食と文化の謎 マーヴィン・ハリス
第一章「肉がほしい」

資料として要約

◎人類の食生活
動物性食品(肉)と植物性食品(穀類)はそれぞれ人類の食生活において根本的に異なる生物学的役割を果たしている。P13

植物の栽培化と動物の家畜化に先立つ何十万年もの間。我々の先祖の狩猟採集生活者達は…P44 控えめに見積もっても、常にカロリーの35%は獣肉から取っていた。(現代アメリカ人の平均消費の4倍、二倍のコレステロール、脂肪は1/3)

注意、現在我々が食べている肉は先祖が食べていたものとはまったく違う。
主に食べられている家畜は30%以上の脂肪を含んでいるが野生の草食動物は約4%程度の脂肪しか持っていない。

(注、狩猟採集民が狩猟に費やす時間は1日2、3時間にすぎず1日8時間働くとか、週5日働いて2日休みとかいう現代の感覚から見れば、毎日キャンプして遊んでるようなものだった。)

(農業を発見するまで、いつも飢えていて悲惨な暮らしをしていたというような現代人の思い込みは間違い。しかし、土地面積当りの食料収穫量は農耕より少ないため人口が増えないような工夫が必要だった。)
(主なものは戦争と産児制限をセットにした女赤ん坊の間引きと同族間の絶え間ないいさかい)
戦争に役に立つ男の方が大事に育てられ女の赤ん坊は捨てられてしまう。

医療技術が全然未発達なので産児制限は中絶よりも生まれた赤ん坊を殺してしまうほうが母体にとっては安全だった。

ローマの女の赤ん坊だったら捨ててくれという手紙からこの時代間引きが一般的に行われていたことが判る。キリスト教の時代になるまで続く…

日本では戦国時代に布教に来たキリスト教徒達の報告に海岸や川に捨てられる大量の女の赤ん坊の話が出てくる。

ヤノマモ族の間引き




これが男尊女卑文化の元になった。

「男が威張ってるのは石器時代の風習のなごり…」



1909年〜1976年の間に米国の平均寿命は40%延びた。その間、肉の消費量は35%増えている。(平均寿命の高い国はどこでもおなじような食の変化があった。)

…カロリーの35%を肉から取る。1日に788gの赤身肉を消費するように適応していた。(何十万年もの間の食生活)P44

(これが)「人類に本来遺伝的にプログラムされた」食事パターン…穀類が人類の主食になったのは、ほんの一万年前にすぎない。P45
(注意、一万年では遺伝子が適応するには短すぎる。現代人の遺伝子は石器時代の遺伝子のままだといって良い。)

麦や米中心の食事が肉中心の食事より人間の本性にとって「自然」なものであると主張する人は、文化にせよ、自然にせよ、何も判っていない。P45

○猿
つい最近まで、猿類や類人猿は完全な菜食主義だと人類学者は信じていた。しかし、今日では、野生動物の綿密、細心な観察の結果P24 霊長類の大部分は我々と同じく雑食であることが判っている。その上猿や類人猿の多くは雑食性であるだけでなく、肉にありついた時に大騒ぎするという点でも人間によく似ているのだP24…

人間以外の霊長類の肉食についてのもっとも驚くべき発見は動物界において我々人間に一番近い親類であるチンパンジーが熱心な、またかなり上手な狩人であることだ。(人間は唯一の「殺し屋」猿である、という流布した説など、所詮こんなものだ)。P26

チンパンジーは時間の10%を小動物の捕獲(狩り)に使っている。(若いヒヒ、他の猿類、ヤブイノシシなど)

チンパンジーと同じく樹上生活する小さな猿類を集団で狩る。(大勢のチンパンジーが見事に包囲して追い込んで捕らえる。)(同じ環境に生活する弱者を食べる)

成獣は二週間に約1オンスの肉を食べる。


○ヒヒ
野生のヒヒは普通1日の大半を植物性食料を食べて暮らす。しかし、仕方なく「菜食主義者」となっている多くの人間の場合と同様、ヒヒはほんの僅かしか肉を食べないのは、そうしようとしているのではなく、そうせざる得ないからだ。手ごろな獲物を見つけたり、捕まえたりするのが難しいためだ。…
観察したヒヒはどちらでも選べる場合は必ず動物性食品のほうをまず食べる、根、草の実、果実は2番目、木の葉草の葉は3番目P25


○栄養学
食習慣における比率は文化によってあまりにも大きく違っていて、それゆえ、人間は動物的食物を必ず食べなければならないものと本能的に認識しているなどという考えを支持することはできない…より納得しやすい説明をするなら、我々に固有の生理作用および消化作用が我々に動物性食物の方を好むように学習させる。ということだ。P27

1.蛋白源として
動物性食品は大部分の植物性食品より蛋白源として優れている。
肉=15%〜40%、穀物は2.5%〜10%、イモ類も3%以下、蛋白質の質も劣っている。(例外は大豆のみ)

蛋白質はアミノ酸がらできていて(これは人体の構成物質で重要な栄養源)22種類ある。その中で10種類は人間は合成できず栄養学では必須アミノ酸と言われている。

必須アミノ酸は食物から取らねばならないが動物性食品の方が使いやすい形でこのアミノ酸を含んでいる(人体の構成物質と同じだから当たり前だが…)。しかし、植物性食物は含有率が偏っていて穀物と豆類などを一緒に食べるなどのように工夫しなければならない。

このように、量的に見ても質的に見ても動物性食物のほうが優れた蛋白源である。P30

2.ビタミン供給源として
獣肉、魚肉、鶏肉、乳製品は、ビタミンA、すべてのB、Eなどの供給源でそれを濃密に含有している。

とくに、ビタミンB12は動物性食品からしか取れない。不足すると、悪性貧血、神経失調、精神障害行動などを引き起こす。

例として、インドからイギリスへ移住してきた、ヒンドゥー教徒菜食主義者が悪性貧血に成る率がインドより大きい… これは、インドでは植物性食物に昆虫の死骸などが混じりこれがB12の供給源となっていたのがイギリスでは殺虫剤を使用ししかも果実や野菜などをよく洗ってから食べるためにこの供給が絶たれるため。

ビタミンD、日光の少ない高緯度地方では卵、魚、レバー、などが最善の供給源になる。


3.繊維質、脚気か貧血症か?
豊かな工業社会では繊維質不足が重大な問題になっているが、先史、有史時代を通じて、問題は繊維質が少なすぎるより多く取りすぎることだった。20世紀になるまで繊維質はもっとも手っ取り早い安い食物だった。(注アジアでは、農民は穀物を育ててもほとんど税や年貢で取られてしまい葉っぱのような繊維質が主食だった。ヨーロッパでは精製した小麦粉と不完全な精製の小麦粉)

…精製の不完全な穀物を食べていたので誰もが必要以上に繊維質を取っていた。その上野菜や果実から繊維質を取るのは無用どころかいくつかの危険をもたらした。
現代では穀物の外皮に含まれるビタミンB1が重視され(江戸時代は脚気などのB1不足から来る病が流行していた)繊維質も大腸ガンとの因果関係が言われるが…
歴史的には逆に精製粉を食べられない人々はフィンチ酸が鉄や亜鉛と結合してこれらのミネラルを奪うことからくる貧血症になる危険が大きかった。

いずれにしても食物に動物性食物をほんの僅か加えるだけで精製しすぎ、不足、による栄養素不足を完全に補える。

4.ビタミンを溶かす性質から
脂肪はビタミンA、D、E、K、などの脂溶性ビタミンを吸収し運び蓄えるために必要と言う理由だけでも健康に不可欠だ。

脂肪の量を厳しく制限した食事は身体のビタミンA先行物質吸収力を落とし眼球乾燥症と呼ばれる眼病を引き起こすP40

5.脂肪、油その重要性
ほとんど世界中の肉に対する渇望の多くは本当は、脂ののった肉に対する渇望である。
P41〜42
あらゆる食物がほとんど底をつく「飢餓期」の最盛期になると狩猟採集民は、しばしば仕留めた獲物の肉の特定部分を時には全部を食べないで捨ててしまう。

オーストラリアのピチャンジャラ族…仕留めたカンガルー…肉に脂肪がどれだけ付いているか尻尾で比べ、その様子が芳しくないとそのまま捨てて行く。


アメリカ大平原地帯の古代の野牛狩りの跡…殺した野牛の数箇所だけが持ち去られており…その他の部分は食べられもせずに倒した場所にそのまま置き去りになっている。

狩人達が脂気の無い肉ばかりを食べていると餓死する危険がある…

エスキモーのような生肉だけを食べて健康を保つには…(防寒用に脂肪を蓄えるアザラシのような)脂肪の多い肉の場合にのみ成立する。

P42〜43
ウサギ飢餓
脂肪の少ないウサギ肉だけの食事をすると…食事の量は、飢餓感からどんどん増え一週間後には3〜4倍食べてしまう。(飢餓と淡白毒の症状がでる。)食べても食べても空腹で食べすぎで胃袋が膨れて、一週間〜10日で下痢になり、数週間で(脂肪を取らないままだと)死に至る…



○消化器官

我々の消化器官は繊維質の食物に適応していない「高栄養で消化の早い高品質な食物」に適している。ゴリラのように繊維質の食物に適応した動物は(エネルギー効率が悪いので1日の大半を食べることについやさなければならない)絶え間なく食べ続けゆっくり消化し、巨大な大腸で発酵させてセルロースを分解し…(消化には35時間かかる。)

人間の大腸は短く主に水分を吸収するためにある(消化用に分泌した体液の回収)(消化には25時間しかかからない。)



生態人類学の紹介用

食と文化の謎 マーヴィン・ハリス
第一章「肉がほしい」の一部分 資料として要約


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