Whittier - Anchorage

Whittier - Portage は Alaska 鉄道

'00 June には Whittier - Portage Glacier visitor center 間の道路が開通します。Whittier - Portage 間を Alaska 鉄道に頼らなくなる可能性が強いと考えられます。この旅行記も過去を偲ぶものになるでしょう。

9 月 5 日 (木曜日)

[Photo of Alaska Railroad at Whittier]
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1400。 Whittier 入港。 港、といっても、岸壁付近にお土産屋、アイスクリーム屋等何軒かの小屋が並んでいるだけです。山の麓に、町の人の約半数が住んでいるというベージュ色 14 階建てのアパートが見えてます。(町の人口約 300人)
あきれるほどの青空の下、ほぼ緑色の山々によって港町全体が周囲と隔絶されています。我々を迎えた Gray Line のバスの運転手は「長年運転手をやってるが、こんなカンカン照りは珍しい」と言っていました。ここに陸軍によって港が開かれたのは、悪天候のことが多く敵 (日本) に見つかりにくいから、という理由だったそうですから、こんな天気はたしかに珍しいのでしょう。
この町への陸上交通手段は鉄道以外には存在しません ('96 当時)。歴史を振り返ってみましょう。日本による真珠湾攻撃直後、基地、港、2つのトンネルを通って Alaska 鉄道の本線に繋がる鉄道の建設予算が議会で承認されました。湾口に建てられている灰色の 6階建てのアパートは、その当時の軍人のアパートで (一般市民はこの町には住めなかった)、図書館、病院、射撃場、郵便局、劇場、ボーリング場… と何でも揃っていて、「The city under one roof」と呼ばれていたそうです。1964 年の地震で亀裂が入ったため、今は無人になっているようですが。
岸壁片隅のお土産屋さんでは、日本製のレンズ付きフィルムも売っています。アイスクリーム屋からは「『large, medium, small』の中から small を選んだら、大きな玉を 2つも積み上げられた〜」と言いつつ、女性たちが帰って来、その割には苦もなく平らげています。列車の駅ホーム横にある白地に黒い縞の入った建物はエスプレッソ屋で、Whittier 一美人の若い女性が店番をしていることがあるそうで、現地の若い男性ガイドは必ずここでエスプレッソを飲むそうです (^_^;)。
しかし、青山はそんなものには目も呉れず、長い列車の先頭へと走っていきました。
ちょうど、機関車の機回し中でした。大小2連の DL が編成に連結するところでした。先頭の DL にはタンクローリー車が横付けになって燃料を補給しています。自動車も鉄道に運ばれなければ来られない土地だというのに、ここでわざわざやらなくても…と思うような作業です。その後に、木板を敷き詰めた無蓋貨車が何両も連結されていて、はるか後方の客車が見通せないくらい。この無蓋貨車に車を載せて、山向こうの Portage との間を往復しようというわけです。貨車間には鉄板が渡されています。自動車はエスプレッソ屋の横にあるホームから無蓋貨車の後方の車両に乗り込み、そのまま、貨車上の木板、車両間の鉄板を前進して、順に詰めて積み込まれることになります。
バスも含めて車の乗客は鉄道で運搬される間、自分の車から降りることはありません。貨車上でパーキングブレーキを引くだけ。車は 3〜4列に 10台/ 列くらいが積み込まれるのを待っていました。キャンピングカーが多いように思われました。青い制服のお姉さんが首から黒い袋をぶら下げて並んでいる車を回り、切符を売っています。車を持たない客はいそうになく、目的地の Portage でも Anchorage 方面にも Seward 方面にも、列車には接続していません。この列車の名前からして「Whittier Shuttle」というくらいです。なのに、自動車を積むための貨車の後ろに、荷物車が 1両、総2階建ての客車が 3両も連結されているのはどうしたことでしょう…
1445。青山もバスに乗り込みます。やがて、貨車への積み込みが始まり、我がバスも貨車上をゴトゴト進み、前のバスに踵を接して停まりました。
運転手「よ〜し、うまくいった」
乗客 (パチパチ)。
バスの運転手の中には、「ボク、この経験今日が 2度目なんだよね。ドキドキしてるんだ、今。」と冗談を飛ばす人もいるそうです。無論、皆、経験豊かで、事故が起こったことはないようです。
自分の車の積み込みが終わっても、まだ積み込みを待っている他の車があるわけで、列車が発車するには間があります。その間、バスの運転手はテレビの人気アナウンサーの物真似で乗客を笑わせているが、あおやま にはちっともわかりません。
1530。列車出発。すぐに第一のトンネルに入ります。バスはエンジンを切り、バッテリーが上がってはいけないからと車内灯も切ります。車内は当然真っ暗になり、客の話し声は少なくなり、眠くなりました。このトンネルは長さ 13,090ft で Chugach 山脈の末端の山の下をくぐるのだが、完成には 6カ月を要し、完成当時世界 4位の長さだった由。
1546。トンネルを出ました。 左窓正横の Portage Lake に後方からの Portage Glacier が流れ込んでいます。Anchorage に近く、観光に手頃な山岳氷河で、いい眺めには違いないが、さっき氷河の末端まで行ったせいで、箱庭を見るような気がします。Beaver の巣やダムが見えました。Moose や black bear がよく見られるところらしいけれど、さすがにそれは見えませんでした。すぐに、岸まで氷片が押し寄せている Portage Creek を渡って、
1547。第二のトンネルに入る。これは長さ 4,910ft だから、たった2分で通り抜けてしまいました。 1602。左側に鉄道の本線が見えてきました。一旦、本線に入った後、逆行して、ホームに停まります。ホームといっても、 Whittier にあった、車の積み込み等のために土を盛り上げただけものと同じものだけど。他に側線が見あたらないところを見ると、Seward と Anchorage を結ぶ本線上に停車して車の乗降をするらしい。ま、それだけ本線の運転本数が少ないのですが、思い切った運用をするものです。
これが Portage 駅だが、Whittier と違ってお土産屋ひとつありません (商売になりそうな気もしませんが)。無論、駅舎はありません。ただ、隣接する Highway に「Whittier Shuttle はここで整列」という標識があるだけ。道路の向こうに木造の小屋が一軒建っているように見えますが、これは Alaska 大地震時に津波で流されてきたものだそうです。
1617。我がバスは列車を降り、Seward Highway で Anchorage を目指します。左に広がる泥色の水面は Turnagain Arm。Cook Inlet を発見した後の Captain Cook がこの湾に入り、航路を発見できずに逆戻りしたのが由来といわれるもの。
Girdwood で線路を横切ります。線路の向こう、左の海寄りでは土盛り工事の真っ最中ですが、Highway の拡幅工事で、来年夏に完成の暁には、対面通行が解消される由。
右手の山は Alyeska Ski Resort。'94 年 8月には 60 人乗りのロープウエイ (TRAM) とともに 307 室のホテルが出来たが、持ち主は、同名のホテルとスキー場を富良野, 苗場, 奥志賀等でも経営している日本の大手私鉄会社で、リフトの 1日券の $35 は高い、と地元で不満の人も多いようです ('97 当時)。それでも、Turnagain Arm を眼下に見下ろして滑るのはさぞ気分が良さそうです。
(ここで ski をしたことがある日本人に何人かお会いしたことがありますが、皆様の評判はよいようです。)
(Hotel には後に、Westin の資本も入りました。)

「そうだ、Alaska の冬は昼が極端に短いんだったな、ナイター設備はあるのかしら?」
「もちろん。どこのスキー場でも」
つまらない質問をしたものです。
このあたりには本当に「底なし沼」があるそうです。表面が氷河で運ばれた細かい砂で覆われている水面 (Turnagain Arm はその典型) に不案内な人がときどき入り込んでしまうそうです。2年ほど前、子供が沼に落ち、親が引き上げようとしたが駄目で、ヘリコプターで吊り上げることになった。が、その結末は、沼に引き込まれる力との競争となり、親の見ている前で子供の胴が腰のところからちぎれる、とのいう形でついたそうです。大人でも、膝まではまってしまうとまず抜けられないそうで、海の場合、干満の差が激しいから、まごまごするうち、溺死する人が毎年数人いる由。地元の地理に詳しい人は事故に遭うことはないそうでしが。
1730。西日を浴びつつ、Anchorage のホテル到着。
今日という今日は銀行で日本円→USD の両替に行かなくては。

Whittier - Portage 間道路建設情報

'97 に道路建設工事が開始されましたが、それまではこの計画は住民等の強い反対に遭っていました。
完成した道路は、Portage Glacier Visitor Center 付近から始まり、トンネルと渓谷を抜けます。有料になりますが、通行料や運営等の詳細は未定で、6月の開通までには決定されるとのことです。
この道路の開通で、Whittier を訪れる観光客は現在の毎夏 10万人程度から '02 には 120万人/年 へと激増すると予想されています。

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Last Modified : Apr. 8, 2001