知的基盤整備

 「知的基盤」とはあまり耳慣れない言葉だが、研究開発や産業活動の基礎となる各種計量標準・標準物質・試験評価方法、生物資源・化学物質データ整備などを指している。通産省もここ数年特に力を入れ始め、昨年12月には産業技術審議会と日本工業標準調査会の合同特別委員会が2010年における整備目標などを盛り込んだ報告書をまとめた。報告書はわが国での「知的基盤」整備が欧米、特に米国と比べ大きく遅れていることを強く懸念してまとめられたもので、「海外に頼らない知的基盤の確保」「2010年頃までに世界のトップレベルの規模と質を実現」を大目標として据えるとともに、その概念整理と今後力を入れるべき重点分野、2010年における具体的目標などを提示した。

 そのうち環境関連では、最近の傾向を反映してpptレベルの極微量物質や内分泌かく乱物質の計測に必要な計量標準・標準物質の開発を重点に掲げた。また、それ以上に力を入れているのが化学物質の安全基盤整備。具体的にはハザードのデータベース整備と各種試験法、リスク評価法の開発およびその標準化を課題として掲げている。うち前者では2010年までに約4,000物質相当の情報を整備、その際生態毒性や急性毒性、変異原生毒性、生殖毒性等の詳細データを盛り込み、量だけでなく質を重視すべきとしているのが特徴だ(現在日本は1,000物質程度、米はすでに8,000物質程度を整備済み)。また試験・評価法に関しては、内分泌かく乱物質の簡易スクリーニング法や関連する分析手法、環境中微量化学物質の分析・計測技術の開発、化学物質の環境中挙動や分布予測システムの開発・標準化、適切な有害性評価と曝露可能性評価に基づくリスク評価や判定手法の開発・標準化を進める必要があるとした。通産省はこれらをOECDとの共同研究や化学物質評価研究機構(旧化学品検査協会)、あるいは民間への委託などにより重点的に進めていくことにしている。

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