偶然を楽しむ年末の非神      2001.12.30.00:30


「マイナス人間は神が与えたものを楽しむ以上のことはできない」

「どういうことです?」

「オマンコは古今東西、国籍を問わず生まれつきああやる」

「穴があったら入りたい?」

「鴎外はソファに穴あけてベルリンで励んだと天下に告白した」

「で僕は?」

「問題はそこ。お前は人間の自由精神が創造したものだ」

「人間の自由精神?」

「そう。自由精神が本当にあると思う?」

「どうですかね」

「お前が死んだら誰か悲しむ?」

「父さんは?」

「悲しまない」

「母さんは?」

「悲しまないだろう。自分の父親にも早く死んでもらいたいそうだ」

「自由でいいですね」

「自由はおそろしい。悲しみさえ、あ、そう。で乗り越える」

「神様は残酷?」

「人間にとっては残酷にみえる。人が何人死のうが神様はなんとも感じない」

「もしかしたら不感症?」

「神様をインポ扱いするのはお前が初めてだろう」

「チンチンなかったとか?」

「神様はすべてもっているよ。健康も病気も、善も悪も」

「それじゃ、宝くじあたっても嬉しくないでしょうね」

「いいとこつくね。実は、神様も偶然を楽しんでいるようなんだな」

「なにか当たるんですか?」

「神様にも意外な展開がないとね」

「だって何でも知っているんでしょう?」

「そう。なんでも知っている。だが、神様も年末の福引きでガラガラやってみたい」

「どうせ、ティッシュ一個ですよね」

「温泉旅行を当てたいらしい。この前のはタダの共同湯らしいから」

「どうしてそうなるんですか?」

「どうも神様は思い込みが好きらしい。こうすればああなると全部知っているんだが、それでは展開が面白くない。そこでわざと、いやもしかしたら、こんなことってあるカモと思い込むんだろう」

「例えば?」

「毎年交通事故で一万人死ぬんだが、あれは死ぬ人数が決まっている。ところがある年に、一人も死ななかったということが有り得る」

「奇跡ですね」

「ところが、警視庁はそういう奇跡を本気で実現しようとしているんだよ」

「実現不可能ですよね」

「ところが神様なら簡単にできる。交通事故死という呼称を、天命死と名付けりゃいいそうだ。天命死で一万人死ぬが、交通事故死はゼロだとね」

「すごい思い込みですね」

「神様はこういう思い込みを戦争規模で考える。原爆で即座に30万人死んだのは、あれは天国の臨時雇用で30万人召喚したんだとね」

「召喚?」

「お前知っていた?魂というものは使い捨てじゃないんだよ。絶対数が決まっていて、消滅することがない」

「霊魂不死説ですか?」

「いや、死ぬの生きるの話じゃない。それでは痴情話だ。そうじゃなくてね、魂は数として絶対数だということ」

「でも人口は増えていますよね」

「そう?」

「増えているじゃないですか」

「お前数えたの?」

「だって人口が増えて食料危機だと騒いでいるじゃないですか」

「人口ってなんだ?」

「人の口が幾つあるかということです」

「そういう数え方はおかしい。人の10倍は食っている奴もいる」

「ならば人魂と呼ぶべきですね」

「冬に怪談話すると金玉がなくなる」

「将棋にならないですね」

「魂は不滅。だからお前みたいのも数に入れると、それはもう大変な数だ」

「数えちゃいけないんですかね」

「そう。数えるときには、必ず目的が不純だ。食料がそれで足りるか比較したりする」

「いけませんか?」

「お前なにたべてんの?」

「なんにも」

「それじゃ、人間が一番おいしいと思うものってなんだか知ってる?」

「考えたこともありませんが、なんですか?」

「それは空気だ。空気を胸一杯に吸い込むと、うまい」

「水は?」

「空気の中に水分も入っている」

「あはん。だから文明は思い込みだっていうことですね。一番うまいものをマズくしているんですから」

「そこまで言うと貧乏人のヒガミと思われる」

「ヒガミ?」

「漢字で書くと非神」

「神に非らず?」