環境自動車

運輸省の運輸政策審議会総合部会は6月「21世紀初頭の交通政策の基本方向」に関する中間報告をまとめた。同部会は昨年より今後の交通政策のあり方について検討を進めてきたもので、自動車排ガス対策の一環として「環境自動車」(グリーン自動車)という新たな概念を打ち出し、開発・普及の方向性を提示してみせた。この「環境自動車」というのは、排ガスや温暖化ガスなど環境負荷物質の排出が少ない自動車と定義。いわゆる低公害車と低燃費車をミックスしたものだ。そのセンス云々は置いておき、内容をみてみると、いわゆるガソリン車やディーゼル車の一層の改善に加えて、どのような「環境自動車」の開発が期待され、どのような分野への普及が望ましいかなどについて整理・方向づけしている。

 それによると、今注目の燃料電池自動車について「開発・普及には時間を要する」などと予測したうえで、@小・中型トラックはガソリン車、LPG車、CNG車への代替が有力、またジメチルエーテル(DME)自動車の開発に期待、A大型トラックはDME車やLNG自動車の開発に期待、B路線バスはCNG車やハイブリッド車のほか燃料電池車、DME車の開発普及に期待、C観光・高速バスはDME車やLNG車の開発に期待、D乗用車はLPG車、CNG車の燃費向上やハイブリッド車の改善・普及、燃料電池車の開発に期待――などと方向付けた。LPG車、CNG車はともかくDME車やLNG車などの新燃料自動車まで持ち出して、開発・普及に期待をかけるのは果たしていかがなものか。同省はメタノール車の普及に失敗した苦い体験があり、これが課題の一番目に挙げた「普及には新燃料供給体制整備が必要であり、そのため燃料政策との連携が不可欠」との教訓に結びついているようではあるが…。それより地道だが各「環境自動車」の普及シナリオを丁寧に描き、国として可能な普及方策を一つ一つ実現していくことの方が重要ではないだろうか。

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