環境ロードプライシング

  ロードプライシングとは、特定エリアに入る自動車から通行料を徴収することで交通需要の調整を図る、いわゆる「交通需要マネジメント」手法の一つ。もともとは渋滞対策を主眼としていたが、最近は排ガス汚染対策の有力な一方策として脚光を浴びるようになった。先陣を切ったのは東京都で、昨年11月わが国としては初めて具体的な導入方針を表明した。そして6月、これに続く形で環境、警察、建設、運輸、通産の5省庁連絡会議が「国道43号線等の道路交通環境対策に向けた当面の取り組み」をまとめ、その中で「環境ロードプライシングの早期実現に向けた検討の推進」を表明した。ロードプライシングの前にわざわざ「環境」を付したのは、その目的を強調するくらいの趣旨と見られる。

さて、東京都と政府(建設省)が打ち出した環境ロードプライシングだが、その内容はだいぶ異なる。東京都は乗り入れ規制的な狙いがあり、これまで通行無料だった特定地域(都心部など)への入り口すべてに「関所」(自動料金収受システム)を設け、入域車から通行料を徴収することで、入域車両全体の抑制を図る。一方、建設省は阪神高速の神戸線と湾岸線の高速料金に価格差を設けることで、市街地の中心部を通過する神戸線から人口密度の低い湾岸線へと交通量を誘導するのが狙い。導入が比較的容易なのは建設省案だが、対策効果でいえば東京都の方がはるかに大きい。もっとも建設省が別途課題に挙げている大型トラックの乗り入れ規制まで踏み込めば、事情はだいぶ違ってくるが…。その建設省は「夏頃までに具体的な内容をまとめたい」としているが、その行方が注目されよう。

 ところで、今回5省庁がまとめた「当面の取り組み」は目標としている環境基準の達成年次や対策効果、フォローアップ方法、個別施策の導入シナリオなどが全く示されないまま。尼崎公害訴訟判決控訴の代わりに打ち出した対策がこれでは、誰も納得しないだろう。

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