日豪文化交流の架け橋 「フローティング・ワールド」




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 ジョン・ロメリル作「フローティング・ワールド」は1974年、メルボルンの小劇場プラム・ファクトリーにて初演され、その後オーストラリアの著名劇団が幾たびも再演し、今日ではオーストラリアを代表する劇文学の一つに数えられるようになった傑作戯曲である。

 「フローティング・ワールド」は、こんな物語だ。第二次世界大戦中、日本軍にとらえられて捕虜となり、ビルマ・タイ間鉄道敷設の過酷な労働に駆り立てられた経験を持つ元オーストラリア兵レズ・ハーディングが、時を隔てて1970年代、一観光客として海路日本へと向かう客船に乗っている。ところが、船上には戦友の亡霊が現れ「俺達にあれほど残酷なことをした”日本人”の国へ遊びに行くのか?」とレズを責め立てる。日本軍への恐怖はレズの日本人やアジア人に対する人種差別意識をあおり立て、また同時にオーストラリア人が元来持っているイギリス人へのコンプレックスと猜疑心もみるみる募っていき、船が太平洋を進むにつれ、レズの精神は着実にゆがみを増していく。やがて船が横浜港に着く頃にはレズの心は完全に崩壊し、彼は戦時中自分や戦友を苦しめた”日本人”に報復を果たすべく、船室で一心に狂気のナイフを研いでいる・・・・。

 戦争が人間の精神にもたらす深手、植民地的精神風土、人種差別、日豪関係の過去と現在など、さまざまな興味深いテーマを内包したこの作品は、米国の代表的な戯曲辞典「International Dictionary of Drama」でもギリシャ古典をはじめとする古今の劇文学に比肩する戯曲として選ばれるなど、世界的な評価を得てきた。だが日本においては長い間、その存在すら知られることはなかった。