Chena Hot Springs Mar. 10 - 11, '97

雪上車で山頂に登ったが…

[Northern light from the summit](8kbytes) (この日の最も明るかった northern light)
[Cabin at the summit](8kbytes) (山頂のキャビン越しに Hale Bopp 彗星を見る)

雪上車ツアーのパンフレットから

パンフレットは全文英語・日本語の併記ですが、一部、青山の独断で写真や一方の語を略します。また、改行位置等もオリジナルとは異なります。

Snow Monkey Tours

Snow Cat Ride (キャタピラー雪上車)
Aurora Trip

夕方にジャグジーにつかってのんびりしていたら、「昨夜、雪上車に乗って山頂に行ったら、最初のオーロラも山に遮られずに下の方まで見えたそうですょ」という有力情報に接した。ジャグジーの受付がこの雪上車ツアーの受付でもあるのだが、たちまち申し込みに行った私も結構ミーハーだと自分でも思う。
[SnowCat](24kbytes) 宿泊ロッジの正面にある雪上車乗り場。左方に雪上車が見えます。

指定の 22:50 にロッジの目の前 (滑走路端) の雪上車乗り場に出向くと、ガイド兼運転士とおぼしき 3人が雪上車の周りを行ったり来たりしていました。何をそんなに打ち合わせが必要なことがあるのかしら。それよりも不思議なことに、客の姿が全くありません。「?」と思っていると、反対の方角から白人のおばさんが一人やってきて、ガイドに案内されて雪上車の助手席に坐りました。私も続けてガイドに voucher を示すと、今度は雪上車の後ろの扉を開けて乗せてくれました。が、それだけで、しばらく、おばさんと 2人で手持ちぶさたの、ちょっとイライラする時間を過ごす羽目になりました。そのうち、日本人の一家族 7人, 女性 2人グループがやってきて、10 人乗りの雪上車が一杯になって、ようやく、2310 に出発。(何らかの理由でこの日本人の団体の到着が遅れたらしい)

先導の黄色い 1台 (客はいない) に続いて、客を 10人ずつ満載した青い 2台が進む形で、まず滑走路を端まで進んで、右に折れました。宿泊ロッジ東南の標高 2600ft 程度の山頂を目指すようです。前方を注視していると両側から木の迫った林の中に付けられた雪の凹みの中を行くように見えます。翌日に高台から見てみたら、雪上車の通り道は林の中をところどころ曲がりながらくっきりと付けられている様子がよく分かりましたが、実際に乗っているとどこをどう進んでいるのか全くわかりません。ただ車体の傾きから、坂を登っていることがわかるだけです。進行方向に平行に (窓に背を向けて) 坐っているので、後ろの方にずり落ちていきそうな身体を、手を天井に突くことで支えて姿勢を保たなくてはなりません。パンフレットの 「Comfortable in a warm track vehicle」の中で「warm」はそのとおりでしょうが、「comfortable」かどうかは他に雪上車に乗った経験がないので、何とも言えません。

天井には塩化ビニルのシート (glass roof ではなかった〜シートはこの極低温下でも十分な可塑性を保っていました) が張られていて、車内の照明が消されているので、パンフレットの宣伝通り、頭上に広視界が開け、真上に北斗七星が見えます。そのうち、北東の空が明るくなり始めました。「始まった!」一刻も早く着いてほしくなりました。

2330。あてもなく走るかのごとく 20分余、山頂の小屋に着きました。ガイドたちは、小屋の外で焚き火を起こし、小屋の内でも暖房や紅茶の準備にまず忙しかったようですが、私を含めた客たちは小屋の正面の広場へと飛び出しました。確かに、周囲の山よりも標高が高く、頂上付近の広場には木が少ないので、「much clearer & wide-open aurora view」という広告のとおりです。立ったまま、ぼーと空を見上げる人、シートを敷いてその上に寝転がって天を見つめる人、早速カメラのセッティングに取りかかってファインダーを覗く人、と様々です。

雪上車に乗っているうちに始まったオーロラは前夜同様、東〜北の地平線を両端とした弧を描く白 〜 薄緑色の帯でした。そのうち、右の方の光が上空へと伸びていき、カーテンが風にゆっくりと揺られるように動き始めました。Quiet arc → rays (垂直の光の線) → カーテンのように見える、と教科書通りの展開です。しかし、薄い白〜緑色のままで、それ以上濃い光のショーはついに現われませんでした。

これに対して、弧の左の方は Hale Bopp 彗星が見えていた方向ですが、こちらの光はついに大きくならず、比較的早く消えてしまいました。

0100。視界のすべての範囲からオーロラらしい光は消えてしまいました。それからの暫くは、皆オーロラを見ていたときの態勢を維持していたようですが、15 分ほども経ち、星以外には空に光はなし、という状況が続くと、潮が引くように人の移動が始まりました。立ってオーロラを見ていた人はいち早くキャビンの中へ避難したようですし、シートを広げた上に大の字になっていた人もぶつぶつ言いながらシートを片付けてしまいました。三脚にカメラ、という人達が一番未練がましそうでした (私を含む) が、やはり三々五々、三脚ごと、キャビン方向に戻って来、さっきまで人で埋まっていた広場には誰もいなくなりました。屋外に留まった人のほとんどは焚き火に集まってきました。炭が赤々と燃えているだけで、高々と炎が上がっているわけではないので、手足をかざしてもちっとも暖かくはありませんが、顔は凍りついていたのが少し弛む感じです。背後の寒暖計は摂氏に換算して -22℃を示していました。オーロラを待つのに、前夜のような孤独に耐えるという要素がないので、かなり楽でした。

焚き火の周囲では、大阪弁が唯一の言語で、「おでん (関東煮 とは言わなかったが) 売ったら、売れるやろなぁ」「ホンマホンマ」「3個で $10 位かなぁ」「そんなん高すぎるでぇ、日本のコンビニやったら 1個 ¥100 位やで」「ほなら、3個で $5-」「それやったら売れるかもしれへんなぁ」「うん、買うわ」。片隅では誰かが口笛で「風の谷のナウシカ」の腐海の曲の20小節程度を飽きもせず繰り返しています。

ガイドがキャビンから出てきて、花火を打ち上げ始めました。ひゅるるるる〜と白く輝く玉が上がっていき、ぽ〜ん、とはじけて赤や緑の鮮やかな光が地面を明々と照らします。「この方がオーロラよりも綺麗なんとちゃうか」

キャビンの中は自分が立つ場所を捜すのも大変なくらいの混み方でした。中央の机では紙コップ入りの飲み物 (この中味が多分、紅茶なのでしょう) を提供しているようでしたが、机にはとても近づけませんでした。喉も渇いてないし、利尿作用のある飲み物が欲しい状況でもありませんでしたが。

そのうち、再び右下方がぼーっと明るくなったので、キャビンから出ました。しばらく暖かい中にいたので、かえって寒さが厳しく感じられました。特に日本でのスキーの服装で済ませてしまっている、即ち一番脆弱な装備である、膝から上の部分が痛い。

何人かの人がキャビンを出ましたが、皆キャビンのすぐ近くに張り付いたままです。それは賢明で、オーロラは少し濃くなっただけで、動いたりすることもなく、すぐに消えてしまいました。一番遠くまで出掛けていた、といってもキャビンから 20m も離れていませんでしたが、おじさんが「あ〜、今晩はあかんかったなぁ」と言いつつ、三脚を持って撤退してきました。それが潮時で、「帰るぞぉ」などという案内はありませんでしたが、ガイドが火の始末をし、帰り支度を始めました。

0200。各車一斉に始動、0220 ロッジ帰着。



[Access Counter]

[Previous] Chena のオーロラ観察位置の review

[Previous]Chena Hot Springs Resort の目次

[UP] Alaska 旅行の目次

Last Modified : Oct. 21, 2001