POPs条約

   PCBやDDTなどの残留性の高い有機汚染物質(POPs)による地球環境汚染を防止するための条約を検討していた「POPs条約政府間交渉委員会」が昨年12月に南アフリカのヨハネスブルグで開かれ、条約案を固めた。今年5月に正式採択される見通しだ。

POPsとは、難分解性で蓄積性が高く、人体や生物に有害な有機化合物の総称。こうした物質とは縁遠いはずのイヌイットからも汚染が報告されるなど、世界的にPOPsによる汚染が進行している実態が明らかになってきたため、96年国連に上記交渉委員会を設置。条例の検討が進められてきた。このほど固まった条約案によると、@条約で指定されたPOPsの製造・使用禁止Aダイオキシン等非意図的生成物質の排出削減BPOPsを含む廃棄物やストックパイル等の適正処理――が対策の柱。各国はこれらを実現するための計画を策定して、対策を推進する。このうち、製造・使用禁止の対象となるのはディルドリン、アルドリン、エンドリン、クロルデン、ヘプタクロル、ヘキサクロロベンゼン、PCBなど9物質。一方、DDTについては製造・使用をマラリア対策に制限、DXN類、フラン類は排出削減に進めることが義務づけられた。条約案では、PCBについて対策目標年次を暫定的に設定。使用停止は2025年まで、適正処理は2028年までとしている。

  日本ではすでに全物質が製造・使用禁止の対象となっており、またDXN類の排出削減対策も推進中。このため環境省では、条約批准に向けて特段、新たな法制度が必要になるとは考えていないようだ。しかし、毎年発表される化学物質総点検調査の結果をみれば、これら物質による汚染は全国にわたり相当に深刻な状況。しかも、PCBや廃農薬の保管状況は十分に把握すらされておらず、処理処分も手付かずのまま。PCB処理に関して法制化の動きが出てきたものの、実際問題としてやるべきことは山のようにあるのでないか。

ご注意:この記事の著作権は、筆者に帰属します。転載を希望される場合は、必ず事前にご連絡をください。ご連絡はこちらからどうぞ。