SEINAN GAKUIN OB ORCHESTRA
REGULAR CONCERT #26
曲目解説

 

序曲「ローマの謝肉祭」
ベルリオーズ 作曲   (演奏時間:約9分)

 

 エクトル・ベルリオーズ(1803-1869)は、メンデルスゾーンやシューマンと同じロマン派中期の作曲家に位置付けられますが、当時としては 大掛かりな楽器編成や管弦楽法を駆使して、≪幻想交響曲≫に代表されるユニークな作品を世に送り出しました。≪ローマの謝肉祭≫は、初演に失敗し再演の見 込みのなかったオペラ≪ベンヴェヌート・チェルリーニ≫の中からモチーフを取り出し、演奏会用の序曲として1844年に発表されたものです。初演は大成功 をおさめ、現在に至ってなお演奏機会の多い曲となっています。

 曲は、イタリアの舞曲であるサルタレッロ風の颯爽とした序奏で始まります。続いてコールアングレとヴィオラが愛の二重唱の主題をゆったりと歌い、金管楽器と打楽器も加わって徐々に活気を増していきます。その後、木管楽器による上下行の速いパッセージを経てオーケストラ全体でエネルギッシュなサルタ レッロを展開し、ファゴットやトロンボーンが愛の主題も取り込み奏しながら、爽快にして華やかな終曲へと突き進んでいきます。


(文責:95期Violoncello 伴 徹哉)

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バレエ組曲「牝鹿」
プーランク 作曲   (演奏時間:約23分)

 

 フランシス・プーランク(1899-1963)は、20世紀フランスを代表する作曲家です。1923年、若干24歳の彼は、当時バレエ・リュス (ロシアバレエ団)を率いていた総合芸術プロデューサーのセルゲイ・ディアギレフから依頼を受け、〜3人の若い男と16人(!)の可愛い娘たち=≪牝鹿≫ が、サロンで無邪気に戯れる〜というあらすじのバレエのために音楽を作曲しました。本日演奏する組曲版は、のち1940年にプーランク自身が管弦楽の編成 を改訂したのちに5曲を抜粋したものです。

 20世紀というと理屈っぽくて難解、はたまた不協和音満載のハチャメチャな現代音楽なので は?? 心配はご無用です、あらすじのとおり若々しく親しみやすい楽しい音楽になっています。各楽器の音色を生かした表情の多彩さと、時折耳に残る不思議 な和音。フランス特有の洒落っ気と軽みとともにお伝えできればと思います。プーランク、なんか好きかも!と感じていただけたなら、ぜひ次は管楽器のソナタ などを聴いてみてください、ハマることうけあいです。

第1曲 ロンドー…ヴァイオリンとトランペットの飛び跳ねるようなテーマに続いて、エレガントなメロディが各楽器に受け継がれながら奏されます。

第2曲 アダージェット…オーボエ、弦などによるセンチメンタルなフレーズから、金管楽器が強奏で登場、徐々に軽やかな歩調に。

第3曲 ラグ・マズルカ…追いかけっこを思わせるスケルツォ的な楽章。後に続く短調への移行、めくるめく拍の変化、楽器の歌いまわし方はいかにもjazzy。

第4曲 アンダンティーノ…小道をのんびり歩くようなイメージ。散歩の終わりは唐突に訪れます。

第5曲 フィナーレ…にぎやかな終曲。コントラバス、テューバの下降線からチェロ、ファゴットのアンニュイなフレーズへ。ここからもまたjazzy。

(文責:95期Violoncello 伴 徹哉)

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交響曲第3番 ハ短調 「オルガン付き」
サン=サーンス 作曲   (演奏時間:約35分)

 

 サン=サーンス(1835-1921)は音楽家として、作曲家として、そしてピアニスト、オルガニストとしても活躍した人物であり、ベルリオーズ には「彼は何もかも心得ている」と言わしめ、リストからは「世界で一番偉大なオルガニスト」と賞賛された。普仏戦争敗北後には、フランス国内の作曲家を奨 励するため「国民音楽協会」を立ち上げ、またフランス近代の器楽曲の名曲を生み出す基礎づくりにも奔走した ── それが偉人・サン=サーンスという人物である。

 しかし、果たして彼の人生は栄光と偉業のみに彩られたものだったのだろうか。

  サン=サーンスは幼少期から叔母によって束縛され、彼女の死後は母親に溺愛された。そんな人生から逃げ出すかのように、彼は40歳のころ結婚し、息子2人 を授かる。そうしてようやく人並みの幸せを手に入れ過ごしていた時、彼は最愛の息子を2人続けて亡くす。その出来事は彼を失意の底へと落とし、その3年 後、彼は逃げてきたはずの母親の元へと戻って行った。≪交響曲第3番≫が創られたのは、そのような時期である。

 多くの交響曲が4楽章によって成り立っているのに対し、この曲は2部構成となっている。しかし、この作品には伝統的な4つの楽章が含まれている。

◆第1楽章 ──────
  嘆くような、どこか哀しみすら覚える序奏が奏でられ、曲は始まる。続いて、弦楽器によって暗く不安げな第1主題が霞の中から響いてくるように提示され、そ の主題が変容し、誘発し、穏やかな表情の第2主題も加えられ、第1楽章は進んでいく。間をおいて導入部の悲しげな音型がほのめかされ、多様なエピソードの 後、しだいに静けさへと向かう。
 弦低音のピッツィカートで一旦停止した後、遠くからオルガンが響いてくる。その和音に支えられ、弦楽器が静かに 瞑想的なアダージョの主題を提示する。続いてそのモティーフはクラリネット、ホルン、トロンボーンによって受け継がれ、まるで優しく包み込んで慰めるよう に奏でられる。第1楽章の最期は、コーダで神秘的に締めくくられる。

◆第2楽章 ──────
 第2楽章はエネルギッシュなアレグ ロ・モデラートのフレーズから始まる。第1主題の変容が続き、激しい中に幻想的な感じが明らかになってくる。プレストに入ると、シンコペーションに乗り、 ピアノのアルペジオと音階があちらこちらに姿を見せる。その後、再びアレグロ・モデラートが始まるが、続くプレストは重々しくいかめしいモティーフであ り、そのフレーズが次第にオーケストラの頂へと昇り詰める。
 第1主題がほのかに回想され、天空を仰ぐように消えていくと、世界が一気に開けるが ごとく、オルガンによるマエストーソが鳴り響く。完全に変容した第1主題が弦楽器とピアノによって提示され、続いてオルガンとオーケストラ全体によって反 復される。その後、3小節リズムで構成される展開部が続き、その後は静かで田園風のエピソードが繰り返される。そして、コーダに至ると、第1主題が最後の 変容を遂げる。そこでは3小節のリズムが巨大な規模の3拍子へと変化し、各々の拍は全音符によって満たされ、12個の4分音符が1小節を構成する。そのよ うな華麗なコーダがオーケストラ全体によって奏でられ、この作品は終結する。

 「私のすべてをつぎ込んだ」 ── サン=サーンスはこの曲を創るにあたり、そう語ったという。フランスのベートーヴェンとして讃えられていた彼にとって、この言葉の意味する作品は文字通り彼の人生の平穏、挑戦、栄光、そして苦悩すらも描いた作品なのではなかろうか。

 偉人と呼ばれたことなどない。偉人と呼ばれる人の苦悩も悲哀も知らない。
 ならばせめて、彼自身が込められた作品を通じ、彼の人生へ思いを馳せてみたい。

(文責:11期Horn 稲村 麻未)


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