ALTERED DIMENSIN
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2011.03.04
[ひとりごと]

世界にひとつだけのオブジェ

 毎年、12月と1月の15日、16日、東京の世田谷で「ボロ市」が開かれている。430何年か続いている伝統行事の市で、住宅街の道路に骨董品、雑貨、食品、衣服、植木等々、 露店が延々1キロぐらい続く。 何十万人もの人がやって来る。
 この数年、露店の脇で骨董収集家のおじさんと小一時間ほど雑談している。年末年始の会期日に、必ずやってくるので恒例になっている。2010年の師走も、初日にやってきました。
 骨董といっても、使い道が分からない物とか、誰も集めてないものに限り蒐集している。このおじさんの集めている物って、結局、誰も関心持ってない物ってことで、限りなくゴミそのものに近いとも言えるのですが。
 
 以前、昭和のオモチャを専門に扱っている店のご主人から「オタク」と「マニア」の違いを聞いたことがある。両者は、似て非なる存在で、オタクの関心対象は流行に左右される、そんな軽さ、浅さがあるが、マニアはその道一筋の深さがあると、ご主人はマニアの方に共感していた。
 そんな分類からすれば、このおじさんは、筋金入りのマニア。初老に入っているのだろうか、身だしなみは気にしない姿で、黒いカバンをもている。
 おじさんからマニアの心理、些細なことに対するこだわりを聞くのが面白かった。情報としては、本で読むのも実体験を聞くのも同じですが、直に当事者から、骨董蒐集の、それも世間的には価値のないものを集めることに費やす並々ならぬ努力、執着力、こまめさ、探求心、そういった話し、聞いていて飽きないし、浮世離れしたところに、何かひっかかるものを感じていた。
 
 はじめておじさんと会ったとき、中国の草花石という奇石の話しをしたのですが、一言二言、言葉を交わしたしたところで、「おたくのような変わった人は、話しが早い」と目を細めた。「いやー、だめだねー世間の人は、価値はないけど良い物があるってことを言っても、分からないんだから。もう理解してもらうの諦めてるよ。家族も分かってくれない。それにひき替え、おたくは、すぐに良さが分かってくれる。」・・・変人、奇人のお墨付きをもらったようで複雑な心境。
 
 毎年、何か変わったものをカバンに入れて持ってくる。この年は、木の実をコンビニのビニール袋いっぱい持ってきた。一見、栗のような、でも丸っぽい赤茶色の実。林で拾ってきたトチの実だとか。
 見た目は、ぷっくりして食べでがありそうだが、あく抜きするのが大変で、実際に食べている人は少ないようですね。つまり、いっぱいあっても食べれるようでいて、食べれない、いかにもこのおじさんらしいお土産でした。荘子の「無用の用」の話しを思いだす。 
 こんな楽しみ方がある、っておじさんは言いながら、赤っぽい積み木(?)をジャンバーのポケットから取りだし、その上にトチの実をポンと載せた。
「ほら、赤と赤で、オブジェとして見てるといいよね」 と、おじさん。
 小箱のような立方体に、ツルツル、テカテカしたお尻みたいなものが乗っかっている。シュールな感じ。
 う〜ん、言葉に困るというか、良いような、それほどでもないような、ちいさくまとまっているが、インパクトがあるのは確かだ。おじさんは、冬、こたつの上に置いて愛でてたとか。
 積み木に見えたのは、レッドウッドの木片でした。スギ科セコイア属の針葉樹で、家具とかいろいろな用途に使われている。これは、材木屋さんの建材の見本だろうか、小さくて何の用途にもならないようなものです。
 
 まあ、評価は難しいのですが、とにかくそこらにあるものを組み合わせて、オリジナルの鑑賞物を創作するのは楽しい。いまパソコンの前に置いていますが、それにしてもトチの実って、妙な姿形をしてるなと思う。
 まったくお金のかからない趣味ってことで、こういう楽しみ、もっと広まればいいな、と思っています。 
 
 そして2011年1月は、おじさん、エゴの実と榧(カヤ)の実をいっぱい持って来ました。どうも木の実に凝っているようです。エゴの果皮は毒性のあるサポニンが含まれているが、果実は食べれるのだろうか? カヤの実は、食べれるようですね。
 この人独特の嗅覚で、これから人間が木の実を食べる時代が来るのを察しているのかも。