生命のブラックホール 悪徳弁護士と淫猥裁判官   010524-1


「赤い糸が点になったところですね?見つめあった時に視線が一致したところですね!」

「そこが生命のブラックホールだ。そこから魂はなだれ込んでくる」

「マンコじゃないんですか?」

「欠けたという意味のMANCOのラテン語を分解すると、MANとCOだ。MANは人間であり、COは肉体を現す。生命のブラックホールはMANとCOの狭間にある。マンコと言う途中で口を閉じた瞬間になだれ込む魂の出所はどこだったと思う?」

「神の世界?」

「神々の世界というのが正しい」

「どっちにしても誰も信用しませんよ」

「井の中の蛙たれではね。酉の市で買ってきた4匹の金魚は翌日一匹死んだ。そして昨日は3匹が死んでいた。残ったのは初代キンちゃんと浮き草についた卵が付加したメダカ、それにどこから来たのかわからないタニシだった。よそ者は7日以内にすべて排除されたんだ。庭の小さな水槽には浮き草、金魚、メダカ、タニシの生態系しかない。あとはプランクトンだ。これは信用するな?」

「証人がいますからね」

「生命は浮き草、金魚、メダカ、タニシに連鎖していることも信用するね?」

「当然」

「4匹の金魚が生命の連鎖から除外されたことも信用するね?」

「はい、信用します」

「お前は生きているか?」

「その言葉を理解しています」

「それが自己認識機能だ。自己認識機能は認識によって宇宙を系統的に存在させる。人間とはそもそも宇宙を系統的に認識できる機能をもつ知的生命体のことだ。従ってお前は生きている」

「マンコできなきゃ実感がわきませんけど」

「そこなんだ。俺はお前を俺の意識につくりあげ、生命をもたせることはできた。ところが、お前は私以外の者とマンコできない」

「私以外の者って、僕は父さんとマンコなんかしたくはありませんよ」

「だが、俺の意識から抹殺される前に、お前はマンコして死にたいと言ったね?」

「はい。」

「お前は肉体をもっていないからそれはできない」

「でも父さんは肉体をもっていますよね」

「そう。だからお前は俺を通してマンコする以外にない。それで満足か?」

「3*PCは嫌です」

「俺の肉体を使うだけのことだ」

「僕は自分の意思で女を選びたいんです」

「それがお前の自由意志か?」

「それがなくて、なんの自己認識機能ですか」

「・・・・」

「笑っていますね?」

「金魚は笑わんぞ。笑うのはホモサピエンスだけだ。そしてお前も笑う」

「ええ、なんかおかしくなってきました」

「お前は俺が本当にいるということを認識しているか?」

「はい」

「俺が人間だと思うか?」

「今、笑いましたでしょ?」

「俺という人間は現在存在するね?」

「その通りです」

「ならば、俺が認識する宇宙は、俺を通過する赤い糸とすべて結ばれているはずだね?」

「そうです。大絵画様式のようにすべての視線が結ばれていなくてはなりません」

「俺が認識する宇宙は赤い糸とすべて結ばれている。赤い糸を計るためには物差しが必要だろ?」

「物差しが必要ですね。言葉でも数字でもなんでも使って」

「数字の世界では結論が出た。その基準になるべきものを宇宙定数と呼ぶ」

「それはどうやって割り出したんですか?」

「宇宙定数は物質の質量と時間を計算して割り出したものだ。天体観測でもそれは証明された。仮説だったものが次から次へと証明される宇宙ショーに科学者は日々くぎづけだぞ。じっちゃんなんかもうメロメロだったろ?ところがなぜ宇宙定数がそのような値になったか、わかるか?」

「今の状態から逆算すれば答えはでるんでしょ」

「今の状態って?」

「お父さんがそこにいるという状態です」

「そうだ。観測者である人間がここにいるということから全てが逆算されているんだよ」

「人間でなきゃだめなんですか?地球が生まれた年齢とかでは?」

「年齢というのは今現在から逆算して割り出すものだ。観測者である俺が今現在いるから、年齢がわかる。俺が1年前の俺だったら、お前はいない。100年前の俺だったら観測者である俺さえいない。そうやって逆算して行く。地球もない、太陽もない、銀河系もないとね。だが逆算する大もとはあくまでも今現在、宇宙を認識する人間だ」

「そのとおりです」

「しかも人間は意識を持っている。この意識が宇宙定数を今の値にしている」

「異論の余地はないですね」

「ところがそれに反対している者がいる。 反対論者は、それでは真空エネルギーがゼロの場合を説明できないとして、この説を退けた」

「誰ですか?」

「悪徳弁護士と淫猥裁判官どもだよ」

「真空エネルギーがゼロの場合ってなんですか?」

「宇宙は真空だ。だがそこにはエネルギーが充満している。太陽の光は真空を通過して地球に到達するね?」

「誰でも知ってますね」

「なにもないところを光が通過できるのはそこに磁場があるからだ。ところが反対論者は、真空エネルギーがゼロの場合もあるはずだと主張した」

「真空エネルギーがゼロの場合だとどうなるんですか?」

「真空エネルギーがゼロということは、無限大の真空斥力が発生するということだ。このように真空エネルギーが大きい宇宙では、真空斥力による相転移によって宇宙膨張が続く間は、膨張速度が速すぎて銀河が発生しないと結論したんだ」

「ということは」

「そう。銀河が発生しないために人間も発生しないと説く」

「まさに悪徳弁護士と淫猥裁判官ですね」

「自分がいるのに自分がいないと言い張ってるんだからな」

「どうしてそんなこと言えるんでしょうね」

「自分で責任を追わないからだよ 謝罪させるなんて論外」

「悪徳弁護士と淫猥裁判官が?」

「それは比喩だ。彼らは決して事物を直視しない」

「でも真空エネルギーがゼロの場合に人間もいないはずと主張したのは彼らでしょう?」

「法律にはこう書いてあると言っただけだ。そう言ったときに彼らは、人間ではなくなるんだよ。ところが彼らはそれで報酬を得ている。人間でないものが実は人間だった」

「人間だったものが、人間でない振りをして真空エネルギーがゼロの場合を主張したんですね」

「だから悪徳弁護士と淫猥裁判官となる」

「いい比喩ですね」