OR(オペレーションリサーチ)とは何か?

(軍隊で実際に式をたて演習部隊を使ってシュミレーション実験をした話が載ってる部分です。)
(かなり大掛かりな実験で戦術行動や地形による違いを数値で出しています。)

1.5 ORの実施例
(1)問題の定式化

(・・・前半は硫黄島の戦いを使って数式化について・・・)

P24
・・・交換比は、武器体系のみならず、戦術の適否とか部隊の練度などにも大いに関係しているはずである。そこでこの関係のしかたを表現する最も簡単な数式として

R=W+T+C+S+e

. W:交換比に占める武器体系の寄与分
. T:交換比に占める戦術行動の寄与分
. C:交換比に占める部隊ごとの個差(練度)の寄与分
. S:交換比に占める慣れの寄与分
. e:誤差

・・・交換比は単純和という形で構成されていると考える。・・・
eはここでは取り上げなかったいろいろな要因を一括して誤差という形で表現・・・


1)まず候補とされているいろいろな武器体系で中隊を装備したうえで戦闘させる。
2)その結果に基づいて交換比Rを算定する。
3)交換比Rの中からT,C,S,e,の寄与分を取り除いて(2)式によってWを求める。
4)Wの値の大きい武器体系を効率のよい武器体系とみなす。

一連の分析手順が明らかになった・・・
つまり、当初の”良い”とか”戦勝の確保”などというあいまいな概念ではなくて、”より大きいWを与える武器体系”というふうに明確な定量的な問題にまで煮詰めることができたのである。

(あいまいなものではなくて数値として使えるものをORを使って取り出す。)

P24〜25
(2)代替案の探求
次は、分析の対象として取り上げなければならないいろいろな武器体系の案を作る仕事である。これはいうなれば固有技術の問題であって、ORグループだけで処理できる性質の問題ではない。そこで参謀部を含めた将校グループが編成され研究討議を重ねた結果、検証の対象として取り上げるべき武器体系W1,W2,W3,W4,の四案絞ることが決定された。

P25
(3)環境(条件)などの探求
取り上げられた武器体系の緒案がどのような中隊を対象にして装備され、どのような戦術任務を達成する際にその機能を発揮しなければならないかを研究することは、きわめて大切である。これに関しても前述の将校グループが熱心な討議の末、議論百出のこの問題を次のように整理してくれたのである。

1)中隊の要求される戦術任務としては、次の4つを考慮の対象とすること
T1:弱い陣地に対する防御任務
T2:弱い陣地に対する攻撃任務
T3:強い陣地に対する攻撃任務
T4:強い陣地に対する防御任務
1)歩兵中隊の全数を構成要素の特徴に着目して4つの群れに類別し、各群の代表中隊をそれぞれC1,C2,C3,C4,としてそのおのおのについて検討すること(これは前述の個体差に関する配慮である)

(4)モデルの作成
・・・交換比なるものを机の上だけの計算で求めることは・・・到底不可能である。・・・求めるためには実験に訴える以外にない・・・
実際の戦闘を実験することは不可能・・・いきおい模擬戦闘に頼らざるえない・・・ORの常套手段でシュミレーションと呼ばれる手法である。
(演習の方法の説明かなり大掛かり)
広い演習場を100m×100mの升目でくぎり、歩兵、火砲、戦車などはこの座標を使って表示・・・
射撃は審判官が無線で総裁部に情報を集め電子計算機で確率計算をして標的に結果を審判官が伝えるという形が1分以内に完了する。・・・

模擬地雷などの舞台装置も数多く用いられ、戦車などは歩兵から実弾射撃を受けるように仕組まれた。・・・

大規模な実験で多額の費用を使うため、実験の回数をできるだけ減らし、しかも精度を落とさないようなうまい実験のしかたが・・・

このような組み合わせをグレコランテ方格型と呼ぶ。
実験計画法理論、により合計16回の実験を行えば良いとわかる。
P27
実験順序 中隊名C1 C2 C3 C4
. 1 W1T1 W2T3 W3T4 W4T2
. 2 W2T2 W1T4 W4T3 W3T1
. 3 W3T3 W4T1 W1T2 W2T4
. 4 W4T4 W3T2 W2T1 W1T3

(5)実験結果の分析
実験は約二カ月にわたって実施された。そのねらいは交換比Rと武器体系のRへの寄与分Wとを求めることにあるが、模擬戦闘の結果が(1)の式で近似できるという仮説があらゆる論理の基礎になっているわけだから、この点を確かめておくことが絶対に必要であった。

実験の結果はこの仮説の妥当性を示していた。

実験順序 中隊名C1 C2 C3 C4
. 1 2.06 1.04 1.04 0.68
. 2 1.56 2.26 0.88 0.62
. 3 1.04 1.50 2.32 2.30
. 4 2.16 0.83 2.40 2.15

・・・ORグループが計算の結果から得た結論を要約すると次の通り・・・
1)中隊ごとの固差は認められない。つまり、交換比への寄与という点ではC1,C2,C3,C4,に間に著しい差が認められない。
P28
2)どの中隊も実験を重ねるにつれて慣れてくるが、この”慣れ”は交換比に無視でできない影響を与えている。(このように結論しても間違う確率は0.05である。)

3)武器体系の相違は交換比に無視できない影響を与えている(このように結論しても間違う確率は0.01である。)・・・現段階では武器体系W1が好ましいようである。

4)戦術単位の相違は交換比に無視できない影響を与えている(このように結論しても間違う確率は0.05である。)また当然のことながら攻撃行動よりも防御行動のほうが交換比を高めるうえに有利に作用している。

6)報告および批判
以上の結果参謀部に報告され、多数の高級将校を交えて活発な批判、検討が行われたのであった。その際、表明された意見の主なるものは次のとおりである。

(意見1)(2)式:R=W+T+C+S+e という仮説は大胆すぎるのではないか?

(意見2)戦闘記録のような信憑性の少ない記録を論拠とする数式体系(1)の妥当性はどうか?

(意見3)模擬戦闘と実戦との本質的な相違が結論に及ぼす影響はどうか

(意見4)有効さの測定として交換比を分析の中心におくことの可否(これは他の問題でも大議論をよんだことがある)

そしてこのような意見が表明されたにもかかわらず、最後に参謀部はこの作業を”有用な情報をもたらした作業”と評価したのであった。

ここでもう一度作業全体を振り返って見よう。この作業はあまりにも粗削りで、厳密な意味では”科学”などとよべる筋合いのものでは決してない。しかし全体を通じて何かしら”科学的”な態度や方法がうかがえることも事実である。現実の問題として、複雑なしかも実験不可能な決定問題に接近するには、この程度でがまんせざるえないことも多いのである・・・

(かなり謙遜してますが、戦術行動や慣れなどによる違いが計測できたということはかなり重要です。)

(”交換比を分析の中心におくことの可否”という部分では、反対する将校が、クラウゼヴィッツ的な「自己の損害を最小限にしながら敵に最大の出血を強いる」ではなくて任務の達成と兵の損害を別に考えてる可能性があります。)


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