薦められて Seward へ行くことにしました。どうせなら、鉄道で行きたかったのですが、この時期は旅客列車の運行はないので、車で向かうことに。8人乗りのバン、初老の運転手に客はパナマから来たという叔父と姪の組, おばさん 2人連れ×2, 私の7人。
0830 に Anchorage のホテルを出発。-12℃がとても暖かく感じられます。
Seward への HWY (昨秋 Portage から Anchorage へ戻ってきた道) を快速に飛ばしていきます。
0900 Potter を少し過ぎたところで早くも休憩。目の前の Turnagain arm を日本の小川の上流のような速度で潮が満ちていきます。そりゃぁ、潮の干満で死者が毎年出るわけだょな、これじゃぁ。
(20kbytes)休憩を終えて出発しようとしたら、背後の山のかなり裾の方まで Dall sheep が数匹降りてきているところでした。Denali では、昨秋も今回も遠くに小さく見えただけでしたが、今度は走り寄っていけるくらいの近さです。思わず息を潜めてしまいました。餌が少ないから下の方まで降りてきたんでしょうかね。
Turnagain arm をぐるっと回った後、山中の登り坂にかかります。道の両側に広がる黒緑の針葉樹林の中を、雪をまぶしく反射して伸びる一筋の道を快調に飛ばしていきます。途中、入口に moose の角を飾ったお店で coffee break。お店の入口の moose の角を背景に写真を撮ってあげたことをきっかけに、パナマから来たという叔父姪の連れと仲良くなりました。
カメラ機材を呆れるほどたくさん積んだバンもここで休憩していましたが、このバンの一行も Seward で海の生き物を撮影するのが目的だったようです。
1200 貨物積み出し施設の目立つ Seward 着。韓国へ石炭を積み出しているからね、とここでも有名。鉄道客車は少し色褪せたのを一両見かけたのみ。
捕れる魚が豊富であるようで、観光案内所の隣に、魚の一覧が絵と共に記されています。食いしん坊で魚が好きなくせに、わからない魚ばかりでした。私の背丈よりも高い 3面ボード。去年秋に Anchorage で食べたあの美味しい蟹は載っているかな… あるある、Dungeness Crab 〜 small and tasty 〜 ね。
Seward港の光景 (画像は 6kbytes) 係留されている漁船, 観光船, ヨット の間を縫うようにして観光船に乗ります。
まだ港の防波堤を出ないうちに ラッコのお出迎えに遭遇。もっとも、ラッコは胸で貝を割っているところで、お出迎えなんかしたつもりはなく、その上船が周囲を3/4 週くらいしてお食事の真っ最中を覗かれたわけだから、迷惑だったでしょうが。
ラッコは船が相当 (出来る限り) 至近距離に寄ってくれたところから、110mm で写したつもりでもプリント上では親指大程度にしか写りませんでした。これは前年秋の Prince William Sound でも同様でしたので、ラッコを写真に撮りたい方は、200mm 程度のレンズを準備し、幸運に期待する必要があると思われます。
波は静かだけど風の冷たい湾内を進んでいきます。その冷たい風をイヤーマッフル以外には凌ぐ手だてもない姿で、甲板に出て左右をキョロキョロしていると、今度は数頭のイルカが私たちの船を守ってくれるかのように並行してジャンプしはじめました。イルカが自分の船に沿って跳ねるなんて、これまでも日本の内地でも経験したことがあるけれど、遥か Alsska の海での歓迎もまた格別。それにしてもよく船にぶつからないもんだと感心。
写真の方は、イルカが海面上に飛び上がってくれている短い瞬間には自動焦点式カメラの焦点が合わなかったので、うまく撮れませんでした。今見てみると、飛び込んだ後の水しぶきと水面下の影が大きく写っているものがたくさんあります (野球でいうなら、大きく振り遅れ、ってやつですね)。オーロラ撮影に使っていたボタンを押せば直後にシャッターが切れるカメラならよかったのでしょうが (ちょっと残念)。
教科書に出てきそうな fjord なので、船から見ると、海中から崖がそそり立っています。
今船が進んでいる大きな湾に対して口を開いている小さな fjord にまで船は入っていきます。なんだか珍しい形の岩でもあったようなのですが、ガイドの説明が聞き取れません (英語が分からない T_T)。
(57kbytes)その小さな fjord の出口の海面に頭だけ出している岩の上で、トドが群をなしていました。いち、に、さん、し…、数えたら 50頭くらい。陸側の岩にも休憩できそうなところはいくらでもあるように思われるのに、固まってひなたぼっこです。ちょうど、お日さまを受けるのに都合のいい向きと、傾きなんでしょうかね。
ときどき火照ったのか (こんなに寒いのに?)、餌を取るためか、海に飛び込むやつやら、海中から体をくねらせて這い登ってくるやつやら。蛙と鵞鳥を掛け合わせたような声が響きわたっています。
左右に続いていた崖が急になくなって外海へ出てきました。それとともに一気に風が冷たく強くなりました。
と、船長の声が拡声器を通して響きわたり、吹きわたる風を遮って、甲板上にいた私の耳までもたどりつきました。「あそこにシャチがいるぞぉ。本船はシャチに向かって進むぞぉ」客の賛意を示すどよめきのようなものも伝わってきました。船首はカメラとビデオを構えた客で溢れかえっています。あのパナマ人もニコニコしてこっちへ来いと手を振っています。
(9kbytes) (海面上に背鰭を見せている)
海面上にジャンプした! のでシャッターを切ったら、潜った直後の飛沫しか写っていませんでした ^_^;(画像は 11kbytes)
大きく方向を変えるシャチの家族 (画像は 12kbytes)
船を一隻仕立てて本格的な (ビデオ) 撮影する一隊 と シャチの背鰭(画像は 5kbytes)
シャチはかなり長時間背鰭を海面上に見せてくれてているので、彼我の位置関係も刻々と分かり、「よーし、この方向だ、早く行け〜」と船の上から虚しくも念力をかけていると、そのうち海に潜ってしまい、意外な方向に姿を現わします (でも船長はそんなことは先刻承知のようで、シャチとの距離は段々縮まった)。
朝、Coffee break の時に一緒だった一行は船を一隻仕立てて本格的な (ビデオ) 撮影をしていました。
一瞬背鰭付近が盛り上がったかと思うと背鰭が前に傾いていき、水に潜った、と見ると、尾鰭が海面上に現われ、やったやった、と思う間もなく、ばしゃーん、と白い飛沫が上がります。少し遅れて、一回り小さい背鰭と尾鰭が同じように動きます。それが、船首の 30度方向でひとつ、300度方向でもうひとつ、どうも親子一組の 2群がいるようです (あわせて一家族かもしれない)。
短い時間ですが、全身潜ってしまってどこにいるのか分からなくなり、暫くしてから意外な方向に姿を現わし、船が方向を変えて追って行かなくてはならないこともありましたけど。
30分未満程度ではありましたが、シャチも私を歓迎してくれたんだ、と思うことにし、満足な一時でした。
このシャチを写真に収めるのは反射神経の鈍い素人では難しかったです。もっと簡単なイルカの場合でも、舷側から見下ろす近さを泳いでくれて、比較的頻繁に水面に出てきてくれて、それの撮影が難しかったくらいです。遠くてめったにジャンプしてくれないシャチの姿を撮ることは…。1回だけ素晴らしいチャンスがあったのですが、先にも書いた、ボタンを押してから一呼吸置いて落ちるシャッターのためにその瞬間をフィルム上にに残すことは出来ませんでした (私の網膜と記憶中枢には残りました)。ビデオカメラを持っていけば、ばっちり、だと思いますょ。
シャチを追って船はかなり西の方に移動してしまいました。
地図の上で、海に漂う海藻のように縮れた半島の先端の方まで行ってしまいました。名残惜しくもシャチと別れ、港に戻ります。
まず、この半島の付根にあるのが、Bear Glacierです。白一色で、ごつごつしたところさえなく、波も静かな今、夏 (に示すであろう) 姿よりも近づきがたいものがあります。
船は、来たときとは反対に、湾の西の崖 (岸) に沿って引き返していきます。崖のどうしたら 4本足で水平を保てるのだろう、というようなところにも Dall sheep の群がいました。
首が痛くなるほど上方の崖には白頭鷲らしい鳥が巣を作り、上空を旋回しています、悠々と。
1515 港に帰着、来たときに乗ってきたバンに同じメンバー 7人が乗って、すぐに出発。
見たばかりの動物の姿をお互いに話し、運転手に報告する声で賑やかな車中。 とはいうものの、私は途中から意識がなくなって眠りこけました。
1705 Portage の Wild Life Park に車を乗り入れて、広いとはいいかねる柵の中で飼われている動物を車の中から見て回ります。
中のお店で休憩。
車の中で居眠りしていた私を不憫にでも思ったのか、運転手が私について、店の中の展示物をあれこれ説明してくれます。ログハウス風の店の梁に動物の毛皮が掛けてあります「あれは山羊、こっちは羊…」。毛皮は売り物でもあるようで、
友達になったパナマ人も「ようやく起きたか、こいつ」という顔をしています。「パナマ料理を食べたことがあるか? 醤油を使って料理をするぞ」と言われてもねぇ、困っちゃいましたょ。
復路のドライブも恙なく終わり、車の列の続く Anchorage に帰着。陽がかなり傾いていました。私以外の全ての客は、Hilton から少し離れた駐車場で降りていきました。ここまで車で来ていたようです。
私だけが数十メートル先のホテルまで。