レベル付き下方判定ルールメモ

本書はTRPGの行為判定ルールのメモです。システム全体としての実装はしていません。

2016.11.17 初版

使用するダイス

この説明ではD100を使用するものとして説明します。これはこのルールのみの組み込みを考える際、他の部分としてBRP(Basic Role Playing)を適用するのが簡単だからです。スクラッチでの実装を考える場合D20の使用を検討した方が良いかもしれません。

判定方法

判定基本値

判定基本値(技能の値など)は次のように表されます。

《技能名など:[レベル:判定値], …》

例を示すと次のようになります。

《目星:[1:50], [2:30], [3:15]》

これは「目星」という技能を1レベルは50%、2レベルは30%、3レベルは15%で成功できることを表します。このパラメータを持つキャラクターは4レベル以上の難度の行動を行うことはできません。

判定方法

判定は次の手順で行います。

  1. プレイヤーは行動を宣言する。
  2. ゲームマスターは行動の難易度を決定する。
  3. プレイヤーは判定のレベルを宣言し、ダイスを振って結果を決定する。

行動宣言

プレイヤーは何を目的に何(技能や能力値)で行動するのかを宣言します。マスターは宣言が妥当で無いなら拒否してください。拒否されたらプレイヤーは宣言を改めるか、行動をキャンセルしなければなりません。

行動難易度の決定

マスターはプレイヤーの宣言に対して最低何レベルの行動かを決定します。必要なレベルはプレイヤーに伝えても伝えなくても構いません。キャラクターに難易度が把握できそうなら伝えるべきですし、どれくらい難しそうかわからないようなら伝えなければ良いわけです。

行動の解決

プレイヤーは判定に使用する技能のレベルを宣言し、判定を行います。判定はD100の値が宣言したレベルの判定値以下なら成功です。ただし、判定に用いた技能レベルがマスターが決めた難易度より小さい場合、判定に成功していても行為は達成されません。失敗ではないので失敗時のペナルティはありませんが、宣言した結果は得られません。

当然ですが、マスターが設定したレベルの判定値を持たないキャラクターは行動に成功することはできません。例えば、先ほどの例でマスターが《目星》の難易度をレベル4と設定した場合は判定するまでもなく見つけることができません(プレイヤーに難易度を伝えていないので判定させた上で見つからないということを伝えることになりますが)。

例えば、隠し扉を探すために《目星》の判定をしたとします。

この時、マスターは2レベルと設定しましたが、あるかないかわからない隠し扉を探すのは難易度不明ということでプレイヤーには難易度を伏せました。

プレイヤーは1レベルでの判定を宣言し、D100=15でした。ダイス目自体はレベル3まで成功していますが宣言がレベル1なので成功度合いはレベル1に止まります。

結果、2レベルが必要な捜索に対して1レベルの成功なので隠し扉は見つかりません。

対抗判定

対抗判定は攻撃が当たるかなど、一方のキャラクターの行動に対して他方のキャラクターが応じる場合の行動解決方法です。対抗判定には能動側と受動側のキャラクターがいます。能動側は何らかの行動を仕掛ける方、受動側はそれに対応する方のキャラクターです。

対抗判定は次の手順で行います。

  1. 能動側プレイヤーは行動を宣言する。
  2. 受動側プレイヤーは行動を宣言する。
  3. 能動側プレイヤーは判定のレベルを宣言し、ダイスを振って結果を決定する。
  4. 受動側プレイヤーは同じかそれ以上のレベルを宣言し、ダイスを振って結果を決定する。

行動宣言

能動側、受動側の順で行動を宣言します。マスターはそれぞれの宣言の妥当性を判断し、妥当性のない宣言は却下して違う宣言をさせます。双方の宣言が妥当なら判定に移ります。

能動側の判定

能動側は使用する技能のレベルを宣言して判定します。判定に失敗した場合はこの時点で行動失敗となり、受動側は判定の必要がありません。判定に成功した場合は判定時のダイス目を記録して(覚えておいて)受動側の判定に移ります。

受動側の判定

受動側は使用する技能のレベルを宣言して判定します。能動側の宣言したレベル未満のレベルでは相手の行動の成功に及ばず、判定に成功したとしても能動側の勝ちになるので、能動側の宣言したレベル以上のレベルを宣言しなければなりません。判定に失敗した場合は能動側の行動成功になります。受動側の宣言したレベルが能動側以上で、受動側の判定が成功なら受動側の勝ちになり、能動側の行動は失敗に終わります。

次のようなキャラクターがいます。

キャラクターA
《攻撃:[1:50], [2:30], [3:15], [4:10]》
《防御:[1:50], [2:30], [3:15]》
キャラクターB
《攻撃:[1:40], [2:20]》
《防御:[1:70], [2:40], [3:30]》

AがBを攻撃します。

Aはレベル1で攻撃し、D100=25で成功でした。

Bはレベル1で防御し、D100=30で成功でした。

防御成功(攻撃失敗)になります。

BがAを攻撃します。

Bはレベル1で攻撃し、D100=38で成功でした。

Aはレベル1で防御し、D100=71で失敗でした。

防御に失敗したので攻撃成功となります。

AがBを攻撃します。

Aは低レベルの攻撃では通用しないと思い、レベル4で攻撃します。D100=7で成功でした。

Bの防御は3レベルまでしかありませんのでこの攻撃に対応できません。

攻撃成功です。

BがAを攻撃します。

Bはレベル1で攻撃し、D100=100で失敗でした。

攻撃が失敗したのでAは防御の必要がありません。

攻撃失敗です。

クリティカル、ファンブル

クリティカル

判定時のダイス目が判定値と同じ値で行動に成功した場合、クリティカルとなります(*1)

判定時に選択したレベルはクリティカルよりも優先します。

対抗判定の場合、クリティカルは能動側の行動のみ発生します。受動側の行動にクリティカルは発生しません。

対抗判定の場合、能動側が成功、防御側が失敗で能動側のダイス目が判定値と同値の場合にクリティカルが発生します。能動側が判定値と同値で成功しても、防御側が判定に成功したなら防御成功でありクリティカルにはなりません。

クリティカルした判定はその行動で宣言したレベルの範囲における最大の効果を発揮します。

(例)

一般行為判定でもマスターの設定したレベル未満の成功ならクリティカルでも意味はありません。

(例)

先ほどのキャラクターAとBの場合で、Aが1レベルの《攻撃》にD100=50で成功しても、Bが1レベルの《防御》に成功したならBの防御成功で、クリティカルにはなりません。

(*1) D100の判定の場合、判定値の上位5%(端数切り捨て)とした方が良いかもしれない。例えば判定値が50なら49〜50をクリティカルとする。

ファンブル

ファンブルや自動的失敗になるダイス目はありません。高レベルの判定が必要になれば必ず失敗し得るのでこれらの要素が不要だからです。

判定値の取得

判定値の上限

技能などの判定値は任意のレベルまで取得できますが、あるレベルの判定値はそれよりも低いレベルの判定値未満でなければなりません。

例えば、《目星:[1:50]》のキャラクターが2レベルの判定値として取り得るのは0〜49です。

同様に《目星:[1:50], [2:30]》のキャラクターが3レベルの判定値として取り得るのは0〜29です。

《目星:[1:100]》の場合、2レベルとして取り得るのは1〜99になります。

BRPへの適用

技能初期値

ルール通りに作成したキャラクターの技能値は1レベルの判定値とします。ただし、技能の上限は99ではなく100になります。キャラクター作成時の2レベル以上の判定値は下表の通りとします。

レベル判定値
1ルール通り
21レベルの1/2(端数切り捨て)
31レベルの1/5(端数切り捨て)
41レベルの1/10(端数切り捨て)

ただし、計算結果が10未満になった場合、そのレベル以上の判定値は取得できません。

(例)

ルール通りに作成して《目星:50》なら本ルールを適用すると《目星:[1:50], [2:25], [3:10]》です。《目星:30》なら本ルールを適用すると《目星:[1:30], [2:15]》です。3レベルは6になり10未満なので取得できません。

能力値のn倍判定

「アイデア」などの能力値のn倍を使用する判定への適用です。レベル1はルール通り能力値の5倍、レベル2は能力値の4倍、…、レベル5は能力値の1倍とします。例えば〔INT:12〕なら〔アイデア:[1:60], [2:48], [3:36], [4:24], [5:12]〕となります。

SANチェック

『クトゥルフの呼び声』の場合だけですが、これは元のルール通りです。レベルは無い(常にレベル1)として扱います。

経験チェックと経験ロール

経験チェックがつくのは元のルール通りですが、チェック時に成功したレベルを記録します。そして、より高いレベルで判定に成功した場合、チェックは高い方のレベルで上書きされます。低いレベルのチェックで上書きされることはありません。

例えば、プレイ中に初めて判定に成功した時に1レベルの判定であればチェックは1レベルとして記録されます。そして、その後2レベルの判定に初めて成功した時点でチェックは2レベルに更新されます。

経験ロールはチェックされたレベル以下かチェックされたレベル+1のいずれかの1つレベルに対して行えます。ただし、チェックされたレベル以下の経験ロールに成功した場合の成長はルール通りD10ですが、チェックされたレベル+1の成長はD6です。成長によってより低レベルの技能の値上に成長することはありません。オーバーした分の成長は切り捨てます。

例えば、《目星:[1:50], [2:25], [3:10]》で1レベルのチェックがついている場合、レベル1と2のどちらかに対して経験ロールを行えます。そして経験ロールに成功した場合、1レベルはD10成長しますが2レベルはD6しか成長しません。

《目星:[1:30], [2:25]》で2レベルを選択して成長させ、成長判定に成功して7成長したとします。しかし、《目星:[1:30], [2:29]》までしか成長せずオーバーした3点は切り捨てられます。

また、2レベルが25あるので3レベルをD6成長させることもでき、D6=5なら《目星:[1:30], [2:25],[3:5]》になります。

本ルールのコンセプト

この判定ルールは次の考え方に基づいています。

これを、キャラクターが習得し使える技術、手法を技能ごとのレベルとして設定したというのが本判定ルールの実装です。

具体的にどういうことを再現しようとしているかというと、囲碁や将棋、体操競技、フィギュアスケートなどを想像してみるとわかります。例えば、囲碁や将棋を例にすると、級位者は技能レベル1位、アマチュア有段者で2、プロになるとそれ以上で、タイトル戦やそれに近いレベルだとレベル5レベル前後の範囲で勝負しているようなイメージです。

例えば、囲碁のトッププロだと《囲碁:[1~2:100], [3:90], [4:75], [5:55], [6:30]》とかで上の方のレベルだけを使って勝負しているイメージです。そして井山裕太だと《囲碁:[1~2:100], [3:90], [4:80], [5:65], [6:45], [7:20]》とかになっており、7レベルの技がはまった時は相手に予想もつかない手を繰り出して勝ってしまうという感じです。

このルールの利点は次のような問題をある程度うまく解決できることにあります。

例えば、『クトゥルフの呼び声』で技能70%はその道のプロですが、医者の《医学》が70というのはどう評価すべきかというのがあります。簡単な縫合でも30%で失敗するのか? というのをどう扱うべきかに対して簡潔な解を提供できるのです。

つまり、このルールでは単純に簡単な治療は《医学》1レベルで100%にしてしまえば良いわけです。そして、心臓のバイパス手術なら最低4レベル(もっと?)が必要などとすればうまく扱えます。

もう一つの利点として、下方判定の欠点である延々と決着がつかない状況を回避できます。

《回避:90》同士の戦闘など延々とダイスを振り続ける羽目になりますが、このルールであれば高レベルの攻撃を行えば相手もそれに応じた防御行動が必要となり、低い判定値で判定せざるをえないからです。

と、まぁ、なかなかうまく機能するのでは無いかと思ったので文章に起こしました。実際のところ、その他の部分も作ってシステム全体として実装する気はあまり無いのですが。

『The Lunatic』