燃料電池実用化戦略研究会 

経済産業省資源エネルギー庁の「燃料電池実用化戦略研究会」が先月報告書をまとめた。  同研究会は普及に向けた課題を抽出、その解決に向けて(1)実用化に向けたシナリオ、(2)自動車用燃料選択の考え方、(3)技術開発推進やソフトインフラの整備、国内体制の整備――などを整理した。それによると、シナリオは、@20002005年頃=基盤整備、技術実証段階…技術開発戦略の策定、基準・標準の整備、実証試験の実施、燃料品質基準の確立 A20052010年頃=導入段階…2003年頃から開始される市場導入の加速化、公共施設等における率先導入、第2期開発戦略の策定、2010年に自動車用約5万台、定置用約210kWを目標  B2010年以降=普及段階…自律的に市場拡大、一般部門に普及が進展、2020年に自動車用約500万台、定置用約1千万kWを目標――などと描いた。

今回、報告書まとめにおいて最も問題となったのが、「自動車」向け燃料の選択だ。それによると、当面は「圧縮水素やメタノール」、近未来は「クリーンガソリン」、長期的将来は「水素」と結論。最も重要な時期となる近未来には、今一番実用化に近いとされる「メタノール」でなく、「クリーンガソリン」を据えた。この理由は、既存燃料供給インフラが利用でき、追加的インフラ整備が不要なため。しかし、一方で「クリーンガソリン」生産のためには、硫黄分や添加剤等の除去など大きな技術的難問を抱えている。今回の選択の背景には、開発者グループ間の政治的綱引きや、石油業界の圧力なども影響したようだ。

 さて、エネ庁は今回の報告に沿い、4月にも技術開発戦略を策定するほか、民間側も燃料電池協議会を設置し、さらに実用化と普及拡大策を検討していくという。が、果たして、この報告書通りにシナリオが進むかどうか。普及すれば、国民の生活や社会システムを大きく変貌させると熱い期待のかかる同技術だが、その道のりは決して平坦ではない。

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