中戦車の主砲(75mm~76.2mm)
口径75mm〜76.5mmの戦車砲が大戦中期からの戦車の主砲になっていますが...
各国沢山の種類が在り、同じ口径でも貫通力を見るとずいぶん違っています。
貫通力も国に拠って計測方法が違うので簡単に比べることはできません。

どうも雑誌で良くやる戦車の能力を計算してベストテンを決めるようなものは
計算式がいいかげんで駄目です...

何か良い方法は無いか?と考えたのですが...

これは、単純に砲弾の運動エネルギーを1/2mV2で出して比べれば良いのでは?

(炸薬の量や種類(燃焼エネルギー)まで揃えて比べるのは資料が全部は揃わないので)
(無理ですが、初速や弾丸重量は揃います。)
後、薬筒サイズも揃うので大体のエネルギーまでは検算用に使えます
計算すると...
国、種類砲弾重量(m)速度(V)1/2mV2薬莢≒容積
米、75mmL316.8kg563.88m/s1081066349*862026cm3
米、75mmL406.8kg619m/s1302747349*862026cm3
ソ、76.2mmL416.3kg662m/s1380469384*932607cm3
日、75mmL386.6kg668m/s1472539424*963067cm3
独、75mmL486.8kg790m/s2121940493*101.53987cm3
米、76.2mmL517.0kg792m/s2195424540*943746cm3
日、75mmL566.6kg850m/s2389669____
独、75L706.8kg925m/s2909125638*1247700cm3
英、76.2mm7.7kg870m/s2914065576*1327878cm3
リー、グラント戦車の75mmL31は、かなり弱い砲で三号戦車(前面装甲50mm)を 倒すのに苦労した理由が解ります... (訂正、苦労したのはマーク3スペシャルと言われた前面装甲70mmの強化タイプでした。) 貫通力を見るとソ連の数値がやたらに低いのですが これで比べるとシャーマンとほぼ同じぐらいだと解ります。 (前期の敵は装甲厚(30+30mm)や(50mm)程度の三号戦車) ドイツの75mmL48砲と米の3インチ砲(76.2mmL51)がほぼ同じ (後期の敵は傾斜装甲のT34/76や装甲(50+30mm)や(80mm)のドイツ戦車) 前期のT34/76やシャーマン75mmの主砲と後期のドイツ75mmL48砲、米3インチ砲 との間にかなりの開きがあるのが解ります。 日本の75mm砲は、後期の火力に届いていないためシャーマンの傾斜前面装甲や ドイツ戦車(前面装甲80mm)を倒すのには威力不足ということになります。 四式戦車の主砲は、米の3インチ砲より多少良い程度でパンター、17ポンド砲(76.2mm) クラスにはまだ届かない... (1,000mで75mmというのは数値が低すぎるので、何か他に問題が在りそう...) 英国の17ポンド砲(76.2mm)、とパンターの75mmL70砲がほぼ同じ ドイツ軍が優先攻撃目標に選んだ訳がこれでハッキリ解ります。 口径の違う85mm〜88mmは、
T34/8585mmL559.2kg792m/s2885414*77.83%=2245718
ティーガー188mmL5610.2kg773m/s3047398*72.63%=2213325
ですが、 弾丸が装甲板を貫通した穴の体積が貫通力に比例するので [孔(砲弾)の半径]×[孔(砲弾)の半径]×[π]×[貫通孔の深さ] 口径が違って来ることによる貫通孔拡大エネルギーロスは、 75mm=>37.5*37.5*3.14=4415mm2 100% 76.2mm=>38.2*38.2*3.14=4558mm2 96.86% 85mm=>42.5*42.5*3.14=5672mm2 77.83% 88mm=>44*44*3.14=60792 72.63% ですが、単純にこの数値を引いても合わないのでもうひと工夫必要なようです。 (「米3インチ砲、独75mmL48」クラスと「英17ポンド、独75mmL70」クラスの間になるはず) (なのですが、数値は下のクラスに近すぎます...) (逆に75mmと76.2mmの差が3%以下になることを現しています。) (この先に進むと経験に基づく貫通力計算式、jacob de Marre. Moisson.) (になっていきます...) しかし、これで各国の数値を正常な値に直すことができそうです。 データー探しをしている時に、 アメリカの数値(70年代)は、アバディーンテストデーター自体が 射程距離に対する減衰度合いが少なすぎていた... 比べると昔のバリスティックデーターもこの傾向があるようです... ソ連の数値は真偽性が低いと言われていたが25年たっても同じ数値 なので、計測方法が違うとハッキリ解る。 「三号突撃砲短砲身」で前面装甲はリー・グラントの75mmL31はなんとか耐えたが T34/76の76.2mmL41にはかなわなかったという文章が在ったので計算してみました。 初めはソ連のAP-HEの威力を低く見ていたのですが [米、75mmL31 1081066]〜[米、75mmL40 1302747]&[ソ、76.2mmL41 1380469]の間で 実戦で明らかに判別できるほど差が出なければならないとなると... [米、75mmL40 1302747]APC、と[ソ、76.2mmL41 1380469]AP-HEの弾種類による差は かなり小さいと考えなければならない。(-5%程度?) 一般的なデーターを変換して検討... 米軍、垂直から30度傾斜した装甲板に対する貫通力(ヤード表示)
射程距離457m(500yds)915m(1000yds)1371m(1500yds)1829m(2000yds)
75mmL3160mm55mm51mm48mm
75mmL4066mm60mm55mm50mm
ソ連、垂直装甲板に対する貫通力(メートル表示)
射程距離100m500m1000m1500m2000m
76.2L41.288mm69mm60mm__49mm
sinα1/0.7 ( 71.7)( 56.2)(48.9)__(40)
ドイツ軍の75mm砲データーがsinα1/0.7当たりで計算してあるのでとりあえず 割って同じ計算方式で比べられるようにします。 (実際の傾斜面に対する数値は双方違うはずですが便宜上変換します。) 米軍砲をメートルに変換して比べると... 垂直から30度傾斜した装甲板に対する貫通力(メートル表示)
射程距離500m1000m1500m2000m
75mmL3160.5mm55.8mm52mm49.1mm
75mmL4066.6mm61mm56.4mm51.9mm
76.2L41.256.2mm48.9mm___40mm
注、この部分の計算は簡単な簡易法です。だいたいこんなぐらいぐらいで考えてください... ソ連の砲弾の値を500mの数値で比べると... 75mmL31の92%しか無い。エネルギー的には127.6%なのに 独ソ戦開戦時に50mm〜30+30mmだったドイツ戦車を簡単に破壊できるとされる数値にも 1,000mで48.9mm(戦場で使える30度傾斜数値)は不足のように感じられます。 最近のクルスクの戦いの話では、遠距離射撃のほうがドイツ戦車に効果的だったと書かれていますし (この時期のドイツ戦車はまだ増加装甲が完備されていなくて、50mm程度の薄い車両が多かった) (四号戦車の+30mm装甲装備型の生産が50%越えるのが11月から...) 戦場で使える貫通力と米国の75mmL31より明らかに強力だったという記載を総合すると 米国のV50貫通とソ連方式の差はかなりあったのではないかと思われます... 注、全体的に計算が雑なのでソ連兵器のデーターをもう少し集める必要が有りそうです。 (追加、ソ連の数値は、CP値と呼ばれるV75〜V80の) (かなり小さな値と判明、0度で5%、垂直から30度傾斜で10%大きくなると判明) (リー戦車の主砲については、材質別の貫通力が一般的に書かれていないため) (APで硬化装甲を射撃した場合(遠距離の場合砕けて最悪になる) (APCで硬化装甲を射撃した場合(シャーマンと比べた場合、M4系の貫通数値が)) ((対均質装甲が主に書いてあり比べると変に見えるため均質硬化を考えない) (場所から消えていった...)) AP=>対均質装甲、得意、 AP=> 対硬化装甲、最低... APC=>対均質装甲、不得意 APC=>対硬化装甲、得意 --------------------------------------------------------------------------- 独の75mmL24を追加すると 国、種類 砲弾重量(m) 速度(V) 1/2mV2 独、75mmL24 6.8kg 385m/s 503965 243*92 1515cm3 で問題外ですが... この砲の特徴は、火力支援(対砲兵用の榴弾射撃や歩兵征圧射撃)なので 炸薬を比べると 独、75mmL24 HE「850g」となっていて... 同じ米国の75mm砲「660g」、榴弾の威力が少なくて問題になった3インチ砲の「340g」 と比べると段違いです... この上は、 88mmL56砲(870g)、なので一ランク上の威力と言えそうです... 日本の97式57mm砲は(250g)、三式戦車の75mm砲は(540g)で少なめでした... さらに上は、90mm砲は(975g)、88mmL71砲は(1000g)でした... --------------------------------------------------------------------------- 注、 薬莢のサイズは一番広いリム部分の直径と薬莢の高さなので 容積を現しているわけではありません。 しかし、同じような形なので大体の炸薬の量を比べるのに使えます。 砲弾の種類はAP、APC両方存在する場合は、実用的なAPCの方を使いました。 (パンサーの側面に対する射撃実験を見ると75mmAP 180m 75mmAPC 720mで) (実際に使えるのはAPCの方) この数値は砲口で減速無しのエネルギーですが この数値で比べても中戦車はあまり遠距離戦闘をやらないので大丈夫でしょう... 何気なく見ている「初速」がエネルギーには二乗で効いていて同じ75mm〜76.2mmの口径でも 推進薬にかなりの違いがあると解ってもらえたと思います。

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