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日刊工業新聞・特集「住まい」づくり ☆持つべきは「健康に過ごす家」☆




2003年7月18日日刊工業新聞掲載

文章のみ下記に記載いたします。(紙面は上の画像をクリックしてください)

「健康共生住宅」
 法規分野までも「住み易さ」や、「住まいの快適さ」の分野にまで入り込み始めた。
 今月1日、シックハウス対策としての建築基準法改正があった。
 人によって健康の捕らえ方が違い、誰にでも合う健康住宅は存在しない。
 しかし、健康被害に遇わない為の住宅は住み手が注意をして住めばある程度は可能になる。
 今健康住宅と言われている「住まい」は、ほとんどが健康被害に遇わない為の住宅であるが、
建築基準法が定めるのは最低基準であり、実際に効果が上がる工法とは別な場合が多い。
 ここでは、より積極的に人と「住まい」の健康維持を兼ね備えた住宅についての話を進めることにする。
 この人と「住まい」の健康維持を追及する住宅をあえて「健康共生住宅」と呼ぶこととする。


☆ 体内摂取物質の8割は呼吸から、気をつけたい「住まい」の空気 ☆  一般的に知られている「環境共生住宅」との考え方があるが、こちらは地球環境をなるべく傷めない、
汚さない為の住宅との考えである。
 本当の「環境共生住宅」に住むためには、「住まい」の中でほとんどのライフサイクル(破棄物を再利用し、
エネルギー等を創り出し、捨てるものが無く、自然を破壊せず「住まい」と生活だけで完結している生活様式)が完成しており、
外部からの力も借りず、外部へ破棄物も出さないとの考えでの「住まい」が必要であり、
住み手にもそれなりの覚悟が必要である。  「住まい」の中で普通に生活する場合は、地球環境にそれほど貢献するものではないが、
「住まい」自身の健康もテーマにしており、健康な「住まい」は長持ちするとの考え方にたてば、
「住まい」の耐用年数が倍に増えることは、資源の消費が1/2程度に減ると言えるのであり、
多少は環境にも貢献できる訳である。  人は沢山の物質を生命維持活動のために体内に取り入れている。
その体内に摂取する物質を重量比で比較すると、驚くべきことに80%が呼吸によるものであり、
そのうち約60%が室内の空気を吸っているとの統計資料がある。
 食物や飲料は僅かに両方合わせても15%程度であり、これからの生活は、
体内摂取量の多い室内空気に注意を払う必要が大である。
 水ならば、自己防衛としてペットボトルなどで持ち運ぶことも可能だが、
空気に関しては自己防衛するのは非常に難しい。
 「住まい」にしろ、オフィスや工場、工事現場、作業場などどこへ行っても、化学物質があふれかえっている。
 乗り物の中も同様で、隣の女性の化粧品、前の男性のヘアートニック、週刊誌の印刷インクなど、
都市には空気的に安全な場所はほとんど存在しない。

 だからこそ、自分と家族の「住まい」だけでも、安全に暮らしたいと思うのが自然の成り行きだ。

 「住まい」を造る際には、F☆☆☆☆(エフフォースター)の建材を使っても、
化学物質が全く無くなる施工ができるわけではないが、
相当量の減少は望める。アレルギーや化学物質過敏症の起きる原因は、
化学物質はもちろんのこと、カビ、ダニ、細菌、微生物なども影響する。
 これらから身を守るための対策としては、
@発生量を減少させる。
A換気を励行する。
この2点に尽きるのであり、この2つの方法を法規的に規定したのが、
今回のシックハウス対策の建築基準法の改正である。
 @の「発生量を減少させる」項目で出来ることは、仕上材や下地材、
接着剤等の材料を極力化学物質の放散の少ない材料にすることであり、
7月1日からは、仕上材のほとんどにF☆☆☆☆の材料を使うことが、法規的に義務付けられた。
 心無い施工業者でない限り、仕上材からの化学物質の放散は格段に減るはずである。
 但し、法的に規制されるのは、ホルムアルデヒド(防腐、防カビ剤)とクロルピリホス(農薬:防蟻、防腐剤)の2薬剤に対してであり、その他にも沢山ある化学物質に対しては、規制していない。
したがって、ホルムアルデヒドやクロルピリホスの代用品(他の化学物質)を多量に含んだ
材料が現れる可能性は否定できない。
 ホルムアルデヒドとクロルピリホスの規制を、TVOC(トータル放散性化学物質)の象徴的意味と考え、
ホルムアルデヒドとクロルピリホスだけでなく、化学物質の放散の少ない建材を使用するように、
伝えておく必要がある。


☆「有害物質を避け」「換気する」☆
 Aの、「換気の励行」に関しても、法的規制は「住まい」全体の空気ボリューム(容積)を
2時間に1回以上換気できるようにすることであり、24時間換気を義務付けているのではない。
 換気扇の運転に関しては、居住者に任されているのであり、居住者が音がうるさい、
寒くなる等の理由で止めてしまっても、法律違反になるわけではない。
 現実の行政の対応は、換気扇に対しては柔軟であり、トイレや浴室の換気扇で換気を賄い、
引戸の隙間やドア下にあるアンダーカットと呼ばれる1〜2cmの隙間により、
他の部屋や廊下を経由して換気を行うことも認めている。
 現状の一般的な「住まい」として考えると、トイレが2ヶ所(1、2階)、浴室1ヶ所が標準的な間取りであり、
換気扇は100?/h程度を各1ヶ設置するので、合計で300?/hの排気量があり、
法規準値の0.5回/hで計算すると、600?の住宅がこの3ケの換気扇で換気可能となる。600?とは、
平均的な天井高さが2.5mとすると240u(72坪)の住宅までを、トイレ2室と浴室の換気扇で賄えることになる。
 標準の30〜40坪程度の住宅では、引戸やアンダーカットに注意すれば全く問題ないことになる。
 法規的にはこれで十分であるが、人の健康と建物の健康を考えた、「健康共生住宅」として捉えた場合は、
24時間換気を心がけるためトイレや浴室などの汚染室(室内空気が人の行為で汚染する部屋)と
一般の居間・食堂・寝室・客間等とは分離して考える必要がある。
 トイレや浴室の場合、汚染室の為少し多めの換気量にするのが、
設計の常識であり、なるべく早めに排気するのが良いのである。
 従って24時間換気に使おうとすると、前記で計算したように少し多めの換気量になり、
音や寒さに影響を与える可能性がある。
 また、機能的にも汚染室の排気との役割があるため、「住まい」全体の換気をコントロールするための、
調整が出来ない欠点もある。
 24時間換気は、トイレや浴室と分離して、各室に給気口を設置し、0.5〜0.8回/h程度の換気量で
換気するのが良いのである。
 さらに換気はきれいな空気を入れなければ意味が無いので、室ごとに給気口を設けて、
換気をすることにより、最初に人に新鮮空気の供給が可能となる。
 人は歩いたり、動いているときは、顔の前方の空気を呼吸しているが、
立ち止まった時や腰掛けた状態では、人体の体温の関係で、床からの空気が上昇してきて、
床付近の空気を吸い込んでいる。
 一番多量に吸い込んでいる空気は、寝ているときも含めて、床上近辺の空気であり、
この部分の空気をきれいにするのが、有害物質を摂取しないための効果的な方法である。


☆無垢材は床こそ効果的☆
 従って、自然材など無垢材を使う場合で、費用も節約しなければならない時などは、
床材に無垢材を使うのが、効果的である。床暖房する場合は冬場の床からの放散も多くなるので、
「健康共生住宅」の観点からは、なるべく使わないことをお勧めするが、使用する場合には、
熱による床材の隙間が多少出来たとしても、無垢の床材を使うべきである。
 合板の練付床材が綺麗で狂いが少なく、施工業者にとってもメンテナンスが不要でクレームも少ないことから、
主流を占めているが、どこかに無垢材を使いたいと思っているならば、
床材として採用するのが効果的だ。


☆アレルギー体質の人は細かなチェックを☆
 ただし、無垢材は化学物質を出さない安全な材料だと考えるのは、少し早合点である。
 檜やヒバ材が虫の付き難い材料なのは、自然の忌避剤を放出しているからであり、
ある種の化学物質と似通ったものである。
 従って、アレルギー体質の人でこれらの材料に反応する人がいるのも事実である。
 無垢材といえども万能ではないし、誰にでも安全な材料ではない。
 アレルギー体質やまして化学物質過敏症の人は、「住まい」に使われる材料を一つずつ、
体に対する反応の有無を調べる必要がある。一般の人はそこまでする必要はないが、
使用材料の匂いが強く感じた場合は、違う材料に交換したほうが無難である。
 ほかの良く使われる仕上材としては、ビニールクロスがある。ビニールクロスもF☆☆☆☆を使う必要があり、
接着剤の量も多く使うため、F☆☆☆☆の接着剤を使用しているか確かめる必要がある。
 まだ、シックハウス対策が始まって日も浅いので、仕上材は気を付けていても、
接着剤はおろそかになることも考えられる。さらに、ビニールクロスはPB(プラスターボード)に貼るのであるが、
PBのジョイント目地などを平滑にするために下地処理剤を使うので、この下地処理剤もチェックする必要がある。
 この材は法規的には下地材であり、F☆☆☆でも良いが、ビニールクロスは薄く、
下地材の中の化学物質の放散の可能性もあり、仕上材同様に考えておくことが重要だ。
 床に使うフローリング材、コルク床材、クッションフロアーなどの材料をF☆☆☆☆材とするのは当然であるが、
下地としては合板が使われるので、下地の合板もF☆☆☆☆を使うように、施工者に伝えておくのが良い。
 今後はほとんどの材料がF☆☆☆☆材になると思われるので、
F☆☆☆☆材を指定してもそんなに高くなるとは思えない。
 床からの化学物質の放散は、特に人に影響を与える可能性が高く、念を入れるのに越したことはない。
 仕上材の問題は、@の「発生を減少させる」ことであり、化学物質の放散を減少させるための注意事項である。
 人の病気で例えれば、ウイルスを体の側に浮遊させない方策だ。
 Aの「換気の励行」は、予防療法的な側面がある。
 換気により室内の空気を動かしていると、「住まい」では、ほとんど発生しなくなった放散性化学物質を、
住人自身が持ち込んでくるのである。
 前記した化粧品、殺虫剤、カビ、ダニ、細菌、さらには家具などまで含まれており、
病気の際のウイルスと同じような役割をすると考えても良い。
 このウイルス達を「住まい」に留めたら量が増加し、いずれは感染してしまうのである。
 従ってこれらの放散性化学物質を、室外に排出するシステムが換気なのである。
 人の体でも、多少のウイルスは存在するが、繁殖しなければ、悪さが出来ず病気にかかることはない。
 人の場合は、免疫の活性化と排出システム(血液の循環を良くする等)によって、
進入してきたウイルスの繁殖を防いでいるのである。
 この免疫力を高めたり、排出システムを強化する療法を予防療法と呼んでいる。


☆換気は唯一の予防策☆
 「住まい」の場合の、予防療法はただ1つ、適切に隈なく換気をすることである。
古い「住まい」は積極的に換気をしなくても隙間だらけの建物であり、
床下や屋根裏も大きく換気のための空間となっているし、
囲炉裏や竈なども換気を促すシステムの1つになっていた。
 現代ではそれらに変わるストーブやガスコンロを室内で使用することは、
室内の化学物質を増加させることになる。
 計画的に換気を行うことが「住まい」にとっての唯一の健康維持法なのである。
 換気を計画的に行うためには、ある程度の気密性がいる。
 吸気・換気の関係は複雑な空気の流れを検証しなくてはならず簡略化が難しいが、ある資料によれば、
3cu/u以下程度あれば可能となり、各室に吸気口と排気口を設けることが、
換気をスムーズにするのである。
 3cu/uの気密性とは、次世代省エネルギー基準の温暖地の推奨基準と同じ程度であり、
在来工法の木造住宅の場合は、外壁回りに合板を全面的に張り、気密性に注意して施工すれば3cu/u程度は可能な値である。
 換気の効用は他にもある、大人は、0.02?/h程度のCO2と40g/h程度の水蒸気を発生している、
さらにそれぞれ体臭を持っており、これらを感じなくさせるためには、
20〜30?/h程度の換気量が必要になる。
 人の活動状況に因って変わってくるので、多少幅が大きいが、4人家族で最大120?/h程度になる。
 4人家族で30坪の「住まい」に住んでいると容積は250?程度であり、125?/h(250?/2)が
この住宅に必要な換気量となり、1人当りの換気量の合計と比較しても同程度の換気量であることが分る。
 換気量0.5回/hは人の生活する必要換気量で考えても、適量と言えるのである。


☆季節ごとに室内環境の選択☆
 現代の住宅は、国内のほとんどの地域で冷・暖房を使っている。
 したがって、夏・冬は室内環境と屋外環境が大きく違っている。
 しかし、春・秋には室内環境と屋外環境を同じ状態にしたほうが快適になる。このように屋外環境によって、
室内の環境を選択しないと、通年快適に過ごすことは出来ない。
 しかし「健康共生住宅」の換気システムを取り入れておけば、年間を通じて快適に過ごせて、
かつ地球に対する貢献を僅かながらでも出来るのである。
だからと言って、「健康共生住宅」のシステムは特殊なものではなく、
現代の「住まい」を合理的に創れば可能となるシステムである。
 それは、いかに換気を合理的にするかがポイントになってくる。
 換気はある程度の気密性がないと、計画的に行えないので、まず気密性を高めることである。
 気密性を高めると省エネにもつながるのであるが、換気をすれば廃熱を行うことになるので、
2〜3cu/u程度の高気密であれば、省エネとしてのロスは少ないと言える。
 他に1cu/u以下が良いとの資料もあるが、長年に渡って1cu/uを維持するのは
難しいのではないかと思う。
 高気密高断熱とのシステムもあるが、これは省エネに特化した考え方である。
あまり、高気密高断熱に拘ると冷暖房を消すことが出来なくなる。なぜならば、
高気密高断熱システムは結露を起こさないようにするために、温度を下げないことで、
対応しているからである。
 夏・冬に一定温度で過ごせるのは快適だが、冷暖房を切らないことに抵抗を持つ人も、大勢いる。
 自然な過ごし方をするためには、夏・冬でも自由に冷暖房のスイッチを切ったり入れたり出来ることが
肝心なのである。
 夏・冬の冷暖房による壁内部の結露も、壁内に通気をし、風を通してやることで乾燥し、
水分による被害から守ることが出来るのである。
 さらに、自分の好きなときに冷暖房のスイッチのオン、オフを行えるのが「健康共生住宅」と言える。
 換気システムだけを使って、このシステムを作り出すのは、一見難しそうに思えるが、
「住まい」の全てを使い切ることによって可能になる。


☆蓄熱・輻射熱・断熱を総合活用☆
 「住まい」には基礎と言う蓄熱システムがあり、屋根裏と言う断熱システムも、
壁と言う放熱システムも存在しているのである。
 一般住宅ではこれらのシステムを皆切り離して役に立たない単なる材料と考えているのであるが、
これらのシステムをつなぎ合わせ、連続して活用することで、全てがシステムとして生き返ってくる。
 どのようにすれば良いのか、まず基礎を外断熱にすることで、基礎は蓄熱槽に変化する。
 外側だけを発泡ポリスチレンス(タイロホーム)やウレタンフォームで断熱すると、
温度の変化が少ない蓄熱量の大きな、さらに地熱も使える蓄熱槽が出来上がる。
 従って床下換気口を設けないことが大切である。
 この蓄熱槽が有効に働くことにより、冷暖房を停止しても、熱の供給が行われ、
通気層の風との効果で結露を引き起こさない。
 次に壁の中の室内側に通気路を設けると壁は放熱装置となるのである。
 室内の熱を換気扇で基礎の蓄熱槽に運び、その基礎に蓄えた熱を
徐々に自然通気で屋根裏に運ぶのであるが、その途中に壁の中の室内側の通気層を通り放熱を行い、
壁の温度を一定に保つ働きをすることで、放熱装置の役割を果たす。
 さらに通気は屋根裏へと上がって行き、屋根裏に設けた換気扇より排出されるが、
この時屋根の受けた熱を吸収して排気することにより、断熱層としての働きもするのである。
 各室からの空気を換気装置で床下の基礎に送り込んでやることによって、基礎の蓄熱槽が有効に働き、
壁の通気層、天井裏から屋根裏へと至り、全ての「住まい」の木材に風を与えながら、
屋根裏の一番高い部分から排気されて、換気と風の役割を果たす。
 室内の空気を全て動かし風として、室内ばかりでなく、基礎や壁の中、
天井裏から屋根裏にかけて全ての部材の健康が図られ、
住む人にも恩恵がもたらされるシステムが「健康共生住宅」のシステムである。
 このシステムから、現在の住宅の施工法を検証してみる。
 現在のほとんどの工法で基礎は外気による換気が行われるため、
換気不足と冷暖房の空気が外気と触れ合う部分が出来、結露を起こすのである。
 基礎以外では、在来工法は、壁内の通気が出来るようになるかどうかである。
 2x4工法の問題点は壁内部の通気が出来ないことであり、軽量鉄骨、重量鉄骨工法は、
壁内の通気と柱・梁のヒートブリッジの処理をどうするかである。
 パネル工法やプレハブ工法住宅も壁内部の通気が問題になる。外張断熱工法は、
在来工法であれば、基礎と壁中を一体通気可能にすることによって健康な「住まい」が可能になる。
 既存工法の問題点は結局床下、壁内、屋根裏の通気をどのように処理するかにかかっている。
 「住まい」と健康に関しては色々な考え方があり、一概に決め付ける訳には行かないが、
通気が人も「住まい」も生き返らせることを否定することは出来ない。
 その方法や種類も沢山あり、どのような工法を取るかは重要な選択になるが、
部屋だけではなく、基礎や床下、壁の中、天井裏、そして屋根裏までも通気システムとして
風を通せるかにかかっている。





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