ルールブックの読み方

はじめに

 さて、今回のお話は市販の(市販でなくてもよいが)ルールブックの読み方について書いてみよう。
 「そんなもの聞くまでもない。ルールがわかれば、だいたいキャラクターが作れるようになればそのルールで遊べるだろうが!」
 いや、ごもっともで。そのルールでそのルールの通りに遊ぶだけならルールの読み方なんてその程度で十分でしょう。問題なし。でも、自分でルールを作ろうとするならばルールブックの読み方というのは重要になってきます。今回はそういう目的でのルールブックの読み方について。なお、世界設定に関しては除外。m(_ _)m

普通は

 まず、普通ルールブックを読むときはどんな読み方をするだろうか?一般的なファンタジーRPGの場合だと次のような感じでになるのではないだろうか。

  1. とりあえず、前から読んでいく。順番は「ちょっとした世界設定」、「キャラクターの作り方−能力値関係」、「キャラクターの作り方−スキルなど」、「行為判定のルール」、「戦闘のルール」、「魔法のルール」。
  2. 一通り読み終わったから試しにキャラクターを作ってみる。「キャラクターの作り方能力値」、「キャラクターの作り方−スキル」、「サンプルキャラクター」を見ながらキャラクターを作る。サンプルキャラクターを見れば戦士ならどの能力値、どのスキルが必要なのか、魔法使いならどうなのかが大体わるから一応サンプルキャラクターよりも強そうなのを作ってみる。
  3. とりあえず、作ったキャラクターで戦闘がどんな風になるか試してみる。相手はサンプルキャラクターだ。何回かやってみると無駄な部分や足りない部分が見えてくるため修正したりする。
     大体、戦闘のルールがわかった。戦闘のルールがわかればそのほかのルールも大体わかる。(たいてい一番ややこしいし、行為判定、ダメージ処理、タイトな時間管理などの基本的なルールを全て含むため)
  4. 一応ルールの方は把握したから、世界設定でも読む。ルールのように数学っぽい話もないし割と楽しめる。
  5. 世界設定とルールは一応把握した。今度仲間と集まったときにやってみるかと思う。マスターは自分がやるしかないだろうから、シナリオでも考える。ここで、モンスターのデータなどを把握する。

 と、まぁ、こんな感じではないだろうか?
 まぁ、こういう風に読んで、セッションをこなせばそのルールには詳しくなるし、十分遊べるとおもう。
 しかし、自分でTRPGのルールを書くときに参考(反面教師)にするというのならば全く足らないといえる。

ルールを作るために他のルールを読む

 ルールを書くためにルールブックを読む場合、一番重要になるのはルールを理解することではなく、ルールのコンセプトと実際に用いられている方法、その関連性、必然性を理解することだからである。つまり、「何故そのシステムがそのようなルールを採用しているのか」ということを理解する必要がある。
 なぜ、そのようなものを理解する必要があるのか?
 それは、根本的な思想というものは全体に反映されるものであり、また、反映されなくてはならないからである。そして、それを理解すればそのルール全体を理解することが可能であるから。
 ルールのコンセプトが理解できればそのルールがそのコンセプトを満たすために十分なものであるかどうかがわかる。世間一般でよく言われるような「簡単なルール」、「難しいルール」、「上級者向けのルール」、「初心者向きのルール」などといういい加減な分類に惑わされることなく。
 つまり、デザイナーのそのルールに対するコンセプトが十分に表現され、セッションを行うに当たってそれが十分に実行されるルールならばいかにデータが少なかろうと、ルールが少なかろうと、一見バランスが悪そうに見えようとよくできたルールであるといえる。逆にいかに凝った作りになっていようと、データがたくさんあろうと、ルールの記述の仕方がおもしろかろうと、デザイナーのコンセプトを十分に満たせないようなルールはだめなルールということになる。
 そして、ルールからコンセプトを理解することが出来るようになれば逆に自分がルールを作るときに自分の立てたコンセプトを完全に満たすようなルールを構築するために役立つ。

自作ルールを考える上での読み方

ルールをどう組み上げるか

 では最初にルールを書く場合、どのように、考え方を積み上げてゆくのかを考えてみよう。

  1. まず、一番底、基本になるのがコンセプトである。つまり、そのデザイナーがそのルールを使って遊ぶ人間に何をさせたいのか、そのように遊んでほしいのかと言うことだ。
  2. 次に、デザイナーが望むことを遊ぶ人間に表現させるために最も基本的なルールが構築される。ほとんどの場合は行為判定のルールがこれに当たるはず。一般的にダイスを振ってどうなれば成功で、どうなれば失敗か、というルールのことである。デザイナーが一番表現したいものがキャラクターの行動以外であっても、たいていの場合行為判定のルールとは一致させられている。
    この段階ですでにどの程度の割合で行動には成功すべきなのか、そしてどの程度で失敗するのか、対抗判定ならばどの程度力の差というものが反映されるべきなのか、ということが決まる。
  3. そして、基本的なルールでセッションが行えるようにゲーム中で使うキャラクターの作成のルールがくる。ここで言うキャラクター作成のルールとは行為判定に直結する部分を意味する。能力値で判定するならば能力値はそうだし、スキルを使うならばスキルを算出するルールも含まれる。
    そして、この段階でデザイナーが望む範囲にキャラクターの行動の成功率が収まるように数値が具体的に制限される。
  4. 次に戦闘に関するルールがくる。キャラクターのHP(ヒットポイント)や武器の威力などはこの段階に属することになる。普通、戦闘のルールは基本の行為判定のルールを継承してその上にダメージ処理などのルールが追加される。また、魔法などに関してはこの段階を継承して戦闘とは違う追加ルールが組み込まれることが多いが本質的に同じレベルにある。
  5. 以上の基本的なルールを元にモンスターなどの複雑なデータが準備される。
    また、世界設定などで、ルールに影響を与える部分もこの段階になる。
    実際に数値的な処理が必要とされるルール部分はこの段階までであろう。
  6.  そして、数値的な処理が不要な部分として世界設定が別に付け加えられる。

ルールをどう読むか

 実際、ルールブックに書かれているのは基本的な判定のルールからで、コンセプトに関してはデザイナーズノートなどがない限りほとんど書かれていることはない。また、ルールブックというものは別にルールを作るための教科書ではないためコンセプトに関して正確に、十分な量が書き記されていると言うこともない。したがって、それを知りたいならば他の部分を読んで類推するしかないと言うことになる。

 では、どこから読めばそれが理解できるのだろうか。いくつか一般的だと思える例を挙げてみよう。
 実際のセッションを行う上で絶対に守られ無くてはならないと思っている部分は基本的な行為判定、キャラクターの作成のルール、対抗判定から類推できる。
 まず、行為判定のルールと、キャラクター作成のルールから算出される行為判定に使う基本値の幅によってどの程度が普通の成功率か、どの辺りが下限で、どの辺りが上限なのかがわかる。この数値からデザイナーがキャラクターの行動をどの程度成功させたいのかがわかるし、一般人などのデータと比較することによってキャラクターの強さの位置づけがわかる。
 次に、対抗判定のルールからどの程度強さによる差があるのかがわかる。この差が大きいか小さいかによってキャラクターが個別に動くことを望んでいるのか、一緒にまとまって動くことを望んでいるのか、それとも完全な分業を望んでいるのかなどの実際のセッションを運営する上でのキャラクター達の位置づけ、キャラクターに関する世界設定などが見えてくるはずである。
 他にも基準値の上限とダイス(などの乱数発生装置)の数字の上限の関係からどの程度逆転のチャンスがあるべきであると考えているかがわかる。これは、理論上ではなく実際のセッション運営上でどの程度の数値が運用されるかと言うことが重要になるけれども。

 また、上方ロールであるか下方ロールであるかはキャラクターがどんどん成長することを望んでいるか、そうでないかを意味している場合がおおい。大体において上方ロールを用いているルールはキャラクターはどんどん成長するし、下方ロールのルールではあまり成長することを望んでいないことが多いはずである。
 なぜなら、下方ロールでは使うダイス(などの乱数発生装置)の数の最大値が行為判定の基本値の上限でありそれ以上に成長することは基本的に意味を成さないため、そこに簡単にたどり着かれては困る、つまり成長はあまりさせたくないということになるし、上方ロールの場合ですと目標値は理屈の上ではいくらでも変動可能であることから成長されても基本的に困らないといえるからである。

 戦闘のルール、特にHP(などのキャラクターの死を決定するパラメータ)とダメージの関係からどの程度戦闘が起こるべきなのかという意図が読みとれるはずである。ダメージとHPの数値が近い、つまり少ない命中回数でキャラクターが死亡する様なルールならば戦闘の頻度は低くなることを望んでいるはずだし、逆ならば戦闘の頻度はある程度高くなることを望んでいるはずである。

 大体このようなことを類推すればそのシステムにおけるキャラクターの位置づけ、キャラクターがセッション中にどのように行動することを望んでいるかが見えてくる

 そして、数式から考えられるデザイナーが望んでいるキャラクターの位置づけ、行動がわかったらそのシステムでもっと直接的にそれらを語っている部分と比較してみよう。デザイナーの意図をより直接的に語る部分というのは例えばサンプルキャラクターのデータ、あまり凝ったことをしていないプレーンなリプレイ、デザイナーズノートなどがある。それらに書かれていることが数式から類推したこととどの程度一致するだろうか。デザイナーが意図したコンセプトをルールが十分に表現しているかどうかを検討してみる必要がある。

自分でも考えてみる

 今度は、そのルールでデザイナーが立てたと思われるコンセプトを表現できるようなルールを自分で少し考えてみる。自分の好みに合うようにではない! 気をつけて。特に紙に書き出したりする必要はないが確率の計算やパラメータの数値の幅などは(代表的なものと最大値、最小値だけでいいですから)なるべく正確に計算たほうがよい。
 それで、元の市販品よりも実行できそうなルールが出来るだろうか。それとも同じ様なルールになっただろうか。及ばなかっただろうか。
 及ばなかったときはそのルールのコンセプトと用いられている手法をよく解析する必要がある。自分の考えがそのルールを書いたデザイナーに及んでいないのだから当然それを理解するための努力が必要になる。そして、その努力は自分がルールを書くときに役立つはず。
 自分が考えたものの方がよかったときは本当に自分が考えたものの方がよいのかどうかをもう一度考えてみる。それでもやっぱり自分の考えたものの方がよかったなら元にルールのどこがだめで、自分のルールのどこがそれよりもいいのかを明確にすることが重要である。
 同じ様なルールになったときは本気で考えたかどうかをもう一度検討してみる。出来れば、元のルールに及ばなくてもよいのでいくつか自分なりの方法を考えてみる。そして、元のルールのどこが優れているのかを明確にしておく。

 これらのことはルールを構築するための訓練になるし、自分でルールを作ろうとした場合に何が必要で何が必要でないのかを正確に把握できるようになってくるはずである。また、ルールを構築するための数式や考え方についてかなりの蓄積が出来てくるであろうから新たに何かを作り出そうとする場合にも役立つはずである。

最後に

 以上のことが「ルールを作ろうとする上で他のルールを読むときに何を考えるべきか」の大筋である。しかし、私がわかっている部分だけでもその全てをかけたわけではないし、他にも考えることはたくさんあるに違いない。しかし、この文章がルールを書くためにルールを読む方法の一端でも示せたならば幸いである。
 ルールブックでは上に挙げたこと以外にも様々な部分でそのルールの本質を数学的な裏付けのある事実として語っている。ルールブックを読むときにそれがデザイナーの意図していることと一致しているかどうかを検証してみること。それが、自分でルールを作るときに必ず役に立つはずである。

おまけ

 また、このようにルールブックを読むことが出来れば既成のルールのオプションを考える場合にも、そのバランスを崩さず、自然に機能するようなルールが構築できるはず。また、付け加えてはいけないルールがどのようなものかと言うこともわかるようになる。


『The Lunatic』