7月10日(土)
 フランス人の朝食はカフェオーレにクロワッサンだけと非常に簡素だ。サラダだの、ベーコンエッグなどは摂らないらしい。朝食は1日の活力の元だから栄養のあるものをバランスよくしっかり摂取するべきである、と叫んでいるどこかの国とはまるで逆だ。
 というわけで、パリの街角では朝からあちこちでブラッセリーと呼ばれる軽食喫茶のような店が開店する。我々も「郷に入らば郷に従え」ということでパリジャン気取りでブラッセリーにてカフェオーレにクロワッサンだけの朝食を摂る(ちょっと物足りない^^)
 さて、パリ2日目はとりあえず近場を歩いてみることに。モンパルナスタワーで有名なモンパルナス駅の近くの路上には朝市が露店を並べていた。日用雑貨などもあるが食料品がメインで、日本では見られない食材も多くなかなか見飽きない。皮を剥がれたニワトリやウサギがそのままの形で並べられているのにはちょっとギョッとした。
 通り沿いのモンパルナス墓地にはサン=サーンスの墓もあるというので、探してみたのだが、どれも似たような墓標なのでとうとう分からなかった。墓地を歩いていると、彫刻家の墓だろうか、鳥の形をデザインしたモニュメントのような墓を見つけた。さすがはアートの都である。
 ほどなく歩くとそこは美しい庭園でも知られるリュクサンブール宮殿。庭園の中の林にぽつんと立っている東屋風の軽喫茶で休憩。近くに公衆トイレがあるので用を足そうと思って入ると、入り口におばさんが座っている。2.5フラン(約50円)払えというのだ。じつは、フランスの公衆トイレはほとんどが有料なのである。このフランスのトイレ事情についてはまた日を改めて述べてみようと思う。
 北に向かってほどなく進むとセーヌ川に出る。パリ発祥の地、セーヌ川の中州に浮かぶシテ島には「ノートルダムの鐘」でもおなじみのノートルダム寺院がその巨大な容姿を見せている。ただ現在、正面が改修工事中で足場で覆われているため、側面からの写真しか撮れなかったのが残念。
 ノートルダム寺院の近くのレストランで昼食を摂ることに。フランスのレストランには外にメニューを書いた看板が立っていて、その内容と懐具合を見定めて入ることになる。このあたりは海外からの観光客も多いので、英語で書かれたメニューも用意されているのが助かる。ウェイターも最初はフランス語で話しかけてくるが、我々がフランス語を解せないと分かるとすかさず英語で尋ねてくる。まあ、私にとってはどちらで訊かれても大して違わないわけだが、オーダーを訊いているくらいは分かるので、メニューを指さして「This」とだけ喋る。うう、これでは、日本で「マネー、マネー」としか喋らないコンビニ強盗とほとんど同じレベルだなぁ(^^;)。喉がからからに渇いていたので、レモネードを注文することに。すると、日本のファーストフードのドリンク類と同じように、大中小があるのでどれにするのかと訊いてくるので、「Large」と答えた。そしてやってきたのが1リットルサイズの大ジョッキになみなみと注がれたレモネード!! どっひゃ〜(もちろん残さず飲んだ)
 その後、同じくシテ島にあるステンドグラスで有名なサント・シャペルを訪ねる。この美しいステンドグラスを写真に納めようとしたが、手持ちではシャッター速度が稼げない。やはり、こういうところでは三脚は必需品である。多少手ブレ気味の写真ではあるが、まあ、なんとかこの美しさは伝わるのではないだろうか。
 しばらくセーヌ川に沿った川面を渡るすがすがしい風を受けながらの散策の後、いったんアパートに帰宅。シャワーなどを浴びてひと休みして、夕刻は近くの住宅街にあるイタリアンレストランで食事。家庭的な雰囲気のレストランで、気のいいおかみさんとセリーヌ・ディオン似の美人の娘さん(?)が給仕を務めている。さて、ここで私はおバカなことをしてしまった。ついついビールを飲むときのクセで、おかみさんが注ごうとしているワイングラスを持ち上げてしまった。おかみさんはちょっと驚いた様子だったが、すぐにニコニコと笑って私の頬を小突いて行ってしまった。もちろん、ワイングラスはテーブルに置いたまま注がれるものである。注ごうとしているワイングラスを持ち上げられたら、この人はこのワインを拒否しているんじゃないかと疑うだろうなぁ、あちらの人の感覚では。フランス料理のレストランなんぞには行き着けない貧乏作曲家のお里が知れてしまった一場面だった。


モンパルナスタワー
 1973年に突如パリの街に出現したこの近代的なビルは、当時パリの街にふさわしくない建築物として不評を買ったらしい。古都京都にいきなりサンシャイン60が建ったようなものである。もっとも、現在の京都の景観は見るべくもないが……。
 ダジャレ好きな真島氏は、早速「パリ名物、モンパルナスのぬか漬け」などと飛ばしていた。
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