撤退する交直流車両

 仙台車両センターには455・417・717系が多数在籍していましたが、車齢40年の車両もあり、老朽化が進んでいる事もあってE721系と置き換えられています。ここでは撤退する車両達を紹介します。


■455・457系 概要

 455系は交直流急行型電車で、120KWモーター搭載で最高速度110キロの性能を誇る。455系では勾配区間走行の為、抑速ブレーキ搭載した所が特徴。457系は、それに60ヘルツ区間走行性能を付加した車両だ。冷房は先頭車は分散タイプで中間車は集中型クーラーを搭載。夏の暑い日は分散クーラーの性能が集中タイプより少し弱いからか弱冷房車状態になる事かあり、夏にしっかり涼しい車両に乗りたければ中間のモハ車がお勧めです。

仙台の455系は近郊型化・リニューアル化改造の他、訓練車やグリーン車改造車もあってバリエーションが豊富なのが特徴。全車共通で、トイレをクハ車意外撤去。洗面台は一部の編成以外撤去。交流区間運用固定の為、屋根上交直切り替え器の直流側母線取り外し。前面種別幕のLED行き先表示化がされている。

      

▲写真拡大

カラーリングは左から東北支社色・磐越西線色・仙山線色・オリジナルの交直急行色となっている。このうち現在でも見れるのは東北支社・磐越西線色で、この他にもイベント用で仙山線専用オリジナルカラーなども存在した。


■多彩な改造クハ車

 国鉄時代の急行車両をローカル車化にする時に先頭車が不足した関係で、様々な車両から455系のクハ車に改造された。主に165系からの改造車が多いが、169系から改造された車両もいる。先頭部の塗り分けを見ると今でも165系時代の塗り分けが、うっすらと見る事ができる。

■300番台

  

クハ165からの改造車。ステップの取付。屋根上に検電アンテナとホイッスルが取付がされているが、外観からはオリジナルのクハ車かは、ほぼ判別不可能。車内のデッキ仕切扉がオリジナルのクハ車とは開ける方向が逆な所が特徴。

■400番台

  

クモハ169系からの改造車で、試作車からの改造車だったりする。運転台屋根上にクモハ車の名残で箱形通風機があるのが特徴。クーラーは485系ボンネット車と同じタイプのが搭載されており、クーラーは個別に壁に付いたスイッチで強弱を調整する。

■500番台

  

こちらはサハ165に運転台を取り付けた改造車。運転台側の戸袋窓が狭くて縦長なのが特徴。サハ165の時は屋根上クーラーも6台付いていたが、改造の都合で5台となった。その関係で撤去した冷房後の名残で運転台後ろにベンチレーターが左右に1つずつ多くなっている。

■600番台

    

サロ165系からの改造車で、外観は他の改造車と比べて特徴的な為に注目の存在。運転台の取付は500番台と似た作りになっているが、トイレ側は原型を保っている。グリーン車の名残の縦長のドアや車掌室まであり、デッキとの仕切は2重のドアになっている。車内はセミクロスシートに改造されているが、窓枠とずれている他、テーブルも付いていない。天井はオリジナルのままで、カバー付きの照明となっている。冷房は485系ボンネット車と同じタイプで、こちらも壁に取り付けられているスイッチで強弱を調整する。洗面所は撤去されているものの、トイレの窓も上四分の一が開く珍しいタイプになっている。床は以前はグリーン車時代のままだった為、色が青系だった他、リクライニングシート取付跡のボルト跡が生々しく残っていた。2両在籍していたが、1両は利府の訓練線で訓練車となっていている。

▲写真一覧拡大


■JR化後の改造車

 ■グリーン車化改造 S−40編成 クロハ455

  

▲写真拡大

磐越西線での快速「ばんだい」用にクハ車から1両のみ改造された。客室の運転台より3窓分がグリーン席で、それ以外は指定席扱いとなっていた。グリーン席は3列シートで天井は平天井となり、窓は固定化。読書灯や登場当初は座席背面に液晶テレビまで付けられて、並みの特急グリーン車以上の設備だった。指定席は簡易リクライニングシート化され、荷棚の変更と日よけのカーテン化がされた。トレイと洗面所は撤去され、変わりに公衆電話と荷物置き場が設置された。その関係でトイレはモハ車に設置されている。

「ビバあいづ」の運転に合わせてグリーン車の位置を合わせる為に編成ごと向きが転換され、6両運転時はクモハ車同士で連結された。その後、磐越西線でのグリーン車営業運転は終了し、グリーン車マークと磐越西線ロゴを撤去。しばらく予備車扱いで仙台周辺や仙山線などで運転された後に、再び磐越西線用の車両として運転されている。仙台地区ではかなりの乗り得な車両だ。

仙台周辺で運用していた時にはクハ455−600と連結する事もあり、グリーン車改造車同士の連結も希に見る事ができた。(写真右)

 ■訓練車化  クヤ455

        

▲写真拡大

訓練車で、白線や訓練車の文字が入っているものの、交直流急行色とあって注目の存在でした。実際に訓練車として改造されたのはクヤ455のみで、車内の三分の二の座席が撤去されて機材が置けるようなスペースとなっていました。大型ヘッドライトや仙台特有のタイフォンカバー装着等、かなり原型を留めていました。訓練車とあってかATS−Psの取付や交直切り替え器に直流高圧母線が繋がったオリジナルのままだったりと、なかなかの魅力的な車両でした。クモハ車意外は廃車となり、クモハ車は大宮の鉄道博物館で展示されます。


■主な改造

 ■近郊化改造

 オールクロスシートからセミクロスシートへの改造で、車両中央5・6ボックス分を除いてロングシート化。改造の時期によって網棚の形状やボックスシート前後のロングシートの長さが違う等の差異がある。トイレ・洗面所はクハ車を除いて封鎖。クハ車にあった洗面所も一部の編成以外は後に撤去されました。

 シートモケットは当初は茶色でしたが、後に変更されてクハ車は緑・モハ車はブルー・クモハ車は赤茶色に変わり、仙台車両区の他の国鉄型車両にも波及しました。

 ■車体更新・リニューアル・ATS−P改造

 延命を目的に車体内外に渡って更新された。前面はヘッドライトとテールライトが一体型に変わり、タイフォンは丸い蓋をかぶせたタイプに。側面は方向幕取付準備工事が行われた。車内は床・壁材張り替えの他、座席のバケット化とカーテン・テーブルの取り替えが行われた。トイレ・洗面所はクハ車以外は撤去され、立ち客スペースとなった。尚、クハ車のトイレは官紀用の小窓が撤去され、車端部に換気扇が取り付けられた。

 側面の行き先方向幕準備工事は試験的に取り付けられた編成があったものの波及せず、このまま準備工事のまま廃車になりそうな気配である。

 1999年頃から主要機器のリニューアル工事が始まり、クモハ・クハ車にあったMGをクハ車に集約の上でSIV化。コンプレッサの新型取り替え・台車の密封コロ軸受け化・モハ車1.2位側ドアエンジンの交換が施工されました。このコンプレッサは非常に静かで、空気の抜ける音しか聞こえません。 

 常磐線の水戸−いわき間でATS−Pの運用が始まった関係で、ATS−Pが一部の編成で行われた。新規に取り付けられるATS−Pの装置は適当な置き場が無かったのか、元トイレ・洗面所スペースに設置され、運転台までの配線は客室内に新たに取り付けられたダクトに通してある。

■前面強化改造

 踏切事故から乗務員を守る為、前面にステンレス鋼板を取り付ける改造がされた。下部に3段または4段のアンチクライマーが付き、運転台窓下の手すりの台座が付いているのが特徴。この時に大型ヘッドライト車は全てシールドビーム化されてしまった。一部の車両で施工されていない車両があるが、これは国鉄時代に施工された為に対象外な為。

■LED行先表示器

前面種別幕にLED行き先表示器の取付が2004年から行われた。オレンジと赤の2色のゴシック体表示で、昼間でもそこそこ見る事ができる。これに関連して側面のサボがモハ車のみの取付となった。また、磐越西線色の車両はLEDでは無く、幕式の行き先表示になっている。

■分散クーラーカバー取付

クハ・クモハ車の分散クーラーは排水の調子が悪い車両が多く、水漏れした時に客室内に水が垂れないようにするため、カバーが取り付けられた。編成単位での施工ではなく、調子の悪いクーラーだけの施工で、455系以外でも同タイプクーラーの他の車両にも同じのが使われている。以前、水漏れした冷房を見た事があるが、コップの水をこぼしたみたいに大量に水が垂れてきた。


■車内いろいろ

    

▲写真拡大

左は仙山色のリニューアル車洗面所跡に設置されたスキー・スノボー置き場。面白山スキー場利用者向けに設置されたようですが、仙山線から撤退後に撤去された。

中央はリニューアル車運転台。左にATSーPs。右にATS−P表示器が所狭しと置かれている。

右はクハ455−609車内。改造車らしく独特な雰囲気です。

■保存車・他車との組み合わせ

    

▲写真拡大

左は宮城県鳴子温泉近くの山中にある「たかともワンダーファーム」に保存されているサロ455。一緒にサシ481も保存されているが、サロ455が見れるのは全国でもここだけ。

中央・右は仙台電車区で並んだ455系と583系。

■写真館

 

        

▲写真拡大

        

▲写真拡大


■417系

▲写真拡大

417系はキハ47のような両開き二つドアの3両編成で50/60Hz両対応交流直流電車。120kwモータ搭載で、出力的に見ると455系とほぼ同等ですが、ギア比が違う為併結運用はできません。抑速ブレーキ搭載の為、東北本線で黒磯まで運用に入るが、以前は仙山線でも運用があった。15両しか製造されなかった為、なかなか乗車機会の少ない車両だ。

 前面を見ると455系と似ているが、711系と同じ強化型スカート装備なので区別がつく。側面を見ると車体端にルーバーがあるが、これは主電動機用の雪切り室となっており、耐雪構造となっている。通年に渡って雪切り室から冷風を供給しているおり、455系と同じモーターのMT54を搭載しているが冷却扇が付いていない特製な為、モーターの音は特急車両並みに静かなのが特徴。ブレーキ緩解音は同時期に作っていた201系のような音で、仙台の国鉄型車両の中では変わった存在だ。当初は交直流塗装の冷房準備工事でしたが、JR化後の冷房化と同時に仙台色化。手動半自動ドアは719系登場以後に押しボタン式に変わった。

 車内はセミクロスシートとなっており、車端部に雪切室があるが、扉がある為トイレと勘違いする人が多いのか、間違い防止の張り紙が張られていたりする。以前はジュースの販売機が置かれていた事もあったが撤去された。方向幕は東京乗り入れを想定してか当初は宇都宮や上野の幕があったが、後に仙台周辺のみのに変えられた。


■717系

 

▲写真拡大

717系は451・453系からの改造車で交流化の上、車体は新製している。417系を元にしており、雪切り室があるが、115系のように小型化された。451系からは0番台。453系からは100番台になっているが、モーターは全て120Kwに統一しているため、性能は殆ど変わらないが、抑速ブレーキが無い為に常磐線を中心とした運用になっている。改造車とあって改造元の車両の部品を多様しているが、クロスシートにテーブルは付いていない。455系と併結運用もあったが、似た車体の417系とは併結出来ない。方向幕とサボ受けの両方があるが、717系単独時(一部例外があるが)は方向幕。455系と連結時はサボを使っていた。クハ車のトイレは他の近郊電車のトイレの位置と反対側に付いている。これはタネ車の設備を生かす為で、改造車らしい所だ。

▲戻る