(18歳未満はお戻りください。将棋と愛の極意を知りたいお方のみお入りください)


10

9

8

7

6

5

4

3

2

1

*


列仙伝 下 還精の法

ゲスト 容成公  聴き手 短大卒の女性キャスター    2001.12.16. 04:00


「それでは君が実戦につきあってくれ」

「わたくしがでございますか?」

「フィアンセでもいるの?」

「いえ、まだテレビ局に入社したての短大卒ですので」

「むこうでディレクターが指で合図してる」

「どうすればよろしいのでございましょうか?」

「ちょっとむこうを向いてね」

「困ります!」

「そうやって恥らうことがまず肝要」

「でもほんと困るんです」

「困るという漢字はどう書く?」

「木を四角で囲みます」

「そう。すると将棋盤ができる。木を四角で囲むとなぜ困る?」

「木が成長しないからです」

「ピンポン。君は今、成長しない木だ。立ったままもう動けない」

「本当ですわ」

「君は駒になる」

「容成公先生!髪がまっ白になっていますが」

「振り向くな。駒が余りに白いので、髪が真っ白になってしまった」

「もうスカートおろしていただけませんでしょうか?」

「それではワシも白髪のまま老人会入りジャ。この白髪が瞬く間に黒くなって行くマジックならぬ本物の秘術をこれから披露!」

「よろしくお願いいたします」

「では駒に文字を書いて」

「恥ずかしくてできません」

「恥と言う文字はどう書く?」

「耳に心です」

「その心は今、耳にある」

「はあ?」

「耳からタラタラ精気がでてきた」

「はあ」

「ハレホレヒレハレ」

「とめてください!」

「止という文字は、もともと足首の形をかたどったもの。もう動けんね?」

「はい、足首が地面から離れません」

「駒は動くね?」

「はい、動きます」

「ためしに振ってごらん」

「こうですか」

「これが振り駒だ。止という漢字を書いてごらん」

「こうですか」

「いいね。今度は算用数字の8」

「8」

「今度は8を横にして」

「こうですか」

「これが無限大の揮毫」

「はい」

「盛り上がってきた」

「先生、止めてください!」

「これが盛り上げ駒だ。二人で止めるという字を書いてみよう」

「こうですか?」

「別の駒がでてきた。尻という漢字の意味を知っとるかね?」

「どういう意味ですか?」

「もともと屍の玉門という意味だ。九という漢字が閉まる。たくさん駒が出ててきたね。心はもう耳から離れてしまっておる」

「それだけはどうか」

「古代は縦穴式住居。そこに人が入る。すると神様が喜ぶ」

「そうですか?」

「放射状に後光が差している。神とはどう書く?」

「示すに申と書きます」

「示という漢字は、台に滴る血を表した文字だ。丁が台となる。台に乗せた生け贄の血が滴り落ちて示となった。申とは稲光の形」

「駒が震えています」

「震える玉。頭上に轟く稲妻。漆がしたたり落ちていよいよ祝いの儀式!」

「でも緊張して」

「では気分をほぐしてみよう。祝うとはどう書く?」

「示すに兄です」

「兄とは口の下にせむしの人の形がへばりついたもの。古代では、せむしの人は神と人の仲介をする聖なる奇形。さあ前傾姿勢で盤面を見ろ!」

「うっ」

「祈れ!斤とは求めることだ。生け贄からしたたる血を求めると書いて祈るという文字」

「指してください!」

「そうやって本気になると漆が潤い、気合いが入る」

「でていますか?」

「今度のは聖水だ。これで炎の血柱を鎮める。陰陽まじわりの秘術!」

「指し手が進んでいます!」

「八浅一深。浅いところで小競合、そして一旦止まる。これが九の真の意味」

「気分が」

「ほうら、自分の精気が戻ってくるだろ」

「気持ちが・・・」

「そのはやる気持ちが、精気をためる。ここからはしばらく止めたままだ。たまった精気を自分に戻す」

「頭が朦朧と」

「電気が走っている。後頭部に達したか?」

「はい」

「後頭部に感じたら扇子を握り締めろ!」

「こうですか?」

「電気がまた一層たまってきただろう。これが還精の法だ!だんだんパワーアップして行く。もっと扇子を握り締めて!」

「震えています」

「そうやって八回電気をためろ。もうこれは脳髄でもなければ将棋盤でもない。神聖な庭園だ。さあ心を開いて庭園に光を!」

「はい!」

「向うの丘には歩の苗が群生している。そこを掻き分けると金の屋根がある。これを琴絃と言う。ここが琴の絃のように震えて、龍神を呼ぶ。その向こうには土手が左右に小船の形をつくっている。その中央に神の水を湛えた井戸がある。生け贄を置く台が井戸の中に見えてきた。 古代の呼称では陽台、嬰女、昆石。ここに捧げる生け贄が、九筋の香子。そして角が変身して天馬となる!」

「指してください!」

「銀は猛り狂い、その先に緋色の玉頭!ここから精気が発射されるが、精気は戻さなければならない。だが男の精気は漆と共に飛散。そこで男は女が発する精気を同等に取り込まなくてはならない。還精の法の極意はここにある。これは秘伝中の秘伝。医心方にもこの秘伝は書いていない。したがって古代中国の還精の法とは、己の勝利を中心に説かれたものと誤読されてきた。実は還精の法とは男女が同等の精気を交換することを究極の極意とする。古代ギリシャはそれで失敗した。この究極の交換には神の啓示が必要だ。これが愛というものの正体!人間は愛し合っていなければ、同等の精気を交換することができない!溜めた精気を放出するだけでは人は歳老いて行く。だが精気が人間同士で同等の循環を繰り返すと、人は老いることがない。これが究極の不老長寿の儀式!」

「私はどうすればよいのでしょう」

「自分の精気を相手に与え、相手の精気を吸収しろ!同等に!」

「先生!」

「最後は扇を開け!そして扇げ!そして究極の言葉はその先にある!それこそが真の名人が使う言葉!」

「あなたは・・・・!」                            2001.12.16. 04:45