北川木挽歌による幻想曲

 宮崎県の北部、北川は渓流と自然林のとても美しいところである。この曲はその北川地方に伝わる木挽歌を素材に、山とそこで作業をする木こりの一日の情景を描写したものである。木挽歌は、木こりの労働歌として全国各地に存在しているが、共通した特徴として、シンプルで開放的なメロディーが多いことが挙げられる。この北川木挽歌も南国の明るい日差しを浴びたように、力強くのびのびと唄われている。

 曲は大きく3つの部分に分かれる。

 曲は、夜明け前の溪谷のシーンから開始される。冒頭に「北川木挽歌」のメロディーがオーボエのソロで奏でられる。

 朝霧が立ち込めている河面。清水を集めた小さな流れはやがて川を作る。

 霧は少しづつ晴れてゆき、東の空はだんだんと明るさを増し、そして輝かしい日の出!!

 日も既に高く上がり、さて木挽きの仕事に取り掛かろうか。ここは「労働歌」としての本来の意味での「北川木挽歌」の部分である。木挽きの唄は山々にこだまする……。

 曲想は一転し、勇壮な山とその合間を流れる川の力強いイメージに変わる。

 下流に近づくにつれ、西を向けば遠く高千穂の山々は夕焼けに染まってゆく。ここでテーマは山々の讃歌として高らかに謳い上げられる。そして日没とともに曲を閉じる。

 この曲のテーマは言うまでもなく「北川木挽歌」なのだが、実は「水」というもう一つのテーマがある。森林と水は切っても切れない関係にあり、豊かな森林は多くの水を蓄え、水害を防ぐ役割を果たす。山を手入れすることはすなわち、防災という面でも重要な意味を持っているのである。そこで、「木挽」から連想して「水」というテーマが導き出されたのである。この曲の全体を通じて出てくる木管楽器のパッセージは、水の流れのいろいろな表情を表している。


データ

演奏タイム:約8分30秒 難易度:中〜上級

編成:Picc., 1&2 Fls., Ob., Bsn., EbCl., 1,2&3 Cls., A.Cl., B.Cl., 1&2 A.Saxs., T.Sax., B.Sax., 1,2&3 Trps., 1,2,3&4 Hrns., 1&2 Trbs., B.Trb., Euph., Bas., Str.Bass, Timp., Glock., Vib., Mrmb., Chime, Sleigh Bell, Sus.Cymb., Cymbs., S.D., Log Drum(Conga)

1993年作曲、同11月20日、椛山達己指揮、宮崎市吹奏楽団によって初演。
1998年3月、21世紀の吹奏楽「響宴」にて、小澤俊朗指揮、神奈川大学吹奏学部によって再演。

CD:響宴I 21世紀の吹奏楽 BOCD-7450,7451(2枚組)に収録

レンタル楽譜:アトリエエム(TEL & FAX:03-3952-1156)

なお、このCD音源の使用については、発売元のブレーン株式会社、ならびに21世紀の吹奏楽実行委員会の承諾をいただいた。このご厚意に心より感謝の意を表します。


(c) 1993 by Takashi Hoshide
楽譜の無断転用を禁ずる。