ALTERED DIMENSIN
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2000.11.07
[ひとりごと]

コラナッツの実

 友人のKが西アフリカからのお土産だといってビニール袋の包みをくれた。袋の口をテーブルに広げると、中から天津甘栗ぐらいの大きさの丸い実が5〜6個コロコロと転がり出てきた。グリーン色の球のような姿をしている。
 「これ、コラナッツといってニジェールではみんな噛んでいるんですよ。最初は苦いけど、すぐにすっきりと冴えてくるんです。ぼくもあっちにいたときは、よく噛んでいました。ニジェール人の友だちが、お前、これっていってくれるんです」
 コラナッツのことは、前から知っていた。アメリカで最初に作られたころのコカコーラは、炭酸ソーダにコカインのコカと、コラナッツのコラを入れた飲み物だったという記事を読んだことがある。つまりコカコーラは、「コカ」+「コラ」から命名されたわけだ。 コラナッツの有効成分はカフェインだ。
 「こうやって手で簡単に割れるから」とカズは実をひとつ摘んで、指で捻ると真ん中からふたつにぱっくり割れた。
 「この片割れをそのまま少しずつ噛むんです。ずっと噛んでいると、そのうち効いてきますよ」
 早速、ぼくも実をふたつに割って、片割れをかじってみた。噛むとポリッと砕ける。苦い、がとんでもないというほどのことはない。渋みが少しある。何度も噛んでいると唾液が溜まってきて、ティッシュに唾を吐き出すと薄いオレンジ色に染まっている。
 暫くすると、苦味が消えて柔らかな甘味が口の中に広がっていった。すっきりした壮快感がある。ミントや唐辛子のような刺激性の味ではない。覚醒感といえばいいのか、頭が冴えたようなクールな感じになる。
 そうか、これがコラナッツの効きだなとというのが分かってきた。疲れたときなんかにこれを噛めば疲労感が飛んでいくだろうなということがよく分かる。
 渋みと苦味が、そのうちに壮快感に変わるのが醍醐味だ。でもそれは嗜好品といえば、口当たりのいいものだけしか知らないわれわれには、ついていけないところもある。最初に口に入れたときに吐き出してしまうのではないか。
 自然のものはよくしたもので、南米のシャーマンが用いるアヤワスカやサンペドロといったサイケデリックス飲料にしても、とても飲めたものではない味がする。いいとこだけを得ようというわけにはいかない。
 シャープな冴えた感じは時が経つうちに静かに消えていった。
 残ったコラナットの実はそのまま机に置いていたら、赤茶色に変色し、水分が飛んで石みたいに堅くなった。その実は今も机の上に転がっている。

[ひとりごと]