SEINAN GAKUIN OB ORCHESTRA
THE 12TH REGULAR CONCERT

曲目解説

 

スラブ行進曲 Op.31
  ピョードル・イリイチ・チャイコフスキー(1840〜1893)作曲

 

 1876年に勃発したトルコとセルビアの戦争は、セルビアを支援するロシアとトルコの戦争に発展した。そこで当時のモスクワ音楽院長でチャイコフスキキーの師でもあったニコライ・ルービンシュタインは、兵士を励ますための音楽会を開催することにし、そこで上演する曲をチャイコフスキーに依頼した。それを受けて翌年1877年9月に完成したのがこの「スラブ行進曲」であり、この曲はロシア人の愛国心を高揚させるような仕上がりとなっている。
 冒頭4小節の序奏のあと、ファゴットとビオラにより奏される暗い旋律はセルビアの民謡であり、曲の中ほどでは、弦楽器とトロンボーン、テューバにより力強くロシア国歌も歌われる。テンポがアレグロに速まった後、曲は次第に高潮してゆき、突然アンダンテになってピストンとトランペットが勝利を告げるファンファーレを高らかに鳴らし、最後はアレグロで熱狂的に締めくくられる。

▲ページTOPに戻る

ピアノ協奏曲第2番ハ短調 Op.18
 セルゲイ・ラフマニノフ(1873〜1943)作曲

 

 映画「シャイン」の主人公で実在のピアニスト、デビット・ヘルプゴットが映画の中で弾いていたのがラフマニノフのピアノ協奏曲の第3番であったが、それ以来巷ではちょっとしたラフマニノフ旋風が吹き荒れている(と自分は感じている)。彼は19世紀末から20世紀前半にかけて活躍した作曲家であるが、ほぼ同時代の作曲家、たとえばラヴェル(1875〜1937)、シェーンベルク(1874〜1951)ストランヴィンスキー(1882〜1971)らに比べると古臭い作風なのが災いして、その人気のわりに評価はイマイチだった(と自分は感じている)。ただ、音楽史上最高のピアニストの一人であった、という評価は衆目一致しており、その超絶技巧と少々時代遅れのロマンティシズム、そして彼のピアノ協奏曲を以後名だたるピアニストが取り上げてきたおかげで、彼の作品群の中で最もポピュラリティーのあるジャンルといえよう。その中でも、この第2番は最も人気の誇る曲で、彼の代表作である。
 曲は3楽章構成で、第1楽章がモデラートのソナタ形式、第2楽章はアダージョ・ソステヌートの3部形式、第3楽章はアレグロ・スケルツァンドで自由なロンド形式となっている。

▲ページTOPに戻る

交響曲第6番ヘ長調Op68「田園」
 ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーベン(1770〜1827)作曲

 

 「田園」はベートーベンの全9曲の交響曲のなかで最も特異な存在である。まず形だけ見ても5楽章構成をとっているのはこの「田園」のみで、他8曲は全部4楽章構成である。さらに、各楽章にベートーベン自らの手で標題がつけられていることも、他の交響曲には見られない特徴である。また、ところどころ自然風景の描写があらわれ、とくに第2楽章の終わり、鳥の鳴き声などは絵画的描写の好例と言えるが、ベートーベン自身は「絵画と言うよりはむしろ、感情の表現」とこの交響曲について語っている。にもかかわらず後世に与えた影響はむしろ絵画的な描写の面が大きいというのは、何か皮肉な感じもする。

第一楽章:Allegro ma non troppo
「いなかに着いた時の愉快な感情の目覚め」
 冒頭から流れる有名な旋律が第1主題となるわけだが、この美しい旋律の中にたくさんの動機が含まれている。第2主題はハ長調に転じ、最初のコードはドミナントであり、チェロが主旋律をそして第一バイオリンが対旋律を奏でる。展開部では第1主題の展開が専らで接続音の他用が特に目に付く。
 そして再現部のあと、長大なコーダとなり、こちらも第1主題が中心となる。

第二楽章:Andante molto moto
「小川の風景」
 調は下属調の変ロ長調に移る。ソナタ形式。
小川のせせらぎにのって、第1バイオリンによって歌われるのが第1主題であり、これは後に木管に受け継がれる。第2主題ではニ短調をとり、まずファゴットによりうたわれて第1バイオリンよって締めくくられるときにはヘ長調に転じている。展開部では第1主題が中心となり、再現部では第2主題は平行調のト長調に変わっている。終止部では木管楽器による鳥の歌が聞こえてくる。

第三楽章:Allegro
「いなかの人々の楽しいつどい」
 スケルツォとトリオからなり、後はスケルツォ〜トリオ〜スケルツォ〜トリオ〜スケルツォとなっている。スケルツォ部ではスタッカートによるものとレガートなものの、2つの対照的な主題が歌われる。トリオ部では4分の2拍子のレントラー風の主題でできている。

第四楽章:Allegro
「雷雨、あらし」
 前楽章から切れ目なしに続く第四楽章はヘ短調に転じ、形式は自由なものになっている。最も描写的な内容で、ピアニッシモからフォルッテッシモに至る、急激なクレッシェンドやスフォルツァンドが効果的で印象的である。やがて嵐は静まっていき、終楽章へと移る。

第五楽章:Allegretto
「牧人の歌―あらしの後の喜びと感謝の感情」
 劇的な前楽章とは打って変わって、非常に穏やかで美しい冒頭の旋律がこの楽章の第1主題である。第2主題は第1主題から発展したものであり、性格的にも第1主題の延長線上にあるともいえる。形式はロンド・ソナタ形式である。

(文責:99期バイオリン小弥祐介)

▲ページTOPに戻る


INDEXに戻る