The Lunatic 世界設定 (ユーラ=ヨーラ)

7.10.5
神尾 政和

世界の概要

本書では『The Lunatic』の冒険の舞台世界「ユーラ=ヨーラ」について説明する。

ユーラ=ヨーラ概観

ユーラ=ヨーラは典型的な剣と魔法のファンタジー世界である。中世風の世界であり魔法が実在する。人間以外の知的種族がいるしドラゴンやアンデッド、デーモンと言った危険なモンスターもいる。

下図がユーラ=ヨーラの世界地図だ(全世界ではないが冒険の舞台と関係する周辺地域が含まれている)。

周辺にある地域のうち、西の大陸は我々の世界のヨーロッパ、東の大陸は南アジアから東アジア、南の亜大陸は中東から北アフリカに似ている。これらの地域は我々の世界でいう旧世界をイメージすればよい。

そして冒険の舞台となるのが中央の大陸だ。中央の大陸に特定のモデルはない。ここは東西の大陸の文化が混ざり合う場所だ。さまざまな地域の文化や文物、そして人々が行き交う多様性に満ちた場所である。ユーラ=ヨーラはファンタジー世界だがここに登場するキャラクターや舞台設定はヨーロッパ風にこだわる必要はない。我々の世界でいう旧世界からであればどの地域のイメージを持ち込んでも構わない。

ユーラ=ヨーラの歴史

ユーラ=ヨーラの歴史について簡単に説明する。

世界の始まり

ユーラ=ヨーラの世界の始まりはわかっていない。様々な神話ではそれぞれに世界の始まりや終わりについて説明している。

魔法文明

かつてユーラ=ヨーラには現在よりも遥かに発達した魔法技術をもった文明があった。魔法文明が存在したことが分かっているのは現在のものではない呪文や魔法の道具がこれらの遺跡から発掘・復元されているからだ。魔法文明はその名の通り魔法技術の発達した世界だったと考えられているが、金属の利用はあまり発達していなかったらしい。遺跡からは貴金属(金、銀)でできた宝飾品や銅でできた道具は比較的見つかるがそれ以外の金属製品はほとんど見つからないのだ。特に鉄器は全く発見されていない。

この時代と現在の文明に連続性はないと考えられている。魔法文明の遺跡で発掘される魔法や魔法の道具類の製法や理論は現在のものよりも高度で十分に分からないからだ。魔法関連の技術に関して現在はこの時代よりも後退している。なぜ魔法文明が崩壊し現在の世界との断絶があるのかは分かっていない。

この魔法文明を築いたのは人間ではないかもしれない(というよりその可能性が高い)。

魔法文明崩壊から古代

魔法文明の崩壊から記録で追える最も古い時代までのことはよくわかっていない。ただし、この時代に起こった出来事等は各地の伝承や神話として現在に伝えられているかもしれない。この時代に鉄が発見され鉄器、特に鋼の利用が始まっている。これによって人間は勢力を拡大し、現在に至る民族や国家の基礎を築いた事は間違いない。

現在のユーラ=ヨーラ

現在のユーラ=ヨーラは我々の世界の中世的な雰囲気の世界だ。しかし、幾つかの点において我々の世界とは大きく異る。

ユーラ=ヨーラは同時代の現実世界に比べて地域間の人的、文化的交流が盛んで、交易等の経済活動も発達している。これは、この世界の地形と関係があり海上交通が発達していることによる。そのため、同時代の我々の世界よりも活気にあふれている部分がある。また、ユーラ=ヨーラには現在の文明以前の遺跡が多数存在し、貴重な魔法の文献や、現在の文明では作り出す事のできない道具類が発掘さる。そして、魔法が存在するため一部の技術レベルは現実世界の水準を越えている。

ユーラ=ヨーラが同時代の我々の世界に比べて幸せな世界だという訳でもない。世界の大半を占める未開の地には危険なモンスターが生息しており人間がその版図を広げるのは我々の世界よりも困難だ。ゴブリンやオークといった敵対的な知的種族と争わねばならず、これらの軍勢によって滅ぼされる人間の集落も相当数にのぼる。もう一つ、ユーラ=ヨーラの脅威となっているものに「異界」の存在がある。異界にはユーラ=ヨーラと共存共栄の関係にある世界もあるが、ユーロ=ヨーラの一部を変質させ、壊滅的な被害を与えるような異界も存在する。例えば異界の影響でアンデッドモンスターや悪疫の怪物が発生するし、デーモンなどが世界の破壊と支配を画策している。

このような背景からユーラ=ヨーラは混沌と恐怖からくる陰鬱さと、活気に満ちあふれた部分が奇妙なモザイクを形成したような世界になっている。

天文と暦

ユーラ=ヨーラには我々の世界と同じく1つの太陽と1つの月があり、夜には無数の星がある。1年は365日(4年に1回の閏年あり)で、月は28日周期で満ち欠けを繰り返している。1年は12ヶ月、1ヶ月の日数も現実世界と同じ、1週間は7日、1日は24時間、1時間は60分、1分は60秒だ(マスターやプレイヤーレベルでは秒の単位を使用するが、ユーラ=ヨーラの技術レベルではそこまで時間の厳密さが求められないためこの世界の住人は秒単位の時間は使用しない)。

ユーラ=ヨーラには西暦の様な世界共通の年号はなく、「○○王の治世X年」の様な数え方をする。太陰暦や太陰太陽暦が使用されている地域もある。しかし、ゲーム上の利便性のため世界共通で使える紀元X年という基準がある事する。これは西暦に一致しており、ゲーム上で扱うのは紀元1500〜1600年代にあたる期間となる。なお、紀元1年は古代魔法王国の滅亡からずっと後(おそらく数百年以上後)だ。

居住地

人間の居住地や支配の及ぶ領域というのは我々の感覚からすると非常に狭い。都市であっても人口は1〜2万に過ぎず都市の範囲はせいぜい半径1Km程度に収まる。町は都市よりもずっと小さく人口は数千人で半径数百mの範囲に収まる。町の周辺だとこの範囲はずっと小さくなる。都市や町は食糧供給を農村に依存しており、農村は自給できない製品を都市や街に依存している。この世界での輸送手段は水運が使えなければ荷馬車が最大の輸送手段であり冷蔵設備はない。多くの生活用品、特に生鮮食料品の輸送を考えると村は都市や町の近くほど多く離れるほど少なくなる。都市から30Kmを超えると村は非常に少なくなり普通の農村が60Km以上離れることはまずない。

世界を俯瞰して見た場合、人間の居住地は小さな点に過ぎない。大半は未開の森や原野、砂漠、などでその中に点々と人間の集落(都市、町、村)が存在し、それらが街道によって何とかつながっている、というのがこの世界の様子だ。

交通

主要都市の間は街道で繋がれている。都市から近い範囲の街道は近傍の町や農村との往来が多いので整備されているし安全だが都市から離れるとそうではなくなる。都市間の往来が多ければ街道沿いには20〜30Kmおき位の間隔で宿場町があるが、往来の少ない街道ではかなりの距離(徒歩で数日の距離)にわたって人の集落がないということも普通だ。街道から離れたところにある街や村には街道から枝道が出ている。ただし、これは整備された道ではなく人の往来によって自然に踏み固められてできた小道にすぎない。

ユーラ=ヨーラには危険なモンスターや敵対的なヒューマノイドがいるため移動の危険さは我々の世界を超えている。日中に別の集落に到達できない距離を隊商も組まずに移動するのは自殺行為だし、昼間の移動でも周囲を森や荒野に囲まれた場所を移動するのはかなりの危険を伴う。

ユーラ=ヨーラは地形の関係から現実世界に比べて海上交通が発達している。4つある内海は波も穏やかなので商船による交易に利用されている。それほど遠方まで多くの人が頻繁に移動することはないので人の輸送を目的とした定期航路はないが商船の積荷に空きがあれば乗客を乗せることもある。陸上の移動に比べて費用はかかるが速く比較的安全に移動できる。

経済

中世ヨーロッパは現物経済が中心だがユーラ=ヨーラでは貨幣経済が発達している。特別な場合(飢饉で食料の価値が現金よりも遥かに高い等)を除いて農村等でも貨幣が通用する。ユーラ=ヨーラでは白金貨、金貨、銀貨、銅貨が用いられ、白金貨は金貨の10倍、金貨は銀貨の10倍、銀貨は銅貨の10倍の価値がある。金貨は現在のお金で約10000円の価値がある。これらの貨幣は貴金属を用いたものなので世界中で同じ様に通用する。高額の取引では宝石が貨幣の代わりに用いられることもあるが大きさ(重さ)以外に傷の有無など品質によって価値が変動するのでその都度鑑定と値段の折衝が行われる。

食料や日用品の交易は都市や町と近隣の農村の間でしか行われない。特に生鮮食料品はせいぜい1日の範囲でしか取引されない。穀物のような日持ちするものはもう少し離れた場所とでも取引される。都市間のような長距離の交易で扱われる品物は基本的に高価な品々(日本や中国の磁器や漆器、茶葉、東南アジアからの香辛料や香木のようなもの)に限られる。

言語

ユーラ=ヨーラには各地に様々な言語がある。しかし、ユーラ=ヨーラでは交易が発達しているという事もあり「商用語」という一種の世界共通語が存在する。「商用語」は各国の商人が意思疎通のために使う一種のピジン言語だ。発音も文法も単純だし不規則活用のような例外はほとんどなく基本的な語彙が共通化されている。すぐに習得できるので大体世界中で意思の疎通ができる。商用語は人間だけでなく他の種族との間でも通じる。エルフやドワーフはもちろんゴブリンやオークといった人間と交渉を持つこともあるヒューマノイドならある程度は通じる。

また、識字率もかなり高めで50〜60%くらいある(中世ヨーロッパの識字率は20%ほど)。一般的にプレイヤーキャラクターは出身地の言語の読み書きと商用語の会話が可能だ。

その他、各地域の言語には次のようなものがある。

セルトリア語、ヘカロケア語、セハヌ・ヴォミスク語、エジロナ語、クジャ語、ザンバル語、アリビオン語、ゴート語、神聖帝国語、トュルク語、アキツクニ語、トボット語、シタン語、シエンロウ語、ガンドラ語、など
(備考:商用語のイメージ)

商用語のイメージは次のような感じだ。

「(私は)昨日ステーキを食べた」→「私 食べる (だった) steak 昨日」

ほとんど単語を並べるだけで英語のような動詞の活用などないし、日本語のような助詞もない。日本語だと主語の「私は」を省略できるが商用語は英語と同じく省略できない。過去であることを明確化するための「だった」は「昨日」のような語句がついているなら省略しても大丈夫なことが多い。「ステーキ」のような相当する単語がない場合は自分の母語からそのまま借用する。

日常会話の場合は語順もいい加減で「私 昨日 steak 食べる (だった)」でも「私 steak 食べる (だった) 昨日」でも通用する。商取引などでは「誰が どうする 何を いつ」の順が定着している。

科学技術、医術

ユーラ=ヨーラの科学、技術はそれほど発達しておらず神話や迷信が幅を利かせている。科学、技術レベルは基本的に現実世界の中世とかわらない。例えば、ユーラ=ヨーラでは鉄の生産は一般的になっているが、まだ大量生産技術はないし鉄製品は鍛冶師が手作業で作っている。その他道具や織物なども職人の手作業で作られている。科学技術で特記すべきは火薬が発明されていないことだ。そのため鉄砲や大砲が無く軍事力に大きな差が無いので大航海時代の様な植民地支配は進んでいない。

農作物に関しては我々の世界のアメリカ大陸原産のもの、例えばジャガイモ、トウモロコシ、トマトといったものも普通に栽培されている。

医学的な知識や技術も発達していないため経験的に効能を知られている薬草等以外にまともな治療法はない。病気にかかったら自然に治癒する以外に回復手段がないため現代ではほとんど問題にならない様な病気でも死亡する。たとえば虫垂炎(盲腸)は現在ではなんということもないがユーラ=ヨーラでは致命的だ。

ただし、ユーラ=ヨーラでは魔法が実在しており我々の世界における科学技術の一端を代替している。魔法は誰もが利用できるほど一般的ではないが極めて珍しいというわけではない。魔法が実在するため一部の技術は我々の世界における中世のレベルを超えていることには注意が必要だ。

宗教

ユーラ=ヨーラではほとんどの人々は信仰を持っており、宗教は大きな権力と権威を持っている。むしろ神の力を感じさせる奇跡(魔法)が実在するので我々の世界の宗教よりも信仰を集めやすい。

ユーラ=ヨーラには我々の世界と同じくいくつもの宗教、つまり、仏教、キリスト教、道教、神道のように全く異なる宗教がある。冒険の舞台となる中央大陸に限って言えば地域ごとに信仰される宗教には偏りがあるが国レベルで支配的な宗教はない。そのため特定の宗教が他の宗教を強行に排斥しているとか邪教とみなして攻撃しているということはない(デーモンやアンデッドを崇拝する明らかな邪教は別)。この辺りは現代の我々の世界でそれぞれの宗教が折り合いをつけて共存しているのに近い。

もう一つ特徴的な点としてこの世界の聖職者(神官や僧侶)は術者とは限らない。聖職者が術者でなければならない宗教もあるが、聖職者であるために術者であることを全く要求しない宗教もある。

代表的な宗教

ユーラ=ヨーラに存在する代表的な宗教を幾つか挙げる。

ノルニの神々

この宗教は自然神をたてまつる多神教だ。最も重要な神は生命と死の神である。彼の兄弟には力と知恵の神と見聞きし話す能力を司る神がおり、この3柱の神が原始の巨人を殺してこの世界と人間を作ったと教える。その他に重要な神としては運命の女神や嵐と戦争の神、植物と豊穣の女神などがおり、それぞれ関連する職業に従事するものの信仰を集めている。悪魔のような神との敵対者の概念はなく、人々に害をなす神は悪神や疫神として扱われる。

もともとは西の大陸で広く信仰されていたが、現在の西大陸ではノルデン諸部族の一部でのみ信仰されている(世俗の風習としてはノルデン諸部族の間に強く残っている)。中央大陸ではセルトリア地方の主要な宗教でエジロナ地方でも一定の勢力をもっている。

ノルニの神々の教団はあまり組織化されていない。部族ごとに指導者がおり、村々にはその弟子筋の聖職者がいるという具合でまとまった宗教組織とはなっていない。ノルニの神々の聖職者は必ず精霊使いである。後継者は血統によって選ばれるのではなく魔法の才能のある子供を探して育成する。

アシュタハラの神々

この宗教は過去、現在、未来を支配する3柱の神を中心とした多神教だ。過去を司る神は創造神でもあり、未来を司る神は破壊神でもある。そして現在を司る神は創造と破壊のバランスをとって世界を維持していると教えている。これら3柱の神の関係により万物は創造と破壊を繰り返す、生命は死後別のものに生まれ変わるという哲学を持っているのが特長だ。なお、アシュタハラの神には前述の3柱の神以外にも多くの神が存在する。魔族や精霊は神とは区別されるので魔大公や原初精霊は神として信仰されない。

もともとはガンドラの宗教だがシエンロウでも信仰されている。ただし、シエンロウでは神々の構成や役割がかなり異なっている。中央大陸ではヴォミスク・セハヌ地方で一定数の信者が存在する。

アシュタハラの神々にはまとまった教団はない。導師と呼ばれる聖職者とその弟子からなる小規模な集団が各地にあり、その集団がその地域の教団となっている。アシュタハラの神々の聖職者は必ずしも術者ではないが、神性に近づくための手段として魔法を重視する。もっとも多い系統は法術だが宗教関連の術者としては魔導や練術の割合が多く、多神教としては珍しく精霊使いの割合が少ない。後継者は弟子の中から選ばれるが、導師がなくなった際には弟子のうち有力なものが自分の仲間と独立し新たな教団を形成することもある。

アナンマ

アナンマは神などの力あるものを頼り、救ってもらうことを願うのではなく、世界の原理・真理と一体となることを究極の目的とする。神などの存在を否定してはいないが、神のような力あるものも世界の構成要素の一部であり、この世界の原理に支配される存在であることに変わりはないと考えている。つまり、神ではなく真理という概念を信仰の対象とするという点で宗教としては特異である。

本来神などは信仰の対象ではないが、教えが一般の民衆にまで広がるようになった現在では様相が変わってきている。一般の人々にとっては究極の真理に至る道よりも現在もしくは来世での救いが重要であり、その過程で創始者を始めとする覚醒者(真理に至った存在)、アナンマの守護者となった神(多くはアシュタハラの神々)が信仰の対象となっている。聖職者にとっては究極の信仰は真理であることに違いはないが覚醒者や守護神にも敬意を払い自分たちの先達として信仰の一部になっている。

アナンマはガンドラで生まれた思想だが現在のガンドラにはほとんど信者はおらず、シエンロウ、シタン帝国、アキツ国の主要な宗教となっている。中央大陸ではザンバルやセハヌ・ヴォミスク地方でよく信仰されており、クジャ地方にも一定の信者がいる。

驚くべきことにセレスチャルや(元)デーモンのような存在にもアマンナの信仰者が存在する。セレスチャルは他の宗教でも神の眷属や使者として現れるが、アマンナの場合はどう見ても鬼神としか見えないものが相当数いる。聖職者はこのような鬼神はもともと悪鬼であったものがアマンナの教えに帰依した結果、守護者となったのだと考えている。

アナンマでは本来魔法を重視しない。ただし宗派によっては非常に魔法を重視する場合もある。術者の系統は様々だが魔導と精霊術の系統は少なく、法術と練術が多い。宗教組織は宗派ごとに存在し非常に組織化されている。聖職者は異性と交わることが許されていないので後継者は血統ではなく弟子の中から選ばれる。

タオ

タオでは世界にはもともとは陰と陽しかなく、この2つが組み合わさることで5種の根源的なもの(木火土金水)が生まれ、それらによって世界が形成されたと説く。世界は自然発生的に生まれたもので世界を創造した神などはいないと考えている。タオには非常に多くの神がいるが天文や暦に関係した神や元々人間であったものが神格化した神が多く含まれる点に特徴がある。タオにおいてはデーモンは悪鬼、鬼神の類であり、精霊は精霊である。デーモンや精霊が信仰の対象になることはないが世界の一部を形成するものであり単純な敵ではないとみなされている。

タオの宗教としての特徴はそれが修行者自身が不滅性を獲得するための道であるという点であり、修行者の究極の目的は不滅性を獲得して超越者になることだ。その過程で民衆を助けることで信仰を集めることは不滅性獲得の助けになる(徳を積むと表現される)と考えられており、これが民衆から修行者は聖職者でありタオが宗教であるとみなされることにつながっている。先述の通り一般的に修行者は善行によって不滅性を得る助けを得ようとするのだが、逆に悪行を繰り返し人々の恨みや憎しみを集めることでも不滅性を得られると考える外道も存在する。また、不滅性ではないのだが永遠の寿命が得られれば良いと不滅性を獲得するよりは容易な高位アンデッドになろうとするものも存在する。

タオはシタン帝国の土着の宗教だが、トボットでも一部信仰されている。アキツ国ではタオの考え方を取り込んだアナンマの系統があり、独特の信仰を形成している。

タオでは魔法が非常に重視される。タオの聖職者は必ず術者で系統は様々である。

アキツ国の神々

太陽の女神を最も尊い神として非常に多くの神を祭っている。その大半は自然を神格化したものだが、戦の神や農耕の神などの事象を司る神もいる。過去の偉大な人物や強大な怨霊も神として祀られる。祖先の霊が集合して神になるとも考えているためそれぞれの氏族ごとの祖先神も祀る。この宗教は他宗教の神を神話体系の一部として取り込むという特徴がある。実際、タオやアマンナ由来の神が相当数取り込まれ信仰の対象になっている。この宗教では神が穏やかな状態であれば恵みを与え、神が怒ったり機嫌を損ねたりすると災害などの困ったことが起こると考えている。悪魔や精霊といった概念はなく強力なものは禍ツ神や荒神として神々の列に加えられており凶事を起こすことがないように祀られる。

この宗教はアキツ国土着の宗教なので他の地域ではほとんど信仰されていない。わずかにザンバル地方ではアキツ国から流れてきた人々が自分たちの氏族の神を中心に祭っている。

教団は神殿が祀る神の系統によって緩やかに組織化されている。また、この宗教の最高位の神官にあたるのはアキツ国の帝なのでそれぞれの系統の神殿は全体として緩やかにまとまっている。

アキツ国の神々の聖職者は必ずしも術者ではない。アニミズム的な宗教では珍しいだがこれは神殿の長が血統によって継承されるためだ。だが術者であることが望ましいため配偶者には術者を選んだり、神殿を継ぐ男子がおらず養子を取る場合は術者が優先される。術者の系統は精霊使いが多く法術の場合もある。

サントイルの一神教

サントイルの一神教は唯一神を信仰する宗教だ。この宗教ではユーラ=ヨーラを作ったのは神(神は1柱しかいないので単に“神”と表現される)であり、過去から未来に至るまでこの世界の主人は神であるとされる。そして、神との契約に従うもの(神を信仰し、聖典に従うもの)は死後に神の国に行き、そこで永遠に暮らすことができると教えている。歴史的にサントイルの一神教は大きく3つの系統に分かれ、それぞれが別の宗教として信仰されている。しかし、いずれも同じ神を信仰しているという点に違いはない。

サントイルの一神教では神は唯一無二なので他の宗教の神を神と認めることはない。そのため他宗教とは排他的になり対立することも多くなりがちだ。対立するか何らかの理由をつけて折り合いをつけるかは力関係による。中央大陸ではサントイルの一神教は数多くの宗教の一つに過ぎないので他宗教を排除しているということは滅多にない。

ハーティア

最も古い教義に従う系統で、戒律に厳格に従うことが重視される。戒律は神との契約であり、これを遵守することで将来神の国に住むことが許されるのだと教えている。現在、この系統を信仰するのは同一の祖先をもつ1つの民族だけだ。かれらは自分たちの国を持たないため各地で細々と自分たちの信仰を守っている。

ハーティアの宗教指導者は法術士だが、宗教組織の中には魔導士も少数存在する。

マーシアハ

現在サントイルの神を信仰する系統では最大の規模を誇る。ハーティアを信仰する民族に生まれた一人の人間を起源とする。彼は神を信仰し、神を敬うのであれば誰でも救われ神の国に住むことができる(つまり戒律を守ることよりも心の持ちようを重視する)として信仰を広めた。また、彼は様々な奇跡を起こしたと伝えられており、マーシアハの系統では神が人として生を与えた神の分身であったとされ、神と同一視されている。

マーシアハはハーティアとは異なり特定の民族の宗教ではない。サントイルの一神教におけるマーシアハの特徴は戒律よりも信仰を重視するという点にある。当然戒律は尊重され守るべきものなのだが、一般の信者においては信仰さえ守っているのであれば戒律を破ったとしてもそれを神に告白し懺悔すれば許される、聖職者は厳しく戒律を守ることを要求されるがそれでも信仰を守るためであれば戒律を破ったとしても許されるとみなされている。この柔軟さが信者を増やしやすいことにつながっている。

マーシアハは西大陸の大半の地域で信仰されており強大な勢力をもっている。中央大陸ではエグザイルやヘカロケアに相当数の信者がおり、エジロナやクジャ地方にも一定の信者がいる。ただし、エグザイルやヘカロケアでも唯一の支配的な宗教とはなっていない。これらの地域の領主や豪族の多くは西大陸から逃れてきた者で西大陸のようにマーシアハがほぼ唯一の宗教になってしまうと自分たちの権力に悪影響を及ぼすと考えているためだ。

マーシアハの聖職者は必ずしも術者であるとは限らないが術者であることは重視される。一般人と接することの多い立場の聖職者はほぼ法術士だがそれ以外の立場では魔導士や練術士もあり得る。精霊使いであることはほぼない。

カーマラギ

サントイルの一神教では最も後に生まれた系統だ。この系統の起源となる人物は現在のクルメラン帝国あたりにカーマラギの信仰に基づく国家(クルメラン帝国とは異なる)を打ち立てた人物であり、彼は神の使徒から啓示を与えられたとされカーマラギにおいて最後の預言者であるとされる。民族によらず神を信仰しているなら最終的に救われるという教えはマーシアハと同じだが、カーマラギでは戒律が非常に重視される。これは啓示があった際に、救いは神との契約によるものでありそれには戒律を守らねばならぬ、と伝えられたからだとされている。マーシアハでは一般人が戒律を破った際にすべきことは聖職者への告白と懺悔程度だがカーマラギでは何らかの罰を受けることになる。また、神の唯一性も非常に重視され、創始者を始めとする預言者や使徒は尊敬の対象であっても信仰の対象ではない。

カーマラギはクルメラン帝国からトュルク王国にかけて信仰されている。中央大陸にはカーマラギを主要な信仰対象にしている地域はないが、クルメラン帝国やトュルク王国からの商人が信仰している。

カーマラギでは聖職者が術者であることは重視されない。これは開祖が術者でなかったことにも関係していると思われる。ただし、聖職者に術者はそれなりに存在し、その多くは法術士である。魔導士や練術士の場合もあるが精霊使いがほぼいないのはマーシアハと同様だ。

邪悪な宗教

ユーラ=ヨーラにはアンデッドモンスターや異界の存在、その上位にあると考えられるものを信仰の対象とする、一般的に見て邪悪な宗教というものも存在する。これらは公になる事はなく、小集団で信仰されている事がほとんどだが、このような邪悪な宗教の信者が集まってできた集落が存在することもある。また、これら宗教の信者が密かに社会の中で活動し、自分たちの勢力の拡大を図って活動していることもある。このような集団が明らかになった場合、その地域の領主が兵団を派遣して殲滅することもあるが、そのための調査に冒険者が雇われたり、あまり余裕のない領主や宗教団体が冒険者に邪悪な教団の殲滅を依頼したりすることもある。

また、ゴブリンやオークといった人間に敵対的なヒューマノイドはそれぞれに宗教を持っているはずだが、これらについても人間(や、人間と友好的なヒューマノイド)からは邪悪な宗教であると見なされる。

神話と神

前述のとおりユーラ=ヨーラには異なる神話体系を持つ宗教が複数あり、ぞれぞれが独自の神と神話を持っている。これらの神話や神は互いに矛盾するものがある。典型的にはサントイルの一神教とその他多くの多神教は明らかに矛盾する。これはどういうことだろうか? 神など存在せず神話は物語に過ぎないのだろうか?

この世界の住人には知り様もないが彼らが神と認識している存在、「超越者(後述)」は実在する。しかしユーラ=ヨーラの住人は超越者のことを断片的にしか知らない。彼らがわずかに顕現したりその力を行使したりしたのを垣間見たことがあるだけだ。そしてそれを神として認識し、名前をつけ、神話を構築しているのである。

従って、彼らの神はそれに相当する超越者の一側面だけを捉えたものだ。1柱の超越者の異なる側面を別の神と認識していたり、複数の超越者を一柱の神と捉えていることもある。また、こういう神がいるなら別のこういう神(例えば、親神や兄弟神、敵対する神、等)がいるだろうと考え存在しない神を創造している場合もある。そして神話は実際に超越者が顕現したり影響力を表したときの事実を含んではいるだろうがその他の多くの部分は人々が想像し付け足した物語なのだ。

つまり、ユーラ=ヨーラではそれぞれの宗教の神や神話は幾分の真実を含んではいるが、それぞれ多くの部分は想像によるものであり正しくない、ということである。繰り返すがこれは世界を俯瞰的に見ることのできる視点での話で、各宗教の聖職者はもちろんそれを信仰するユーラ=ヨーラの住人は神話は正しく神は存在するのだと考えている。

超越者

超越者とは非常に強力な神と認識されるほどの力を持つ存在のことである。ただし、超越者=神ではない。魔大公(デーモン・プリンス)や原初精霊などと呼ばれるものも超越者だ。人間は知られていない超越者も存在する。超越者をどの様に認識しているかは文化、特に宗教による。ある宗教では魔大公とされているものが別の宗教では悪神や疫神とされるというのは何らおかしなことではない。なお、超越者というのはユーラ=ヨーラの人々にとって一般的ではなく、神などの存在を疑っている一部の知識人が用いる言葉である。

超越者は強力な存在だが単に強いだけでは超越者とは呼ばれない。およそ超越者は次のような特徴を持つ。

不滅性

全ての超越者は老いることもなく寿命や病気で死ぬことはない。殺されたとしてもいずれ蘇る。しかし、絶対に滅ぼされないわけではなく、個体ごとの条件を満たした上で破壊されれば消滅する。例えば信仰によって超越者となったものは信仰を失った上で殺されれば滅ぶ。

固有次元

全ての超越者は固有の次元を作り出しそこに座している。次元の広さは超越者によって異なり、強力な超越者ならば広大な次元(ユーラ=ヨーラと同じかそれ以上)を所有して自らの眷属や配下を一緒に住まわせているが、弱い超越者なら自分の住処とその周辺程度の固有次元しか持たないこともある。

超越者の固有次元は独立していることもあれば他の次元と繋がっていることもある。複数の超越者が次元を共有していたり、次元同士が融合している場合もあるが、その様な場合でも個々の超越者が一定の領域を創造し支配している。

固有の存在

超越者はそれぞれが他に似たもののいない単独の存在だ。元人間の超越者というのも存在し得るがこれらも超越者となった時点で人間ではなくなっているし、固有の能力を持つ単独の存在である。

次元を超えて影響力を及ぼす

強力な超越者の力は次元を超えて影響を及ぼす。力の弱い超越者の場合であっても自身の固有次元と繋がっている場所はその影響力を受ける。

分身を作る

強力な超越者は自身の力の一部から自分の分身や分霊を作り出すことができる。このような分身は生み出された時の目的に従いるが本体とは独立した存在として行動する。分身は不滅性を持たないため破壊されたり殺されたりするが、分身が消滅したことによって超越者自身は影響を受けない。

超越者がどの様にして生まれるのか、どの様にして超越者になるのかということはわかっていない。多くの信仰を得た人間が今では神として崇められているという例はあるので超越者となって実在しているなら信仰を集めるというのは一つの手段なのだろう。しかし、信仰とは関わりなく超越者である存在や超越者である故に信仰の対象となっている例はずっと多い。例えば太古から存在する非常に強力な精霊である原初精霊はほぼ存在が確実な超越者だがこれらは人間などが地上にああわれる前、ひょっとしたらユーラ=ヨーラができる前から存在する。魔大公と呼ばれる様な存在も信仰によって超越者となったのではない。一説には人々の膨大な信仰や恐怖を得た、もしくは、それに匹敵するような欲望や願望を持った強大な存在が一種のアーティファクト化したものが超越者だと言う。

魔法

ユーラ=ヨーラにおいて魔法は実在する力であり技術だ。呪文によって魔法を操る者は「術者」や「呪文使い」と呼ばれる。魔法を発現する方法は呪文や儀式呪文以外に呪符のような魔法の道具がある。市井の人々にとって術者や魔法の品はあまり関わり合いになるものではなく、魔法とは無縁でないにしろ縁遠いものではある。

術者(呪文使い)

呪文によって魔法を行使できる技術を持った者を総称して術者(呪文使い)と呼ぶ。術者になるためには生まれ持った才能が必要で誰でもがなれるわけではない。厳密には魔法の才能がゼロという人はいないのかもしれないが、最低限呪文を使えるだけの魔那を持った人間は4人に1人程度の割合でしか生まれない。しかし、術者の数はもっと少なく200人から1000人に一人くらいしかいない。

呪文は師匠から弟子へと秘密主義のなかで伝えられおり一般に公開されていない。聖職者の組織でも同様で奇跡の顕現である魔法を軽々しく伝授することはない。つまりこの世界には魔法学院のような組織がないのだ。これは全ての術者が「術者の呪い」の影響下にあることも関係がある。そして、術者になるためには何年もの長い修行が必要だ。何年もの間、それもある程度働けるようになる12歳程度を超えて子供に勉強させる余裕がある家庭はごく一部の金持ち以外にはいないが、金持ちにとっては子供を術者にするよりも自分の地位を引き継がせるために教育する方が重要なのだ。なので、たまたま術者が弟子を取ろうとしているときに才能のある子供を見つけた時、術者への修行が可能になるというのが一般的な術者への道だ。ちょうど、囲碁や将棋の棋士が内弟子を取るのが似たような感じだろう。

術者には系統があり、系統によって伝えている呪文が異なる。主要な系統は魔導、練術、精霊術、法術、ややマイナーな系統としては呪歌、隠行術があるがそれ以外の系統もある。また、それぞれの系統には支流の系統がありそれぞれで伝えている呪文が異なる。さらに同じ系統で同じ呪文を伝えている場合でもその呪文の文言が異なることがある。同一系統の呪文でもそれほどの差ではないにしろ師筋が離れるほど呪文の文言の差異がある。なぜこのようなことになるのかは後述するが、ルール上同じ系統の術者であっても師筋が違えば違う系統に見えるということがあり得る。

魔法の原理

魔法と使うためには必ず魔力が必要だ。しかし、少数の例外を除いて魔力そのものまたは魔力が変化したものが魔法の効果になるのではない。魔法の効果は元素(万物を構成する精霊界や星辰界由来のエネルギーであり物質であるもの)の作用による。魔法を使う際に魔力は元素を配列、結合させるための鋳型であり触媒でもあるようなもの(以降、鋳型とする)を形成するために使われる。術者がその技術で鋳型を作ると空間に漂っている元素が鋳型に集り決まった形に結合する。鋳型を除くと組み合わさった元素はそのパターンによってさらに形を変え魔法の効果となるのだ。これは生物のタンパク質合成に似ている。魔力の鋳型がmRNAとプロテインポリメラーゼ、元素がアミノ酸に相当する。魔法の鋳型となった魔力は元素を配列、結合させた後、その埋め合わせとして消費した元素の次元に吸収される。少数の例外が【消呪】のような呪文で、これは【消呪】の魔力の小さな部品が対象の呪文の鋳型に入り込んで元素の配列を間違ったものにするというふうに機能する。

ならば呪文が相当するのはDNAかというとそうではない。魔力の鋳型は術者が直接組み上げる。はっきり言ってしまえば魔法を行使するのに呪文は必要ない。実際、呪文動作には詠唱以外の手段もあるし、呪文動作を省いても不利にはなるが呪文自体は使える。呪符や発動体を使う際に呪文動作は必要ない。術者が呪文詠唱などの呪文動作を行うのは魔力も元素も見ることも触ることもできないので、鋳型を組み上げる際にそれを確認する手段がない(学習や研究レベルでは何らかの確認手段があるが、実戦レベルではない)というのが重要なポイントになる。複雑で確認手段がないものをイメージだけで組み上げるのは困難なため術者は呪文動作とそれに対応する鋳型の生成を対応づけているのだ。呪文動作Aを行ったら魔力の操作Aを行うというような対応を行い、呪文動作を一通り行ったなら魔法が完成する、というふうにすることで確認できない鋳型の組み上げを正確かつ効率的に行えるようにしているのである。なので呪文動作自体は対応づけが取れれば何でも良いのだが、呪文は文言で簡便に扱えるため呪文が最も利用されるということだ。

呪文と儀式

術者が魔法を行使する手段としては主に呪文と儀式がある。これらはいずれも魔法の原理に従うため本質的に違いはない。これらの違いはコンピュータのプログラムの違いに似ている。呪文は機械語のプログラム、儀式はスクリプト言語で書かれたプログラムのようなものだ。

呪文は系統ごとの魔法の考え方や操作のやり方で最も素早く少ない魔力消費で使えるように最適化されている。そのため異なる系統の呪文は使えない(異なるOSやCPUのプログラムには互換性がないようなものだ)。それどころか、それぞれの術者レベルでも最適化を行っていることもありえるため、同じ系統の術者であっても他人の呪文をそのまま使うことはできないことすらある(術者自身がCPUに相当するが人間は個々に違いがあるということ)。

それに比べて儀式は効率よりもわかりやすさ、実行の確実性を優先している。なので、儀式は呪文よりもずっと行使に時間がかかり、魔力の効率も悪いのだが、十分な魔法に対する理解があれば誰でも習得して使うことができる。系統ごとに考え方や操作が近かったり遠かったりはするので習得にかかる手間には差があるが。

ルール上、儀式は魔力でなく魔那を消費するがこれは手間を省くためで実際には魔力を消費している。また、各系統の呪文はそれと同じような儀式が存在するはずだがルール上設定していない。呪文として使えるものをずっと長い時間と余分な魔力を必要とする儀式で覚えるキャラクターはいないので設定していないのである。

魔法の道具

魔法を使う手段としては呪文や儀式を使う以外に呪符や発動体といった魔法の道具を利用する方法がある。こちらは術者としての技術を身につけなくても魔法の効果を得ることができる。

魔法の道具の大半は古代文明の遺跡などから発掘されたものだ。これらの全てが非常に貴重で珍しいものというわけではなく、使い捨ての呪符などは大量に発掘されることがあり結構な数が流通している。庶民が気軽に買えるほど安価ではないが、珍しい種類のものでなければある程度の町であれば購入可能だ。継続的に使用可能な魔法の道具になるとかなり珍しくなるが、明かりを灯すとか、小さな火をつける、といった日常生活で役立ちそうなものは古代文明でも需要が高かったらしく比較的多く見つかる。逆に攻撃呪文など日常的には使用されないような能力を持った道具はめったに見つからない。

魔法の武器や防具は存在することは存在するが他のTRPGシステムほどの価値はない。この世界には恒久的に武器や防具を強化する(例えばダメージや技能を+1する)呪文や儀式が存在しないからだ。いわゆるロングソード+1のような武器や防具は存在せず作ることもできない。発動体の機能を持った武器のようなものは存在する。例えば【魔力付与武器】の発動体を剣の柄頭につけたり、錬金術士と【魔力付与武器】を使える術者に頼んで剣自体を発動体にしてもらうといった具合で作ることができるが、あくまで発動体なので効果を得るためには魔力を供給して効果を得る必要がある。このような武器や防具が遺跡から発掘されることもあるが青銅製なので普通に買える鋼製の武器の方が優れているため発掘された武器は遺物としての価値しかない。

ミスリルやアダマンタイトの様な特殊な金属は存在しない。チタン、タングステン鋼、クロームモリブデン鋼、ジュラルミンなどの素材を作り出すだけの技術もまだない。伝説では銀には狼男などを傷つける力があるという記述があるが、銀には武器としての使用に耐える強度はないため、銀製の武器(刀剣、槍、斧)は役に立たない。結局のところ最も優れた武器は優秀な職人が作った鋼の武器なのだ。

その他魔法について

魔法には等価以上の代償が必要

魔法の効果には相応の代償が必要だ。大抵は魔力でそれを賄えるが、強力な効果を持つ魔法ではそれ以上の代償が必要になる。例えば、術者の寿命を1年延長する呪文には1人の生贄の命が必要だ。“死んだものを生き返らせる呪文”は存在しないが、もし存在するなら100人分くらいの命を代償にする必要があるだろう。

永続する魔法は存在しない

永続的な効果を持つ魔法というものは存在しない。例えば永続的な光源の呪文などは存在し得ないのだ。これは先に述べた魔法には代償が必要であるということから容易に導ける。永続的な効果には無限の代償が必要なのでそんな魔法は存在しないのである。ただし、何らかの変化を加えた結果、それが永続化するということはあり得る。例えば【術者の呪い】は儀式完了時点で回復不能な傷のようなものが対象の精神に効果が刻み込まれるため効果が永続する。

魔法では無から有を作れない(逆もできない)

魔法で何もないところに何かを作り出したり、存在するものを消滅(破壊するのではなく)させたりすることはできない。【火球】などは何もないところに火球を作り出しているようだが、実際にはそのあたりの空間に漂っている元素を集めて現象を引き起こしている。【分解】などは非常に細かく破壊するため対象が消滅したように見えるだけだ。

ユーラ=ヨーラのクリーチャー

ユーラ=ヨーラには我々の世界には存在しない動植物がいる。それどころか妖精やデーモン、アンデッドといったクリーチャーすら存在する。我々の世界にはこのようなクリーチャーは存在しないがユーラ=ヨーラには存在し、人々にとっての脅威となっている。これらはモンスターデータにて詳細を説明しているが、ここではこれらのクリーチャーと人間との関わりについて俯瞰的に説明する。

ヒューマノイド

ユーラ=ヨーラには人間以外にも知的生物が存在し、その代表はヒューマノイドだ。ヒューマノイドはエルフやドワーフに代表される人間に似た生物で人間と共存しているものもいれば敵対しているものもいる。このように人間と同等の知性を持ち、道具を使い、社会を構成する生物が多様に存在するのは我々の世界との大きな違いだ。ユーラ=ヨーラの人々にとって他のヒューマノイドは我々の世界における異民族に近いと言えるが、見た目にも考え方にも異民族よりも差異が大きいためより相容れない部分が大きい。そのため一般の人々にとってはもっとも身近な脅威となっている。

先ほどあげたドワーフは人間と共存している代表的なヒューマノイドだ。他にもノームやハーフリングも人間と共存している。人間が主に農業に向いた開けた比較的平坦な土地に住むのに対し、ドワーフは開発しそこに都市を築くのでうまく棲み分けている。ノームやハーフリングは個体として肉体的に強くないことと人口が少ないため人間かドワーフに混ざって暮らしている。森林地帯を住処とするエルフは孤立主義的で他の種族との交流は少ないが人間やドワーフとは少なくとも敵対的ではなく交易や領土境界の交渉は行う。その他、ケンタウロス、リザードマン、ユーウォーキーとは時々揉めることはあっても基本的には友好的か中立的な関係にある。

敵対的なヒューマノイドの代表はゴブリンやオーク、コボルト、ラット・フォークだ。これらはどこにでもいるし数も多い。これらは人間、エルフ、ドワーフと生存圏を争っているし、集落を攻撃して略奪や奴隷狩りを行うことも頻繁だ。これらのヒューマノイドとは基本的に敵対しているが必ず殺し合いになるわけではなく交渉が成立することもある。もっとも、ゴブリンやオークとの約束は信用できないものではあるが。

人間やドワーフはもちろんオークやゴブリンからみても最悪なのがフォモールだ。交尾できるならどんな生き物とも仔をなすことができ、不潔で疫病を振り撒くフォモールは全てのヒューマノイドから忌み嫌われている。これと争うならエルフとオークすら協力できる。

人間に敵対的なヒューマノイドの中には人間やドワーフ社会に紛れ込んでいるものもいる。エルダー・リネージ、オーガ、コラプテッドがそうだ。これらの数は少ないため目立たないように人間を害し、内部から社会を蝕む。

動植物

ユーラ=ヨーラの動植物は基本的に我々の世界に似ているが異なる部分も多い。我々の世界でもっとも危険な肉食動物といえばライオンやトラのような大型のネコ科の動物かクマだろう。しかし、この世界にはこれら以上に危険な肉食動物が存在する。

家畜などを襲うことが多いという点で危険なのはグリフォンやワイバーンだ。これらはライオンやトラ並みに危険な上空を飛ぶ事ができるので行動半径が広いし、塀や柵では防衛しきれない。鳥類にももはや羽毛の生えた恐竜としかいえない恐鳥類がいる。これらも家畜を襲うし、荷車を引く馬や人間を狙って隊商を襲う事がある。昆虫のようなものにも人間や中型から大型の動物を餌とするようなものもいれば、植物にも動いて動物を襲うものがいる。ただ、これらについては我々の世界の野獣の脅威よりも多少危険な程度だ。

この類で最大の脅威はドラゴンだ。ドラゴンはかなり珍しいが若いドラゴンなら世界中で見るなら年に1〜2件くらいはどこかで出現している。若いドラゴンでも街を壊滅させるほどの脅威だが軍を投入するなどすれば撃退できる。成熟したドラゴンの出現となると被害はとんでもない規模になるが、頻度も大地震や巨大台風なみに珍しいのでそれこそ自然災害と同じように捉えるしかない。

これら普通の動植物以外に起源や分類がよくわからない幻獣と呼ばれる生物も存在する。幻獣とは起源や分類がよくわからない生き物の総称でこういう生き物が幻獣だと言えるものではない。幻獣にはチェシャ・キャットやカーバンクルのように全く無害で危険性のない生き物もいるが非常に危険なものもいる。特に危険なのは悪疫の影響を受けたと思われるものと本来ユーラ=ヨーラの生き物ではないと考えられるものだ。悪疫の怪物としてはワンプやヘッドハンガーがいる。これらは無差別に人間や動物を襲うので非常に危険だ。外来生物は人間並かそれ以上の知性を持つためもっと脅威になる。例えばオニュブラという一見巨大なイソギンチャクのような生物はテレパシーのような能力で近隣の人間などを支配し命令に従わせることができる。

妖精

妖精は妖精界のクリーチャーであって主物質界のクリーチャーではないが、ユーラ=ヨーラの主物質界と妖精界は重なり合い、混ざり合っているため妖精界の影響の濃くなった場所で妖精を見かけることはそう珍しいことではない。場所によっては特定の日時になると妖精界との重なりが大きくなる場所や常に妖精界の影響が見られるほど重なり合っている場所というのもある。

妖精の中にはナックラヴィーやウェンディゴのように極めて危険なものもいるがそうでないものも多いし、人間などと敵対しているわけではない。ただし、妖精の常識や倫理観は人間などとは全く異なる。例えば子供と楽しく遊んでいることもあれば、その子供を森の奥深くに置き去りにするということもある。ピクシーが旅人を弓矢で追い回すこともあれば、親切に道がわかる場所まで導いてくれることもある。要するに。妖精というものは非常に気まぐれで行動を予測する事ができない。ただ、悪意ある妖精を除けばほとんどの妖精は義理堅く執念深いと言われている。つまり、助けてもらったり親切にされたりしたら恩返しをするし、逆にいじめられたり邪険にされたなら必ず復讐する。

妖精の中には主物質界に住んでいるものもいる。例えばケット・シーの一部は主物質界で猫のように暮らしている。ハッグやトロールの中にも主物質界に住んでいるものがおり人間などの脅威になっている。

アンデッド

アンデッドとは動く死体や幽霊などのことだ。これらは邪悪な儀式呪文によって生み出されることもあるが、自然発生することもある。例えば凄惨な戦場跡や虐殺が行われた場所、疫病などで滅んだ集落では自然に生まれたアンデッドが徘徊している事がある。また幽界との干渉の関係でアンデッドが生まれやすい場所というのもある。

このような場所で生まれるアンデッドはほとんどがすでに何が理由で主物質界にどど待っているのかも忘れた霊魂が幽界に囚われるのを避けるため、ただ仮の肉体を求めて死体に取り憑いて生まれる動く死体であるゾンビやスケルトンだ。このような霊魂は生者を妬み憎んで自分達と同じようになれば良いとこれらを襲う。また、強い欲望に囚われたまま死んだ者や恨みを持って死んだ者の霊魂が亡霊や死霊となって主物質界にとどまることもある。これらがスペクターやレイスだ。スペクターやレイスも生きていた時の感情や思考はほとんど失っており何が理由だったかもわからなくなってしまった恨みを相手構わず果たすため、もしくは欲望を満たすかすでに欲望を満たせなくなったことからそれができる生者を憎んでこれを襲う。

しかし、もっと恐ろしいのは真の不死たるアンデッドだ。ほとんど自我を失っている動く死体や亡霊、死霊の類とは違い真の不死は自我も自由意志も持っているし思考能力もある。有名なところではバンパイア、バンパイアほど有名ではないがより強力な存在であるリッチが真の不死の代表である。全てのリッチ、邪悪な儀式によって自らバンパイアとなったものはそもそもが最高位の術者なのだ。個体としても強大であることはもちろんのこと、非常に高い知性も備えている。その上、邪悪な儀式によって自らアンデッドとなることを選択するほど倫理観が欠落している。これらは自分達が作り出したアンデッドの軍団を率いていたり、一定地域を支配してそこに住むクリーチャーを支配していたりもする。彼らは自分の弱点も知っているし、人間によって(それこそ英雄的な冒険者によって)滅ぼされる可能性もわかっているので軽率な行動は取らない。とはいえ、十分に力を蓄えた上で版図と自らの影響力を高めるため大規模に人間の都市などを襲うことがないわけではない。

デーモン

デーモンはユーラ=ヨーラとは別の世界からやってきて破壊を撒き散らすクリーチャーだ。一括りにデーモンと呼ばれるが異なる起源を持つクリーチャーをまとめてそう呼んでいるだけだ。幻獣の中の外来生物との違いは何かというとデーモンは特にユーラ=ヨーラ、もしくは人間などの社会に対して破壊的だという点にある。それゆえ、デーモンは大抵の宗教において悪魔のような存在と見做されている。

幸いなことにデーモンはかなり珍しい。インプやガーゴイルといった低級なデーモンはそうでもないが、それ以上の力を持ったデーモンに遭遇するのは同じ程度の強さの他種のクリーチャーに遭遇するよりも珍しくなる。これはデーモンがユーラ=ヨーラの外からやってくるクリーチャだからだ。強力なデーモンほど元の世界とユーラ=ヨーラの間に強い結びつきができない限りやってくる事ができない。

しかし、デーモンを召喚する儀式というのは古くから存在する。もし強力なデーモンを召喚して支配できるのであればその力は絶大なものになる。まともな(十分な知識を持つ)術者ならインプやガーゴイルならともかくそれ以上に強力なデーモンの召喚などリスクに見合わないとわかっているので手を出さない(例えリッチやヴァンパイアであっても)が、欲望に支配された者がデーモンを召喚した結果、大変な災厄を招くというのは稀に起きる事なのだ。

その他

上に挙げたものがユーラ=ヨーラでよく見られるクリーチャーや比較的珍しいかもしれないが冒険者以外にとっても脅威度の大きいクリーチャーだ。冒険者以外の人々には非常に珍しいか、脅威とは言えないクリーチャーはこれら以外にも存在する。

珍しいが脅威とは言えないクリーチャーの代表がセレスチャルだ。セレスチャルは一般的に天使や天人などとして認識されている。デーモンと同様に別の世界からやってくるクリーチャーなのだが自衛のため以外で人間などを攻撃することはないし、人々を(特にデーモンなどから)助けてくれることもある。各種の宗教は彼らは神の使いであり、自分達とその信者を助けてくれるのだと語る。

精霊はユーラ=ヨーラでは珍しいが主物質界は精霊界の一部であるので精霊も見られる。主物質界はいずれかの精霊力に偏った世界ではないので普通に見られるようなものではない。溶岩の噴き出す火山地帯、大きな山火事、精霊力の偏った珍しい海域や湖、とんでもない暴風が襲った時、のような極端な自然環境になったときには精霊が出現することもある。

ゴーレムなどの魔法生物もいるが非常に珍しい。遺跡などを探索する冒険者以外が出会うことはまずあり得ない。

冒険者

『The Lunatic』のキャラクターは「冒険者」として生活している。ユーラ=ヨーラにおける冒険者とはどのような人々なのかということを説明する。

冒険者の立場

冒険者は世界各地を放浪し遺跡の発掘や、モンスター退治等、一般人には手を出せない荒事を解決する事によって生計を立てている。冒険者は封建領主の支配下の人間ではないため、普通の市民や農民等が果たさなければならない義務からは自由だが一般市民が持つ権利や保証はない。一般的に冒険者は山師や傭兵の様な胡散臭気な連中と見なされているが、単なる厄介者というわけでもない。遺跡で発掘されるアイテムは貴重な資源だし、突発的に発生する敵対的なヒューマノイドの侵略や異変に対応するために冒険者を頼る事はままある。様々な特殊技術と高い戦闘力を有する冒険者は胡散臭気ではあるがそれなりに有用な存在と見なされている。

冒険者の仕事

冒険者も日々の糧を得るためには収入を得る必要がある。ここでは冒険者が収入を得るための代表的な仕事について説明する。

遺跡の発掘

古代の遺跡に眠る財宝はこの世界の貴重な資源であり非常に価値がある。しかし、ある程度の財力を持った商人や封建領主であってもどこにあるか分からない遺跡を探し、更に危険を冒して遺跡を探索するというのは余りにも投機的すぎる。冒険者の場合、遺跡の探索をするのは自分自身なのでコスト的な面ではほとんどデメリットはないし、遺跡の発掘に必要な技術を自前でそろえる事ができる。空振りに終わる事もあるし、モンスターや罠等の危険はあるがリターンも大きいため遺跡の発掘は冒険者の主要な活動目的になっている。遺跡から発掘した財宝は発掘したものに権利があるというのが慣例となっているが、独占的に発掘する権利等は認められないため、一度の探索では発掘しきれない大きな遺跡の場合、噂を聞きつけた冒険者が次々とやってくるという事はよくある。また、稀に町の近く等で大きな遺跡が見つかった場合、領主が遺跡の近くに関所を設置し、遺跡に向かう冒険者から税を取る事もある。この様に発掘した財宝を全て自分のものにできるという保証はないが、他者に知られるまでは財宝を独占できるので多くの冒険者は自分達で遺跡を発見しようとする。

脅威への対抗

ユーラ=ヨーラには敵対的なヒューマノイドやアンデッドモンスター、悪疫の怪物という脅威が存在する。これらに対して十分な戦闘能力を持ち一時的に雇い入れる事のできる冒険者は重要な存在となっている。大半の村や町は自力で対応することはできず(純粋な戦闘員が領主とその子弟だけとか、数人程度の兵士しか居ない)、自力で対応できる様な大きな町でも騎士や兵士の損害が確実な上利益にならないため、冒険者を募って対応する事がほとんどだ。これらのモンスターを退治した場合、モンスターが所有していた財産(貨幣や宝石などの動産)は基本的に冒険者が自分のものとすることが認められている。ただし、あまりに財産が多い場合はその地域の領主との折半になる事もある。土地や屋敷などの不動産は領主のものになる。これは依頼によって対応した場合だけではなく、冒険者が勝手にモンスターを発見・排除した場合でも同じだ。

危険地帯の護衛

人間を恐れない、もしくは、人間を獲物と見なすモンスターが存在するユーラ=ヨーラは各地を何日もかけて移動しなければならない商人にとって現実世界よりもずっと危険な世界だ。もちろん商人は仲間同士で隊商を構成して移動する等対策は行うが、このときの戦力として冒険者は重要な存在になっている。商人が自前の護衛団を常時用意しておければ良いのだが、よほどの大商人でもなければ何も生産しない(利益を生み出さない)護衛団を常日頃から用意しておく事はできない。必要に応じて雇い入れる事のできる冒険者は便利なのだ。冒険者にとっても護衛の仕事というのは有り難いものだ。どこかに移動しようとしている時に近くに向かう隊商があれば、その間の食料等は面倒を見てもらえる上に給料までもらえるのだから(その上何事もなければ丸儲けだ)。

荒事や事件の解決

ユーラ=ヨーラの世界は現実の中世世界と同じく警察組織は非常に貧弱だ。はっきり言えば殺人などの大事件でなければ、庶民の個人レベルに起こった事件等に対応してくれるような警察組織は存在しないに等しい。代わりに証拠などを集める事ができれば当事者によって復讐する事等がある程度認められている。このような背景から冒険者が個人的な問題の捜査・解決や、復讐の手助けのために雇われるという事はままある。

冒険者のための組織

ユーラ=ヨーラの冒険者はあくまで個人事業主であり、冒険者ギルドや組合の様な冒険者のための組織は存在しない。しかし、冒険者と関わりが多く、情報等を提供してくれる者や、冒険者に仕事を紹介する様な小規模な組織は存在する。

宿屋・酒場

冒険者向けの宿屋(冒険者の宿)の様なものは存在しないが、行商人や冒険者の様な人物が集まりやすい宿屋は存在する。つまるところ、それなりの金額で1週間〜数ヶ月の長期間滞在可能で少々胡散臭い人間でも受け入れてくれるところに冒険者が集まりやすいという事だ。そのような場所には玉石混合ながら情報が集まるし、店の主人が冒険者に依頼の仲介していることもある。別の地域に移動する行商人が同じ宿に泊まっている冒険者を護衛として雇う事もある。

商店

冒険者が必要とする道具類を扱う商店や遺跡の発掘品の売買をする商店には様々な冒険者がやってくる。当然このような商店には噂レベルにしろ遺跡等に関する情報は他よりも集まりやすい。特に遺跡の発掘品を売買する店では噂等が本当であれば店の利益にも繋がるので情報を提供してくれる。

手配師・口入れ屋

ある程度以上の規模の町になると短期雇いの仕事を仲介する手配師・口入れ屋という商売を行うものがいる。彼らが紹介する仕事には冒険者としての技術が必要とされるものもあり、町での生活費が必要となった冒険者がこれらから仕事を紹介してもらうのは一般的だ。また、彼らの中には非合法な仕事(暗殺や略奪)の様な仕事を斡旋する様な者も居り、流れ者で使い捨てやすい冒険者は格好の相手だ。

冒険者と一般社会

先に述べたとおり、一般的な人々は冒険者の事を胡散臭気な連中という風に見ているが、立場によって対応はそれぞれ異なる。

統治者

封建領主やその配下の役人は自分達の治める町や集落にやって来た冒険者に対して何らかの応対をする責任があるので冒険者と関わらざるを得ない。他の土地からたくさんの商人がやってくる様な大都市であればせいぜい城門等を警備する役人のチェックくらいのものだが、規模の小さい町や農村の場合はもっと深く関わる事になる。戸数が100軒以下程度の集落の場合、冒険者はその集落の統治者(封建領主や町長、村長、など)に直接面会し、滞在の許可をもらう必要があるし、統治者側も冒険者が勝手に滞在して問題を起こすと困るので必ず面会するだろう。小さな村の場合は冒険者が滞在できる場所が領主や村長の屋敷しか無いこともある。ただし、統治者側も冒険者を最初から犯罪者の様に扱う事はない(野盗の襲撃を受けている等の緊張状態にある等の場合は別)。冒険者から周囲の情勢等を聞ける機会でもあり彼らにもメリットがあるからだ。

一般市民や村人

宿屋や冒険者が買い物をする店の者を除くと一般市民は冒険者とはあまり関わりたがらない。彼らにとって冒険者など流れてきたチンピラと変わらないからだ。とはいえ冒険者に興味を持って接してくる者もいる。例えば交易商人など周辺の情報を欲している者は冒険者を避けるという事はなく友好的に接してくるだろう。また、冒険者の中にその地域で信仰されている宗教の聖職者や吟遊詩人等が居るなら一般市民の対応も柔らかなものになる。

非合法組織

いわゆる盗賊ギルド等、その地域の裏社会を仕切る集団にとって冒険者は警戒の対象になる。表立って挨拶に来る様に要求される事は無いだろうが、配下の構成員によってある程度監視される事は間違いない。なお、ユーラ=ヨーラには複数の都市や国家にまたがって裏社会を取り仕切っている大規模な非合法組織は存在しない。大体の場合は一つの町の裏社会を仕切る集団は一つ(大都市の場合は二つ以上の組織が縄張りを争っている事もある)で、他の町を仕切る集団とは交流はあるかもしれないが別組織だ。盗賊などのキャラクターでもその土地の盗賊ギルドの構成員ではない。ただし、時代劇のヤクザ者の様にその土地の裏社会を仕切る人物に挨拶しておく事で一定の立場を保証されるという様な取り決めはあるかもしれない。

宗教団体

冒険者であっても宗教・宗派の信者や聖職者であれば当然信者として扱われる。異なる宗教の信者等の場合、その土地で支配的な宗教があるかどうかによって状況は異なる。様々な土地からの商人等が集まる交易都市のような場所では聖職者のキャラクターが宗教家として布教活動等を行ったとしても(その辺りで有力な団体を除けば)特に邪魔をされたり、敵と見なされて迫害されたりすることはないだろう。特定の宗教が支配的な土地の場合でも短期的な滞在であれば、布教活動等のその宗教の権益を直接脅かす可能性のある行動をしない限り放置される。ただし、定住の意思があるような振る舞いをするならば改宗を求められるだろう。また、純粋に善意からであっても住人に対する治療などを行うのは布教活動の一環やそのための布石と見なされるかもしれない。その場合は暗にその土地から出て行く様に求められる可能性が高くなる。

可能性としては高くないが、狂信的な信者のみによって構成される集落では冒険者はほぼ100%敵と見なされる事になる。これは、その狂信的な集団と同じ宗教・宗派の聖職者や信者であったとしても同様だ。なぜなら、冒険者になるのは他の宗教に寛容な穏健派なはずで、狂信者から見ればこのような人物は教えを無視するか曲解する異端者になるからである。

次元

この世界はいくつかの次元から成り立っていると考えられている。ただし、ここでいう次元とは物理学のいう次元(例えば縦横高さをもつ空間が3次元)とは異なり、ある特徴を持った一つの世界や空間といった意味だ。次元は異界とも呼ばれ、特定の次元(通常は主物質界)を中心として考えたときに他の次元を異界と呼ぶ。この世界にはいくつもの次元が存在し主物質界との関係も様々だがそれぞれの次元は相互に影響を与え合っている。

下図にユーラ=ヨーラを取り巻く次元の関係をイメージ図で示す。

この図は主物質界を中心とした模式図で必ずしも世界の在り様を正しく表現していない。図では妖精界や幽界を歪な形で表しているがこれは主物質界を中心に捉えた図だからだ。もし妖精界を中心に表したなら主物質界が歪んだ形で表されるだろう。この図は主物質界と重なり合い一部を共有する妖精界や幽界の様な次元、精霊界や辰星界の様な主物質界を包含する次元、その他デーモンの世界の様な主物質界とは別にあって何らかの経路で繋がっている次元があるということを示している。

魔術士や高位の聖職者など高度な知識人の間ではこのように人間が住む主物質界以外の世界があると言うことは確実と考えられているが、その認識は人によって異なる。また、ある世界の別の側面を異なる異界と考えていたり、2つ以上の世界を同じ世界として認識している可能性は否定できない。

外の空間

星辰界と精霊界が外の空間だ。これらは別の次元やというよりユーラ=ヨーラを含む根源的な空間といった方が正しい。ユーラ=ヨーラは星辰界の一部であり精霊界の一部でもある。

星辰界(アストラル界)

星辰界は全ての次元を包含する巨大な次元と考えられている。我々の知識で言うところの「宇宙」に近い。星辰界は空虚な空間だという者もいれば、何らかのエネルギーによって満たされているという者もいる。実際に星辰界を訪れた魔術士などはいないのでその真偽は不明だ。

星辰界にはユーラ=ヨーラのような生物のいる世界が他にもあることは一部の魔術士などの間では確実視されている。なぜなら一部のモンスターはユーラ=ヨーラの生物とはあまりにもかけ離れており、これらは何らかの方法で星辰界を超えてやってきたと考えられているためだ。

精霊界(元素界)

精霊界は非常に混沌とした空間だ。ここでは元素が生まれ、それらが集まって原始的な物質が形成される。これらの原始的な物質は空間を無秩序に飛び交い、衝突しては大きな塊になったり逆に消滅したりを繰り返している。

精霊回は全体的に均一ではなく場所によっては特定の精霊力が支配的な場所がある。特定の精霊力が支配的な場所は炎の精霊界とか風の精霊界と呼ばれる。異なる性質の精霊界が部分的に重なり合い連続していることもあり得る。このような特定の精霊力に偏って安定した場所は原初精霊と呼ばれる太古の(それこそ世界の始まりの直後から存在するような)強力な精霊が支配する次元であり、その中心部には原初精霊の座があると言われている。特定の精霊力が支配的な次元、例えば炎の精霊界は一つしかないわけではない。

精霊界の中には部分的に精霊力のバランスが取れて安定を保つ場所がある。主物質界のような世界はそのようなところに形成されるのだと言われている。これは魔術士やそれに近い考えを持つ学者の意見で、聖職者や神学者そのような偶然ではないという見解を持っている。

精霊界の大きさについては意見が分かれる。ユーラ=ヨーラよりも大きいということはほとんど一致しているがユーラ=ヨーラを包む程度から星辰界と同程度の広がりを持つまで様々な意見がある。

並行世界

並行世界とは主物質界と重なり合って同時に存在している世界でユーラ=ヨーラの一部だ。つまりユーラ=ヨーラは複数の次元から構成されている。主物質界、妖精界と幽界は確実な並行世界と考えられている。

並行世界はそれぞれの一部を共有している。共有していないそれぞれの次元独自の場所も存在する。共有している空間も常にそうであるとは限らない。特定の条件、例えば満月の時や日食の時だけ共有した状態になる場所や特に法則性もなく共有状態になったり離れたりする場所もある。詳しくは後述の「次元の混合」で説明するが、妖精界や幽界と混ざり合った場所影響を受ける。妖精界と混ざり合った場所では妖精の姿を見たりするし、幽界と混ざり合った場所ではアンデッドモンスターが自然発生したりする。

主物質界

主物質界は人間や普通の生物が住む次元だ。単にユーラ=ヨーラというとこの次元を指すし、世界の概観で説明した内容もこの次元のことだ。

妖精界

妖精界は文字通り妖精が住む世界だ。妖精界は自然に満たされており、気候や風景が主物質界よりも鮮やかで極端に見える。フェアリーやピクシーの戯れる森の中は柔らかな日差しが差し込む美しい場所だろう。しかし、ハッグの住む沼地やレッドキャップがうろつく荒野は昼間でも薄暗く陰鬱で危険な場所だ。

妖精界は主物質界の自然と生命に満ちた場所と引き合う傾向にある。恒常的に主物質界と妖精界が混合している場所は大抵手付かずの自然で動植物が多く存在する様な場所だ。古くからあるエルフの居住地も主物質界であり同時に妖精界でもある。これはエルフが主物質界の存在であると同時に妖精としての性質も色濃く持っているためである。逆に砂漠や腐海の様な生命の希薄な場所とはほとんど引き合わない。人間の都市の様な生命は存在するが自然が希薄な場所ともほとんど引き合わない。

幽界

幽界は死んで主物質界を去った霊魂や残留思念が行くつく世界だ。これら霊魂は短ければ数時間、長くても数ヶ月しか幽界に留まらない。多くの宗教では幽界を去った霊魂は神の元へと向かうのだと考えている。

幽界は妖精界とは異なり実体を持たない。言うなれば雲のように場所によって濃かったり薄かったりするが主物質界全体を覆っている。幽界は主物質界の死の気配の濃厚な場所と引き合う。例えば戦場跡や疫病に侵された都市などが代表的な例だ。腐海のように常に幽界と金剛している場所も存在する。

意外なことにアンデッドと幽界には直接的な関係はなく、アンデッドは幽界を起源としない。アンデッドとなるのは物質界に強い執着を残し幽界から逃れようとする霊魂や霊魂が取り憑いた死体だからだ。

その他次元

ユーラ=ヨーラとは別個に存在しながら何らかの関連性を持っている次元がある。このような次元はいくつもあると考えられている。

奈落

奈落はデーモン等が住む世界で、ユーラ=ヨーラとは独立に存在している世界の代表と考えられている。ここでは一つの次元のように紹介しているが複数の別の世界である可能性は高い。また、図ではユーラ=ヨーラの外に表しているがユーラ=ヨーラの内側にある考える識者もいる。

奈落とユーラ=ヨーラは様々な場所で不安定な(できたり無くなったりしやすい)経路によって繋がっていると考えられている。これはデーモンの多くが強大な力を持っていながらユーラ=ヨーラでは珍しく、大きな勢力になっていないことから奈落とユーラ=ヨーラはそれほど簡単に行き来できるわけではないと考えられるためだ。

天界

天界は神やそれに仕える天使や亜神、天に昇った聖人等が住む世界とされ、一般人や聖職者の間で広く信じられている。

しかし、魔導士や練術士、これらに近い学者は違った見方をしている。天界のような世界があるということへの異論は少ないのだが、それは一つではないと考えている。これはこの世界にはさまざまな宗教がありそれぞれに天界の存在が示唆されていることによる。また、天界と奈落は共にユーラ=ヨーラの外部に存在する世界にすぎず、そこに住む存在の性格に違いがあるだけだとも考えている。

悪疫の素

悪疫の怪物を生み出す元となる次元だ。悪疫の怪物が存在することからこの源となる次元が存在することは間違いないと考えられているが、それが奈落のような世界かどうかは識者の間でも意見が分かれている。というのも悪疫の怪物はユーラ=ヨーラの存在が変性して生まれるものでデーモンのような別次元からの来訪者ではないからである。そのため、悪疫の素はユーラ=ヨーラに漂う雲のような次元でたまに雨のようにユーラ=ヨーラに降ってくるのだと、そのエネルギーによって変性させられたユーラ=ヨーラの存在が悪疫の怪物になるのだと考える識者もいる。

その他の世界

これら以外にもユーラ=ヨーラとは別に存在し、何らかの手段で繋がっている世界はいくつも存在すると考えられている。外来のモンスターと呼ばれる者はこのような外部のほとんど知られていない世界から来訪したのだと考えられている。もっともあまりにも異様なためユーラ=ヨーラ起源ではないとされているだけかもしれないが。

異界の門

それぞれの次元の存在はその次元に束縛されており何もなしに他の次元へと移動することはない。例えば人間は主物質界の生き物であり主物質界に束縛されているので妖精界や幽界の影響の強い場所に迷い込んだとしても妖精界や幽界に移動してしまうことはない。本来存在すべき次元から別の次元へと移動するためには「異界の門」を潜る必要がある。

「異界の門」はなんらかの構造物ではない。古井戸とか2本の古木の間のようないかにもそれらしい場所が異界の門であることもあるが本質的には単なる空間である。何もない空間が門になっているということもありえる。

門は安定して長時間存在するとは限らない。突然出現して数秒から数分という短い時間しか存在しないこともある。一方通行だったり、来たところを戻ったら別の場所に繋がっているということもある。いわゆる神隠しのような事象は異界の門を潜ってしまったがために起きることがほとんどである。

異界の門である場所を通過するとそこから先は本来住むべき次元ではなく別の次元へと移動してしまう。異界の門は紙のように薄いこともあれば結構な距離があることもある。距離のある門の場合、その途中の様子は次第に変わってゆく。

次元の混合

2以上の次元が一時的に混ざり合うということを次元の混合と言う。主物質界と妖精界、幽界は常に次元が混ざり合った状態にある。悪疫の素に侵食された場所も次元の混合と考えても良いかもしれない。対して奈落や天界といった次元とは滅多に、それこそ100年に1度あるかどうかといった頻度でしか次元の混合は起きない。

一般的に次元の混合は一過性のもので数時間から長くても数ヶ月しか続かない。1年以上も次元の混合か継続するというのはかなり珍しいことだが、何世紀にもわたって次元の混合が続いている場所というのも稀に存在する。場所によっては定期的に、例えば満月や新月の時は必ず次元の混合が起きるようなこともある。

次元の混合が起こった場合、その場所は混ざり合った次元全てに属すことになる。例えば主物質界と妖精界が混合した場所は主物質界であり妖精界でもあるということになり、両方の特徴を備えるようになる。ただし、混ざり合いの程度によってその様相には差異がある。少しだけ混ざった程度だと若干その場の雰囲気とか空気感が変わる程度だがよりしっかりと混ざり合うと両方の次元の存在が現れ始める。例えば主物質界と妖精界の混合の場合、植物などは両方の次元に存在し得るのですぐに影響を受け始めるし、昆虫や小動物などがそれに続く。妖精は妖精界独自の存在なのでかなり混合が進んだ状況にならないと主物質界では見えない。どこかの森を歩いていたら妖精に遭遇したなどという場合、妖精が異界の門を超えてきた、逆に人間が異界の門を超えて妖精界に踏み込んでしまったというよりもその場所で次元の混合が起こったための方が多いだろう。

ユーラ=ヨーラ

ゲームの舞台となるのは次ページの世界地図に示した部分である(下の地図を参照)。ユーラ=ヨーラは東西と中央に大陸があり、それぞれの大陸は海によって分断されている。また、中央の大陸にはほぼ中央に海(もしくは巨大な塩湖)があり、南部に亜大陸が繋がっている。これはこの世界の全域ではないが、冒険の舞台となる世界の住人が把握している世界の全てではある。

ユーラ=ヨーラの古くからの文化圏、国家は西大陸の東岸地域、東大陸の西岸地域、それから南の亜大陸の北岸に集中している。各地域を我々の世界に照らし合わせた場合、イメージとしては西大陸の東岸地域がヨーロッパ、東大陸の西岸地域が北東アジアから東南、南アジア、南の亜大陸北岸がペルシア風の世界となる。

冒険の主要な舞台となるのは中央の大陸である。この地域は人間が住み着く様になってから比較的歴史が浅く(それでも数百年以上は経っているが)、大きな国は形成されていない。しかし、東西の大陸を結ぶ交易路の中央に当たるため、様々な地域から交易商人や新天地を求めて移住してくる人々がいる。中央の大陸は東西の大陸に比べ人間の勢力は小さく、大陸のかなりの部分を占める未開の地には危険なモンスターが住み着いている。それよりも危険なのが各地に残る遺跡や各地に点在する異界の影響の強い場所だ。滅んだ遺跡の住人であるアンデッドが近隣の集落を襲い、突然に発生する悪疫によって集落の住人がモンスターと化す、ということがしばしば起こる。しかし、この様な場所であるからこそ、冒険者の様な者達が必要ともされ、彼らが冒険に向かうべき理由のある場所でもある。

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中央大陸概要

中央大陸は地図の中央に位置する大陸で、北の混沌荒原から南のトルゲ台地、大湿林までの一帯を指す。南西の亜大陸とは地続きだがシュエブ山脈によって分断されているためこれとは分けて説明する。また、トュルク王国も砂州によって中央大陸と地続きだが、大陸側にある小腐海の存在のため事実上陸路によって繋がっていない。そのため、トュルク王国は南西の亜大陸に含めて説明する。

セルトリア地方

セルトリア地方は中央大陸の北西、クルォールイ山脈の西に位置する地域である。この一帯は低い丘陵が続き、全体が森林に覆われている。特に北半分はハヴォルニの森と呼ばれる深い森になっており、人間が住むのは南半分に限定されている。セルトリア地方は森林や草原が多く比較的雨量もあり農耕には向いているが寒冷である。

セルトリアは現在西大陸を支配する国々の基となった民族に追われ、移住して来た原住民族が部族毎に住んでいる地域で統一された国ではない。これらの部族はそれぞれ出自が違うため必ずしも友好的とは限らないが、西大陸から追われてきたという共通点があり、西大陸に対して警戒感を持っているという点では協調していて緩やかな連携を結んでいる。これら部族の長の中から4年毎に代表者が選ばれ、セルトリア全体としての対応が必要な場合には代表者を中心としてまとまって行動する。代表者は基本的に部族毎の持ち回りで、部族会議の議長の役割を果す。セルトリア地方には大きな都市は無く、商業活動もそれほど盛んではないためあまり大きな街道などもない。

人間以外のヒューマノイドではハーフリング、ノームはよく見られるし、北側のハヴォルニの森には相当数のエルフが住んでいる。内陸部は平坦な草原地帯のためケンタウロスもよく見られる。ドワーフが居住地とする鉱山が無いためドワーフを見かけることは滅多にない。クルォールイ山脈に至ればドワーフの集落はいくつもあるし、やや高い場所にはユーウォーキーの集落がある。敵対的なヒューマノイドとしてはゴブリンやオークはかなり多く基本的に小さな集落ばかりのセルトリア地方では人間の脅威になっている。トロールやオーガ、ハッグなども生息している。

白線は主要な街道、点線は航路を示す。

シュラソナ

シュラソナは部族議会が置かれており、セルトリアの代表者と各部族から選ばれた代表者が住む街だ。ここはいずれの部族のものでもなく、部族共有の土地とされている。小高い丘の上に石造りの壁が巡らされた城塞だが人口はそれほど多くない。基本的に部族の代表者とその郎等や従者が一定期間住むだけなので定住者があまりいないこと、定住者にとっても部族の共有地なので勝手に開発して自分の土地にすることができないという問題があるためである。

ハノサエ、エスパゾ

ハノサエとエスパゾは西大陸からの船が立ち寄る港町で、ハノサエの方がやや大きな街になっている。ハノサエとエスパゾもセルトリア全部族の共有地で、壁に囲まれた街と灯台を兼ねた望楼がある。元々は西大陸に対する防御拠点として建設された街だが、現在では商業活動が盛んになってきている。そのためセルトリア人以外の人間もかなり滞在している。しかし、外部からの人間は月の満ち欠けが一回りする間(約2週間)しか滞在を認められないため、大規模な商館などは存在しない。

ヴェリナ

ヴェリナはエグザイルおよびレガリアからの街道のセルトリアへの入り口に作られた街で、やはり全部族が共同で管理している。街道はヴェリナの大門と呼ばれる石造りの門で遮られ、門とそれに連なる壁には見張り台が据えられていてセルトリアへの通行を監視している。特にエグザイル方面、ダ・カンからの流入者を監視するのがこの街の最大の役割である。

ヴェリナはセルトリア地方最大の街でもあり、交易の拠点でもある。年に何回かは農産物や毛皮などとレガリア方面からの品物を交換するための市が立ち、その時はセルトリア全域から人が集まるため非常ににぎやかになる。また、ドワーフの街であるカヴィリクとの交易の拠点となっており、多門の外側(川の対岸)にはセルトリアの外からやってきた商人などが住む街が形成されている。

カヴィリク

カヴィリクはセルトリア地方では無くクルォールイ山脈にあるドワーフの街の一つである。山上の街はドワーフの街なのでかなりの人口があるが、山裾の人間の街はそれほど大きくない(それでも、数百人の人間が暮らしており、セルトリアの基準では大きな街だ)。これはヴェリナと大きな川で繋がっているためそちらを拠点とした方が色々と便利だったただ。この街にはセルトリアの人々はほとんど住んでおらず、他の地域からやってきた商人が主な住人である。この街ではたまにユーウォーキーがドワーフとの取引に訪れる。

ハヴォルニの森

ハヴォルニの森はセルトリアの北に広がる広大な森林地帯だ。古く大きな森であり、いくつものエルフ氏族の居住地が点在している中央大陸最大のエルフの居住地である。セルトリアの人々とエルフの間では協定が結ばれておりハヴォルニの森一帯はエルフの領域となっているため、セルトリアの部族は南側一帯に住んでいる。セルトリア地方の人間の人口は多く無く境界を争うようなことにはなっていないので人間とエルフの関係は良好である。また、ハヴォルニの森に近い場所に住む部族はそれぞれ居住地の近いエルフの氏族と定期的(1年に1回くらい)に会合を持っている。

ハヴォルニの森はエルフの領域だが非常に広く、エルフが全域を支配しているわけではない。おそらくエルフの支配が及んでいる範囲は森の1/3にも満たない。それ以外の場所では危険な動物などがいるし、エルフの集落を狙うオーク、森に住み着いているトロールなども徘徊しており非常に危険な場所となっている。

エグザイル・ヘカロケア地方

エグザイル、へカロケア地方はクルォールイ山脈の南西、ロシ海とロヨ山脈以西で中央大陸の西側に位置する地域である。北部のクヒヴィナの森辺りはクルォールイ山脈の麓で丘陵と小高い山が点在するが全体的には平坦である。全体的に温暖でやや乾燥している。

エグザイルは主に西大陸で政変や戦争に負け、追放されたり落ち延びたりして来た領主等が住み着いた地で、「追放者の地」と呼ばれている。ここに住み着いた追放領主達は豪族となり、彼らは互いに同盟を結んだり、裏切ったりしている。これらの中にはここを通過する隊商を襲う野盗か強盗の様になってしまったものや、隊商を護衛する傭兵団化したようなものもいる。

エグザイルの北西の海岸線一帯は古くからの街が多いため人間の支配力が強く、東のへカロケア公国の影響力のある範囲も同様で安定している。他の地域は非常に不安定で、特に中央には悪名高い盗賊の街「ダ・カン」がある。野党や強盗が多く危険だが西大陸から東に向かうための主要な交易路であるため交易商達はこの一帯を通過せざるを得ない。そのため、商人達は隊商を組織し、護衛を雇って何とかここを無事に通過しようとする。

人間以外のヒューマノイドは西岸の比較的安定した地域かへカロケアで見られる。ハーフリングやノームの定住地があるのはクヒヴィナの森の北西側のセルトリア地方に近い一体かへカロケア公国の一部でその他の地域はこれらの小勢力が暮らすには危険すぎるため滅多に見られない。クヒヴィナの森にはエルフも住んでいる。クルォールイ山脈にはドワーフの集落がある。内陸部の平原地帯にはケンタウロスも見られる。敵対的なヒューマノイドとしてはゴブリンやオーク、ノールが一定の勢力を持っている。エグザイルの中央部分ではゾロアも珍しくない。沿岸部分ではギルマンもかなり出没する。エグザイルは全体的に見て人間の勢力が比較的弱く、敵対的なヒューマノイドの勢力が強めで危険な地域だ。

白線は主要な街道、点線は航路を示す。

黄色の線は国のおよその支配地域を示す。

ルサチタレス

へカロケアでもっとも古い街で2〜300年前に西大陸であった戦争で亡命してきたいくつかの貴族が建設した街で彼らの子孫が現在も統治している。街の中心部は元々西大陸からの攻撃に備えて建設された狭い城塞で建物が密集しており、周辺は無計画に拡張されたため全体的に狭苦しくゴミゴミとした街になっている。

現在は西大陸及びチュルク王国との貿易港として商業都市としての機能が大きくなっている。そのため、様々な人種の人間がここに住んでいるがエグザイルの各地から流入してくる貧民やダ・カンの盗賊、乞食、麻薬商人や奴隷商人なども多数入り込んでおり、かなり治安の悪い街でもある。

ヘカロケア公国

ヘカロケアは元神聖帝国公爵を称する(おそらくは僭称)追放貴族によって作られた。先見の明のあった彼は主にエグザイルの西大陸よりの地域で小競り合いを繰り返している他の追放貴族達から抜け出し、この地を武力で制圧して最初の街を建設した。その後、エグザイルを経由してトュルク王国や西大陸、反対にリ・イユに向かう貿易の中継点として発展し、その後いくつかの追放貴族を支配下に取り込んで発展して来たのである。

ヘカロケアは現在の公爵ライムント = ベルトラムを頂点とした封建制と絶対君主制の中間的な体制で運営されている。街の近隣には元々の家臣の子孫を領主とした集落を配し、その周辺に支配下に組み込んだ追放貴族の領地が点在している。ヘカロケア公国の首都は国名と同名の街、ヘカロケアだ。

テム・ビヒン

テム・ビヒンはクルォールイ山脈のドワーフの街の一つである。エルフの領域であるクヒヴィナの森に接しているため麓に人間の街はなく、ドワーフの地上部分の街と人間の街が一体化している。街道が東西につながっており、へカロケアやエグザイルと交易を行なっている。エグザイルの西側はセルトリア地方のカヴィリクからヴェリナを経由した水路での輸送の方が優勢なため、テム・ビヒンとの交易はへカロケアの方が盛んだが、西方面も少なくない。この街道は山越えになるので道程はやや厳しいのだが、エグザイルの中央部分を通るよりは幾分安全なため小規模な隊商や旅人にはこの経路を好む者もいる。

エグザイル中央地域

エグザイルの中央はには小豪族が支配する集落がいくつも点在している。へカロケアとルサチタレスを結ぶ街道沿いは比較的安定しているが、その他の地域では人間の野盗も多く、オークやゴブリン、ノールなども徘徊しており治安は劣悪だ。これらの野盗の中にはオークやゴブリンと手を組んでいるものもいる。どこにでもいるオークやゴブリン以外ではゾロア(蟻人間)が多いのも特徴である。

野盗やゴブリンは頻繁に奴隷狩りを行いる。これはこの地域の豪族が労働力として奴隷を欲しがるというのもあるが、ダ・カンの市では奴隷売買が行われるので略奪と合わせて良い稼ぎになるためである。

ダ・カン

治安が悪く、荒んだ地域として知られるエグザイルにおいても最も忌み嫌われているのがこの「ダ・カン」、別名「盗賊の都」だ。「ダ・カン」は崩れかけた汚らしい建物の間を網の目の様に張り巡らされたゴミだらけの小路が走る混沌とした街で、住むものと言えば乞食、どこからか逃げて来たお尋ね者、盗賊、少しマシなものでも盗品や奴隷を売買する商人と言った有様でである。それどころかゴブリンの奴隷商人など珍しくないし、オークの姿を見かけることもある。ユアンティやエルダー・リネージを見かけてもそれほどの驚きではない。このような街だが、一般的には扱われない様な商品、盗品や麻薬、奴隷などを扱う市が定期的に立つ。そして、この街で最も重要な商品は世界中から集まる「情報」である。ダ・カンの有力者はこれらの情報によって金を儲け、自分達に害をなすものを事前時排除している。

ダ・カンにはいくつかの組織が存在し、それらの組織は一定の協定を結ぶ事で最低限の秩序を保ち、街の住民を支配している。現在、ダ・カンで最も有力な人物は左手の親指が2本ある事から“6本指”のムバレスと呼ばれる人物である。

クヒヴィナの森

エグザイルの北に広がる森林地帯だ。古く大きな森でセルトリアのハヴォルニの森ほどではないがかなりの数のエルフが住んでおり、いくつものエルフの居住地がある。エグザイルの人間が領土拡張のため森を切り開くため人間との関係は良くない。また、この森にはゴブリンやオークの群れが相当数住んでおり、森に近い地域では大きな脅威になっている。

小腐海

エグザイルの南方にある湿地帯である。その名の通り、枯れた木々と腐った水からなる湿地帯で、その中心には朽ち果てた古代の遺跡があると言われている。また、湿地帯の周囲は醜く、奇妙に歪んだ木々からなる森が広がっている。この周辺は悪疫の怪物が頻繁に出現する非常に危険な場所だ。特に、小腐海周辺の荒原にはフォモールの部族がいくつも徘徊しており、しばしばエグザイルやヘカロケアの周辺を襲いる。疫病を振りまき、家畜とでも交配して爆発的に増えることのあるフォモールは人間だけでなくゴブリンやオークなど普段は敵対的なヒューマノイドにとっても脅威となっており、これに対してはゴブリンやオークが人間と協力して対処することすらありえる。

小腐海を超えるとチュルク王国と陸路で繋がっているのだがこの一帯はあまりに危険なため街道と言えるような経路はなく、エグザイルとチュルク王国の行き来は航路によってなされる。その航路も小腐海側は危険な海の怪物が出るためチュルク王国の沿岸を通る。

セハヌ・ヴォミスク地方

セハヌ・ヴォミスク地方は中央大陸の南部、ロシ海とエゼナ海の南岸に広がる地域である。この辺りは温暖で雨量も多く農業に適しているため、中央大陸全体で見て最も豊で安定している地域であると言える。

セハヌ・ヴォミスク地方はかなり古くから人間が住んでいた地域で、西のセルトリアやエグザイル、東のザンバルの様に他の大陸からの移民の子孫ではなく元々中央大陸に住んでいた人々の子孫だと考えられている(他の地域が完全に移民の子孫に置き換えられている訳ではなく、移民が多かったため混血が進み原住民の特徴が薄れているのだが)。

セハヌ・ヴォミスク地方の南側は大湿林と呼ばれる広大な熱帯雨林でありここには人間の国家や知られている様な集落はない。人間の領域はロシ海とエゼナ海の南岸一帯に止まっている。この地は年を通して雨量が多く高温多湿な気候であるため農産物の生産が多く豊かである。また、香辛料や香木などの貴重な品が産出する。これらの物産はロシ海やエゼナ海を通じた交易によって他の地域に輸出さてれいる。

人間以外のヒューマノイドではハーフリングやノームが人間と共存している。ドワーフの大きな集落は無く、ドワーフの人口が多い集落もロヨ山脈の麓にいくつかある程度でこれらも人間と一緒に生活している。大湿林という大きな森林があるがエルフは住んでいない。大湿林はリザードマンの領域となっている。人間とリザードマンの関係は悪く無く、大湿林はリザードマン、ロシ海やセレン海の沿岸部分は人間と棲み分けており交流もある。また、ロヨ山脈にはユーウォーキーの部族がいくつもある。人間に敵対的なヒューマノイドでは他の地域に比べてゴブリンやオークの数がやや少なめだ。代わりに多いのがギルマンで大きな河川やその支流の多いこの地域ではかなりの脅威となっている。大湿林にはゾロアも相当数おり、しばしば人間の集落を襲撃する。

白線は主要な街道、点線は航路を示す。

黄色の線は国のおよその支配地域を示す。

セハヌ王国

セハヌ王国はロシ海の南岸、キラユ川東岸からゼヴィ川西岸までを支配している。基本的に農業を中心とした封建国家で、首都はセヴィ川の分岐点に位置するチャスアである。テビセテ川とセヴィ川の間の三角州の領有についてはヴァサイ王国ともめていたが、現在では南西側をセハヌ王国、北東側をヴァサイ王国の所領とするとこで折り合いがついている。国境を接するヴァサイ王国よりもエグザイルの南部に近い西からの脅威に対する備えが重要で、キラユ川を防衛線として警戒している。街道、海路共に北はクジャ地方、西はへカロケアに通じているためこれらの地方との交易が盛んだ。

ヴァサイ公国

ヴァサイ公国はセハヌ王国とヴォミスク王国に挟まれた位置にある。元々はヴォミスク王国の分家としてヴォミスク王国のオテオセ川以西を分割して成立した国だが、現在では完全な独立国となっている。ヴァサイ公国も農業を中心とした封建国家で、首都はゼヴィ川河口にあるケザクヴィである。交易の中心は街道海路共に北のクジャ地方である。ロシ海とエゼナ海の両方に面しているのでへカロケアやザンバル方面との交易もある。

ヴォミスク王国

ヴォミスク王国はオテオセ川以東、イユ川の東までを版図とするこの地方で最も古い国である。セハヌ・ヴォミスク地方は全体的に温暖で豊かだが、ヴォミスク王国は特に農業に適した豊かな国だ。首都はイユ川の河口にあるリ・イユである。ロシ海に面していないので西方との交流が少なく、ザンバル地方との交易が盛んなためやや東方風の風情がある。

クジャ・エジロナ・大腐海地方

セレン海の西、テトラサ海とロシ海、クルォールイ山脈に囲まれた地域がエジロナ地方、セレン海、ロシ海、エゼナ海に囲まれた地域がクジャ地方である。ひとまとめに紹介しているがこの2つの地域はかなり性格が異なる。

エジロナ地方には封建領主の治める小国がいくつも存在する。まれに紛争が発生する事もあるが大体において平和と言える。それぞれの封建領主が治める小国は基本的に農業を主体としている。クルォールイ山脈を超えてセルトリア地方と結ぶ重要な街道があるのだが、エジロナ地方にもセルトリア地方にも大きな商業都市がないし、厳しい峠越えとなるため交易ルートとしては主要な経路になっていない。

エジロナ地方は外部からの脅威の多い地域だ。テトラサ海の西岸から北に抜けると混沌荒原に至るためそこから南進してくる敵対的なヒューマノイドに備えなければならない。それ以前に混沌荒原に繋がるシュリーガの森のサディオ川以北はオーク、ゴブリン、コボルト、トロールといった敵対的なヒューマノイドの領域であり、人間の領域でもこれらに遭遇する可能性は低くない。更にアマヌールが近いためゴブリンが奴隷狩りのため集落を襲うことがままある。また、大腐海と陸続きのためここで自然発生するアンデッドや悪疫の怪物の脅威もある。

敵対的なヒューマノイドの脅威が比較的大きいため逆に友好的なヒューマノイドとは良好な協力関係にある。サディオ川以南のシューリがの森とシェイヨラの森のエルフ、クルォールイ山脈東側のドワーフとは互いに敵対的なヒューマノイドの侵攻に対処する約束を結んでいる。ハーフリングやノームの人口も多く、これらの種族との関係も良好だ。

クジャ地方は陸路でも海路でも東西、南方と繋がっている交通交易の要衝であり人口も多く栄えている。レガリア、アマヌールという大きな都市が存在し、それ以外の大きな街でも交易が主要産業となっている。もちろん、農村などはあるのだがこれらも多くは宿場町としての機能ももっておりエジロナ地方とはかなり雰囲気が異なる。また、交易商人が多数行き来するだけでなく、この辺りは古代の遺跡が多く見つかっていることで有名な地域で遺跡の財宝目当ての冒険者が集まりやすい。そのため様々な民族の人間が入り混じっている。異種族ではハーフリングは珍しくない。ドワーフの街はないが鉱山都市を離れて職人として暮らすドワーフや技術者や学者として暮らすノームもいる。エルフだけはまず見かけることがない。

オークやゴブリンはどこにでもいるのでクジャ地方にもいるが人間の勢力が強いためそれほどの脅威ではない。ただし、アマヌールが近いので小さな農村ではゴブリンの奴隷狩りが問題になることがある。街道をゆく不用人な旅人を狙うオーガやハッグの数は他の地域と比べて多いのだが、これらが集団で人間の集落を襲うことはないためこの地域の住人にとってはそれほどの脅威ではない。海に囲まれた地域なのでギルマンの襲撃を受けることはしばしばあるがやはり人間の人口が多く撃退可能なため大きな打撃を受けることはない。都市や大きな街にはラットフォークが相当数住み着いているがこれも大きな被害を出すものではない。むしろ高度な知性を備えた種族が潜在的な脅威になっている。ユアンティは未発掘の遺跡に潜伏していると言われているし、人の出入りが激しいため不浄の落とし子の潜む者やコラプテッドの侵入が問題になる。何より、セレン海の対岸にある邪悪な魔術士の街スレニブ、金によって誰とでもあらゆるものが取引される悪徳の街アマヌールの存在がこの地域最大の脅威になっている。

白線は主要な街道、点線は航路を示す。

モダイ・マリナ

クルォールイ山脈にある最大のドワーフの鉱山都市であり、山脈を超えてセルトリア、エグザイル西岸に至る街道で最大の都市である。地上には人間の街があるが古くからあるため人間の街とドワーフの地上の街が融合してしまっている。峠越えになるがエグザイルを通らずにクルォールイ山脈の西に行けるルートで距離も短いためそれなりに大きな隊商なども利用し、宿場としても栄えている。すぐ近くにサディオ川が流れておりテオラまで川を下って行けるが、テオラは北方への警戒のための砦なので交易ルートとしては使われていない。陸路を使って南に向かいそこからヴェラ川を使ったルートが交易ルートとして利用される。

テオラ、エベオン

テオラは北方の混沌荒原、エベオンは大腐海に対する備えとしてノームの技術者が設計し、ドワーフと人間が作った堅牢な砦だ。これらの砦はエジロナの各領主が協定を結び規模に応じた兵士を送っている。ドワーフもかなりの兵士を送っているしノームの技術者や魔術士もいる。驚くべきことにそれほどの数ではないがエルフも兵士を送っている。混沌荒原や大腐海はそれほどの脅威とみなされているということだ。なお、交易ルートではなく頻繁に利用される訳ではないので地図上には航路の記載がないが、いずれの砦にもテトラサ海を使った船による輸送が行われている。

シュリーガの森、シェイヨラの森

これらの森にはエルフが住んでいる。シュリーガの森のサディオ川以北はゴブリン、オーク、コボルトなどの領域であり、エルフが住むのはサディオ川上流の森の南部一帯に限られる。シェイヨラの森は全域にエルフが住んでいる。両方の森を合わせてもセルトリアのハヴォルニの森やエグザイルの北にあるクヒヴィナの森ほどのエルフは住んでいない。

エジロナ地方は敵対的なヒューマノイドの脅威が大きいため、これらの森のエルフは人間はもちろんドワーフとも比較的よく交流を持っており良好な関係にある。

レガリア

レガリアはクジャ地方のやや南側、ロシ海の沿岸にある、この地域最大の都市であり中央大陸において一二を争う商業都市である。レガリアは比較的新しく、200年余り前に発見された古代の遺跡の跡に作られた。レガリアはその成り立ちから封建領主によって支配されておらず、現在では有力な商人や職人ギルドの長など有力者による合議によって運営されている。その成り立ちと機能から猥雑ではあるが非常に自由な気風の街であるため様々な人々が集まる。冒険者もその例外ではない。周辺地域に数多くの遺跡が見つかるばかりか街の地下から埋没した遺跡が見つかることすらあるため冒険者が最もよく集まる街となっている。

アマヌール

アマヌールはグジャ地方の北側、セレン海を挟んでスレニヴの対岸にある都市だ。もともとアマヌールはスレニヴに対する防衛拠点として成立した城塞都市だったが、現在ではスレニヴとの貿易拠点の町として悪名を馳せている。アマヌールに集積される商品のうち特に有名なのは奴隷と魔法の品々、文献である。この街ではあらゆるものに値段がつき、殺人などの犯罪ですら金で解決される。そして、ここではゴブリンやユアンティ、エルダー・リネージなどの敵対的なヒューマノイドも排除されることなく交易に訪れる。しかし、無法ゆえにあらゆることが許される盗賊の街ダ・カンとは全く異なり徹底した法の支配によってこれが成り立っている。たとえどのような種族であろうともアマヌールの法に従うのであれば滞在も商売も認められるという訳だ。

大腐海

デストラ海とセレン海の間一帯を占める腐った塩水の大湿地帯である。ここは常に瘴気に満ちた肌にまとわりつく様な霧で覆われ、枯れて白骨の様になった木立がまばらに存在する以外は、腐りかけたコケか、気味の悪い海藻の様な植物が地面を覆っているだけである。地面はそこかしこが泥濘化しており、まともに進む事すら困難だ。人間はもちろんの事、ゴブリンやオークをはじめとする多くのモンスターですら生存には適さない場所で、この地を徘徊するものと言えば、生命を持たないアンデッドかマイコニッドなどの様なこの地でも生存可能な怪物ばかり。ここには古代の大規模な遺跡群がある事が分かっているが、最も野心的な冒険者ですらこの地にはまず足を踏み入れない。

スレニヴ

大腐海から南に突き出した半島に位置する都市スレニヴはうっすらとした霧の中に白い尖塔がいくつも立ち並ぶ美しい街だが、古代の魔術士の後継者を自認する酷薄で邪悪な魔術士達の都として、盗賊の都ダ・カンと並ぶ悪名を轟かせている。この街の住人は彼ら魔術士の他には不運な奴隷、そして、死後アンデッドとして使役されることになった奴隷達の死体である。この様な街を訪れようと言うものはほとんどいないが、奴隷や遺跡の発掘物を扱う倫理観の低い商人はしばしばこの地を目指す。これらの商品が最も高値で売れるのがスレニヴだからだ。

ニムファ

大腐海のほぼ中央に存在する街というにはあまりにも小さく規模で言えば村と言った方が適切だ。しかし、ニムファは様々な宗教において聖地として認識されている。なぜならば、アンデッドや悪疫の怪物が徘徊する大腐海にあるにも関わらずこれらのモンスターが寄り付く事も無く、清浄な大気に満たされ、泉からは澄んだ水が涌き出しているためである。そのため、ニムファは「聖なる地」、「腐海の真珠」、「泥中の睡蓮」、「真理の都」、「聖者の村」など様々な異名を持つ。ニムファには代を重ねて定住する住民はいない。ここには各地から訪れた極めて信仰心が厚く求道的な宗教家ばかりが定住している。

ザンバル地方

中央大陸の東岸、アフユナ川以南、シェヌルピ山脈以東はシタン帝国の言葉でザンバル(戦野)と呼ばれている。この地域は東大陸で戦争や政変などがあると領土を奪われた領主や有力者が流れ込み、その度に既存の封建領主との間で紛争を生じるためこのように呼ばれるようになった。近年になって戦乱の続いていたアキツクニがほぼ統一され戦の敗者が相当数落ち延びて来たためザンバル一帯は不安定な状況になっている。

ザンバルの成り立ちはエグザイルと似ているが、湿潤な気候で土地の生産性が高く、古くから移住が行われている。そのため空白地帯が少なく新たな移民が来るたびに紛争になりやすい。反面、古くからの有力な街も多い。そのため東海岸やセレン海沿岸、ミア川からラスファタ川流域は易ルートとしてエグザイルよりもずっと安定している。

ザンバルの北部一帯はマズミラの森と呼ばれる森林地帯でここにはエルフ居住地がある。ザンバルの内陸部は紛争が多く新規移住者が森の南部辺縁を切り開き、そこから追われてた人々が森の西部を新居住地として切り開くため人間との関係は良くない。ノームはラスファタ川やミア川流域の街やその周辺の農村では珍しくなく、街道沿いの安定した地域であればハーフリングも普通にみられる。シェヌルピ山脈にはドワーフの集落がいくつかあるが、ドワーフの都市と言えるほどの集団は住んでいない。シバ山脈の北部にはそれよりも少数のドワーフの集落がある。また、シバ山脈にはユーウォーキーの集落がある。ケンタウロスはラスファタ川東岸から広がる比較的平坦な一帯に住んでいるし、シンリョウ国の北部の街ではニヴクタ平原からの遊牧民に混じってやってくることがある。南部に広がるモワウの森は人間が入植しておらず未開の地となっている。

ゴブリンやオークはモワウの森北側からザンバル中央の戦乱の多い地域では良くみられる。モワウの森の奥までゴブリンやオークが住み着いているのかは確認した者がいないのでわかっていない。オークの集団には傭兵団を組織して人間の戦乱に参加し略奪を行なっている者もいる。オークよりも少ないがノールの傭兵団も見られる。シバ山脈の周辺にはコボルトの群れがいくつもある。

白線は主要な街道、点線は航路を示す。

黄色の線は国のおよその支配地域を示す。

シンリョウ国

シンリョウ国は現在のシタン帝国以前に同地にあった国の貴族がシタン帝国によって同地を追われ、中央大陸に流れついて建国した国である。元々は現在の首都であるホク・センだけだったが、不安定なザンバルにあって周辺の都市がホク・センを盟主とみなすようになり支配下に治った結果、現在のシンリョウ国になった。

ホク・センはラスファタ川がセレン海に注ぐ河口に位置する街で、特にクジャ地方を経由して西に向かう商業の重要拠点となっている。クジャ地方に向かうにはラサボラからシェヌルピ山脈を南回りで向かう経路もあるのだが、ホク・セン経由であればラスファタ川、セレン海と船を使った大量輸送が可能なためこちらが主要な経路となっている。

ラサボラ

ラサボラはシパ山脈からホク・センに流れるラスファタ川とその支流でミア・ンに注ぐミア川の分岐点に位置する街で、東大陸、ホク・センを経由してニヴクタ平原やシェヌルピ山脈を北回りでクジャ地方、海路でのセハヌ・ヴォミスク地方や南回りでのクジャ地方への重要な中継地となっている。ラサボラはザンバルで最も多くのドワーフやノームの住む街でもある。珍しいことにドワーフの鉱山都市に付随する形で人間の街ができたのではなく、人間の街があったところにドワーフが住むようになり、鉱山を開発し始めたという珍しい成り立ちになっている。

ラサボラは国として周辺地域を支配してはいないが、近隣の農村や街に対して強い影響力を持っている。ラサボラの統治者は海賊であったシエンロウ出身のチチャナ氏とアキツクニ出身のヤガイ氏の子孫である。ラサボラは両氏族が1代毎に首長を交代しながら統治している。

ミア・ン

アキツクニやシタン帝国など東の大陸との窓口となる港町の中では最大の街である。この街はアキツクニや東大陸出身の大商人が代表者として共同統治している。輸送の大半はミア川を使ったもので、そのほとんどはラサボラを経由する。こういった事情からミア・ンはラサボラと協定を結び防衛能力のかなりの部分を依存している(ミア・ンにも傭兵団からなる軍事力はある)。

ハノハ

エゼナ海を経由するザンバル地方と大陸中央から南への海運の重要拠点である。ただし、ラサボラからハノハまでの間が陸路となるため物流の規模としてはホク・セン経由よりもやや少ないのだがヴォミスク地方と海路で結ばれているため南方との交易の重要拠点である。ヴォミスク地方の珍しい香木や香辛料はハノハからラサボラ経由でホク・センへ、さらにミアンを経由して東大陸へも輸出されている。このように南方との関係の深い街なのでヴォミスクの商人も多く東大陸の影響の強いラサボラとはかなり雰囲気が違う。人間以外の種族では背後のシェヌルピ山脈の鉱山を開発しておりドワーフやノームも多く住んでいるし、定住者こそいないが南方からやってきたリザードマンを見かけることがある。

ラスファタ川流域

ラスファタ川流域は川を利用した輸送の中継点としていくつもの街があるが、同時にラスファタ川周辺では良質の砂鉄が取れるため製鉄が盛んだ。そのため、軍事力の強化を目論むザンバルの豪族たちは虎視眈々とこれらの街の支配を狙っている。オークやゴブリンといった人間型種族も同様である。

シェヌルピ山脈

大陸の中央部とザンバル地方を分断する山脈で、ここにはドワーフの集落がいくつもある。ただ、ラサボラやハノハといった大きな人間の都市が早くから成立していたこともあり、ドワーフの坑道都市が主体となるような大きな都市は(少なくとも地上には)存在しない。

シパ山脈

東岸一帯に南北に伸びる山脈で、多数の火山から形成されている。特に、山脈の名前にもなっているシパ山は山脈最高峰の活火山で、歳を取った龍が住んでいると言われている。

マズミラの森

この森のアフユナ川流域にはエルフの集落があるがザンバルの人間とはほとんど関わり合いになろうとはしない。これはザンバル地方では移民の流入があるたびに戦乱が発生し、領主の交代が起こるためその度に協定を結びなおさねばならず、もともと排他的なエルフが更に排他的になった結果である。また、エルフの領域以外の場所はゴブリンやオークが多数住んでいる。ザンバルの豪族の中にはこれらオークやゴブリンを傭兵として雇うものがいる。

モワウの森

東岸の南側一帯、破砕海の北に広がる森林地帯である。北部の人間の領域に近い範囲はゴブリンやオーク、トロールなどの人間に敵対的なヒューマノイドやモンスターの住む地となっている。森の深部がどのような様子かはわかっていない。

その他地域

クルオールイ山脈

セルトリアの東側からエグザイルの北東にかけての山脈である。この山脈の中央やや南側が比較的低くなっており、セルトリアとエジロナを結ぶ重要な街道になっている。モンスターに襲われる可能性はあるがエグザイルに比べると大分マシなので、エグザイルを通過したくない個人の旅人や小規模な交易商人が隊商を組んで利用する。ただし、山越えになるので大量輸送には利用されない。

クルオールイ山脈にはドワーフが住んでおり、いくつかの大きな街がある。これらの街は地下で繋がっているとも言われているが、ドワーフが自分たちの坑道都市の奥深くに他種族を入れることは無いためその真偽は不明だ。ドワーフの街よりも高い場所にはユーウォーキーの集落が点在しているためこの珍しい種族を見かけることがある。

混沌荒原

デラトサ海の北西一帯に当たる地域で、モンスターが徘徊する場所である。この地にはゴブリンやオーク等の人間に敵対的なヒューマノイドの集落(ひょっとしたら国)が点在するらしく、何年かに一度、これらのヒューマノイドの大群がエジロナ地方やニヴクタ平原を襲う事がある。

ロヨ山地

中央の大陸の南部で東西を分断している山地である。この一帯は珍しい有翼の人間型種族であるユーウォーキーの部族の住む地となっている。

トルゲ台地

中央大陸の南端にある台地である。北部をロヨ山地、東部を大湿林に囲まれているため、この地に近づいた事のある人間はおらず、なにがあるのかは分かっていない。

大湿林

中央の大陸の南部に広がる湿地帯に広がる大森林である。人間が住むには困難な地域で、モンスターも多数徘徊する危険な場所だが、大湿林を網の目の様に流れる大河「ロウクゼ川」の沿岸にはリザードマンの集落が点在している。

クウヴ山脈

中央の大陸の北東に存在する大山脈である。噂では、クウヴ山脈の地下には滅んだドワーフの都市があると言われている。

ニヴクタ平原

中央の大陸の北方に広がる比較的乾燥した低木林や草原の広がる平原地帯だ。この地方には人間の大きな都市はないがいくつかの遊牧民の部族が暮らしている。また、ケンタウロスの部族やハーフリングの集落がある事でも知られている。

破砕海

東岸の南側にある無数の島々からなる海である。この海は無数の島々の影響で海流が複雑なうえ無数の岩礁が存在するため、船が通る事ができない。また、時間によって向きを変える非常に早い海流が流れており、あちこちで巨大な渦潮が発生する。

西大陸概要

西大陸はいわゆるユーロッパ風の地域である。この地の大国は大陸の南半分の東岸に集中しており、北側一帯はほとんど未開の森林と万年雪に覆われた山脈からなる。

エスタリア王国

西大陸の南部、西岸に位置する南北に長細い国だ。商業国としての性格が強く、トュルク王国や中央大陸との交易が盛んだ。

ゴート王国

ゴート王国は典型的な封建国家で、各地に領土を持つ貴族とそれらの代表者である王によって治められている。ゴート王国は全体的に低い丘陵が続く平坦な地形である。大半の地域はまばらな森林か草原であり、全体的に農業に適した豊かな国である。国の南部には森林地帯が広がっている。この森林地帯は「黒森」と呼ばれ、ゴブリンやオーク等のヒューマノイドが徘徊する危険地帯となっている。

神聖帝国

神聖帝国は西大陸の東端のほぼ南半分を領する国である。帝国とついている通り、単一の国家ではなく、いくつかの国がまとまったもので、神聖帝国の皇帝は神聖帝国を構成する国の王や大貴族の中から、最も信仰心にすぐれ、最も力のある君主が教皇によって皇帝に任命されることになっている。しかし、実際には神聖帝国の約1/3を占めるミットラント王国の国王が皇帝を世襲している。神聖帝国は一見、宗教的権威をよりどころとした強力な国家の様に思えるが、その実、中小の国家の集合体であるため全体の統制が取れず国としては惰弱である。

教皇領

神聖帝国の南側の半島に位置し、世俗君主ではなく西方教会によっておさめられる教皇の直轄領である。実際に西方教会が直轄している領地はそれほどではないが、その周辺の都市などが土地を西方教会に献上したという名目で自治を行っている。そのため、都市国家が多く、商業が盛んな地域になっている。

アルビオン王国

ゴート王国の北に浮かぶやや大きな島にある国だ。この国は元々3つの氏族が分立していたが、現在ではそのうちの一氏族が他氏族に対して優勢で他の2氏族を臣従させている。アルビオン王国は対岸にあるゴート王国としばしば戦争を起こしており、ゴート王国との関係は良くない。むしろ、民族的に比較的近縁な関係にあるセルトリアの諸部族とつながりがある。

西方小国群

10余りの小国が存在する地域である。いずれも古くからの同一民族集団から国となったもので、基本的に農業や牧畜によって生活している。

ノルデン諸部族の地

北方蛮族の地とも呼ばれている地域で、いわゆるヴァイキングのイメージに近い。まとめてノルデン諸部族と呼ばれているが、実際にはいくつもの民族が存在し、ある程度国家に近いものをそれぞれに形成している。

その他地域

サントイル島

教皇領の南に浮かぶ島で、サントイルの一神教の神が人々に最初の掲示を与え、最初の預言者との間で最初の契約を結んだ地とされている。この島はサントイルの一神教に連なる全ての宗派においての聖地とされている。

バルカ山脈

西大陸の南端に位置する山脈で、西方小国群以西とノルデン諸部族の地、カラハム荒原を分けている。

カラハム荒原

西大陸の南西に広がる乾燥した原野である。雨が少なく、農業に向かない地で、遊牧生活を送る民族が少数暮らしている。

東大陸概要

東大陸は北東アジアから東南、南アジア、いくらか中央アジア的な雰囲気をもった地域である。人間の住む場所はほぼ大陸の西岸一帯であり、死界砂漠から東はどうなっているかは知られていない。

トボット

シャリュー山脈の北側、死界砂漠の西側に位置する乾燥地帯で、遊牧民の暮らす地である。この地の遊牧民は騎馬に長けた勇猛な戦士であり、過去に何度もシタン帝国(の地にあった過去の国家)を侵略し、時代によっては国家を打ち立てた事もある。

シタン帝国

シタン帝国は東大陸最大、ユーラ=ヨーラ全域でも最大の帝国である。文化的にも非常に高いレベルにあり、この世界で最も先進的な地域と言える。シタン帝国の政治は封建制ではなく、皇帝を中心とし、各地を中央から派遣した官吏によって支配するという中央集権的な体制をとっている。官吏は基本的に期限付きの派遣であり、各地に結びついて権力を蓄える事が無い様な体制をとっている。その上、軍は原則として皇帝に所属し、将軍が指揮する将兵は有事の際に皇帝から将兵を貸し与えられるものであるため、経済のみではなく軍事力も皇帝に力が集中する様になっている。しかし、現在のシタン帝国皇帝は暗君であり国の体制が傾きつつある。

アキツクニ(秋津国)

アキツクニは東大陸のシタン帝国と中央大陸のザンバル地方の間に位置する島国である。アキツクニは最近まで戦乱に明け暮れていたが、最近になって一つの勢力が全国をほぼ統一した。長い間戦が続いた割には様々な新技術が導入され、戦慣れしているため兵も精強である。アキツクニの政治体勢は独特だ。戦乱を勝ち抜き、国を統一した人物がアキツクニの政治を取り仕切っているのだが、形式上ミカドと呼ばれるこの国の最高権威者から委任されたという形式で国を治めている。ミカドはこの国土着の宗教の最高位の神官でもあり、霊的に何重にも守られた広大な森の中にある宮殿に住んでいると言われている。

シエンロウ

シエンロウは亜熱帯の森に覆われた地域で、ここにはいくつかの小国がある。中央大陸との交易においてはシパ山脈を南回りする際の中継地点となるため、海岸添いにはいくつかの大きな街が存在する。また、この地で産出する香木や香辛料は西大陸では非常に珍重され、高値で取引される重要な交易品となっている。

ガンドラ

東大陸の南端一帯をさす地域である。かつてはシタン帝国に匹敵する巨大な帝国があったと言われているが、現在は崩壊しており、その時代に端を発する諸候が分立して各地を治めている。ガンドラはアナンマの開祖である人物が生まれた地で、アナンマはガンドラからシエンロウを経由してシタン帝国、アキツクニへと広がった。しかし、現在のガンドラではアナンマは広がらず、それ以前からある民族宗教が信仰されている。

その他地域

死界砂漠

東大陸の北東部に広がる広大な砂漠地帯である。

シャリュー山脈

トボットとシタン帝国を分ける山脈である。

天山山脈

シタン帝国の南、ガンドラとシエンロウの北に位置する大山脈である。この山脈は北側と南側それぞれで東西に弧状の山脈を形成している。山脈を超えた所には桃源郷がある、神々の住む世界がある、などの伝説がある。

ヌスフ砂漠

ガンドラの中央一帯に広がる砂漠である。

南の亜大陸概要

南の亜大陸は中央大陸とは地続きだが、シュエブ山脈によって分断されており、陸路で行き来することができない。また、大半を岩山と砂漠によって占められている。およそのイメージは西アジアに相当する。トュルク王国は中央大陸と砂州で小腐海の南西で繋がっており南の亜大陸ではないが、宗教や文化的に南の亜大陸にちかいため、こちらで説明する。

トュルク王国

トュルク王国は中央大陸と砂州で繋がる大きな半島とその北にある半島よりもやや小さい島からなる。トュルク王国の首都「ラシナ・タル」は半島と北の島の最も狭くなっている場所の両岸に渡って存在し、交易商人が集まる巨大な商業都市となっている。

トュルク王国の南西部にある砂嵐と蜃気楼で覆われた半島には「たどり着けぬ都」、「無名都市」と呼ばれる遺跡があると言われている。

クルメラン帝国

クルメラン帝国は南の亜大陸の北岸に存在する国である。いくつかの部族国家の集合体だが中央集権的な性格が強く国家としては安定している。クルメラン帝国の領土は南の亜大陸の北岸一帯となっているが、実際に国家の権力は及ぶ範囲は帝国の東側から中央を流れる大河「キサ川」が海に注ぐ地域から東側一帯である。それより西側は遊牧民の暮らす地で帝国の官僚による支配を受けていない。これらの遊牧民はクルメラン帝国皇帝との契約により、この地で暮らす事を保証される代わりに、皇帝の直臣という位置づけになっている。

その他地域

シュエブ山脈

中央大陸と南の亜大陸を分けている広大な山岳地帯である。この山脈を超えた人間は無く、ここになにかあるのかは全く分かっていない。

虚無砂漠

ユーラ=ヨーラ最大の砂漠である。昼間の気温は50度を超え、夜には氷点下にもなるという過酷な場所で、人の近づく場所ではない。しかし、遊牧民の間では夜になると風に乗って亡者のうめき声が聞こえる、砂漠のどこかには砂に埋もれた古代の街がある、と伝えられている。

最果て高原

虚無砂漠を超えシュエブ山脈から連なる岩山を超えた先にあり、この地に至ったもの等いるはずもない。唯一分かっているのはキサ川の源流がここにあるということだけだ。この地に至ったものがいないのになぜ高原と呼ばれているかというと、陸地の南側を廻った事のある船乗り達が岩山しか見えなかったと語っているからである。

遺跡都市レガリア

レガリアは古代魔法文明の遺跡の上に建設された都市で「遺跡都市」と呼ばれている。レガリアは200年余り前に大規模な遺跡群に大規模な遺跡群が発見され、そこに冒険者が多数集まる様になったことから町が形成され、発掘品の売買を行う商人が集まり、その後貿易拠点として発達した都市である。そのため、レガリアは封建領主によって支配されていない都市国家であり、雑然とはしているが様々なところから人が集まってくる活気のある都市である。

一般情報

レガリアの一般情報は次の通りである。

人口

レガリアの定住人口は10万人程度だが、そのうちの1万人ほどは各地から出稼ぎに来たものや商人、冒険者などだ。大半は人間だが、ドワーフやノーム、ハーフリングはしばしば見かける。エルフですら稀に見かけることがある。おそらく、エルダー・リネージは人間の振りをして紛れ込んでいるだろう。

人口には数えられないがレガリアにはこれら以外の不穏な種族が主にレガリアの地下、放置された遺跡跡に住んでいる。最も多いのはラットフォークでかなりの数がいる。それ以外にも、ユアンティや頭脳喰らい(ブレイン・サッカー)が地下に潜んでいると言われている。

気候

海に面している事もあり基本的には温暖で適度な降雨量があり、冬はしばしば雪にみまわれる。地形の関係から朝から昼にかけては海から山、夕方から夜にかけては山から海に向けて風が吹く。春と秋には海からの霧に覆われる事が良くある。

政治体制

様々なギルドの有力者の合議制である。最も有力なのは商人ギルドだがこれにもいくつかの勢力があり、特定のギルドが突出した勢力を持っているという訳ではない。

宗教

様々な宗教の神殿や寺院が存在する。宗教は乱立しており、特定の宗教や宗派が支配的ではない。

周辺地域

レガリアの周辺には農村がいくつもありレガリアに食料を供給している。これらの農村はレガリアに支配されている訳ではないが、物資の供給等の面でレガリアに強く依存している。逆にレガリアは都市国家なので自力での食傷供給が困難なため農村と一定の協定を結び農作物を確保している。

その他特徴

レガリアは自由度の高い雑然とした都市でシティーアドベンチャーでやるようなことは大抵できる。街の外や街中ですらこれまで発見されていなかった古代の遺跡などが見つかっても不思議ではないためダンジョン物のシナリオをやるにも向いている。

地形

レガリアは地殻変動によって崩れた山の斜面に形成された町である。湾と山に挟まれたどちらかというと細長い形状をしている。レガリア湾は島によって囲まれており、これが防波堤として働くため天然の良港となっている。また背後は崖がちな山で、町への出入り口は両端にある街道のみと防衛にも優れた格好である。レガリアは大まかに下図に示す区域に分かれている。

レガリアの地区

港湾地区

港湾地区はレガリアの中心だ。大きな桟橋がありかなりの数の船を係留する事が可能である。陸地には大小の商店や倉庫が建ち並んでいる。基本的に港に近いほど大きな商店が、港から離れるほど小さな商店になる傾向がある。とはいえ、この地区にあるのは基本的に貿易商なので小さい店でも普通の個人商店よりもずいぶんと大きい。

レガリア港

石造りの桟橋がいくつもある大きな港でレガリアの玄関口となっている。ここに接岸する船舶は商船(とレガリアの軍艦)ばかりで、小さな漁船等は港の西にある浜などを利用している。

通商会館

港湾地区でもっとも目立つ建物は「通商会館」でレガリアに入港する船舶はここで入港と通商の許可を取る必要がある。また、この建物は海商ギルドの本部でもある。

旧市街

旧市街地域は最初にレガリアが町として成立し始めた頃から人が住み始めた地域だ。旧市街は3階建てや4階建ての小さな建物が密集し、港湾で働く人々の住居や船乗り等の宿、港湾に集まった商品を扱う店などが集まっている。元々、この地域には歓楽街もあったのだが歓楽街は東地区に移っている。

レガリア聖堂

旧市街と山の手の境目辺りにあるマーシアハ西方派の教会である。

寺院群

旧市街の南側にあるアナンマ各派の寺院が集まった寺院群である。シタン帝国やアキツクニ、ナンヨーの諸派の寺院がいくつも集まってできたものでかなり混沌とした雰囲気がある。

旧市街門

レガリアが今よりも小さかった時に作られた石造りの門で、東門、西門、南門の3つがある。現在は常時開放されているが扉は残されており、有事の際には城門として機能する。

警備兵詰め所

レガリアの警備を行っている兵団の詰め所でレガリア聖堂のそばにある。主に警察的な役割を果たしている兵団で傭兵ではなくレガリアの市民兵団からなる。

山の手

山の手は港湾地域の奥の小高くなった場所にある。ここには大商人やギルドの長といった大金持ちの住居が建ち並んでいる。大邸宅が建ち並ぶ住宅街で、警備もしっかりしている。この地域には商店等は存在しないが、港湾地域等から情報を店主に伝えたり、売買の指示を仰いだりするために人が行き来するため人通りは比較的多い。

西地区

西地区はレガリアが大きくなってからの住民の居住地域で、東地区よりも新しく拡張された市街地である。西地区はまだ土地に多少の余裕があるため建物の高さは比較的低めである。それでも3階建ての建物が普通で平屋建ての建物は存在しない。この地域にはレガリアで働く商人や職人などの一般市民が住んでいる。西地区には街道に通じる門がある。この門の近くには街道からやってくる旅人向けの宿屋などがあるがそれほどの規模ではない。旅人向けの宿等はどちらかというと歓楽街の近い東地区の方に集中している。

レガリア東方教会聖堂

西地区の旧市街西門の近くにあるマーシアハ東方派の聖堂である。この周辺には東方教会を信仰する住民があつまっている。

西教会

西地区の中央やや西側にあるマーシアハ西方派の教会である。西地区のマーシアハ西方派の信者はほとんどがこの教会に通っているが、旧市街に近いところに住む信者はレガリア聖堂に礼拝に向かうものもいる。

モスク

西地区の南よりにあるカーマラギのモスクである。数は多くないがカーマラギを信仰する住人はこの周辺に集まっている。また、トュルク王国やクルメラン帝国からの船乗りがレガリアにやって来た場合、ここに礼拝に来るため規模の割にはにぎわっている。

黄金の鹿亭

西地区の広場そばにある大きめの宿屋である。レガリアでは品の良い宿として知られており、レガリアに屋敷を持たない裕福な商人等は主にここを利用している。値段も少々高めのため冒険者等はあまり利用しない。

レガリア西大門

レガリア市街の西端にある城門である。城門にはここを守る様兵団の駐留所と陸商の事務所が併設されている。

東地区

東地区もレガリアがある程度大きくなってから発達した地域だがこちらの方が若干先に成立している。西地区が住民の居住地として発達したのに対し、東地区は冒険者向けの宿や飲食店、歓楽街として発達した地域であるため冒険者や傭兵等の怪しげな連中が集まるレガリアの中で最も雑然とし、治安の悪い地域である。

東教会

東地区にあるマーシアハの教会である。この教会は西方派でも東方派でもない(両方共に受け入れる)という方針を持っており、独特な雰囲気を持っている。

赤蛙亭

旧市街の東門からレガリア東大門の街道沿いにある宿屋である。冒険者や余り裕福ではない船乗り、行商人等が良く利用する宿屋で活気はあるが余り上品なところではない。

歓楽街

旧市街の東門を出たところから東教会、赤蛙亭あたりまでの地域で酒場や娼館などが立ち並んでいる。

貧民街

東教会の東側一帯の地区である。レガリアでもっとも貧しい人々が住む地域で雑然とした道と小汚い小屋がいくつもある。

レガリア東大門

レガリアの東端にある大門で、西大門と同じく傭兵団の詰め所と陸運ギルドの事務所がある。

魔術士街

レガリアはその成り立ちから魔術士の人口が多く、一説によると100人以上の魔術士がいると言われている。彼ら魔術士が集まって居住する地域が魔術士街だ。魔術士街はレガリアの奥まった地域にあり、魔術士の住居とともに魔法の道具や呪符、古文書等を扱う商店も数多く存在する。その怪しげな雰囲気から一般人はあまり立ち寄らない場所である。魔術士街には魔術士組合が所有する特徴的な塔がある。この塔は魔術士組合の会議等を開く会場であるとともに、レガリアに時刻を知られるための鐘楼でもある。

灯台島

灯台島は文字通り灯台のある大きな島である。この島は周囲を航行する船に指示を与えるためと、海上を警戒するために軍が駐留している。一般人はほとんどここに近づく事はない。

レガリア周辺の地形

レガリア湾

レガリアの前に広がる湾は元々陸地だったらしい。かつての地殻変動によって海中に沈んだのだろう。そのため、海中に沈んだ遺跡があると言われている。実際、湾内で漁をしている漁船等が時々古代の遺物を引き上げる事がある。

レガリアの周辺には広大な森が広がっている。この森にはまだ発掘されていない遺跡が残っている事が知られている。現在でもレガリアに集まってくる多くの冒険者の目的はこれらの遺跡でである。しかし、森には危険なモンスター等も多数生息しており、森に入ったまま行方不明になる冒険者は多い。

地下

レガリアは古代の遺跡の上に作られた町である。遺跡を形成していた石材等は町を作るための建材として流用されてしまったものも多いが、町の地下には遺跡を利用した地下通路や倉庫等が残されている。地下通路は地殻変動が起こった際に壊れており各所で寸断されている。そのため、地下を迷路の様につないでいるということにはなっていないのだが、使える場所では建物と建物をつなぐための通路としても利用されている。

この地下に残された遺跡は港湾地区、旧市街、魔術士街に多く存在する。西地区にはあまり存在しない。

組織

レガリアには次に示す有力な組織が存在する。レガリアは主にこれらのギルドの代表者の合議によって成り立つ都市国家なのでギルドの権力は相当のものだ。ここに示した以外にも規模の小さいギルドがいくつも存在する。

海商ギルド

レガリア最大の勢力を持つギルドで海運による交易を扱う商人のギルドである。彼らはレガリアを拠点とする船主であるとともに、レガリアの桟橋を管理しており、レガリアに入港する全ての船舶は海商ギルドの許可を得る必要がある。また彼らは海運によってもたらされる荷物の一切を取り仕切っている。

陸商ギルド

レガリアとその周辺にある農村との交易を扱う商人のギルドである。海商ギルドに比べると規模は小さいが都市国家であり人口を養うだけの農作物を自力では供給できないレガリアにおいては相当の力を持っている。また彼らは周辺の農村との交渉などの窓口にもなっている。

船大工ギルド

船舶の建造や修理をする職人のギルドで、レガリアの職人ギルドでは最大の規模を誇っている。

盗賊ギルド

彼らはレガリアの裏社会を取り仕切っている集団で、盗賊や物乞い、ヤクザものなどを配下におさめている。彼らは表立って盗賊ギルドを名乗っている訳ではなく、口入れ屋や港湾労働者の派遣業を扱う商人、娼館等の経営者としての表の顔を持っている。盗賊ギルドは幾つかの組織に分かれておりそれぞれが縄張りを持っている。

魔術士組合

魔術士組合はレガリアに住む魔術士の寄り合いといった組織で、他のギルドに比べ構成員も少なく団結力も強くない。しかし、彼らはレガリア最高の知識人でもあり、戦争になった場合重要な戦力になる等の理由からかなりの発言力を持っている。なお、魔術士組合は学校等を経営しておらず、魔法の技術は師弟間で伝承されている。

傭兵団

レガリアにはいくつかの傭兵団が存在する。彼らは平時の防衛任務と有事戦力を提供する代わりに、レガリアにおいて一定の権利を認められている。また、レガリアの交通の利便性を活用して周辺の紛争地域に出稼ぎに行っている傭兵団も多く存在する。

宗教組織

元々冒険者等が集まってきて成立したという成り立ちであるため、レガリアには様々な宗教・宗派の教会や寺院が存在する。はっきり言えば世界中のメジャーな宗教は一通り存在すると言っても過言ではない。その反面どの宗教も大きな勢力にはなっていない。

NPC

レガリアの著名人を何人か紹介する。

クマラ

天山山脈の麓辺り出身のアナンマの僧侶でまだ4〜50歳くらいだが相当の法術を修めた人物である。レガリアのアナンマ寺院群は様々な地域、宗派の寄り合い所帯であり全体で最高位の僧侶というのは居ないが、彼は他の宗派の僧からも尊敬される人物である。

李炎

シタン帝国出身の5〜60歳くらいの人物でアナンマ寺院群で下働きをしている。穏やかで気さくな人物であり、ヒマな時は良く近所の子供の相手をしている。しかし、彼は拳術の達人であり寺院に住む僧侶といえども彼を軽んじる人はいない。

安光、安正

レガリアの東地区に住むアキツクニ出身の兄弟で兄が安光で研ぎ師、弟が安正で鍛冶師である。元々は安光も鍛冶師だがレガリアには刀を仕上げられるほどの研ぎ師が居なかったため研ぎを担当する様になった。彼らはアキツクニの古い名工である安綱の末孫を名乗っている。

バーレリ

30歳半ばくらいの行商人で時々レガリアを離れ数ヶ月したら別の地域の骨董品や珍しいものを持ってレガリアに戻って来てはそれらを商っている。彼はレガリアに住む大半の人々にとっては無名の人物だが、裏世界では名の知れた密偵であり暗殺者である。

フーゴ・ドーレス

レガリアに住む老人の魔術士で世界レベルで見ても屈指の術者である。普段は自分の屋敷にこもり滅多に外に出てこない。魔術士達は彼に非常に敬意を払っており、そのことから一般の人々からも彼は非常に高レベルの魔術士だと思われている。

セット・シンベリ

40歳半ばの男性で東教会の司祭であり医師でもある。彼は聖堂騎士で若い頃に冒険者としてレガリアにやって来たのだが、いつの頃からか先代の司祭の世話になる様になり、その後を継いで現在の司祭になった。先代もそうだったのだが彼は近隣の病人やけが人を貧富に関わらず診てくれるので非常に尊敬されている。

リャン・イー

レガリアでもっとも大きな口入れ屋を営む人物だが、レガリアの盗賊や暗殺者の元締めの一人である。彼はもちろん善人ではないが、暗殺であればターゲットだけを殺害する、盗みであれば気づかれることなく密かに行う、というポリシーを持っている。そのため、計画性のない強盗や一般人の殺害を非常に嫌っている。もし、彼の配下がそのような仕事をしたならば公の捜査が犯人を捕まえる前に始末してしまう。

ロアナ・クレール

20歳後半の女性で、何人かの仲間と東地区の貧民街で貧しい人々の世話をしたり、孤児の面倒を見たりしている。彼女自身は比較的裕福な商人の娘だが、東教会の司祭、セット・シンベリを尊敬し、この様な慈善活動を行っている。

リリ

レガリア最高の美女と噂される20台前半の女性で、娼館「常春の園」で最高級の娼婦だ。彼女は歌や踊り、楽器の演奏にも秀で、教養も高いためレガリアの大商人の間でも非常に人気がある。しかし、いかに大金を積もうとも彼女が気に入らなければ相手にされない。

サイラス・オールストン

現在、海商ギルドの組合長を務める人物で、4隻の大型の商船と交易品を扱う商店を経営する大商人である。彼は優れた公正な人物でギルドの組合長としては他のギルドメンバーからも信頼されている。

ダガン

ドワーフの武具職人で旧市街の南門近くに工房を構えている。彼の工房は比較的大きく、彼の他に3人の職人と数人の弟子が彼の工房で働いている。この工房で作られる武具は品質が良く、レガリアの冒険者の間では人気がある。

ルギソン・バルゥリーフ

元冒険者で現在の赤蛙亭の主人である。とはいえ宿の経営は夫人のニーリアまかせで、彼は客の話し相手をしたり、一緒に酒を飲んだりしているばかり。しかし、彼は冒険者から聞いた様々な話を知っているため非常な情報通で、冒険者も彼の情報をあてに集まるためこれはこれで店の経営に役立っている。また、彼は住民からの依頼の仲介もしている。

アマヌール

アマヌールはクジャ地方にある城郭都市でレガリアの北、セレン海を挟んで悪名高き魔術士の街スレニヴの対岸にある。本来アマヌールはスレニヴに対する警戒と防御のために建設された城郭だったが、現在では逆にスレブヴとの交易拠点となってしまっている。しかし、それによって単なる城郭ではなく城郭都市として発展した。

アマヌールはスレニヴとの交易拠点の町として有名だが、中央大陸の東西の交通の要衝にあるため、それ以外の貿易商なども頻繁に立ち寄る。奴隷や麻薬の様な商品も公然と扱われるため評判の悪い街ではあるが、無秩序で混沌としたダ・カンとは異なり秩序立っており治安は安定している。

アマヌールが秩序立っていて安定しているのはこの街の警察組織が世界の平均に比べて優秀なためだ。アマヌールで起こった殺人や傷害、盗賊行為などはかなり高い割合で検挙される。もっとも、アマヌールとアマヌールが支配する周辺地域以外での犯罪行為に関しては全く関知せず、それどころか他地域の者が勝手にアマヌール領内で犯罪者を捕らえ、処罰することを認めない(それどころか、そのようなことをすればアマヌールで犯罪を犯したとみなされる)ため、他地域からの犯罪者が逃げ込んでくる場所になっている。

アマヌールでの犯罪者の扱いは独特で、原則としていかなる犯罪であっても相応の罰金を納めれば釈放される。たとえそれが大量殺人であったとしても(金額は大変なことになるが)。ただし、この罰金はアマヌールに収められるものであって被害者への補償などは一切ない。被害者の親族などが犯罪者を処罰したいなら罰金以上の額で犯罪者を買い取ることができる。買い取られた犯罪者は買い取ったものの所有物なので殺そうが拷問にかけようが何の問題もない。犯罪者もそれよりも高い値段で自分を買い取れば自由になれる。なお、罰金を支払うこともできず、買い取るものもいない犯罪者は競売にかけられる(買い手のつかなかった犯罪者はほとんどの場合処刑される)。その後の運命は買い取ったもの次第だ。このためアマヌールは「全てを金で解決できる街」と呼ばれている。

一般情報

アマヌールの一般情報は次の通りである。

人口

アマヌール市街の人口は25.000人程度である。それ以外に交易商人が(常時入れ替わっているが)5,000人ほどいる。人間が大半を占めエルフはもちろんドワーフやノームも滅多に見かけない。ハーフリングの旅人は時々この街を通過するが長期に滞在はしない。ヒューマノイドの中で比較的多いのはゴブリンで、アマヌールではゴブリンの奴隷商人は有名な存在である。エルダー・リネージやユアンティも他の地域に比べると多数いる。ラミアも人間としてだがかなり潜んでいるだろう。

アマヌールでは人間並みの理性を持っていて自制ができるのであれば、モンスターでもアマヌールにとって脅威とみなされない限り排除されるわけでは無い。

気候

北の方にある地域なのでやや寒冷だが、海に面しているため気候は安定している。

政治体制

ウスタシュ・アルディ伯が現在の領主で、専制に近い封建体制を取っている。上級の家臣はアマヌール周辺の集落を所領として与えられその領主となっている。その他に諮問会議と呼ばれる領主とその側近、この街に拠点を持つ有力商人で構成される議会がある。ここで政策が決まるわけではないが、出された意見や情報は重視される。

アマヌールの政治の最大の特徴は徹底した法治主義にある。いかなる立場にあるものでも法を犯せば犯罪者として裁かれる(領主や権力者に適用される法は一般人とは当然異なるが)。逆に法に従っている限り他の地域では問答無用で排除対象となるモンスターでさえ一定の権利が認められる。

アマヌールでは法ですら金で買うことができる。例えば、ある宗教団体が信者が教義を侵した時に私刑を加える権利を買いたいと申し出たとする。これは信者以外に手を出した場合はアマヌールの通常の法に従うことと、1年限りで毎年更新あたりを条件としておそらく認められる。しかし、領主の一人が自分の支配地の税率を自由に決める権利を買いたいと言ったとしてもこれはまず認められない(認められないというより公式には採算が合わない金額を要求される)。1つ目の例の場合、その権利を認めたことが教団外部に伝わってもアマヌールには影響がない。しかし、2つ目の例の場合は周辺の村にその情報が伝われば住人達が自分達の村もそうなるのではと考え、さらに発展してアマヌールに対する反乱の芽になる可能性があるからだ。もっとも状況によっては認められることもある。例えばアマヌールにとって緊急の支出が必要な場合に2つ目の例のような権利を認めた上で、周辺の村にその情報を流し、自分の領地内に収められなかったと理由をつけて領主を処刑し、取り立てた税の一部は領民に返却して不満を収め、かつアマヌールの財政も補填する程度のことは平気で行う。

宗教

アマヌールではどの宗教も認められているが総じて冷遇されていると言える。宗教活動においてアマヌールの政治体制の批判とみなされる言動があれば犯罪者として捕縛されるためだ。この街で倫理や正義を説けばまず体制の批判となるだろう。

宗教に認められているのは冠婚葬祭や季節ごとの儀式だけといった状態である。

周辺地域

このような体制なので当然だがアマヌールの周辺領地を除く地域とは緊張関係にある。スレニヴは互いにいつ裏切ってもおかしくないような相手である。エジロナ地方の諸侯やレガリアはスレニヴの存在を警戒している。アマヌールにしてもエジロナやレガリアを支配下に組み込みたいのだが戦争をした場合の損害を恐れている。それに戦争を始めてからスレニヴに背後から襲われる心配もある。

その他特徴

アマヌールはアライメントで表すなら典型的な「秩序にして悪」の都市だ。

アマヌールでは奸智に長けた悪役を登場させるのに非常に向いている。また、街の役人などが敵にならない場合でも街の法を悪用した敵を相手にするのであれば間接的にアマヌールの街自体が敵に回ることになる。PCが力押しでなんとかすることは難しくなるから、調査や交渉を駆使して立ち回るようなシナリオの舞台として非常に適している。

地形

アマヌールはセレン海の入り江の一つに築かれた城塞都市である。大きな川や山に囲まれているわけではないので周囲を石の城壁でぐるりと囲んでいる。それどころか、街の内側にも城壁が設けられ、一部が突破されてもさらにその内側で抵抗できるようになっている。城壁の街道とつながる門は両側に比べて引っ込んだ作りになっており、敵が門の周囲に集まった場合、城壁の両側から弓などで集中攻撃できるようになっている。もともとスレニヴに対しての防衛拠点だったため城壁は海側の方が堅牢な作りになっている。

アマヌールの街の特徴の一つが兵士の詰所がそこかしこにあることだ。詰所には常時10人からの兵士が詰めており、彼らは普段警察としての役割を果たしている。もっとも彼らの役割は市民の保護ではなく、監視(特に外部からやってきたものの監視)なのだが。

アマヌールの周辺にはアマヌールの支配下にある農村や街道の宿場が広がっている。それ以外の場所は大体平坦な草原か森林である。

アマヌールの地区

城郭

領主の館や側近の屋敷、騎士団や兵士の住居が集まる地域である。建設時に盛り土をして他の場所よりも高くなっている。門の近くには警察機能を担う兵士の見張り塔があり、港側の城壁部分には海側を警戒するための塔が立っている。通行許可がない限り市民や商人はこの地域には立ち入れない。

西港

アマヌールに2つある港のうち小さいほうである。こちらは商業用には解放されておらず、基本的には漁民が使っている。アマヌールの軍艦も基本的にはこちらの港を使用する。港の西の端にある海に突き出した部分には灯台を兼ねた見張り塔がある。

東港

アマヌールの港のうち大きいほうで、海運でアマヌールに寄港する商船が利用する。港の周辺には廻船問屋や商人の倉庫などが立ち並ぶが、港の西の端の区画はアマヌールの軍艦が利用する場所となっている。港の東の端にある突き出した部分には灯台を兼ねた見張り塔がある。

海商組合

海商ギルドの組合事務所だが、東港を使う商船の管理事務所としての役割が業務のほとんどである。アマヌールに寄港した船は必ずここで許可をもらわなければならない。また、入港時と出港時に人員と荷物の検査を受けさせられる。これは犯罪の取り締まりと徴税のため厳格に行われる。

市街地

外周の城壁と内側の城壁の間で南門とつながる大路の西側一体でアマヌールの市民が暮らす。全体の規模に比べて市街地は狭いのだが、アマヌールに定住する一般市民の数は人口に比べると少ないのでこの範囲で十分収まっている。この地域の治安は良好である。

陸商西組合

西部方面の陸商組合の事務所である。海商組合と同じく税関的な役割を果たしている。

歓楽街

南門をくぐってすぐの東側一角だ。主に、アマヌールに訪れた交易商人などが利用する。歓楽街としては比較的治安が良く、人死が出るような喧嘩などはめったにない。アマヌールが奴隷売買の盛んな場所であることを反映してか娼館が目立つ。

奴隷商人組合

歓楽街にありながら滅多に人の出入りが見られず、ひっそりとしていることで逆に目立つ存在となっている。海商、陸商組合事務所とは異なり税関的な業務はしていない(商品としての奴隷のチェックなどは海商、陸商組合で行う)。

商業地区

品物ごとの市場やそれを捌く問屋、アマヌールに拠点を持つ商人の店舗兼屋敷が立ち並ぶ場所である。アマヌールの住人ではない商人や旅人は市街地への立ち入りが制限されているのでアマヌールにいる間はこの地域で生活することになる。

紅玉亭

商業地区で一番大きな宿屋だが、人間やドワーフ、ハーフリングなどの一般的な人間型種族以外の客が出入りしているのを見かけるということで有名だ。実際に泊まってみると1階の酒場でもゴブリン程度は別としてそれほど変わった客を見かけることは無いのだが……。

陸商東、南組合

東方面と南方面の陸商組合の事務所でである。やはり税関的な役割を果たしている。

収容所

東門と東門から東港に行くための門の間のくびれた場所の北側は捕縛された犯罪者の一時収容所、および、競売所、処刑場になっている。だいたい毎日犯罪者が競売にかけられたり処刑されたりしている。

アマヌール周辺の地形

アマヌール周辺はそれほど変わったところはない。基本的に平地か緩やかな丘陵で、農村が広がっている。大きな農村にはアマヌールから派遣された領主とその兵士がいるが、小さな農村は領主から任命された村長が代表者となっており、ユーラ=ヨーラの一般的な農村と変わらない。

ユーラ=ヨーラの他の地域では見られない光景としては、ゴブリンの奴隷商人などが大手を振って街道を通過するのを見かけることがあることだ。これは農村の人々を恐怖させているが、ゴブリンなどのモンスターといえアマヌールの法に従っている限り一定の権利は保証されており、農村が勝手に冒険者などを雇ってこれらを排除することはできない。

組織

海商ギルド

海運による交易を扱う商人のギルドである。メンバーの多くはアマヌール外の商人からなるが組織のトップはアマヌールの役人である。また、事務方の大半もアマヌールの役人で構成される。アマヌールに荷揚げをするためには海商ギルドの許可が必要で、ギルドのメンバーでないと手数料が割高になる上不便な桟橋を利用させられる。

陸商ギルド

陸路での交易商人のギルドで西方面、東方面、南方面の3つの組織がある。アマヌールは陸路の重要地点なのでかなり大きな組織となっている。メンバーの構成は海商ギルドと似たようなものになっているが、アマヌールの商人の比率はやや高めだ。

奴隷商人組合

奴隷商人だけのギルドでこれほど組織立っているのはアマヌールにしかない。メンバーは海商ギルドか陸商ギルドにも所属している。この組織は奴隷が反乱などを起こさないよう厳格に管理するためアマヌールの領主の命令で組織されたものであり、トップはアマヌールの役人である。

アマヌール騎士団

アマヌールの騎士団は人口に比べると多く、騎士200人、兵士500人ほどが常備軍として駐留している。その他にも周辺領地を任された上級騎士とその兵員がアマヌールの周辺の領主となっているためかなりの兵力になる。

アマヌールの兵士の半分以上は奴隷である。奴隷だが使い捨ての兵隊ではなくきちんと訓練され、死亡せず功績を認められれば奴隷ではない兵士になることができる。そうなれば一定期間の後に退役することもできる。また、自由が制限されてはいるが扱いはまともなので兵士として買い上げられた奴隷からは不満は聞かれない。それどころか、功績によっては騎士身分まで登ることもあり、そのようなものはアマヌールに対して絶対の忠誠を誓うほどだ。

また、奴隷を兵士として買い上げる仕組みのため一般市民からの(非常時はともかく平時には)徴兵がない(志願はある)。この点において一般市民からのアマヌール伯への評判は悪くないものとなっている。

アマヌールの密偵組織

アマヌールは様々な地域から倫理観の低い商人や怪しげなものが集まる。領主はアマヌールに来る商人などを重視してはいるが全く信用していない。そのため、アマヌールでは領主直属の密偵組織があり、アマヌールに拠点を持つ商人はもちろん、ある程度の規模の商人に対しては密偵を送り込んでいる。商人でなくても警戒が必要と見れば街中で接触したり行動を監視したりする。

密偵は周辺の都市などにも送り込まれており、アマヌールの領主や役人は周辺の状況を把握している。

NPC

ウスタシュ・アルディ

30歳半ばの男性で現在のアマヌール伯、アマヌールの領主である。彼は酷薄な悪人だが領主としては有能で一般市民からの評判は悪くない。これまでのアマヌールの説明でも述べた通り、アマヌールは治安が良く、徴兵がないことが大きな理由だ。

ナウム・アクサーコフ

ウスタシュ・アルディの側近で密偵組織の長で先代のアマヌール伯の時代から仕えている。公にはウスタシュ・アルディの家令ということになっている。彼は元奴隷兵士だったが目端が効き、頭の回転が早いところを気に入られ密偵となり、現在の地位に登りつめた。彼はアマヌール伯に絶対の忠誠を誓っており、アマヌールのためであればどのようなことでもする。

ヴァーノン・アーロン

奴隷商人の一人であり、アマヌールには主に奴隷の買い付けにやってくる。彼は50歳くらいに見え髪の毛には白いものが混じっているが、そのくっきりとした黒い瞳と体格からエルダー・リネージではないかと疑われている。彼の正体や本拠地はナウム・アクサーコフやその配下の密偵にもわかっていない。

ダビド・カランサ

アマヌールではかなり高級な宿屋「紅玉亭」の主人である。しかし「紅玉亭」は一部の人間の間では「怪物宿」と呼ばれている。理由は「紅玉亭」には時々フードで顔を隠し人に姿を見られないようにした様子の者が宿泊する様子が目撃されており、これらはユアンティなどではないかと疑われているためだ。もっともそれを確かめたものはいないのだが。

ガネド・ザグ

ゴブリンの奴隷商人で奴隷市が立つ時に配下のゴブリンと共に奴隷を引き連れてやってくる。ガネドの奴隷は扱いが悪い(怪我をしている、栄養状態が悪い)ため安価でしか取引されないが、それをあてにする仲買人もおり商売として成り立っている。

ガネドの存在はこの街を象徴している。つまり、アマヌールではゴブリンのような敵対的なヒューマノイドであっても街の法に従うのであれば人間と同じように扱われるというわけだ。

ホク・セン

ホク・センはザンバル地方の北西、ラスファタ川の河口にある都市で、シンリョウ国の首都である。世界的に見てもかなり大きな町で、セレン海を利用したクジャからエジロナ地方と大陸の東方との貿易の拠点となっている。

ホク・センは300年ほど前に現在のシタン帝国にあった戦乱に敗れ中央大陸に逃れた貴族の一人が起こした町が始まりである。そのため、ホク・センの政治や統治システムはシタン帝国のものに酷似している。統治システムの最大の特徴は中央集権的な官僚システムが整備されており、周辺領地の長官はホク・センから派遣される役人であって軍事力をほとんど持たないという点でだ(私兵団を持つものもいるためまったく軍事力を持たないというわけではない)。当然だが周辺領土には外敵から人民を守り、警察的な役割を果たすための軍隊が派遣されているが、彼らは領地を治める長官の部下ではない。彼らは彼らで別途派遣されているのだ。また、派遣される役人や軍はその地域との結びつきが強くなりすぎないよう何年かごとに配置換えされる。また、役人は試験によって選抜されることになっており、権力が特定の家系に集中しないような工夫がなされている。しかし、高位の役人の子弟はやはり役人になりやすく、出世についても有利なため、この300年の間に役人や将校を輩出する家系はかなり固定化してしまっている。

ホク・センは強大な町であり、そこかしこで豪族たちが小競り合いをしているザンバル地方にあっては平和で、長い間大きな戦乱に巻き込まれたことがない。そのため、ホク・センには退廃的な空気が漂っている。一部の世襲化した上級の役人は下級の役人に仕事と責任を押し付けろくに仕事をしていないし、下級の役人も商人から賄賂を受け取って便宜を図るなどは一般的なことになっている。また、ホク・センには幾つかの犯罪者組織があり、隠然たる力を持っている。

一般情報

ホク・セン一般情報は次の通りである。

人口

ホク・センの人口は15万人程度で、城壁に囲まれた旧市街に4万人、周囲に広がった市街地に11万人ほどが暮らしている。その大半は人間だがドワーフやノームも居住している。ラットフォークは地下や廃屋にはびこっている。

気候

やや寒冷な気候で気温は夏でも30℃を超えることはあまりない。冬には降雪がある。年間を通して比較的雨量はあるのでやや湿潤である。

政治体制

趙粛という人物が現在の統治者である。政治体制は基本的にシタン帝国と同じであり、行政と軍事が基本的に分離している点が特徴だ。行政担当官である地方領主が軍事力を持たないように、逆に軍事力を持つ将軍が自由にできる経済力を持たないようにして中央に対する反乱を抑えている。

行政官と武官では徴税や法執行の権限のある行政官の方が力関係が上なのだが、ザンバル地方では近年アキツクニから流れてきた武将やその配下の武人達がこの地域で騒乱を招いており、ホク・センも支配下の周辺地域に軍隊を派遣しなければならないことが増えている。そのため、武官にも兵員補充や装備調達のためある裁量を拡大する必要が出てきており、武官の権力がやや拡大傾向にある。

宗教

最も勢力のある宗教はタオだがアマンナの寺院もかなりの数がある。マーシアハやカーマラギの寺院も少数ながらある。しかし、東大陸出身者の気質なのか現世利益を求める傾向が強いため清貧であることや禁欲的であることを求める宗教はあまり大きな勢力になっていない。

周辺地域

ラスタファ川と街道によってラサボラと、セレン海と海沿いの街道によってクジャ地方とつながっている。また、クウヴ山脈を越えて北方に抜ける街道の起点にもなっている。

ホク・センはシンリョウ国の首都であり、周辺の町や村はホク・センの支配下にある。勢力は東から南東方向に広がっているが、ミア・ンとラサボラという独立した大きな都市があるのでその境界あたりまでになる。現在、東側の地域はアキツクニから流れてきた武人達が暴れているので不安定な状況になっている。

その他特徴

ホク・センの特徴は犯罪組織の対立がはっきりと存在していることである。これらの抗争に巻き込まれるとか、犯罪組織に目をつけられたNPCを助けるというシナリオに向いた都市だ。旧市街と新市街がはっきりと分かれているのでこれらの住民間の対立のようなテーマも扱いやすいだろう。

また、旧市街は古いので適当な廃墟や地下を設定するのも容易であり街中でのダンジョン物もやりやすい。

地形

ホク・センの街はラスファタ川の河口付近の両岸に広がっている。旧市街はラスファタ川の北岸にあり堀と城壁に囲まれている。現在は旧市街の周囲に街が広がっているが、これらの市街地は城壁によって守られていない。せいぜい主要な街道の街の入り口部分に木製の柵と関所が設けられている程度である。新市街は旧市街の対岸に大きく広がっており、現在の商取引の中心地は南新市街の新商業地区に移りつつある(すでに取引量ではこちらが勝っている)。ラスファタ川の川幅が広すぎるため旧市街と南新市街の間には橋がない。この間の交通は渡し舟によって行われる。

また、ホク・セン市街の周辺には農村が広がっている。

ホク・センの地区

東西南北の大門

旧市街の周囲は城壁で囲まれており、東西南北に設けられた大門を通らないと旧市街には出入りできない。宮殿に最も近い東門が最も大きく、堅牢な作りになっている。東門には常時20人ほどの兵士が警備に当たっているが、この門は通常解放されていない。ついで堅牢なのはザンバル方面に当たる北門Dだ。南門は水運の荷物の積み下ろしなどに使われるため最も人の往来があり警備も緩やかである。

上級居住地

官僚や将校などホク・センの公的な職にあるものが居住している。宮殿に近い場所ほど高位のものが住んでおり、屋敷も大きくなる。宮殿の南側と東西の端の方には軍人の住まいが多く、宮殿の北側と周囲には役人が多く住んでいる。

一応、この地域の住居は役職にあるものの官邸で持ち家ではないのだが、代々官職についている家系の場合、自分の屋敷と化している。

旧市街

敷地の制限があるので3階建ての建物が多く、金持ちでもない限り1家族から数家族が1階分を住居として1つの建物を共有している。商店街では多くの場合、1階部分が店舗、2階から上が住居になっている。

古くからの住人にとっては旧市街に住んでいることが一つのステータスとなっており、新市街の住人からはお高く止まった古臭い連中という印象を持たれている。

寿福飯店のある北商業地区と南商業地区の間の区画は商店や宿、酒場などが立ち並ぶエリアになっている。

寿福飯店

主に旧市街で商売をする交易商人が利用する宿兼食堂で古くからある。ややお高めの宿のこともあり、客層が良く、商人達が接待に利用したりする。

貧民街

旧市街地の北西部の一角はスラムになっており、乞食や貧民、怪しげな者が住んでいる。また、ここにはアヘン窟がいくつもある。貧民街は年を追う毎に徐々に拡大してきている。

商業地区

旧市街の南北の大門の近くと南新市街の川沿いに商業地区がある。旧市街の北商業地区が最も小さく、ここでは主に市民の生活のための品々が扱われる。旧市街の南商業地区では主に交易品が扱われる。南新市街の商業地区は南新市街の市民の生活の品も交易品も扱われ、ホク・センでは現在最大の取引量を誇っている。

旧市街の城壁のすぐ南側と南新市街に2か所ある。いずれもホク・センが公的に管理しており、利用するためには役所への届け出と許可が必要だ。もちろん使用税が課せられる。

西新市街

旧市街の西門の外側に広がる市街地でである。西大門から北に向かう街道はあまり重要な交易ルートではないのであまり栄えているとは言えない。比較的貧しい人々が住んでおり、ザンバルの戦乱から逃げて住み着いた人々もかなりの割合を占める。

南新市街

港を中心に拡大してきた場所で現在ではホク・センで最も人口の多い場所になっている。城壁で囲まれた旧市街よりも移動しやすく、重要な交易経路であるクジャ地方への街道とも陸路だけでつながっているため活気がある。また、様々な地域からの人々が集まっており人種的にも多様だ。

猩々亭

港湾労働者などが集まる酒場であまり品の良い場所ではない。酒場がメインで宿屋としては本格的に営業していないのだが、飲みすぎて帰れなくなった客を寝かせる程度の部屋はいくつかあり宿泊も可能だ。もっとも、騒がしい場所なので宿としてはあまり快適ではない。

白象飯店

かなり大きめの宿屋で1階部分は食堂になっている。南新市街を利用する交易商人や旅人がよく利用しており活気がある。ラサボラからミア・ン方面とクジャ地方をつなぐ街道近くにあるため、ホク・センからこれらの場所に向かう交易商人のための人夫や護衛の仲介もしており冒険者もよく利用する。

至尊宝

公式には酒場ということになっているがメインは賭博場である。ほとんどの客は小遣いの範囲で遊びに来ていると言った感じの店でそれほど危ない場所ではない。しかし、麻薬の売人やより危ない賭場に勝ち客を勧誘しようとしている博徒なども出入りしており、それなりに怪しい場所ではある。

ホク・セン周辺の地形

一般的な都市と同じく、周辺には食料を供給するための農村などが広がっている。大きな街道の交わる場所でもあるので街道沿いには半日くらいの距離ごとに宿場町も整備されており、東方面や南方面は割と安全な交易ルートになっている。

組織

ホク・センは官僚組織が比較的発達しているので有力な組織となると役所関係になるが、それらについての詳細は説明しない。もう一つの特徴として、裏社会の勢力が強いことが挙げられる。

港湾役場

港湾役場は水運が主要産業であるホク・センにおいて非常な力を持っている。ホク・センの3つの港を全て管理しており、船の停泊や荷物の積み下ろしに関しては全て港湾役場の許可が要る。また、必要があれば兵士を動員することもできる。

商人・職人組合

商人や職人の組合で業種ごとにいくつもの組織がある。ホク・センは交易都市なので交易商人の組合が最も大きく力もあるのだが、旧市街の古くからある商人の立場が強く、南新市街の商人からは不満を抱かれている。なお、港湾はホク・センの役人の管理なので旧市街の商人が新市街の商人の港の利用を制限するようなことはできない。

六合会

楊芝という人物が取り仕切る非合法組織で旧市街地を主な縄張りにしている。この組織は露天商、口入屋、博徒、港湾労働者、スリ、娼館などを支配しているが、強盗や暗殺者などの凶悪な犯罪者を認めていない。彼らは裏社会を統制し、官憲の手の及ばないところでホク・センの治安を守っている部分があり、一般市民とも比較的うまくやっている。

乞食組合

これは正式な名称ではなく、ホク・センの人々が仮にそう呼んでいるだけだ。乞食や殺人も厭わないような泥棒、暗殺者、麻薬の売人などの組織がある。組織の首領や幹部は不明だが、貧民街を拠点としているのはわかっている。乞食組合と六合会は敵対しており、しばしば死人が出るような抗争になる。

黒龍会

董承を中心とするヤクザ組織で、南新市街を拠点としている。彼らの収入源は六合会と同じようなものだが、六合会が手を出さない(敵視している)麻薬も扱いる。また、手下のチンピラの教育が行き届いておらず、一般市民ともめ事を起こすこともままある。黒龍会も乞食組合を非常に警戒しているが、条件が折り合えば取引することもある。六合会は黒龍会をチンピラの集団とみなしており、対立している。

NPC

宋桓

ホク・センの行政の長官(筆頭大臣)の地位にある人物である。50代後半の人物で先代の時代からホク・センに仕えている。温厚な人格者なため官僚をうまくまとめているが、政策的には堅実、悪く言えば凡庸だ。しかしホク・センは比較的平和なためそれでうまくいっている。

史陵

行政のNo.2にある人物で、40歳くらいの男性である。行政手腕には見るものがあり、ホク・センが商業都市として現在も少しずつ発展しているのは彼の功績によるところが大きい。あまり清廉潔白な人物ではなく、野心的な人物のため彼を嫌うものもかなり存在する。

閻騰

50歳くらいの男性でホク・センの筆頭将軍である。ホク・センは長い間大きな戦争をしていないため、実際に軍隊を率いた時の能力は不明だが地方に派遣する部隊などをうまく調整し、ホク・センの領土を維持している。戦士としては一般人やチンピラよりは強いだが個人としての戦闘能力はそれほど高くない。

楊芝

六合会の親分で60歳くらいの人物である。古風な俠者で一般市民に危害を加えたり、貧しい者を食い物にしたりすることを嫌っている。配下の者にもそれは徹底しており、掟を破った者には徹底的な制裁を加える。彼自身は市街地に屋敷を構え、表向きには港湾労働者などを差配する口入屋の大旦那として暮らしている。

董承

30代前半の男性で黒龍会のトップである。ここ10年くらいの間に西新市街のやくざ者の中でのし上がり、黒龍会を西新市街最大の組織にした。一般市民との揉め事はなるべく避けるべきだとは思っているが、利益が勝るならば多少のことは構わないという態度のため、配下のやくざ者、特にチンピラが揉め事を起こすこともしばしばだ。

ボルハ・メネセス

ほとんど名前を知られていない乞食組合の首領である。いくつもの偽名を持っており、配下の幹部ですら本名を知るものはほとんどいない。また、顔を知られないよう常に変装しているため本当の顔を知るものはいないだろう。彼はダ・カンの乞食王、ムバレスの幹部で、ホク・センの非合法組織をダ・カンの支配下に置くため暗躍している。

唐津則英

彼はホク・センの住人ではなく、300人ほどの配下を連れて最近アキツクニからザンバル渡ってきた武将である。彼はあっという間に幾つかの村を支配下に収めた後、配下を2〜3の部隊に分け傭兵団として各地の紛争に投入している。戦慣れした専業戦士だけで構成される彼の傭兵団はザンバルにおいて最強の軍団の一つと考えられている。ホク・センは彼の軍団が勢力を拡大してホク・センに矛先を向けることを警戒し恐れている。

ヘカロケア

ヘカロケアは大中海沿岸の都市では最も新しい街である。街の始まりは約100年前に神聖帝国からの追放貴族であるフォルテン=ベルトラムがこの地に町を築いた事にはじまる。ヘカロケアは主に西の海岸近くに集中している追放貴族の抗争地帯から距離をおいた事である程度の安定を得、交易路として発達した事によって大きな町へと発展した。

しかし、エグザイルに近く周辺が不安定な土地柄のため、大中海の他の都市に比べると危険で不穏な空気の漂う場所である事に違いはない。しかし、西大陸との重要な交易路状にあるため西大陸を目指す、反対に西大陸から東を目指す者達にとっては通らざるを得ない重要な場所でもある。

一般情報

ヘカロケアの一般情報は次の通りである。

人口

ヘカロケア市街の人口は2万人程度である。ヘカロケアは西大陸系の人々が7割ほどを占める。特に昔からの住人は西大陸出身者で占められている。定住者の大半は人間で異種族はあまりみかけないが、交通の要所なので旅人などとして他の人種が見られるのは普通だ。

ゴブリンをはじめとする敵対的なヒューマノイドなどは即座に排除対処となるので市街地で見かけることはほぼないが、都市であればどこにでも住み着いていると思われるラットフォークなどは潜んでいるものと思われる。

気候

温暖で冬でも雪が降ったり、水が凍るような気温にはならない。逆に夏はかなり暑くなり気温35℃を超えることもある。ただし割と乾燥しているので気温の割には過ごしやすいと言える。年間を通して雨量は比較的少なめである。

政治体制

ヘカロケア公ライムント=ベルトラムを頂点とした封建制だが、支配下に組み込んだ他の追放貴族の規模がベルトラム家に比べてかなり小さいため、へカロケア公の権力はかなり強い。しかし、へカロケアから離れた地域になると後から公国に従った元追放貴族などの領地となり、これらの地域では独自の統治を行なっている。

都市へカロケアの政治の中心となっているのはライムント自身とベルトラム家がエグザイルに追放される前からの家臣の子孫である。ライムント自身も街の経営には力を注いでいる。へカロケア公国の政治はライムントを中心とし、地方の封建領主からなる議会によって方針が決定され、それぞれの所領においてはその方針に従って領主の裁量の範囲内で運営がなされている。

宗教

マーシアハ西方派が最大の宗教勢力だが、それ以外の宗教が禁止されているわけではない。

ヘカロケア公ライムント自身もマーシアハ西方派の信徒ではあるがあまり熱心ではない。先祖代々が信徒であることと、統治者としての権威づけのために無駄ではない、程度に考えている。しかし、領主が信心深くないからと言って領民も信心深くないわけではなく、熱心な信徒も存在する。

周辺地域

ヘカロケアは街道によってエグザイル、レガリア、リ・イユとつながっているが、周辺地域は比較的安全なクジャ・エジロナ地方に向かって開拓されている。ヘカロケア市街の城壁近くには古くからの家臣に与えた領地があり、それらが村として点在している。更に離れると、これまでに支配下に組み込んだ追放貴族がそれぞれの領地に暮らしている。

西に進むとエグザイルに至るが、この辺りはへカロケアと同様に西地陸の追放貴族の領土が点在しており、それらを結ぶように街道が繋がっている。また、へカロケアは悪名高い盗賊の都「ダ・カン」が近いため西方を非常に警戒している。

北東方面はクジャ、エジロナ地方に繋がる街道があるがクヒヴィナの森のそばを通るためあまり利用されていない。この方面には海路による交通が主要になっている。

その他特徴

へカロケアは封建制の都市国家なのでいわゆるファンタジー的な都市を使いたいならば最も適している。大きな特徴としては周辺地域が不安定なことで、街自体を舞台とするより適当な村や小さな街を設定していくつかの冒険を行うための拠点として使うのに向いている。

都市自体の特徴は外部からの怪しげな人物や品物の出入りが多いことで、このような人物や品物と絡むシナリオは扱いやすいはずだ。

地形

ヘカロケアは大中海の入り江であるラノア湾の沿岸に築かれた町である。海岸近くにあり、全体的に平坦な地形であるため不安定な地域にある割に防御には適していない。そのため、石を積み上げた強固な壁で町の周囲を囲み、更に堀を巡らせる事で防御を固めている。

ヘカロケア市街の周辺は市街を囲む様に農村が広がっている。これらの農村はへカロケア公から領地を与えられた騎士達が領主として治めている。

ヘカロケアの地区

ヘカロケア城

ほぼ湾の中央に存在し、周囲を塀と堀で囲まれている。ここにはベルトラム家の暮らす屋敷だけではなく、戦士団が暮らすための建物や食料を備蓄しておくための倉庫などがあり、非常に戦闘的な造りになっている。また、ヘカロケア城にはこの街で最も高い櫓があり、昼夜周辺を監視している。

旧市街

旧市街はヘカロケアに街が当初に建設された当初に建設された市街地である。現在では更に外側に新市街が作られているが、以前の城壁はそのままに残されている。これはエグザイル方面と戦争となり、攻め込まれた場合の備えとしてわざわざ残されたためだ。旧市街は古くからの住人が多いため、ベルトラム家の出身地である西大陸をルーツとする人々が大半を占める。

旧港

旧市街にある港のため「旧港」と呼ばれているが現在でも使われ続けている。新港にくらべやや規模が小さく、周辺の道が狭いなどの理由から、ヘカロケアを経由するだけの荷物は主に新港に着き、旧港はヘカロケアで消費する物品や、ここで商人に売りさばかれる品が扱われる。

へカロケア聖堂

ヘカロケアは西大陸に起原を持つ人々の町であるため、最も信仰されているのはマーシアハであり、最大の宗教施設はマーシアハ教会である。

新市街

ヘカロケアが西大陸方面の重要な中継地となった30〜40年前くらいに建設された町である。新市街も城壁で囲まれ、その外側には堀がめぐらされている。城門は北、西、南にあり西の門が最大の規模を誇る。城門には常に10人からの兵士がつめており、かなり威圧的な雰囲気が漂っている。また、城門では通行税の徴収が行われる。通行の規模などによって金額は変わるがヘカロケアの通行税はやや高額である。

新港

ヘカロケア城の南側の海岸線に建設されたかなり規模の大きな港である。ここで取り扱われるのはエグザイルを経由して西大陸やトュルク王国、クルメラン帝国にむかうか、これらの地域から東の大陸を目指すような大規模な荷物が主である。

商業地区

ヘカロケアには大きく3箇所の商業地区がある。最も大きなものが新港近くの商業地区で、大中海を経由して東に、または、東から西に向かう商人が集まる。様々な地域から人が集まるため最も国際色豊かな地域になっている。次に大きいのは西門近くの商業地域で、ここには西大陸からの品も集まるが、周辺の村々から集められた農産物もここにある市でさばかれる。最も小さいのは旧港近くの市場だが、ヘカロケア市街で消費される物品の多くがこの市でさばかれるため人出の多さという点では他に引けをとらない。

歓楽街

古くは旧市街にあったが新市街が建設されると新市街に移され現在に至る。ここにある店舗は基本的に貿易商人やその護衛といった人々を相手としている。あまり治安の良い場所ではなく、時々死人が出たりもする。しかし、よほどの暴動が起こったり大物が被害にあったりした場合を除いて、ヘカロケアの衛兵などが動員されることは無く、適当に始末される。ヘカロケアの歓楽街にはかなりの数の娼館がある。多くは、ダ・カンで若い女の奴隷を買い付けた奴隷商人等が始めたものだが、一部はダ・カンの盗賊の表向きの商売になっている。

イルカ亭

へカロケアで最も大きな宿である。セハヌ・ヴォミスク方面とクジャ方面の貿易商が主な利用者だが、エグザイル方面へ行く、もしくはエグザイル方面からやってきた者も船を使う場合は新港に行くことになるのでこの店を使う者は多い。

パバヌの娼館

へカロケアで最も大きな娼館である。ここの主人は「人買いのパバヌ」と呼ばれている。一般的には娼館の経営者、つまり女衒であることからこの二つ名が付いていると思われているが、奴隷売買に関わっているという噂もある。

へカロケア周辺の地形

へカロケアの周辺には農村が広がっている。これらの農村の領主はへカロケア公に従う騎士たちであり、農村は彼らの所領である。一般的にへカロケアに近い場所ほど規模の小さな領主が任命され、遠くなるほど規模が大きくなる。これは周辺地域ほど外部からの侵略に晒されやすく、へカロケアに救援を求めても間に合わなくなる可能性が高いため領主の裁量の幅を大きくしているためだ。

また街道沿いには宿場町が整備されているが、主要な宿場町はへカロケア公の直轄地であり、彼が任命した役人が行政官として期限付きで派遣されている。

組織

ヘカロケアで有力な組織には次の様なものがある。下記以外にもヘカロケアにも商人や職人のギルドはあり、一定の権力や特権を持っているがそれほど特別なものではない。

ヘカロケア軍

ヘカロケアに駐留する軍は100人ほどの騎士と200人くらいの兵士である。もっとも、全軍がヘカロケア市街にいるわけではなく、兵力の全体としては周辺地域の領主を兼ねる騎士が約300人、ヘカロケア住民や農村などから徴兵された兵士が1000人ほど、その他若干の傭兵を常時雇い入れている、というのが平時の全軍の規模である。有事の際には更に徴兵する、傭兵を増員するなどして兵力の増強が可能だ。街の規模に対してかなりの軍事力だが、これはエグザイル方面への防衛を強く意識したものである。

盗賊ギルド

ヘカロケアの盗賊ギルドは2代目の領主の命で設立されたもので、正確にはヘカロケアの諜報組織といったほうが適当だろう。ダ・カンから最も近い都市であるヘカロケアにはかの地の盗賊が送り込まれ、様々な手段でこの地の情報や利益を吸い取ろうとする。それに対し領内に入り込んだダ・カンの盗賊を監視・排除するために作られた組織である。盗賊ギルドの目的はダ・カンの盗賊を自由に行動させず、監視下に置くことである。ダ・カンの暗殺者との殺し合いになるのを避けるため暗殺などの手段はなるべく使わず、排除の必要がある場合は冒険者などにやらせるか、ヘカロケアの衛兵など公的な機関を動かすことがほとんどである。

ダ・カンの盗賊

ヘカロケアにはダ・カンからの盗賊、乞食、浮浪者といった望まれざる者達が相当数流れ込んで来ている。一番の理由はヘカロケアがダ・カンから最も近い大きな街であり、他の都市等に流れて行くための起点になっているからだが、ヘカロケアの領主や市民はもちろんの事、交易商人達もこのことには頭を悩ませている。彼らはとまった組織を形成している訳ではないが、盗賊宿のような隠れ家がいくつか存在する。

歓楽街の娼館ギルド

ヘカロケアの歓楽街にはかなりの数の娼館が存在する。彼らはギルドを作り、自分達の商売と権利を護っている。娼館は身元の怪しげな者、特にダ・カンからの盗賊らの隠れ家となる事が多いため、領主らは娼館ギルドの勢力を削ぎたいと考えているがうまくいってはいない。

NPC

ライムント=ベルトラム

現在のヘカロケア領主で、40代半ばの男性である。彼は酷薄な部分があり善良な人物ではないが、領主としてはまずまず有能で周辺に不安定な要因の多いヘカロケアをまず良好に統治している。

ベーア=アメルハウザー

ライムント=ベルトラムの侍従の一人である50歳くらいの人物で、その正体は盗賊ギルドの長である。つまり、領主と二人しかいないような状況でも不自然ではなく、それほど目立たないということで侍従というのは表向き適当なポジションというわけだ。

ゲヨドーラ

ダ・カンから流れてきた乞食や浮浪者を束ねる地位にあるといわれている人物だが、(裏社会などでは)有名な割りにはその姿を見たというものがほとんどいない。たまに、彼が暗殺されたなどという噂が流れるが、しばらくすると彼の名前を耳にするようになる。

人買いのパバヌ

ヘカロケアで最も大きな娼館の主で、娼館ギルドの有力者である。彼自身はダ・カンの者ではないが、ダ・カンの有力者に太いパイプを持っている。本業は奴隷商人で、ダ・カンの奴隷市に送る商品の荷揚げ場所としてヘカロケアを拠点としている。

盗賊の都 ダ・カン

ユーラ=ヨーラで最も悪名高い街であるダ・カンは中央大陸だけではなく、西大陸や東大陸にまでその名を知られている。ダ・カンの最も有名な別名である「盗賊の都」はこの街の主な住人が盗賊、ならず者、逃げて来た犯罪者、浮浪者、乞食、などであることによる。ダ・カンは極めて無秩序な街で少しでももまともな人間ならばここに住みたいとは思わない。しかし、ダ・カンを訪れるものは少なくはない。奴隷や盗品はほとんどの地域では公然と扱う事ができないが、ここではごく一般的に取引されておりこれらを売買する商人が定期的に開かれる市を目当てに集まってくる。また、暗殺や盗みの依頼のためにこの地を訪れる者もいる。そしてダ・カンで何よりも重要な商品は情報である。ここから各地に散らばり、また戻ってくる乞食や浮浪者、商人は各地の様々な情報をこの地に集める。商売敵や政敵、敵対する領主の弱みを握り、相手を失脚させるための情報を求め、各地の有力者からの使いもここを訪れるのだ。

一般情報

ダ・カンの一般情報は次の通りである。

人口

ダ・カンの人口ははっきりしないが1万人程度と見られる。ダ・カンの住人は西大陸系の人々がやや多い様だが、様々な地域の出身者が住んでいる。それどころか、ゴブリンやオークなどの姿は珍しいものではなく、ラットフォークに至ってはこの街では見かけて当たり前となっている。ユアンティも稀にだが見かけることがある。悪疫に侵された人間でもぱっと見人間と区別できないなら入り込んでいることは確実だ。おそらく知性あるアンデッドモンスター(ラルヴァやグール)もこの街に住み着いている。

気候

内陸にあるため寒暖の差が大きい土地である。季節は春と秋が短く、夏の雨期と冬の乾期に分かれる。

政治体制

ほぼ無法地帯に近いダ・カンには政治体制と呼べる様なものはない。しかし、完全なる無秩序という訳ではなく、何人かの有力者がこの街を取り仕切っている。しかし共和制の都市の様な議会がある訳ではなく、有力者が個別に別の有力者と協定を結ぶなどしているにすぎない。

宗教

この街では宗教など意味を持たない。デーモン信仰などの組織があっても何ら不思議ではない。

周辺地域

ダ・カンはエグザイルの南方に位置し、エグザイルの一部に含まれる。そのため北側にはエグザイルの追放領主の領土がある。南に向かうと小腐海とその周辺の森に至る。

その他特徴

ダ・カンは混沌にして悪の街で街全体が無法地帯だ。そこらで殺人事件が起こったり強盗が発生する。他の街ではPCがNPCを殺害するなどは問題になるがここではそのNPCの仲間や所属組織を敵に回す程度の問題でしかない。また、街中に廃墟はいくらでも用意できるので街中にダンジョンを用意するのも容易だ。許容されるモンスターも自由度が高く、人型の知性あるモンスターであれば街中に堂々と出現してもおかしくない。つまり、NPCからみてもPCからみてもかなり無理な状況のシナリオでも成立させることができる。

ダ・カンは他の街の様にしばらく冒険の拠点にするには適していないので、この街を舞台にするためにはPCがわざわざダ・カンに向かう理由を用意するか、特殊な設定(例えばPCはどこかで犯罪を犯したためしばらくここに身を潜めている、など)を用意する必要があるだろう。

地形

ダ・カンはエグザイル南方の小高い丘にある街である。周囲は荒れ地や林に囲まれており、普通の都市の様に周囲を農村が囲むという風景はない。ダ・カンは元々、エグザイルの追放領主の作った街に多数の盗賊や浮浪者、乞食等が住み着く様になり、元々の住民を追い出して現在の姿になったため、大通りなどの基本的な構造はその当時の姿をある程度とどめている。しかし、その後住み着いた住人がそれまでの建物を破壊し、適当に小屋を建てていったため小路が無秩序に張り巡らされまるで迷路の様になっている。

ダ・カンの地区

ダ・カンはその大半が崩れかけた汚らしい建物の立ち並ぶ貧民街である。

安全地帯

緑の線で囲まれた範囲で、商業地区と宿屋・歓楽街を含む。

門で通行税を支払って通行許可を得たものはこの範囲であれば翌日の午前中まで商人ギルドのメンバーが得ているのと同じだけの安全を確保できる。つまり、いきなり強盗に襲われたり、殺されたりする確率がグッと下がる。

門とあるがそんなに立派なものでは無くもともとあった門の跡に適当な掘っ建て小屋を立てた程度のものだ。もちろん防衛の役には立たないがここで商人ギルドに属する門番が通行証を売っている。通行証は1人、馬一頭、荷車1台につき金貨1枚で、購入すると色付きの紐を渡され左の二の腕に巻いておく様に言われる。ちなみに通行証の購入は義務ではないので買わないこともできる(安全地帯の説明で書いた通り、購入しなかった場合はろくな目に合わないことが保証される)。

宿屋・歓楽街

ダ・カンの南東にある地区は外部から集まる商人等のための宿屋や娼館、賭場などが立ち並ぶ場所になっている。ダ・カンでは最もきれいな場所で治安もダ・カンとしては良好であり他の都市であれば治安の悪い場所程度のレベルにある。

ヴィーコ盗賊館

ダ・カンの有力な盗賊の頭の一人である、ヴィーコ・フランチーシの経営する宿屋である。「ヴィーコ盗賊館」というのは通称で宿の屋号は「大鴉亭」という。ここに泊まる客はダ・カンに戻って来ている各地に散らばった彼の配下の盗賊達で、商人やここを訪れた冒険者がここに泊まることはない。盗賊達は稼ぎの一部をヴィーコに献上し、ここで情報を交換して再び各地に散って行く。

商業地区

商業地区だがレガリアやヘカロケアの港湾地区にあるような大きな取引を行う場所ではなく、大半は小売りの商店が立ち並ぶ場所である。各地から集まって来た盗品等を扱う店も多数存在するが、一般的な道具類や衣類、食料品等を扱う店もある(いかにダ・カンとはいえこれらの品は必要だ)。

この地区は宿屋・歓楽街と並んで安全な場所である。商人ギルドに雇われた傭兵が一応警察的なことをしており揉め事にも対応する。ただし、彼らが守るのは商人ギルドに会費を納めている、一時の商売のために権利金を支払った者だけでそれ以外の者は保護対象ではない。

商人ギルド会館

商業地区の有力な商人からなる商人ギルドの会館で、寄り合いなどがある時に使われる石造りの頑丈な建物だ。会館の1階には普段から武器を持った男達が十数人詰めており、商業地区で問題が起こった場合は彼らが対応する(ちょっとした盗みやスリ、喧嘩程度は日常茶飯事なのでその程度は問題のうちには入らない)。

イレーヌ奴隷商会

ダ・カンに本拠を置くイレーヌ・ブロの店で、扱う商品は奴隷である。彼女が扱うのは主に女性と子供で、建物の2/3は鉄格子のついた小さな窓と内側に鍵の無い頑丈な扉のついた部屋になっている。この建物からは常に奴隷として集められた人々のすすり泣く声が聞こえる。

広場周辺
広場

定期的に市が開かれる場所で大きな取引はここで行われる。特に、奴隷商人が商品を積み込む荷車等を持ち込む場所が必要になるため大体がここで取引される。

ムバレスの乞食館

乞食の王、6本指のムバレスの館である。石造りの立派な建物だが、常に物乞いや乞食が出入りしており、非常に薄汚い感じがする。ムバレスは配下の物乞いや乞食から上前と情報を集め、再び彼らに指示を出して各地に送り出している。

教会跡

マーシアハの教会跡である。建物は残っているが略奪に遭い内部は破壊されてひどい有様となっている。ときどき、処刑されたものが見せしめのためにここで吊るされる。

城跡

かつてこの地を治めていた追放貴族の城跡だ。すでに略奪され尽くされ、石材等は他の建物のために奪われており、崩れかけている。

死体捨て場

ダ・カンにおいても最も冒涜的な場所と言えばここになる。元々は教会と墓地のあった場所だが、現在、教会は死体屋ソウ・ティンの“薬”工場、墓地はダ・カンで死んだものの死体を捨てる場所となっている。ソウ・ティンはダ・カンの市街地から死体を集め、死体から肝や心臓を取り出して“薬”を作っている。この“薬”は各地で強壮剤、不老不死の薬として人気があり、世界中に輸出されている。

ダ・カン周辺の地形

ダ・カンの周囲は基本的に荒涼とした荒地が広がっている。一般的な都市の周辺に見られる様な農村地帯が広がる風景はない。しかし、周辺に町や村がないわけではない。ダ・カンに繋がる街道があり、その沿線には宿場町があるし、独立した半農半戦士の小集団からなる農村もある。基本的にダ・カン周辺で安全に通行できる様な場所はない。野盗は珍しくないし、オークなどの敵対的な人間形モンスターや危険な動物も普通に徘徊している。

それでも比較するとやや安全なのは北のエグザイル方面だ。南側はしばらく行くと小腐海に繋がる森であり、この辺りは人間の集落は存在せず危険なモンスターのうろつく魔境となっている。

組織

ダ・カンの組織は基本的に頭目とその配下から構成されており、いわゆる同業者組合であるギルドとは異なる。ダ・カンには街全体を統治する組織はなく、有力な組合がそれぞれの縄張りを主張し、その縄張りを管理している。当然ながらダ・カンの法律というものは無く、複数の組織間で有効なのは組織間の協定だけだ。そして、その協定で一定の権利を保護されるのは組織のメンバーだけである。

盗賊ギルド

ダ・カンには少なくとも4つの組織が存在する。その中で最も有力なのがヴィーコ・フランチーシの一派だ。ダ・カンの盗賊ギルドが特殊なのはその専門性にある。一般的な街の盗賊ギルドは盗賊だけではなく、乞食や暗殺者等のいわゆる日陰者をまとめているが、ダ・カンの盗賊ギルドは主に盗みだけを働く盗賊をまとめている。

乞食ギルド

乞食や浮浪者を束ねる組織で、6本指のムバレスがその首領である。乞食ギルドには乞食等の他に“始末人”とか“処刑執行人”と呼ばれるものがいる。彼らはムバレスに直属の暗殺者で、彼を裏切ったと判断された乞食等を殺害したり、痛めつけたりするのが仕事である。なお、ムバレスは一般的な暗殺の仕事には手を出さない。これは暗殺者ギルドとの協定による。

アクス傭兵団

グイド・アクスが首領の傭兵団だが、その実体は暗殺者ギルドである。専門の暗殺者はダ・カンでも30〜40人くらいしかおらず大半の暗殺者は彼の配下にある。アクス傭兵団は暗殺者以外にも野伏や盗賊も抱えており、全体では100人あまりの規模になる。アクス傭兵団は全員で戦場に加わる事は無く、依頼に応じて数人から10人くらいを依頼者に派遣している。

商人ギルド

ダ・カンの商業地区と宿屋・歓楽街の住人が組織したギルドである。この組織の目的はそれぞれの地区における最低限の秩序と治安の維持だ。そのため、ヴィーコ・フランチーシとグイド・アクスを役員にし、定期的に金銭を渡す代わりに彼らの保護を得ている。これらの地域で目に余る無法を働いた場合、アクス傭兵団から制裁が加えられる事になる。また、ヴィーコの圧力によりギルドに名を連ねる商店等は盗賊から保護されている。一時的にダ・カンで商売をする商人や買い付けに来た者も相応の金額をギルドに収めれば期間分の保護を得られる。逆に、ギルドの保護を得られない場合、独自に警護態勢を整えていない限り無事に商売をすることは不可能である。

NPC

乞食の王、6本指のムバレス

ダ・カンで最も有力な人物であるムバレスは左手の親指が2本あるため「6本指」、ダ・カンの乞食や浮浪者を支配している事から「乞食の王」と呼ばれている。各地に送られた彼の支配下の乞食たちからの上がりも相当のものだが、彼の元に集められる情報は凄まじい量になる。その価値は凄まじい力を持ち、各地の有力者ですら情報を買うために使いを送って来る。

イレーヌ・ブロ

イレーヌ奴隷商会の主人で30台前半の美女だ。彼女の店では主に女性と子供の奴隷を扱っており、ここで扱われる奴隷は容姿が美しい事と、しつけが良くなされている事で高い評価を得ている。彼女は主に高級な娼館や各地(中央大陸以外も含む)の有力者相手に商売をしている。

ヴィーコ・フランチーシ

ヴィーコは50歳を超えた初老の男性で、ダ・カンで最も有力な盗賊ギルドの長である。配下の盗賊は100人を超え、配下の盗賊からの上がりは莫大な額になる。彼は親分肌の義理にあつい人間で配下の盗賊達からは慕われている。

死体屋、ソウ・ティン

40〜50歳くらいの痩せた小柄な東大陸出身の男だ。彼はダ・カンの町中から死体を集め、その内臓、特に心臓や肝から秘伝の方法によって“薬”を作り、販売している。彼の“薬”はダ・カンに買い付けにくる商人によって世界各地で販売され、特に上流階級において強壮剤、難病の治療薬、不老不死の霊薬として人気がある。

グイド・アクス

アクス傭兵団の首領であり、彼自身も凄腕の暗殺者である。彼は奴隷市で子供を買い付け、暗殺者としての訓練を施し、依頼に応じて暗殺者を各地に派遣している。