宮城県の野湯

「野湯」とは、自然にわき出している温泉の事を言います。全国各地に点在していて宮城県にも存在します。無料で入浴できますが、温泉に行くまでが大変な行程で危険な場所だったり、入る温泉を自分で作ったりしないといけなかったりと、一般の人にはお勧めできない所ばかりです。そんな宮城県にある温泉の「野湯」を紹介します。温泉に行かれる際は、各自の自己責任で行動願います。なお、危険度・行程難易度は最大5段階で評価してます。

 かもしか温泉

 ■所在地  蔵王町(蔵王山山腹 標高約1200m)

 ■アクセス 蔵王エコーライン 賽の磧駐車場より登山道を徒歩約1時間30分程。

 ■泉質 単純硫黄泉 と思われる

 ■危険度・危険内容  ★★★★ (転落・崖崩れ・危険動物・火山ガス・火傷)

 ■行程難易度 ★★★★ 

  蔵王エコーラインの賽の磧駐車場より、徒歩で移動する。最初は舗装されてなだらかな遊歩道が続くが10分程歩いた所にある展望台から先は登山道となる。登山道と言うと最初は上りというイメージがあるが、ここは最初に下り坂となっていて谷底の川まで続く。川は山奥の割には、やや川幅があって橋が架かっているが、大雨等で良く流されるのか行く度に橋が変わっていたりする
展望台からの眺め 谷底の橋 「かもしか温泉跡」より源泉を望む

 橋を渡ると上り坂となり、しばらく歩くと土台だけが残る「かもしか温泉跡」に出る。ここまでの道には石の階段があったり石垣があったりして温泉利用者の為に整備された形跡が残っているが、豪雪地帯で、もろい火山地質だからか土砂崩れや地形の移動があるのか道が悪い所が多々ある。この「かもしか温泉跡」近くには沢水が出ている水場があるので休憩するには丁度良い場所です。ちなみに、「かもしか温泉」は雪崩により建物が崩壊したそうです。春先に、ここに来た時には温泉跡の土台周辺に蛇が多くいました。ここは蛇に注意が必要です。

入る温泉はここから更に山を登るのですが、険しい地形にガレ場と急斜面で危険な場所です。崖崩れが多いのか来る度に地形が若干変わっているので、悪天候の日には行かないのが無難でしょう。また、温泉が出て入れる場所の近くには地面から温泉が出ている所があるのですが、高温な上に地盤がもろいので地面を踏み抜いて源泉に足を突っ込まないように注意が必要です。

斜面の火山地熱地帯 源泉上の絶壁 ガレ場の急斜面

ようやく温泉に到着です。沢近くのあちこちから水が出ていますが、全部が温泉ではなくて硫黄分の含んだ水も出ているのが珍しい。下から見えた噴気口は蒸気は勢いよく出ているものの、お湯は殆ど出ていなかったりします。この場所は最近蔵王火山が活動ををした一番新しい場所のようで、蔵王火山の活動記録を調べると「新噴気口生成」とあるのは、おそらくここの事でしょう。寒い時期になると、ここの蒸気がかなり立ち上って遠くからでも見えるので、火山活動を勘違いして通報した人もいる程です。

源泉の沢 地熱地帯最大の噴気口 源泉

 

 
乳白色の湯船 空に近い温泉からの眺め  

温泉は単純硫黄泉のようで、誰かが作ってくれた温泉は丁度良い温度でした。ただ浅いので寝そべりながら入る感じになるのが残念な所ですが、標高1200mの温泉は眺めは格別で、付近の山々の他、天気の良い日には太平洋を航行する船を見ながら入れるので、天空の露天風呂と言った所でしょうか。

 
海まで見える雲に近い温泉からの眺め このような場所に温泉がある  

 

 荒湯地獄温泉

 ■所在地  大崎市 鬼首カルデラ中央部(鬼首地熱発電所付近 標高約600m)

 ■アクセス 国道108号線より鬼首地熱発電所の看板通りに進み、駐車場より徒歩5分程。

 ■泉質 強酸性硫黄泉 と思われる(源泉・季節により酸性・硫黄分に若干変動あり)

 ■危険度・危険内容  ★★ (火山ガス・火傷)

 ■行程難易度 ★ 

 宮城県の野湯の中でも人気なのが荒湯地獄温泉。宮城県北部の鳴子温泉より国道108号線を走った先にあります。国道108号線を鳴子から走ると鬼首地熱発電所の看板が見えてきますが、看板通りに行くとダート道になります。このダート道は8キロほどもあって長いですが、地熱発電所の工事車両を通行させる為にダート道ながらでこぼこは少なく、快適に走行できる上に、冬でも除雪をしているので冬に温泉に行く事も可能です。
露天掘りの硫黄鉱山跡 地獄の周りは紅葉が綺麗 泥火山は行く度に姿を変えます

荒湯地獄は看板の表記は無いですが、突如火山地形の白い地肌の地面が見えるのでわかりやすいかもしれません。駐車場からすぐの所に大きく窪んだ場所が見えます。これは硫黄鉱山だった名残だそうで、露天掘りで採掘していたから、このような窪みができたそうです。窪みの中では地熱活動が活発で、火山ガスや熱湯が盛んに噴出しており、泥火山もあります。

上から見た源泉地帯 何カ所もある源泉 沢に作られた湯船

ここから5分程歩いた先に温泉があります。源泉からは大量のお湯が噴出しているのですが、ゆで卵が数分でできあがる程の熱湯で、その下流の沢で入ります。この源泉は季節によって温度やお湯の量が変動する為、沢に作られる温泉は季節によって場所が変わります。

深さもそこそこある湯船 温泉からの眺め 沢の下にある大きな温泉

温泉は無色透明ですが硫黄の香りのする強酸性泉で、舐めると蔵王温泉並に酸っぱい時があるので、かなりの酸性です。この酸性も季節によって変動します。沢の温泉からは山並みが見えるのですが、紅葉の時期は綺麗な景色を見ながら入れます。沢の下まで行くと別な源泉の温泉があります。こちらも高温の源泉で沢の水で温度を低くしています。こちらも酸性のお湯ながら硫黄分が多くて湯の花が多いのが特徴です。

 

 奥の院地獄温泉

 ■所在地  大崎市 鬼首カルデラ中央部(鬼首地熱発電所付近 標高約600m)

 ■アクセス 国道108号線より鬼首地熱発電所の看板通りに進み、地熱発電所近くの沢より徒歩10分程。

 ■泉質 硫黄泉 と思われる

 ■危険度・危険内容  ★★★★★ (火山ガス・火傷) 非常に危険なので行かない方が良いです

 ■行程難易度 ★★★ 

 鬼首地熱発電所手前にある沢の上にあるのが奥の院地獄です。かつて沢沿いには遊歩道があったようなのですが、非常に荒れています。鬼首の中でも一番地熱が活発な所で、以前行った時から地熱が活発なのが分かっていましたが、岩手・宮城内陸地震の後に行ってみると、地震による大きな地滑りがあったようで、地形がかなり変わっていました。通常火山噴気地帯は地盤の状態を見れば安全か危険かがわかるのですが、その地盤の上に大量の土石が堆積しているので、その見分けが非常に難しくなっています。その為、思わぬ所で熱湯や蒸気が出ていたりしていました。地盤が非常に不安定で私が行った時は突然出来た穴の泥火山地獄に落ちそうになりましたが、数ある野湯訪問の中で一番危険な思いをしました。付近の沢は既にお湯になっているので、沢を堰き止めれば温泉が出来そうですが、行程の危険が非常に高いので、ここは行かない方が良いでしょう。2010年秋には鬼首地熱発電所で水蒸気爆発事故があり、噴気活動が活発なようです。この場所は他の野湯サイトでも紹介されていますが、危険を周知する為に、あえて紹介しました。
土石流で大幅に変わった地形 自然に出来た高温の源泉 意外な所から噴気が

 

 
高温の噴気地帯 元は谷だったが土砂で埋まった