状況は起こらなかったし、その後の望みも薄そうでした。
0220、「もう帰りませんか」との引率者の提案に皆異存はありませんでした。他のグループも続々と引き揚げ始めたようでした。
0300 過ぎ hotel 帰着、よろけるように車から降り立ちました。風呂に入り、洗濯を終わったのが 0420。
前夜に引き続き、オニオンスライス味のクラッカーをつまみつつ、ウイスキーを舐めました。Alaska 鉄道の汽笛の音で始まった長い 1日〜ちょうど 24 時間〜がこうして終わりました。


「地球の歩き方」を見ると、Fairbanks 市街から Skiland への tour があることがわかりました (私が参加したものではありません)。2200 頃出発で $65 / 人 〜 からだそうです。Skiland はそのような tour があるほどの名所なんでしょうが、なぜここがそんなに好まれるのか良くわかりません。すぐ近くに別のスキー場もあることになっているんですが。

ロッジ付近でしばしばフラッシュが焚かれたのには閉口しました。「よかった〜、今シャッターを開けてなくて」という声がその度に聞かれました。ちなみに、私の知人が後日 (私が帰国した後) Chena でこの顰蹙行為を敢行したそうです。「どんな写真の出来映えだった?」「真っ黒」「そうだろうなぁ」よく袋叩きに遭わなかったもんです。


[Access Counter]

[UP]Alaska 旅行の目次

Last Modified : June 18, 2000