Airly Trigoneの記事

オリジナルTRPGルールを作る

序文

 この記事は「TRPGのルールを作り方を考え、おもしろいTRPGのルールはどのようなものか」を追求するという内容を予定している。しかし、ルールの作り方を考えるのはまだしも「おもしろいルール」というのは難しい。少なくとも万人におもしろいと思われるようなルールというものは思いつきそうにない。しかし、「おもしろいルールに最低限必要な条件」というものは考えてみようと思う。

 最初にこの私の文章でいう「TRPGのルール」というものについて定義しておこうとおもう。
 まず、TRPGは基本的に「ルール」と「世界設定」、「データ」から構成されると考える。ここでいう「ルール」とはTRPGのシステムの中で数値的な処理を記述した部分のことを指す。そして、「世界設定」とは数値処理に関わらない部分、例えばそのTRPGにおける歴史、地形、土地や都市の名称、などである。「データ」とはそのTRPGを運用する上で必要なパラメータを記述したものとする。そして、少し説明が前後した感があるが、これらを統合したものをTRPGの「システム」と呼ぶことにする。
 つまり、この私の記事はTRPGのシステムのうち数値的な運用を行う部分について考えようというものである。従って、基本的にトータルでの「システム」特に「世界設定」の部分は考えない。

第一章:まずはコンセプト

システムの構造

 さて、本題に入ろう。前述の定義でシステムを3つの部分に分けてしまったが実際にはこれらはともに関連し合っている。世界設定はルールにもデータにも影響を与えているし、その逆もそれぞれ真である。当然、データはルールにも世界設定にも関わっている。これは考えてみれば当たり前で、それぞれが完全に別のものとして存在しているならばシステム全体がまとまらないものになってしまう。また、汎用のシステムであっても同様に世界設定、ルール、データがそれぞれに関わり合いを持つ。汎用のシステムの場合は基本のルールをそれぞれの世界設定毎に再利用し、追加のルールによって全体をつなぎ直すと言うことをしているだけである。
 少し話が脇にそれたりしたが、それぞれの部分は分けて考えられるにもかかわらず関連し合うということが分かっていただけたと思う。では、それぞれの部分を独立に考えられるにもかかわらず関連し合うならば全体的に共通な考え方というものが存在することになる。この、「システム全体で共通な考え」というものがそのシステムの「コンセプト」である。また、システムのコンセプトは「システム全体を通して反映されなくてはならないもの」である。「コンセプト」は「世界観」と言い換えてもいい。つまり、コンセプトとはそのシステムでデザイナーが表現したいもの、デザイナーの目的である。だから、これがはっきりしていなければシステムを構築する上での方向性が決まらない。方向性がはっきりせず、曖昧なままで作られたシステムがまともなものになるはずがない。
 要するに、しっかりとしたシステムを組むためにはしっかりとした、明確なコンセプトが必要だと言うことである。
 以上の考えを直感的に分かりやすくするためにを構造化して図示してみると次のようになる。

+-----------------------------------+
|    その他を含む全体でシステム     |
|     +---+---------------+---+     |
|     |   |    データ     |   |     |
|     +   +---------------+   +     |
|     |   ルール  :世界設定   |     |
+-----+-----------------------+-----+
|            コンセプト             |
+-----------------------------------+

 要するに、土台(コンセプト)の上にルールや世界設定という最も基本的な建造物が建ち、それを元にデータが作り出されると言うわけである。ルールと世界設定の間が明確な線で分けられていないのはどの程度関連し合うのかがシステム毎でずいぶんと変わるからである。また、汎用システムの場合はルールをあらゆる世界設定で用いるコアなルールと世界設定毎にコアなルールと世界設定をつなぐ世界設定毎のルールに分けることができ、コンセプトも最も下に来るコンセプトと、世界設定毎に考えられ、土台となるコンセプトに追加される小さなコンセプトに分けることができる。
 どちらにしろ、貧弱な土台(コンセプト)の上にはしっかりとしたものは作れないことが明らかである。

コンセプトで考えるべきこと

 これまでの話でコンセプトをしっかり考えなくてはならないことは分かった。しかし、コンセプトで考えるべきことには何があるのだろうか。また、どういう風に考えればよいのだろうか。
 コンセプトとして考えるべきことを一言で言うと「自分はそのシステムで何をしたい、何をするのか」ということである。また、同時に「何をしない、してはいけないのか」も決めなくてはならない。また、この「やりたいこととやらないこと」から「そのシステムで最終的にできることとできないこと」をできる限り考えておく必要がある。
 ここで、「何をするのか」を決めることには異論はないと思う。しかし、「何をしないのか」を決め無くてはならないというのはよく分からないかもしれない。だが、これは重要なことなのである。なぜなら、「やらないこと」を決めておかないと思いついたことを全てやりたくなる。特に、ルールは一度に全体を作ることができないため部分部分に分けて作ることになる。この様に細部を作っていると、その部分のみにしか通用しない特殊ルールが山のようにできてしまったりする。そうすると、最初のイメージからどんどん離れ、全体のバランスがおかしくなってしまう。また、それによって最初のコンセプトを踏み外してしまうこともよくあるのである。そうなってしまってはどうしようもない。
 また、そのシステムで「何ができて何ができないのか」をはっきりさせておけば、目的を逸脱したルールを無理矢理組み込むと言うことをしなくてすむ。

 ではコンセプトはどのようにたてるのだろうか。やりたいことは人によって違うだろうからそれは様々で言いようがない。しかし、やりたいことの内容に関わらず、できる限り具体的でなくてはならない。でなければ、次の実際に使う(デザインされる)方法(具体的なルール)に進めなくなる。
 ここで少し考えて欲しい。ゲームデザインのコンセプトでよく聞くものに次のような言葉がある。

「このシステムは、自由なキャラクター作成、リアリティーにあふれる戦闘ルール、柔軟な行為判定を目的として制作した」

 この言葉をコンセプトとして本当にルールを組み立てられるだろうか? はっきり言って不可能であると思う。これではどんなルールを設計すればいいのかという方向性が全く見えない。つまり、この様な抽象的な言葉でコンセプトをたててはいけないと言うことである。コンセプトの段階でできる限り具体的に考えなくてはならない。そして、具体的に考えれば考えるほど実際にルールとしてどのような方法を用いればよいのかを考えやすくなる。
 考えておくべき事柄で重要だと思うことを一通りあげておこうと思う。もっとも、以下にあげるもの以外にも考えておいた方がよいことは必ず存在することは間違いない。

  • 大体の世界設定。特にルールやデータなどと関わり合いの深そうな部分について。
  • ルールのトータルのサイズ。
  • 判定方法に乱数を使うのかどうか。
  • 判定方法の大体のイメージ。(技能を使う、使わない。使うならばどういう感じで。等)
  • キャラクターの強さ。その世界設定でどの位のものなのか。
  • キャラクター作成の大体のイメージ。(ランダムにできるのか、プレイヤーに任意なのか、デザイナーが用意するのか。など)
  • パラメータをどのくらい用意するのか。
  • 数値を用いるならばどのくらいの範囲で用いるのか。また、タイプの違うキャラクター間の能力差はどのくらいになるのか。
  • キャラクターはどのくらい死にやすいのか。
  • 戦闘や魔法などルールの中でも規模が大きく重要だと思うものの大体のイメージ。

 どんなルールを作ろうとしてもこれくらいのことは考えて置いた方がよいとおもう。

「The Lunatic」の場合

 では、少し具体的な例をあげてみよう。手前味噌になるが私の自作ルールである「The Lunatic」の場合は次のようなものだった。

  1. まず、ファンタジーをやる。ファンタジーではあるが世界設定としては基本的に世界史に沿う。地域はヨーロッパ、西アジア、中国、日本、(ユーラシア大陸とその周辺)を扱う。これらに魔法という要素を組み込んでファンタジー化する。
  2. キャラクターには人間(と同等レベルの力しか持たないもの)しか扱わない。
  3. キャラクター作成は自分の好きなようにキャラクターを作れるようにポイント割り振り制にする。極端に高い能力値や低い能力値は使えないようにする。
  4. 全ての数値は連続したものとして扱えるようにする(ソードワールドやD&Dの様に区切りをつけない)。
  5. 行為判定には基本的に技能を使用する。ただし、能力値での判定も可能にする。
  6. 技能も、突出して高い数値は作れないようにする。
  7. 行為判定は乱数を用いる。結果に安定感を持たせるため複数個のダイスを使用し、数値の分布を正規分布に沿わせる。ただし、極端に多いのは面倒なため採用しない。また、ある程度逆転のチャンスがある様にしたい。
  8. 決定的成功、決定的失敗などの特殊な処理は通常のダイスの目からは切り離す。
  9. 行為判定は下方ロール(ルーンクエスト、GURPSのような方法)を基準とする。ただし、対抗判定の場合、極端に長引かないように数値の比較を行う。ただし、GURPSの魔法のように弱いキャラクターがほとんど勝てないようなルールにはしない。
  10. 戦闘では、一撃でキャラクターが死ぬ可能性を持たせる。しかし、ある程度の時間は戦闘を続けられるようにする。
  11. 武器と鎧によってダメージの与えられ方に差を持たせる(切る、叩く、突くなど)。
  12. 自分の経験(剣道をやってた)から攻撃は不特定回数の連続攻撃を標準とする。また、防御後に反撃を行える。これらの攻撃、防御は連続して切り替わる。
  13. 魔法は基本的に魔法使いにとっての剣であると考える。盗賊などのキャラクターを無用の長物にする様なものは設定しない。魔法使いの系統はいくつか用意しする。
  14. 魔法はMagic; the gatheringの様に魔法戦を展開できるようにする。
  15. 以上のような戦闘からキャラクターは死にやすいが実際には滅多に死なないようにする。ただし、それなりの代償は支払わせる。
  16. キャラクターは最初からそれなりに強く、逆に成長はあまりない。
  17. ただし、キャラクターの成長は楽しいのでセッション毎に成長に関する処理はできるようにする。

 「The Lunatic」はかなり大きなルールとして設計したので最初にコンセプトとして漠然と考えたものでもかなりの量になってしまったが、この様な感じである。(注:これはver4.Xのもので最初の頃のものとは少し異なる)
 これでも具体的にルールとしての話は1つも出てきていない。しかし、どのようなルールを作ってゆくのかという方向性は見えてきている。あとは、これを元に実際に使用するルールを考えてゆけばよい。

第二章:ルールの構築

1.ルールの基本的な構造

 それでは実際にルールの設計について書いてゆこう。その前にTRPGのルールの構造というものに関して考えておこうと思う。

 当たり前だがルールはすべての部分を同時に書くことはできない。しかし、ルールをいくつかの部分に分けて書くとはいってもそれぞれに関連性がなくてはならないので全く別々に書くこともできない。だから、ルールはより重要な(基礎的な)部分から書いてゆき、応用的な部分は基本的な部分を参照しながら、また逆に、応用的な部分からのフィードバックを基礎的な部分に返しながら書いてゆくことになる。

 それではまず、ルールがどのような重層構造をとるかを簡単に図示す。

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|      キャラクター作成      |
+     +−−−−−−+       |
|     |魔法ルール |       |
+  +−−+−−−+  +−−−+   |
|  |戦闘ルール |  |その他|   |
+−−+−−−+  |  | の |   |
|ダメージ処理|  |  |ルール|   |
|   +−−+−−+−−+−−−+−−−+
|   |   行為判定         |
+−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+

 上の図で「−」で区切られて上下に積み重なっているものは下にあるルールを継承して上のルールが作られることを示す。

 それでは、この図で用いたそれぞれのルールについてそれぞれがどのようなもので、より基本的なレベルにあるルールとの関わりがどのようなものであるかを以下に簡単に記述してみる。

(1)行為判定

 まず一番基本的なレベルにあるルールが、行為判定のルールである。これは、そのルールの「売り」が何であるかということは関係なく、処理系でなにが重要かという意味で、である。
 私の知る限り、(そして知らないものも含めておそらく)「行為判定」のルールを持たないTRPGのシステム、ルールというものは存在しない。そしてまた、TRPGのルールのうちのほとんどのルールは「行為判定」のルールを元に構築されるはずである(私の知る限りD&Dが唯一、能力値判定、戦闘の命中判定、スキルの判定で異なる方法を用いている)。
 なぜ、そのほかのルールが「行為判定」を元に構築されることが多いかというと最大の理由はおそらく「ルールの量を減らすため」である。「簡単なルール」を作ろうとする場合は当然ルールもデータも量を減らさなくてはならない。そうするためにはなるべく少数、できれば一つの判定方法をすべての状況に適用する必要がある。だから、もっとも汎用度の高い「行為判定」のルールを継承して他のルールを書くことになる。また、データ量が多く複雑なルールを書く場合ルール全体を理解することがただでさえ困難になる。それをできるだけ解消するためにはほとんどのルールを単一のルールを継承して構築した方がよい。つまり、いずれの場合でも、それで遊ぶ人間の理解を助け、実際の運用レベルで煩雑さをなくすためにはルールの量を減らす必要があり、そのためには一つのルールを元に他のルールを作るのがよく、その元になるルールとしてはすべてのルールの中でもっとも汎用度の高い「行為判定」のルールが用いられる、ということである。
 この様な意味で「行為判定」もルールはすべてのルールの中で(処理系では)最も重要なものであるといえる。

(2)ダメージ処理

 TRPGのルールで必ずしも必要とは考えられないが、利用されることが多く、利用される場合はやはり基礎的なレベルになるルールとしてダメージ処理のルールがある。必ず必要とはいえない点などを考えると行為判定よりも応用的なルールだといえる。ダメージ処理のルールはたいていの場合において行為判定とは別なルールが組まれている。
 ここでいうダメージ処理のルールとは一般的によく用いられているヒットポイント等のパラメータのことだけではない。これらはダメージ処理のルールの一要素にすぎない。ダメージ処理のルールとは最終的にヒットポイントなどのパラメータに与えられる被害(パラメータを用いない場合でもキャラクターの被害状況を決めるもの)を決定するための関数のことである。単純な例を挙げてみる。例えばヒットポイントに与えるダメージが武器に設定された打撃のパラメータと防具に設定された打撃干渉のルールで構築されるとする。この場合「(ヒットポイント)−{(武器の打撃)−(防具の打撃干渉)}」という式がダメージ処理のルールということになる。実際にはこの他に武器などの戦闘以外での被害の設定や、精神力、正気度、能力値といった類似のパラメータ(等)への被害のルールというものがある。これらをひっくるめて「ダメージ処理」のルールという。

 この2つ、特に行為判定のルールがすべてのルールの中でもっとも基本的なものであり、そのほかのルールはこれ(ら)を元にその部分に必要なルールを追加することによって構築されることがほとんどである。それらの応用的なルールの中でもほとんどのルールに共通して存在し、比較的重要度の高いといえるものがある。それらが、「戦闘ルール」、「魔法のルール」、「キャラクター作成」のルールである。これらの他に様々なシステムで共通するわけではないがそのシステムらしさを出すためのルールとして「その他のルール」というものが存在する。

(3)戦闘ルール

 戦闘のルールは、大体の場合において行為判定のルールのもっとも応用的な部分である。他のいかなる場合よりもルールの適用がタイトに行われ、その処理系等も大体の場合において精密になる。
 ただし、ほとんどのシステムでは基本的に行為判定とダメージ処理のルールを継承し、そのシステムの中でもっともタイトな時間管理のルールを追加した状態でその大半を構築している。ただし、キャラクターに対する被害に直結する部分であるためその処理でのバランスにはもっとも神経を使う部分である。ルールを構築する上でのイメージによって大きく変わるが緊迫感を保とうとすればするほどその数値的なバランスには神経を使う必要がある。

(4)魔法のルール

 ここでは「魔法」のルールと表現したが「超能力」、「必殺技」などのルールもこれに含まれる。もっとも一般的に存在するものとして魔法という表現をしたにすぎない。
 魔法のルールというものは、ゲームによってその扱い(比重)が大きく変わるがだいたいの場合において、戦闘のルールを継承する。ただし、戦闘のルールとは大きく異なる点がある。それは、データそれぞれがルールを持つということである。ほとんどの場合、魔法や超能力といったものはその不可思議さを出すためそれぞれのデータがその結果を導き出すためにそれぞれの処理を行うためのルールを持っている。この点が、戦闘のルールと区別している点といってもよい。

(5)その他のルール

 そのほかのルールとは先にも述べたが「そのシステムらしさを出すためのルール」である。だがここに何が来るのかはそのルールで何をしたいのかに大きく依存するため一概にどのようなものが入るかはわからない。たとえば、「クトゥルフの呼び声」の正気度のルールや「天羅万象」の業システム、等がこの部分に当たる。
 また、この部分のルールが行為判定のルールだけを継承するとは限らない。例えば戦闘に関わるような場合は戦闘のルールを継承することになるが、ルールのもっとも基本的な処理系で関わってくるのならば行為判定のルールを継承することになるのがほとんどである。

(6)キャラクター作成のルール

 キャラクター作成のルールの最も重要な目的は、行為判定、ダメージ処理、戦闘、魔法、その他、といったルールで管理できるようなキャラクターという巨大なパラメータの集合体を作り出す、という点にある。そういう意味では、他のルール(戦闘、魔法、その他)とは継承の仕方が異なる。

 以上でTRPGのルール全体を構築するより細分化されたルールについての説明を簡単に行った。これらのルールはたとえ汎用のシステムであっても基本ルールとして存在する部分である。

2.ルールを構築するための基本的な手順

 実際に細部の(行為判定、戦闘、等の)ルール構築についての話にはいる前にルール構築全体を通していえる基本的な考え方について書いておく。
 実際にできたルールを運用するときは、手順としては次のようになる。

 行動を決定 -> 判定 -> 結果

 しかし、ルールを構築する際にはこの手順とは順番が異なる。基本的には全くの反対になる。つまり、下記の順序で構築することになる。

 結果 -> 判定 -> 行動の決定

 なぜ、この様な順序で作るのだろうか? 理由は簡単である。実際に作ったルールを運用したときにルールがデザイナーの予想通りに働くようにするためである。もう一つは、手間を減らすためである。
 上記の順番で構築すれば実際にルールを運用したときにデザイナーの予想通りになるという理由は簡単だと思う。最初から結果が予想の範囲にあるのだから当然である。
 もう一つの手間が減らせるという理由はこうである。「行動の決定、判定、結果」の順番で作ったとしたら多くの場合、判定の式から導き出される最終的な結果の成功率、ダメージなどが低すぎたり、高すぎたりすることがよくある。それを直そうとするとまた式から調整し直さなくてはならない。最初にたてた式を守ろうとするなら面倒な修正値を加えることになる。また、行動の決定を考えたときに判定の元になるパラメータを考えているが、その他の行動を考えた場合、その判定の元になるパラメータを新たに追加、変更、削除したりなくてはなくなる。つまり、調整のために作っては変更し、また作っては変更することが多くなるのである。これが結果から決めてしまえば判定に用いる式と結果が予想と食い違うことはまずないし、それが決まった後で必要なパラメータを作ればもっとも無駄がないというわけである。

 この考え方に従って、ルールを作ってゆくと「1.ルールの基本的な構造」で出てきた(1)〜(6)の順番で作ってゆくのが手順的に無駄がなく合理的であるといえる。もっともデータを作るという作業を実際にはほぼ同時に行わなくてはならないため正確に一つが完成してから次に移れるということはないし、後から作ったルールによって元のルールを少し修正したりしなくてはならないこともよくある。しかし、先に述べたようにルールを作るときはこの順番で作っていった方が無駄が少なく、実際に運用したときに予想通りの動きをしてくれるはずである。

 それでは、行為判定、ダメージ処理、……といった細部のルールの構築について考えてゆこうと思う。基本的にここまでで(というより、コンセプトを設計した時点で)何をすべきかは決まっているためここからはほとんどがテクニカルな話になる。

第三章:行為判定

 前項で述べたようにまずは行為判定の構築について考える。基本的にルール部分の半分以上はこの行為判定によっているため他の部分との絡みも考えて構築する必要がある。

 まずは、行為判定の設計を始める前にコンセプトを見直してほしい(第1回の記事を参照)。前述したコンセプトで考えておくべきことから行為判定に絡むと思える部分を抜き出すと以下のようになる。

 この中で更に重要だといえる部分は次の3つである。

 なぜこの3つが最も重要かというと、この2つを元に行為判定に用いる基本的な数式が決定されるからである。

 それではそれぞれの項目についてその意味を考えてみよう。
 まず、乱数を使うのかどうかは行為判定の際にサイコロやカードといった乱数を発生する装置を用いるかどうかと言うことである。つまり、どの程度の偶然性を持たせるかということである。また、偶然性を決定すると言うことは逆に言えばどの程度安定した結果が予測できるかということにもなる。この部分だけで決まるわけではないがそのルールがヒロイックであるのかそれとも現実的なのかを決める重要な要素だといえる。
 乱数を用いない場合は乱数の幅が0と言ってもよいかもしれないが行動の結果が最初から決まっていてどうしようもない、ということになるのを回避するため南アらかの手段を別に考えなくてはならないため別のものとして考えた方がよいだろう。

 次の判定方法の大体のイメージについてであるが、これは基本的には「上方ロール(ソードワールド、ロールマスターの様に、目標値 <= 乱数 + 基本値、で判定を行うルール)」か「下方ロール(ルーンクエスト、GURPSの様に、乱数 <=(基本値 = 目標値)、で判定を行うルール)」であるかを決めることであろう。
 基本的に目標値に対して判定を行う場合は上方ロールであろうと下方ロールであろうと差はない。しかし、2者以上の判定の結果を比較する対抗判定になると少し話が変わってくる。上方ロールの場合は単純に値を比較するだけだが、下方ロールの場合は違う。少し数式をあげて考えてみることにする。

 AとBの2者が競い合った場合、上方ロールでは一般的に次のような判断をする。

 下方ロールの場合はAとBの判定の結果は次のような組み合わせを判断することになる。

(A, B) = (0, 0), (1, 0), (0,1), (1, 1)
(注)1は成功、0は失敗を示す。

 この様な場合に、普通対抗ロールでは先に行動したものを不利に扱うため結果として以下のような偏りができる。この場合Aが先に行動したもの、Bが後から行動したものとする。
 上方ロールの場合
 Aが勝つ場合:A > B
 Bが勝つ場合:A <= B

 下方ロールの場合
 Aが勝つ場合:(1, 0)
 Bが勝つ場合:(0, 0), (0,1), (1,1)

 戦闘時の命中の処理などを考えてみるとわかりやすいと思うが、下方ロールでは先に行動したものの結果が成功であったときにその成功に対して成功ならば後から行動したものが成功になるという処理を行うためこの様な結果になる。
 引き分けを考えるならば上方ロールでは値が同じ時だけが引き分けなのに対し、下方ロールの場合は判定のうち約半分の結果が引き分けとなってしまう。
 この考察から、上方ロールの方は結果が高速に求められるがより、攻撃的であり、基本値の差が反映されやすくなるにに対し、下方ロールでは結果を求めるのに時間がかかり(引き分けのある場合)基本値の差は緩衝される傾向になる。また、上方ロールはより攻撃的であり、下方ロールは防御的であるといえる。
 どちらかというと上方ロールはヒロイックなイメージで設計したい場合に、下方ロールはより現実的(あまり適当な言葉ではないかもしれないが)なイメージで設計したい場合に向いているといえる。

 また、この2つは結果として成功か失敗のいずれかを返すだけの最も単純なものである。そのため、結果としての中間状態、特殊効果を求める方法としていくつか方法が考えられる。例えば、下方ロールを動的にしたものとして天羅万象の様に複数個のサイコロを振りそのうちいくつが成功したかを見るもの、World of darkness、シャドウランのように上方ロールとして複数個のダイスを振りそのいくつが成功したかを見るもの、もしくはもっと単純に目標値との差によって効果に段階を付けるものなどがある。私の「The Lunatic」では下方ロールを基本とし同時に上方ロールを組み合わせることによって判定を高速化、多様化している。
 このあたりの判定方法の派生系についてはいろいろ独自に考えるしかない。

 上であげたもののなかでは最後になるが、数値の範囲についてである。これは、判定時の定数としてのパラメータ、乱数ともにどの程度の大きさの数値を扱うのか、ということである。例えば、技能の数値が0〜100、乱数の範囲も0〜100といった具合にである。
 さて、数値の範囲につては基本的に次のことがいえる。

  1. 乱数、パラメータともに数値が大きければ大きいほどきめ細かく判定を行える。しかし、無駄になる数値も多くなる。
  2. パラメータに対して乱数が大きな数値を与えるならば判定時の博打性が大きくなる、逆にパラメータに対して乱数が小さな数値しか与えないなら博打性は小さくなる。(注:下方ロールの場合は基本的に当てはまらない)

 まず、一つ目について解説すると、例えばD100で判定する場合とD6で判定する場合を考えてみるとよい。D100で判定を行うような場合は1%刻みで判定を操作できるがD6で判定するときは16%刻みでしか操作できない。また、このとき判定の操作に用いる数値として基本的なものが能力値などのパラメータであるからパラメータもこれに引きずられることは明白である。
 では、数値を細かくとればよいかというとそうでもない。D100で判定を行うような場合、ダイスの10のくらいだけ判断すれば結果が明らかになることが多い。それにも関わらず2桁の計算を要求されるのは無駄なことをしょっちゅうやっているといえる。また、修正値などの特殊なパラメータは結局1%刻みではなく5%刻みくらいで与えられることが多い。これも数値を覚えにくくするなどの原因になる。
 結局は、コンセプトに従ってどの程度高速に、どの程度緻密に処理を行うかというあたりでかねあいを求めるしかないというわけである。

 次に、パラメータと乱数の割合についてである。基本的に下方ロールの場合は気にしない。なぜなら、基本値の最大値 = 乱数の最大値、であることが普通だからだ。クリティカル、ファンブルといった特殊な効果を判断しない限り上の式を満たす。そうでなければ無駄な数値を採用していることになるからである。
 で、上方ロールの場合であればどのように影響するのであろうか?
 例えば、D10を用いる判定で基本値が1〜5の場合と1〜10の場合を考えてみよう。
 まず、基本値が1〜10の場合弱い方が強い方に対抗ロールで勝てる可能性は次のようになる。

基本値の差:確率(引き分けあり)
0:45%
1:36%
2:28%
3:21%
4:15%
5:10%
6: 6%
7: 3%
8: 1%
9: 0%
平均:15.5%

 次に基本値が1〜5の場合は次のようである。

基本値の差:確率(引き分けあり)
0:45%
1:36%
2:28%
3:21%
4:15%
平均:29%

 このように、基本値の差が少ない方が弱い方が勝てる可能性が多くなる。言ってみればよりヒロイックであるといえるかもしれない。しかし言い換えれば結果が予測しづらいと言うことである。これも、コンセプトに従って適当なものを計算するしかない。

 また、上ではあげなかったが考慮すべき重要なことがある。それは、判定時にサイコロを使う場合、1回の判定でサイコロをたくさん使えば使うほど安定感が増す、ということである。これは、理由は簡単で、サイコロをたくさん振れば振るほどその合計値の分布は正規分布に近づくからである。また、動的な下方ロール、上方ロールの場合では成功するサイコロの数は大数の法則に従ってしまう。
 わかりやすく言えば、同じ様な数値の範囲をとるD10による判定と2D6による判定では、2D6のほうが平均値に近い値がよくでると言うことである。
 また、動的な下方ロール、上方ロールはサイコロをたくさん振るためあらっぽく、逆転のチャンスが多いような気がするが実際はそういうことない。十数個もサイコロを振るようであればたいていの場合、1個のサイコロの成功率に従って失敗と成功の数が決まってしまう。たとえば、1/2で成功する様な判定にサイコロを10個振ったとすれば、ほとんどの場合5個失敗、5個成功になってしまうはずである。
 まぁ、これらについてもコンセプトに従って考慮する必要がある。

 ここまで、乱数を発生する装置としてサイコロを用いたものとして話を進めてきたが、乱数を発生する装置には他にもカードやコイン、ルーレットなんかが考えられる。これらのうちカードは手札としてストックしておくという手段が考えやすい点で他のものとはことなる。
 実際のところ、カードを使ってそれを手札としてためておくとなると計算がややこしくなる。単純に、何の操作もせず最初配った段階である数字のカードが手札に入る確率というのはカードが1枚しか配られないなら約6%、2枚配られるなら約15%・・・である。複数人に配るとなるとさらにややこしくなる。
 それに加えて、いつそのカードを使うのか、という予測という要素が入ってくるためかなり厳しい。確率の本を片手にがんばってください(笑)。

 また、ダイスだけ、カードだけではなくそれらの組み合わせや、ヒーローポイント的な要素が入る場合もある。これらについてはどの程度の割合でそれらの補助的な要素が使われるのか、また、どの程度の影響力があるのかはデザインされたルールごとにあまりにも違うため簡単には述べられない。

 しかし、行為判定の結果がどのようになるかはできる限り計算しておくべきである。その努力が、実際にシステムを運用したときに予想通りに動くという結果を生むし、動かなかった場合にはどこを直せばよいのかと言うことを明確にしてくれる。
 また、計算をするときにはいきなり数値を求めるのではなく、乱数の期待値と基本値を元に簡単なグラフを書いてみるとよい。イメージとしてわかりやすくなる。ダイスを使うならばグラフは直線になるか正規分布(正確には違うが)のいずれかになるはずである。それほど難しい作業ではないと思う。

第四章:ダメージ処理

 さて、今度はダメージ処理の話に入る。題名は「ダメージ処理」だが一般的なHP(ヒットポイント)とダメージの話だけではない。もっと正確な表現をするならば「キャラクターの生死を管理するリソースの処理」ということになる。
 わかりやすく言うなら、キャラクターの生死に影響する増減可能なパラメータはHPだけではなくそれらHP以外のものについても考える必要があるということである。
 また、HPというパラメータを用いずにキャラクターの生死を管理する場合も考えられるがその様な場合についても考察してみたいと思う。

 では、最初はやはりHPの話から始めよう。
 今のところTRPGでキャラクターの生死を管理するためのパラメータとして最も一般的なものはやはりHPであろう。そして、たいていのシステムでは数値の大小はあるにしろほとんど同じ様な管理をしている。つまり、何点かのHPがありそれが0(もしくは他の数値)に達した時点でキャラクターは死亡するというやり方である。
 なぜ、この方法がそんなに隆盛を極めているのだろうか? 実際のところ人間にしろ他の生き物にしろこの様な数値1つで管理しきれるほど生死は簡単には決定されないことは明らかであるのに。

 まぁ、結局のところ管理しやすく、わかりやすいというのが一番の理由だろう。そして、この管理しやすくわかりやすいというのが非常に重要なことは間違いない。

 では、どの辺が管理しやすくわかりやすいのだろうか?
 それは、キャラクターの生死を判断するためにただ1つのパラメータだけを参照すればよく、その管理には足し算(引き算)しか使用しない、という点にあると思う。
 また、TRPGのキャラクターは我々と違って殴られても痛くない。つまり、何らかの被害を表すパラメータがない限りプレイヤーにはキャラクターがどの程度危ない状態にあるのかがわからない、ということになる。これを、1つのパラメータで視覚化し、プレイヤーに状態を知らせるという点では非常に優秀な手段であるといえる。
 とはいえ、いろいろ問題点もあることも事実ではあるがそれは後回しにしてまずは、HPとダメージの関係から始めよう。

 さて、あるシステムにとって最適なHPの値というものはどうやって決定するのであろうか。当然だが「カン」で作るわけには行かない。HPの値だけが独立に存在しルールから何の理由も無しに与えられるならば何回もテストプレイをして最適な値を決定することもできるだろうが普通はそんなことはできない。

 では、どういう手順で値を決定するのだろうか。
 これを考える際に重要なのはそのシステムのコンセプトによって決定されているであろう次の点が重要になる。

 これを見るとわかると思うがHPの値自体は関係なく、与えられるダメージの方が関係してくることがわかる。まえに、「2.ルールを構築するための基本的な手順」でも書いたが結果を先に決めてしまうと言うことである。こうすれば、予想を裏切る結果にはならない。そして、ダメージ管理は最もこの考え方が効く。

 では、上の3つの点をもう少し計算しやすいように表現を変えてみよう。
 まず、1つ目はこういうことである。
1回の攻撃が当たったとして与えられるダメージの平均値は何点なのか。
平均して攻撃はどのくらいの割合で当たるのか。

 2つ目は簡単に次の通りである。
ダメージの最大値は何点なのか。

 3つ目はこういうことである。
ダメージの最小値は何点なのか。

 要するにダメージの平均値と最大値、最小値はいくらなのか、そしてどのくらい命中するのかを決めてしまおうということである。そして、より重要なのは前半部分のダメージの平均値、最大値、最小値についてである。

 で、この平均値、最大値、最小値の中で最も重要なのは平均値でその次が最大値である。最小値に関してはそれほど気にすることはない。実際に最小値が問題になることは少ないし、ダメージの幅を考えるために存在するものと考えても良いだろう。ただ、最小値があまりにも大きいと問題になることがあるのでその点だけは考慮する必要があるとおもう。

 しかし、よく考えると武器のデータも鎧のデータもなくどうやって平均値や何かを求めるのであろうか?
 当たり前だが求められない。求めるのではなく作ってしまうのである。そしてこのとき考えるのがそのシステムで「最も普通の武器」で「最も普通の鎧」を身につけているものを攻撃して与えられるダメージを考えると言うことである。
 そうすると、HPだけでなく武器や鎧のパラメータに対する指針も作ってしまえる。

 少し具体的な例を挙げてみよう。
 最も普通の武器で与えられるダメージが平均で5点、最大で10点、最低で1点とする。そして、5回くらいダメージを受けるとキャラクターは死亡するとして普通のキャラクターは10回くらい攻撃してほしい、としよう。

 これを先ほどの様に考えるとHPは25点くらい、ダメージはD10、命中率は50%にすればよいと言うことになる。もっとも、これでは防具のことを考えていないので防具で2点のダメージを止められることにすればダメージをD10+2にしても良いし、これではつまらない(防具と武器の関係が遊ぶ人間に簡単にわかってしまう)と思うならダメージを2D6としても良いだろう。
 簡単にバランスのとれた状態に持ってゆける。

 また、武器のパターンや防具のパターン、キャラクターのうたれ強さ(弱さ)などはこの様にして求めた数値を中心に展開してゆけばバランスのとれた状態で簡単に作ってゆける。

 この様に簡単な例ではあるがHP及びダメージというパラメータの設定の仕方について簡単に述べた。

 しかし、HP以外のパラメータに対するダメージというものも当然考えられる。例えば、技能の数値が何点か下がってしまうと言った類のものである。
 この様な数値を扱うのは結構いろいろなシステムでやられているがバランスをとるのはかなり難しい。HPが基本的に他の数値とは切り離され、独立なパラメータとして扱われるのに対し、技能などを増減させた場合その影響がどのようにでるのかを計算するのはかなり難しいからである。

 しかし、計算できないわけではない。
 どのように計算するかというとHPに対する影響に換算するのである。

 例えばD10を1個使う下方ロール(ダイスの目が基本値以下で成功という判定)で攻撃の技能が8、防御の技能が5、ダメージの平均値が5、HPの初期値が10のキャラクターが2人戦っている場合を考えてみよう。
 このキャラクターの一方(Aとする)がすべての技能に-1の修正を与えられた場合、Aが相手(Bとする)に攻撃を命中させる確率は、5%減少する。また、Bの攻撃に対して防御に成功する可能性は8%減少する。
 まず、1回の攻撃でAがダメージを受ける可能性は0.08*5=0.4増える。また、相手に与えるダメージの価値を自分が受けるダメージと等価とするならば0.05*5=0.25点損失を出したことになる。
 そして、初期状態であれば戦闘開始から終了までを平均すると0.8*(1-0.5)*5=2点のダメージを1回の攻撃で与えていることになるから平均して戦闘は10/2=5ラウンド続くことになる。
 従って、大体(0.4+0.25)*5=3.25点のHPを失ったことに等しい。
 ただし、本物のHPに対するダメージとは異なり相手に同様の被害を与えれば回復したことになるため、ダメージを受けた後死亡するまでの間に相手にダメージを与えられる可能性と同量のラウンドの間に更にダメージを受ける可能性を考慮した上で最終的な計算結果を求める必要があるが、この2つの値がほぼ同じであるならば上記の計算でそれほど誤差があるわけではない。
 更に正確には、この様な被害によって戦闘に費やす時間が次第に延びてゆくためそれも考慮に入れる必要がある。

 また、戦闘終了後もこの技能の減少を回復できないことになったりするともっと大きな被害といえる。また、逆に途中で回復できたり、更に被害を受けたりするとほとんど計算できなくなってしまう。
 逆にダメージを受けるとボーナスを得る様な場合はダメージの受け方によっては逆に強くなってしまうことも考えられる。
 さらに、知覚能力や罠解除などの技能に影響を受けた場合の損失といったら計算による予測など不可能になってしまう。

 この様に、様々な部分で影響の考えられるパラメータにダメージを受けるルールを組んだ場合は非常にバランスをとりづらくなってしまう。計算できる部分は計算するに越したことはないが、結局はメイク&トライを繰り返すのが速いかもしれない。

 また、魔法の使用限度を決定するためのパラメータとしてよく用いられるMPなどの減少による影響もHPに換算して計算することはできる。ダメージ魔法やHPを回復させるための魔法の場合は平均的な使用回数と成功率、ダメージ(回復量)の平均から全体としてのHPへの影響を計算できる。それをMPの値で割れば1点の価値を計算できる。
 ただ、無制限に使い続けられる武器とは異なり、回数が不定であることやプレイヤーによって扱いがかなり異なることが多いと思うので計算結果は武器の場合と異なりあまりあてにならないことが多いと思う。
 これを考慮すると武器のデータを決定した後でそのデータを元に魔法のデータ、MPなどのパラメータを決定しメイク&トライを繰り返すのが良いだろと思う。このとき、魔法の強さに段階があるならば一次関数的にダメージなどを増加させておけば1つのデータに対する修正はその他のデータにも通用するので便利ではある。まぁ、こんな魔法はつまらない、と思ってしまうならそれまでであるが。

 また、判定にカードを用いた場合はカード1枚の価値を考慮しなくてはならない。使ったカードをすぐの補給できるならば問題ないが、カードを補給できるチャンス、一度に補給できるカードの枚数が限られているならばこれはかなり重要である。

 例えばトランプを使って判定し、基本値+カードの数字で判定しダメージが固定値で5点というルールを仮定する。カードは1キャラクターにつき4枚まで保持でき、カードを補給できるタイミングは1ラウンド(戦闘中にすべてのキャラクターの行動が一巡する間を意味する単位と定義する)の最後に最大の枚数までとする。また、カードを出せないと攻撃も防御もできず、行動は攻撃も防御もカードがある限り可能であるとする。
 基本値が同じならば1回の攻撃で与えるダメージの平均値は約2.5点である。
 しかし、何らかの要素でカードを失うことがあったとするとカードを失わなかった側は必ず成功する攻撃を1回行える。この場合、カードを失った側は5点のダメージを必ず受けることになる。
 つまり、カード1枚の価値はHP5点に等しいというわけである。
 この様に、カードを使う場合はそれによって行動も制限されるため非常にシビアになる。

 また、これは本来なら戦闘ルールの説明で行うべきことだが簡単に言っておく。何かというと複数のキャラクター対1になった場合である。カードを使うにしろ、何か行動回数を制限する要素がある場合、1回の行動の権利はかなり大きな価値を持つ。
 上記と同じルールを用いた場合、2対1になったなら1人の方は20点のHPを失うのに等しい。1対1の場合に比べて全く勝ち目がないといえる。
 もちろん、その様に設計されているルールなら問題はない。しかし、たいていの場合はこの様なバランスになるのは問題だと思う。何らかの救済策を考える必要があるだろう。

 今度はHPというパラメータの問題点について少し考えてみたいと思う。
 私がよく思うのは「人間は何回も殴られないと死なないときもあるが1回でコテっと死んでしまう場合のある」ということと、「HPのようなパラメータで生死を判断するのはあまり現実に即してないのではないか」ということである。

 1つ目の解決法としてはクリティカルヒットなどの特殊な処理を加えることでも解決できるし、私の「The Lunatic」ではHPを複数に分けることによって表現している。この方法は「央華封神」というシステムが最初に行った方法を少しモディファイしたものである。
 その他にも考えれば結構方法は見つかるはずである。

 次の問題点に対してはまずHPを用いずにどうするのかということを考えなくてはならなくなる。この解決法としては次の様な解決法があるだろうか。

 一つ目は軽傷、重傷、致命傷等という風に言葉で表現してしまうというものである。見た目はHPとして数値で表現するよりもけがの具合等がわかりやすい(というか実感がわきやすい)という点がある。しかし、実際にはHPと管理の仕方があまり変わらないし処理の仕方によってはややこしくなってしまうことも考えられる。

 もう一つはHP以外のパラメータにダメージを与えるという方法である。例えばダメージの表のようなものを持っていてD6で1なら特に被害無し、2〜5までは数値×5%の判定の基本値の減少、6なら死亡という風な処理である。
 この様な処理を組んだ場合はバランスがとりづらい。その理由は上記のHP(などの生死を管理するためだけのパラメータ)にダメージを与える場合を読んで頂いたなら明らかである。この様な場合もHP以外パラメータに対するダメージの考え方を応用すれば計算する事は可能である。しかし、計算するとかなりややこしい。実際にテストプレイを繰り返しバランスをとるのが妥当だろうか。

 基本的なHPなどのパラメータの設計や計算の仕方については以上で終わりである。
 HPなどの生死を管理するための独立したパラメータを用いる場合、戦闘のバランスを保つためある程度計算をしておいた方が良いことは間違いない。しかし、行為判定などの数値とは異なりわずかな数値の違いがプレイアビリティに影響することは少ない。どちらかというとテストプレイを繰り返しながら詰めていって問題ない部分だと思う。

 最後に私個人の意見を言わせてもらえばダメージなど生死を管理するための数値はその他に判定などに用いる数値とは切り離しておいた方が良いと思う。理由は上記で説明してきたようにそうした方がバランスがとりやすいこと、ゲーム中に要求される計算が少なくなるためプレイアビリティを保ちやすいことである。

第五章:戦闘ルール

 前回と前々回でTRPGのルール注で最もコアな部分についてのルール構築の話は終わっているので、この戦闘ルールの説明、魔法のルール、その他のルールに関する説明はそれほど細かな計算の話はしない。しかし、行為判定、ダメージ処理の内容を継承した上で話を進めてゆくのでこの2つの話は理解しておいてほしい。

 では、この章の本題である「戦闘ルール」の設計について考えてゆこうと思う。
 戦闘ルールは基本的にその大半の部分を「行為判定」と「ダメージ処理」で占めてられている。攻撃の命中処理、それに対する防御の処理が行為判定のルールであり、その後の部分がダメージ処理で占められる。
 簡単に言ってしまえばこれだけなのでこの2つをきちんと構築しきってあればそれほど問題はないことになる。しかし、大抵の場合そんなに簡単には行かなかったりする。それはなぜだろうか?
 理由は大きく分けて3つあると思う。

 1つ目はダメージ処理が単純なものではなくなること。具体的に言うと武器のダメージ、鎧による軽減、等に分解され、それぞれに幾通りかのデータが用意されるためバランスを保つことが困難なこと。
 2つ目は、時間管理。戦闘の処理はキャラクターの生死が絡むため順序を正確に決めなくてはならないし、複数のキャラクターが同時に関わることがほとんどであるためその管理に関する処理を構築しなくてはならないこと。
 3つ目は、オプションルールに関してである。つまり、戦闘ルールでは何か特殊な行動を表現したくなることが多く、そのため基本的な行為判定のルールに手を入れなくてはならなくなってしまうことである。

1)ダメージ処理

 では、ダメージ処理とそれに関わるデータの構築から話を進めよう。
 話を進める前の前提条件として戦闘によるダメージ処理は武器によるダメージを乱数で決定し、鎧によってそれを軽減し、最終的にHPに与えられるダメージを算出するという良くある方法を用いているものとする。これを式で表すと次のようになる。

(ダメージ)=(武器によるダメージ:random)−(鎧による軽減量:constant)

 まず、データを構築する際に頭に入れておく必要があるのは「最終的にHP等のパラメータに与えられるダメージはデータを構築する前に決定されている」ということである。当然これにはばらつきがあって良いのだが、その期待値と最大値、最小値は押さえておく必要がある。別にこうしなくてはならないと言うわけではないがこの様にした方がデータのバランスが圧倒的にとりやすい。

 最終的に期待するダメージを決定したら次に、定数項を決定する。大体の場合は武器のダメージを乱数にとり鎧などのダメージ軽減部分を定数として扱うことが多いと思うがこのように作るならば鎧によるダメージ軽減部分を先に決定してしまうと言うことである。

 さて、この段階でダメージの期待値、最大値、最小値はデザイナーの決めた数値だし、鎧によるダメージの軽減量は定数だから上記の式を以下のように変形して考えれば設定すべきダメージの量というのは簡単に決まってしまう。

(武器によるダメージ)=(ダメージ)+(鎧による軽減量)

 これで、武器によるダメージの最大値、期待値、最小値が決まるわけだからそれにふさわしい乱数を選択すればよい。少しあわないようならば乱数に加える定数で調節すればよい。
 さらに、武器や鎧のバリエーションは最終的なダメージの最大値と最小値を決めてしまえば簡単に決定できる。つまり、最も大きなダメージは最も小さい鎧と最も大きな武器によって決まるし、最も小さなダメージは最も大きな鎧と最も小さな武器によって決定されると言うことである。これらの組み合わせを考えてゆくだけで基本的な武器と鎧のバリエーションを構築できる。

2)時間管理

 次は、時間管理についてである。このルールはおそらく戦闘ルールに独特なものであろう。そして、戦闘においてはかなりシビアな問題である。時間管理とは何を意味するのかというと、複数のキャラクターの行動順、行動量、全キャラクターの行動の終了時点を決定すると言うことである。

 この3つの要素のうち終了時点というのは余り問題にはならない。大抵の場合、全てのキャラクターの行動が終わった時点という扱いにするだろうし、それ以外の方法を採った場合の方が問題になるだろう。

 次に、行動順というのもそれほど問題にはならないことが多いと思う。大体、先に動いた方が有利になるはずなのだがほとんどのルールでは防御行動のタイミングを行動順に関係なし、という扱いにして解決している。
 もう一つよく使われる方法としては、全キャラクターの行動は同時であるという扱いにして全キャラクターの行動を必ず解決するという方法である。これも、問題ない方法だと思う。

 一番問題になるのは、行動量である。
 まず、行動量とは何であるかを定義しておこう。行動量とは単純に1ラウンドの間に1人のキャラクターがどれだけの回数の行動を行えるかと言うことである。
 例えば、1ラウンドの間にキャラクターが1回の攻撃を行い、3回の防御行動をとり、1回の移動を行ったならば行動量は1+3+1=5と言うことになる。

 さて、ここでキャラクターの行動量に関してはいくつもの方法が考えられると思う。しかし、いろいろなシステムで用いられている方法を見る限り次の4通りが多いのではないだろうか。

  1. 行動量は1で固定。
     この方法は1ラウンドに1行動しかとれないというものである。あまり見ない方法かもしれない。

  2. 行動量は最大で2、攻撃に使える行動量は最大で1。
     GURPSが基本的にこの方法である。要するに攻撃が1回、防御が1回であると言うわけである。

  3. 行動量の最大値がN(Nはある正の整数定数)で攻撃、防御、その他の行動の合計がN。
     この方法はカードを用いるルールに多いと思う。トーキョーNOVAはほとんどこの方法だし、深淵も基本的にこの方法である。

  4. 攻撃に使える行動量は1、防御に関しては無制限。
     多分この方法が一番多いだろう。ソードワールドなどがこの方法に当たる。
     ちなみに、ロールマスターのように常に防御に値を相手の攻撃から引いたりする場合はこの方法と同じである。

 1対1の戦闘を扱う場合はこれらには特に優劣はない。なぜなら攻撃回数が1に固定されているため2と4は同じである。1に関しても行動順が50%で入れ替わるならば2回が2や4の1回分に当たるだけだし、3は逆に2や4のN/2回分を一度にやっているだけに過ぎない。

 問題が出てくるのは1対多の状況になった場合である。もちろんどの場合も人数の少ない側が不利なことには間違いない。しかし、4以外は2人以上のキャラクターに囲まれて攻撃された場合には基本的に勝ち目が全くない。単純に考えて1から3は1人の側に対して複数いる側は行動量が人数倍になってしまい、あふれた行動量分が防御できない攻撃となってしまうからである。これに関してはその様なバランスで設計したのだと言われればそれまでだし、文句を言うところもない。
 しかし、一点だけ考慮しておくべき点が有ると思う。それは、「1対1の場合に対して1対2の場合は約倍の時間を使う」と言うことである。これはプレイヤーがではなくキャラクターがである。まぁ、最も前提条件が有って、1人のキャラクターに対して同時に干渉できるキャラクターは0である、つまり、1対1が2回と言う風に考えると言う前提条件でだが。
 要するに何が言いたかったのかと言うと1対1の場合よりも1対2の場合の方が時間が長いのにその間の行動量は(特に1人の側の)変化しないと言う点である。

 私が知る限りでは、システムのメインで1から3の方法を用いているものであっても4と部分的に組み合わせることによってそのあたりを解決しているようである。上で例と出したシステムではGURPSは回避が回数無制限だし、トーキョーNOVAは山からカードを直接引けることにして緩衝している。深淵は攻撃を命中させるための閾値を設定する(=ロールマスターの方法)ことによって解決している。

 少なくとも、行動量に関してはどうするかと言うことを考えておく必要があることは間違いない。特に、カードを使用するようなシステムを設計する場合は行動量が手持ちのカードの数で制限されることになることが多いので注意する必要が有ると思う。

3)オプションルール

 オプションルール、つまり特定の状況や行動に対する特殊な処理についてである。
 私の考えを結論から言えばオプションルールは作らないほうが良い。正確な表現をするなら、判定基本値などのパラメータを触ったり、基本のルールとは全く別のものを付け加えたりするのが良くない。
 パラメータを触るのが良くない理由は「4.ダメージ処理」のところでも述べたがバランスを取るのが非常に難しいからである。ダメージ処理の項目ではマイナス側の修正に関してだけ考えていたがこれがプラス側であったとしても同じことである。そして、戦闘中の行動回数はその場合によって毎回変わるということがバランスの取りづらさに拍車をかける。そして、バランスがとりづらいのとは逆にプレイヤーには基本ルールだけを使うのが(戦略上)得なのかオプションルールを使うのが得なのかが簡単にわかってしまう。そうなってしまうとオプションを設定する意味もしくはオプションである意味がなくなってしまう。
 また、オプションのために特殊なルールを作るのはやはりあまり良いことではないだろう。ルールを肥大化させるし、肥大化したルールは理解を困難にする。

 しかし、オプションルールはすべて問題かというとそういうわけでもないのは確かである。行為判定やダメージ処理を考えているときに作ることを予定してそのための処理をあらかじめ考慮に入れてあったようなものならば問題はないだろう。
 また、基本のルールを良く考えれば可能なことであることが分かるようなものも問題ない。
 また、それはキャラクターには特殊な能力(技術)、たとえば必殺技のようなもの、があると考えてシステムを構築しているときは少々極端なオプションを用意してあっても良いだろう。こういう場合はそのように作っているのだから問題ない。

 結局の所、オプションルールに関しては自分の作っているシステムのことを自分でどれだけ理解しているか、ということが重要だと言うことになる。「自分で書いているものだから自分は完全に理解している」というかもしれない。しかし、細部を作り込むのは作業としてはやりやすいし、どうしても凝ってしまうものである。そうすると全体のバランスを見失うことが多々ある。そうなってしまっては本末転倒だ。だから常に全体を意識しておく必要がある。

第六章:魔法等のルール

 戦闘ルールに続いては魔法や必殺技、超能力などといったルールについての話である。

 これらは、そのシステムの特徴を表したり、世界設定を表現することの多い特殊なルールなのだが「クトゥルフの呼び声」の正気度のルールなどとは異なる。どこが違うのかというと基本的な扱いが戦闘ルールと同等になることが多いという点である。だから、魔法のルールであっても戦闘ルールとは一切関係なく扱われるならば私の話で言う「魔法、等のルール」には当てはまらない。

 さて、これらのルールは基本的に戦闘ルールを継承するのに戦闘ルールと分けているのはなぜだろうか?
 それは、「個々のデータがルールを持つ」という点である。戦闘ルールのデータは基本的に数値的なパラメータを持つだけでルールを持たない。これが大きな違いであり注意すべき点なのである。
 なぜなら、データそれぞれが戦闘ルール述べたオプションルールに近いものだからだ。もちろん、オプションルールというには個々のデータが持つ特殊なルールは汎用性に乏しいし、影響力も小さい。しかし、単なる数値的なデータとは違ってバランスの取りにくさは格段に高い。
 しかし、この様なルールは作った後でテストを繰り返しチェックするほかにバランスのとりようがない。結局それくらいしかいえることがない。

第七章:その他のルール

 はっきり言って、ここではいえることはほとんどない。また、ここで例を挙げてみてもそんなものには意味がない。そのルールの特徴を出すためのルールなのだから当然である。
 しかし、いくら特殊なルールだといってもむやみにルールを増やすのは良くない。判定の仕方やルールの考え方などは行為判定やダメージ処理などの考え方は継承した方がよい。でないと、ルールをむやみに複雑にしてしまう。特に精密でルールが多いシステムを組むならば気にしておく必要がある。

第八章:キャラクター作成のルール

 ルール作成の話としては最後になる。
 おそらく、ルールの量としては最も大きなスペースを占め、プレイヤーにしろマスターにしろそのシステムで遊ぶ人間がかなり大きな関心を示す部分がこれである。

 その前に、キャラクターというものをルール的に解釈するとどういう意味を持つのかを確認しておこうと思う。ちなみに、システム的に(世界設定なども含めてトータルに)考えた場合はプレイヤーがシナリオに干渉するためのオブジェクトということになる。自分の分身だとか、ゲームトークンだとか、いろいろ意見はあるようだが、まぁそういうことである。
 ルール的に考えると、プレイヤーが何かの行動をしようとした場合にそれを解釈して結果を返す関数に必要なパラメータを渡すための、データの集合体である。

 つまり、その様なパラメータを設定できるようなルールを作ればよいだけの話である。
 具体的に言うと、能力値があるなら能力値を決定する方法を、技能を使うなら技能を決定する方法を、HPを使うならHPを計算する方法を、・・・、を作るということである。能力値が6〜13くらいになってほしければそのあたりに収まるような方法(おそらくは計算式)を作ると言うことである。

 あとは、世界設定が小なりとはいえあるなら(巨大なのがあるならもちろん)それを反映するような記述を追加すれば基本的には終わりである。

 ただし、ルールの他の部分とのインタラクションが余りにも多いため作業は非常に多いし、大変なことは間違いない。テストプレイやキャラクター作成のテストを可能な限り行ってまずいところは洗い出すようにする必要がある。でないと、ルールの穴をついてデザイナーが望まないような強力なキャラクターを作ったりすることが可能になったりする。もちろん、この様なことをするのはプレイヤーとしてのモラルに反するからやらないのが当然だという意見もあるだろう。しかし、バグがあるのがわかっていて潰さないのはデザイナーの怠慢だと思うのだが・・・。

 キャラクター作成に関しては全く別の方法もある。それは、実際に使えるキャラクターをあらかじめ作っておく、いわゆるテンプレートを作成しておくというものである。
 この方法だと、プレイヤーがルールの角をつついたようなキャラクターは作れないし、デザイナーのイメージ通りのキャラクターでプレイしてもらうことが可能だという利点がある。また、プレイヤーにしてもすぐに遊べるという利点がある。

 しかし、何回も遊んで飽きがこないだけのテンプレートをそろえるのは相当の労力を要する。また、テンプレートには満足できないと言うプレイヤーもいるに違いない。

 そのあたりのことを十分考慮した上で自分が最適だと思う方法を採る必要がある。

 以上でルール構築のはなしは一通り終わりということのなる。しかし、こうして組み上げられたルールはまだ1回も遊ばれていない。実際にテストプレイを行ってみてその後でやらなくてはいけないことは山のようにある。それどころかそちらの方が多いし重要なのである。

第九章:するべきことはまだまだある・・・。

 これまではルールを書くために最低限考えるべきこと、実際の技術的な内容、等について書いてきた。しかし、これだけでTRPGのルールができるわけではない。他にも考慮しておくべきことはあるし、ルールはデバッグ、ディベロップメントを行わなくてはならない。
 最後に、これらのことについて思いつくことを書いておこうと思う。

1.ルールを書くために使える時間、など

 TRPGを作るために使える時間はどれ程あるのだろうか?
 むろん、商品ではないのだから締め切りなどは存在しない。だから、いくらでも使えると言うこともできる。
 しかし、余り時間をかけるとルールを書いている本人が飽きてしまうということが多々ある。実際、私の知り合いでもTRPGのルールを作り始めた人間はいるのだがそのほとんどは一応テストプレイができる、というレベルまで漕ぎ着けられないでいるというのがほとんどである。そして、彼らは「ルールの基本的な部分はできたし、後は細かいルールを詰めるのとデータを作るだけだ」とは言っていたのである。要するに、どちらかというと単純な作業が続く所で飽きてしまったというわけだ。
 この様にならないためには自分の気分が乗っている間にできる限り急いで仕上げた方がよい。テストプレイをやってくれる友人などに自分が「ルールを作っている」ということを話したらできる限り速くテストプレイまで持ってゆくべきである。特に何か根拠があっての数字ではないが2〜4ヶ月以内に仕上げた方がよいと思う。2ヶ月くらいなら集中力は継続できるだろうし、がんばれば4ヶ月くらいは集中し続けられるのではないか、という私の意見である。そして、できるなら毎日、少しでも書いた方がよい。これは集中力を維持するのに役にたつ。1週間も放っておいたりすると次に始めるのがなかなか困難になってしまう。「継続は力だ」ということである。

 また、データや世界設定を作るところで他人をあてにするのはやめた方がよい。最初からグループで作ることになっていてスケジュールをしっかり管理することができるなら良いが、基本的に個人で初めたものを特に期限などを定めず他人に任せるとおそらく失敗する。
 大体、誰でもおもしろそうなデータや設定の幾つかは思いつけるものである。しかし、その数個のおもしろそうな設定やデータを生かすためにはありふれた、作業としてはつまらない設定やデータをたくさん作らなくてはならないのである。何の責任もなく、おもしろそうだからという理由で始めたなら普通はこれらのありふれたデータの作成の段階で飽きてしまう。それだけでルールが完成しなくなるには十分なのである。そして、普通はデータや設定を考えてくれると言った友人には報酬を支払うわけでもないのだから無理を言うわけには行かない。

 何をおいてもルールを遊べる状態まで持ってゆかないことには話にならない。当たり前だが一番重要なことである。

2.計算は簡単に

 人間はコンピュータとは違う。大まかに見て大体こんなもの、という判断は高速にできるが細かい計算は普通は苦手である。
 つまり、ルールの中で用いる計算は簡単なものにすべきだと言うことである。基本的に使って良いのは足し算と引き算くらいだろう。かけ算やわり算は多用すべきではない。そして回数は少なければ少ない方がよい。そして、桁も小さければ小さい方がよい。キャラクター作成などはそんなに何回もやるものではないから少々計算があっても良いだろうが、頻繁に行うようなこと、特に、行為判定など実際のセッション中で用いる計算はできればない方がよい。
 例えば行為判定の度に(基本値)+(ダイス)+(その都度変化する修正値)>=(目標値)で判定するのは結構苦痛になってくると思う。おそらく3回目くらいのセッションではダイスを振って「大体これくらいだけど、成功?」という風な判定になってしまっているはずである。こんなことなら(その都度変化する修正値)は(目標値)に組み込めるように設計し直すべきである。
 また、例えばD100で判定するのに基本的に数値を5刻みでしか使わないなら全体的に数値を1/5にしてD20にする事なども考慮した方がよい。計算の手間は桁違いに減ってくる。

 また、同じ様な意味の計算なら整数だけで行えるようにする必要がある。例えば能力値3つも平均値を取り、0.9を足して端数を切り捨て、という計算は能力値3つの平均値の端数を切り捨て1を足すのとほとんど同じ意味である。しかし、手間は格段に少ない。やはり結果は少し異なってしまうが3つの能力値の平均値の端数切り上げ、ならもっと簡単である。これらの間の差ががバランス上で問題になることはほとんどないだろうし、そうならば簡単なものを選ぶべきである。

 なお、キャラクター作成などでは少々計算が多くても良いと入ったものの簡単で計算が少ないに越したことはない。そうでないと実際に遊ぶときにキャラクターを作るだけでうんざりしてしまう、という羽目になる。また、計算が多くなればなるほどルールの理解も困難になる。キャラクター作成のルールが少し難しい、と感じるようならほぼ完成したテンプレートをつけるなどの工夫をした方がよいだろう。

3.一番最初に考えたルールは余り使えない

 TRPGの細部のルール(基本ルールもだけど)を考えたとき、最初に思いついたものというのは大抵うまくいかない。ほとんどの場合、そのルールの処理は難しすぎるのである。難しくなってしまうのはなぜだろうか。
 普通、何かやりたい目的を思いついたとしてそこまでの方法というものを今までのルールの上に構築することになる。そして、その課程というものはデザイナーの思いついた方法に沿って何段階かの処理を行うことになる。この段階を追って処理を組むというのが難しくする原因である。
 結局、ルールを使って求めるべきなのは結果であって途中の経過ではない。だから、考えついた一番最初のルールを元に「同じ結果を求められるより単純な方法」を考える必要がある。私の経験では2〜3回作り直すとずいぶんとシンプルになった使い易いものができる。

4.テストプレイ

 ルールが完成したらまずやらなくてはいけないのはテストプレイである。普通はテストプレイのマスターはルールをデザインした人間がやることになる。当たり前といえば当たり前だ。完成したばかりのルールを理解している人間など作者自身しかいないというのが普通だろう。
 そして、おそらくそのテストプレイは結構うまくいくはずである。理由は簡単で、多少ルールに不備な点があっても作者自身がマスターをやっているのだから非常に応用が利く。つまり問題が問題にならないことが多いのである。しかし、これでは駄目なのである。おかしな部分はバグとしてしっかり認識し、それを修正してゆかないことにはいつまで経ってもまともなルールにはならない。下手をすると結局ルールなどまともに適用していなかったという結果にすらなりかねないだろう。
 一番良いのは自分以外の誰かにマスターをやってもらい、キャラクター作成などもそれぞれのプレイヤーにルールだけを渡してやってもらうのがよい。しかし、最初の数回は(少なくともキャラクターに個性が定着してくるころまでは)そのルールでマスターをやってみたいと思う人はなかなかでてこないと思う。それまでは作者自身がマスターをするしかないだろう。この様な状態でルールを叩いて埃を出すにはプレイヤーの人選が重要になる。サークルなどで人数に余裕があるならできる限りルールに厳しい人間を選ぶのがよい。彼らはテストプレイをする度に何か問題点を明らかにしてくれるだろう。そして、その問題点をそのたびに修正してゆけばよいのである。もちろん、デザイナーはルールを無視してはいけないのは当然である。

 また、最初の5回くらいのシナリオは話としてそれほど凝ったものでなくて良いから戦闘や基本的な判定、スキルを使用する場面、など、そのルールで使われるルールをまんべんなく網羅しているものがよい。当然、ルールをチェックするために、である。

 ともかくテストプレイで重要なのはシステムのバランスチェック、バグ探し、である。これを徹底的にやるかどうかでシステムの完成度はずいぶん違ってくると思う。

5.ルールを統合、廃止する

 何回かプレイしていると不備が見つかったり、今までできなかったシチュエーションを再現できるようにするためのルールを作ったりしてだんだんルールが増えてくる。戦闘のオプション行動などはその最たるものだろう。
 ルールを増やすときにはおそらく何らかの処理を付け加えているはずである。これが蓄積してくるとルールはどんどんわかりにくく複雑になってくる。これははっきり言ってまずいことである。同人誌として出版したり、ホームページで公開したり、果てには商業化を目指したりするなら初めて見た人がどう考えても複雑すぎてわからない、という状態にしてはいけない。

 これを回避するための方法は3つあると思う。実際にはこれらの組み合わせでルールを改定してゆくことになると思う。
 1つ目はルールを追加しないこと。新たなルールを追加せず、バランスの調整と文面を読みやすく改訂することを繰り返せば洗練されてわかりやすいものになってゆくのは当然である。
 2つ目は追加ルールとして扱うことをより基本に近いルールで扱えるようにルールを統合することである。当然ルールが変わるからテストプレイにつきあってくれる人間には受けが悪いだろう。しかし、心を鬼にしてやった方がよい。ルール全体が訳が分からなくなり手に負えなくなるよりはずっと良い。
 3つ目は使われなくなったルール、ほとんど使われないようなルールは切り捨てることである。これはデザイナー自身にとってはなかなか厳しい決断である。デザイナーは当然使われる場面があると思ってそのルールを作ったのだろうし、せっかく作ったものを消してしまうのは心苦しいものである。しかし、使われないルールは必要のないルールなのである。読みやすさ、理解しやすさのためにやるべき事柄である。

 また、オプションルールの中に必ず使用されるようなものができてくる場合がある。その様な場合はそのオプションは標準として取り込むことを考えた方がよい。オプションは特殊な状況下でのみ役立つからオプションであっていつも使えるなら基本的な行動である。

 これは結局の所「常にコンセプトを見直す」ということである。細部を詰めるために全体をないがしろにしてしまっては本末転倒である。もし、最初考えていた内容では表現できないようなルールを構築しようと思った場合はコンセプトから全体を見直し、組み直す必要がある。

 ちなみにルールを改定する度に行為判定などの極めて基本的な部分を大きくバランス調整しなくてはならないようなら最初から組み直した方がよいことが多い。貧弱な基本ルールの上に巨大なシステムを乗せているなどでバランスのとりようが無くなっている場合がある。

6.汎用ルールは本当に汎用足り得るか

 ルール部分の構築が好きで、統制のとれた判定方法、式、が好きな人間はよくルールを汎用化したいと考えると思う。
 しかし、汎用ルールというものは本当のところあらゆる面で汎用であることは不可能である。なぜなら、デザイナーはデザインする段階で行為判定や戦闘などでこの「あたりの数値を用いて判定を行うのが一番おもしろい」、という数値を設定しているはずである。
 つまり、逆を言えば「その範囲以外の数値を用いるならばおもしろさやバランスは保証できない」ということになる。

 例えばルール中で扱う数値を単純に一次関数的に扱っている汎用ルールを考えてみよう。この様なルールでは「筋力」が5のキャラクターの倍力の強いキャラクターは「筋力」が10である。ほとんどの場合、マクロに考えて「同じ程度の能力を持ったキャラクターしか扱えない」ということになる。つまり、元々が人間を扱うことしか想定していなかったらファンタジーやホラーなど人間をプレイヤーキャラクターとして扱えるレベルでのサプリメントに対しては数値的にバランスが保てるだろう。しかし、人間を遙かに越える、もしくは遙かに下回るオーダーでのプレイヤーキャラクターを扱うようなシステムはバランスを維持できないと思う(少なくとも個人的には)。例えば、人間の5倍、10倍といった能力をもつキャラクターを扱う場合などである。
 もっとも、オーダーの違う世界のキャラクターの共存(例えばサラリーマンとドラゴンとウサギをキャラクターとして同じセッションで共存させる)、ということを考慮しないとかであれば可能である。

 逆にこの様な差を緩衝しようとするならルールで使用する値は対数であると考える手もある。しかし、これは幅広いオーダーには対応できるがある点を見たときには非常に荒っぽいといえる。つまり差がでない。
 例えばゲーム中で使う数値は底を3にとる対数で扱うルールがあったとしよう。能力値が1点違うと実際には3倍もの差があるということである。腕力なら大人と子供だ。そして、D10を用いた上方ルール(基本値+ダイスの目を比較して大きい方が勝ち、というルール)で判定するなら最大で3の9乗=19683倍の差を埋められることになる。余りにも偶然が影響を持ちすぎな感じがしないだろうか?
 こちらは対数の底の取り方次第ではエレガントに対応できそうではある。しかし、数値を一次関数的に扱うよりはましにしろ、底が小さければやはり判定における上限の問題はでてくるし、やはり数値として整合性の高い部分というのは存在することになるだろう。

 つまり、汎用ルールはあらゆる設定に対して万能ではなく、デザイナーが望んだレベルのキャラクター、単位、においていくつかの設定に使えると言うことである。

 ちなみに、汎用ルールとして幅の広い数値を扱うことを考える場合は上方ロール(基本値+乱数>=目標値、という判定)の方が下方ロール(乱数<=基本値)という判定よりも向いている。

7.結局の所

 いくつかの関連性のない話題を並た様になってしまったが、ここでの本題というか私が言いたかった一番のものはルールのでバッグ、ディベロップメントについてである。
 そして、ルールをデバッグ、ディベロップメントする際に考えるべきことは次の2つの内容に収束できると思っている。

「同じことができるならよりシンプルな方法を。
 同じ方法でできるならもっと表現できることを」

 これを念頭に置いてルールを改定し続ければ確実に洗練された、使い易いルールになってゆくと思う。

 もう一点、常に・・・は無理だと思うが要所要所でコンセプトを確認し、見直すこと。これは、自分の作ったルールの方向性を確認するということである。細部を作り込むのに熱中して大本を忘れてしまっては、ルール全体のバランスを崩してしまうことが多いし下手をするとややこしいだけの正体不明なルールになる可能性がある。
 ものを作る上で全体の方向性を決めるものはコンセプトであり、コンセプトをきちんと再現できることが最も重要であることを常に意識しておくべきである。


『The Lunatic』