7月18日(金)
 飛行機の窓から外を眺めてみると、そこはベルギーだろうか、ドイツだろうか、都市の明かりと郊外へ向かう道路に沿って延びる街路灯、その遥か先にはまた別の都市の明かりが見える。まるで無数に散らばる銀河を見ているような美しさである。それを眺めているうちにだんだん瞼が重くなってきた。夢とうつつを彷徨っていたとき、突然機内食のサービスで目を覚まされる。時計の針は深夜の1時過ぎを指している。何を考えているんだろうと思ったが、よくよく考えてみるとフランスと日本とは7時間の時差だから、日本は現在8時過ぎ。日本に向かっているこの飛行機はすでに日本時間で朝食を出しているのだ。とは言っても、これから就寝しようとしている矢先に朝食を出されてもなぁ。せっかく出されたのものだからとりあえず頂いたが、なんとも味気ない。
 深夜の朝食を食べ終わって窓の外をふと覗いてみると、バルト海を過ぎたあたりだろうか、前方がすでにうっすらと白んでいる。シベリアでも北極海沿岸のあたりでは夏は白夜になるはずだから、これがその白夜なのだろうと勝手に納得。地平線にぼんやりと広がる暁光の帯を眺めているうちに、今度は本当に寝てしまった。
 目が覚めてみると、外はもうしっかり昼。ウラジオストックあたりを過ぎて日本海にさしかかった頃、時計を日本時間にセット。7時間もの時差を経験したのは初めてなので、その忽然と消滅してしまった7時間という概念が何ともピンとこない。あ、でも、フランスに向かうときには7時間を余計に過ごしていたんだから、これでちゃらになったんだよな。強引に納得。
 成田にはほぼ定刻に到着。機内からタラップに出ると、いきなりムッとした暑さが体を包み込む。そして、ああ、やっぱりこれが日本の夏だ、日本に帰ってきちまったんだと改めて実感するのである。(おわり)

7時間もの時差を経験したのは初めて
 などと書いているが、以前に行った唯一の外国、韓国は日本との時差はない。したがって、私が時差を体験したのは実質これが初めてなのである。(戻る)