うぐいすの  初鳴きせわし 猫の影
たんぼ道  傘があちこち  新一年
春の雨  土の香におう  アスファルト
黒髪の  香りゆかしき  春は来ぬ
新しき  靴履いて行く  定年日 
咲く桜 散りゆく桜も みな桜
ベランダで  月と花火と  酒と風
遠花火  とろんと鳴りて  風立つぬ
涼風や  雷神去りて  法師蝉
闇の中  犬も鳴きたる  残暑かな
まだ死ねぬ 声を出したり あぶらぜみ
あまがえる お前もいつか がまがえる
観音が  微笑み迎ふ  萩の寺
秋の夜の  あと一杯の  酒の味
原っぱの  子らの先頭  赤とんぼ
運動会  歓声残りて  あかね雲
きりぎりす  雨だれ数ふ  闇の奥
かりがねが  夕焼けを裂く  鳰の海
老木に  柿の実ひとつ  無人駅
赤とんぼ 観音様に 代参り
明月と 還暦祝いて 手酌酒
 
枯れ枝に  実のごとくなる  すずめの子
南吉の  手袋欲しや  星降る夜
四巡りの  除夜の音聞けり  年おとこ
雪の富士 車窓そびえて 地酒あり
困り果て 窓拭き残したり 越冬蛾
播隆に 拝みて仰ぐ 雪の笠
年の暮れ 生まれたわけを へそに聞く
 老いて病み また病みてもなお 待つ桜



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