小泉訪朝の成果を斬る
・・・21世紀最後の暴君・金正日体制を倒すRENKの民主化闘争にご支援を!・・・
2002年9月18日
RENK代表/李 英和
◎拉致被害者8人死亡!?・・金正日の「安手のトリック」に騙されるな!
小泉訪朝の課題の内、国内最大の関心事である拉致問題について、金正日は奇策に打って出た。拉致の事実を認めた上で、「4人生存、8人死亡」を「公表」し、「遺憾」の意を表明したのである。同発表により、日本国内に衝撃が走った。拉致被害者の家族は悲嘆の涙にくれた。そして、小泉首相は平壌の記者会見で被害者家族に「お悔み」の言葉を述べた。
だが、すこし待ったほうがよい。北朝鮮発表を聞いた私の第一感は「インチキでチープなトリックだ」というものだった。外務省や政府筋の一部、そしてマスコミや識者のなかには、金正日が拉致の事実を認めて遺憾の意を表したことに、一定の評価と変化の兆しを見る向きがある。そして、小泉首相をはじめとして、「8人死亡」を事実と受けとめる空気が大勢をしめている。
しかし、私は北朝鮮発表にきわめて懐疑的である。生きている被害者を「死んだこと」にして、拉致問題全体の幕引きを図ろうとする「金正日の奇策」の可能性が大きい。その理由を列挙しておこう。金正日が「一部特殊機関の妄動主義、英雄主義が過去に引き起こした」とか、「自分は知らなかった」とかいう「責任逃れ」は論外にして、疑問は次の三点にある。
第一は、「死亡」がきわめて不自然なことである。「病気と災害のため」と金正日は言っているが、拉致被害者の年齢と境遇を考えると死亡率が異様に高すぎること。拉致被害者は後述するように、一般庶民とは異なる環境で生活していた。生活水準は一般の平壌市民よりも高い。「よど号」グループの生活ぶりを想像すればわかりやすいだろう。そして「よど号」グループとちがって、横田めぐみさんや有本恵子さんたちは集団生活をしていないのだから、まとまって災害や事故に遇う可能性もない。
第二に、、「生存者」と「死亡者」との間に「ある一線」が画されているように見えることである。日本に帰しやすい事情にある人だけが「生存者」とされ、帰せない事情がある人は「死亡者」に入れられた可能性が高い。「生存組」は、アベックで連れ去られ、機密性の高い工作機関で働かされていない人たちである。他方、「死亡組」は単身で拉致されて工作機関の要員と結婚させられたか、きわめて特殊な工作機関に組み込まれて働かされている人たちと見てよい。
第三に、北朝鮮発表は、私が97年に入手した内部情報と食い違う点があること。具体的には、横田めぐみさんに関することである。横田さんの消息が亡命工作員(安明進)によってもたらされた直後、「完全オフレコ」「公表不可」を条件に、韓国政府筋から横田さんに関する情報を得た。その内容は、97年当時、横田さんは平壌に在住して元気であり、日本人でも元在日朝鮮人でもない生粋の北朝鮮人と結婚して(させられて)、三才の娘さんがいるという驚くべきものだった。横田さん「死亡説」によると、死亡時期は「十年前」とされているようだが、つじつまがまったく合わない。
この第三の理由に関連して付けくわえると、横田さんのようなケースは、日本への帰還(奪還)が困難な反面、身辺の安全はきわめて高いということであった。特殊で強固な結束力で保たれている工作機関の要員は、為政者の都合や政治的な理由で簡単に身の安全を脅かされることはないという。そんなことになれば、誰も生命を懸けて工作活動に従事しなくなるからである。
以上の理由から、「8人死亡」とされている人たちのうち、ほとんどが生存しているものと考えられる。さもなければ、小泉訪朝の直前に皆殺しにしたことになる。被害者のご家族には、その可能性はきわめて低いと申し上げたい。拉致問題に幕を引き、国交正常化交渉を再開させるために、「死亡したこと」にされているだけと見るのが自然である。
そもそも、金正日は十年以上にわたって「拉致など存在しない」と強弁してきた。そんな独裁者の言葉を信じろということのほうに無理がある。ご家族はけっして希望を捨てずに、救出の声を上げ続けていただきたい。
金正日の嘘つきぶりは、「拉致実行犯の処罰」にも端的に表れている。原勅明さんを拉致した実行犯の辛光洙は韓国で釈放されて北朝鮮へ帰っている。その辛光洙は北朝鮮のテレビに登場して国家英雄扱いである。また、有本さんを拉致した「よど号」犯は、あいかわらず贅沢な暮らしを満喫しており、妻や子供たちは続々と日本に戻ってきている。ようするに、誰も処罰された気配はないのである。実行犯が処罰されていないのだから、8名も処刑されてはいないだろう。
小泉首相と外務省は「8人死亡」発表を鵜呑みにした姿勢を転換する必要がある。そして、十月に再開する正常化交渉で、あらためて「全員帰国」を主張し、調査団の派遣を要求すべきである。金正日がそれを拒否するようなら、即刻交渉を中断すべきだ。交渉が中断して困るのは金正日である。その日からまた「ブッシュの悪夢」にうなされるだろうからである。金正日が拉致問題で奇策を弄したのも、短期的な非難は甘受して、拉致問題の幕を一挙に引くことで日朝交渉の再開にこぎつけるのが狙いだった。その後の交渉が難問山積で長期化することになっても、そのほうが金正日には好都合である。ともかく交渉しているあいだは「ブッシュの悪夢」から解放されるからである。金正日は一時的な非難の嵐よりも、みずからの生存の方を選んだのである。
◎安全保障上の問題は前進したのか?
惨憺たる拉致問題の成果にもかかわらず、小泉首相が「共同声明」に調印した理由は、国際的関心事の安全保障問題で「成果」があがったと判断したからである。そう判断しなければ、小泉首相は会談の席を蹴っただろう。事実、随行した安倍副官房長官は「決裂」を進言したほどである。小泉首相は逡巡の末に調印を決断したと報じられている。
訪朝直前のブッシュ大統領との会談で、小泉首相は大量兵器の開発問題で「宿題」を課せられていた。この「宿題」のせいで逡巡を招いたと言ってよいだろう。では、ブッシュ大統領の宿題は片づいたのだろうか。本ホームページ上での直前予想でRENKが警告しておいたように、案の定、金正日は安全保障の問題で「山盛りの約束」をした。しかし、その約束のどれも、予想どおり空疎で曖昧なものだった。あえて具体的なものを何か探すとすれば「ミサイル発射実験の無期限停止」くらいのものである。だが、「無期限」とはなんなのか。ただ、期限を限っていないだけのことである。その気になればいつでも再開ができる。とくに、拉致問題や不審船について「部下が勝手にやった」とぬけぬけ言うのだから、たとえ毒ガスを詰めたミサイルを日本に発射したとしても、また「部下が勝手にやった」と言うのだろう。そうして、遺憾の意を表明して済ますつもりなのである。
金正日が小泉首相にした安全保障上の約束は、今後の正常化交渉で、駆け引き材料に使われるだけである。金正日が約束を守るかどうかを決断する相手は、小泉首相ではなく、ブッシュ大統領なのである。そうだとすると、拉致問題を犠牲にし、自らの政治生命を危うくさせてまで合意にこだわるような宿題ではなかった。RENKによる事前のアドバイスは生かされなかったようである。
◎金正日の「無能宣言」 ・・・無能な暴君を倒して民主化するしか懸案の真の解決の道はない!・・・
今回の日朝首脳会談で金正日は、みずからが統治能力のない「裸の暴君」であることを満天下に公言したに等しい。韓国との砲撃戦、拉致問題、そして不審船問題にせよ、金正日が隣国を震撼させた大事件はことごとく、最高指導者・金正日のあずかり知らぬところで軍や工作機関が暴走したせいにしている。もしそれがほんとうなら、金正日はまったく無能な指導者であり、とてもまともな交渉相手にはなりえない、ということになる。他国と交渉するまえに、自分の国をちゃんと治めてから交渉に臨むべきだからだ。交渉相手としての資格が欠如しているのだから、金正日と国交正常化交渉などできないことになる。
自分の軍隊や情報工作機関を掌握できない独裁者が、数発の核兵器と大量の生物化学兵器を保有し、その運搬手段のミサイルを実戦配備している。とくに毒ガス兵器は、韓国政府と米国政府の発表によれば、2千5百トンをすでに保有し、年間生産能力は4千5百トンにのぼる。韓国と日本の国民を数回皆殺しにできる量である。
しかも、金正日は無能なだけでなく、無慈悲な暴君である。RENKが幾度となく強調してきたように、金正日は自国民の一割以上を餓死させて平気な顔をする独裁者である。ラムズフェルド米国防相の発言(9月17日)を待たずとも、大量破壊兵器を開発保有する金正日政権の存在は、国際社会にとっての脅威であるばかりか、それ以上に飢餓と恐怖政治の犠牲に供される北朝鮮国民にとって脅威なのである。
ブッシュ政権と米議会は、どこまで本気かどうかは別にしても、北朝鮮の人権状況に憂慮を表明し、北朝鮮難民に保護を訴え、金正日の恐怖政治を非難している。他方、小泉政権と国会はこれまで北朝鮮国内の人権問題に関して何らの明確を態度表明もしたことがない。独裁者に対するそんな曖昧で宥和的な姿勢が、今回の首脳会談での金正日の居直りを生んだ。拉致問題や不審船問題などの重大な案件を、金正日は「大きくない問題」と言い放っている。あるいは「戦後の両国の長い対立の歴史が産んだ」と開きなおっている。しかし、冷戦期間中でも、中国や旧ソ連は日本人を拉致したりしなかった。不審船を送り込んで銃撃を加えたりしなかった。小泉首相は、日本に不法入国した次期後継者の金正男を逮捕して暗殺し、それを「部下のせい」にして遺憾表明することもなかった。金日成と金正日の支配する北朝鮮がひとり蛮行を繰り広げてきただけである。
小泉首相は今回の訪朝は、将棋にたとえれば、「三手詰めの楽勝」の将棋だったはずである。ところが大失着を指して詰みを逃し、勝敗の行方の見えない混戦に持ち込まれてしまった。だが、まだ今後の正常化交渉で挽回の可能はある。上述のように、拉致問題で真相究明のための調査団を派遣し、拉致実行犯の引き渡しを断固として要求すべきである。そして、安全保障問題では、毒ガス兵器・細菌兵器の廃棄と査察を期限付きで求めるべきである。金正日を呼びつけてこれらの要求を突きつけるべきである。もし条件を呑まなければ、上述したように、交渉を打ち切れば済むだけである。
拉致被害者のご家族の悲嘆の涙を通して、あらためて私たちにとって明らかになった教訓はがある。北朝鮮を金王朝が支配するかぎり、けっして極東アジアに平和と安全は訪れないということである。そして、隣国・北朝鮮の国民の生命と安全も守られることはないということである。小泉首相と日本政府は、金正日を相手に交渉するのではなく、北朝鮮の民主化を求めて闘う北朝鮮難民と反体制グループに握手を求めるべきである。
金正日は小泉訪朝の答礼に日本を訪問すべきである。そして、拉致被害者のご家族に直接謝罪し、ご家族の罵声を浴びて小突き回され、報道陣の容赦ない追及の矢面に立つべきである。もちろん、わたしたちRENKは最大級の「歓迎行事」で迎える。国際社会の一員となることを金正日がすこしでも願うのなら、民主主義の洗礼を我身で味わうしか術はないと知るべきである。